真の実力を隠していると思われてる精霊師、実はいつもめっちゃ本気で戦ってます   作:アラッサム

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読者の皆様、お久しぶりです。
更新、遅くなり大変申し訳ございません。色々と忙しくて気付けば10月になっていました()

こっちが止まっている間、コミックガルドの方ではコミカライズも順調に話を更新されてますので是非、読んでみて下さい。

画力パワーが凄いです。

それでは本編になります。



第94話

 流石に契約精霊いませんからとは言えないロークは曖昧な笑みを浮かべながら誤魔化そうとするが、ゼルの追求は止まらない。

 

「どうして精霊を呼ばないんだい? 聞けば学位戦でも頑なに呼んでいないらしいけど、契約精霊を呼ばない戦い方に何か拘りでもあるのかい?」

 

 どうやらレイアの手紙には契約精霊がいない疑惑については書いていないらしく、ゼルは何か理由があって精霊を呼んでいないと考えているようだ。

 

「その、拘りというか………」

 

 しかし、だからと言って流石に宮廷精霊師であるゼルに契約精霊はいませんと正直に言う勇気の湧かないロークは必死に言い訳を考える。

 

「もしかして……」

 

「……ッ!」

 

 が、ロークが言い淀んでいる間に何かに気付いた様子でゼルが口を開く。

 

 ———マズい、気付かれたかッ!?

 

「自分の精霊に何か劣等感でも抱いているのかい?」

 

「………へっ?」

 

 こちらを見透かしているかのように鋭くなるゼルの赤い瞳に思わず覚悟を決めていたロークはその勘違いを理解するのに数秒の時間を要した。

 

「おや、違ったかい?」

 

「いや、その……」

 

 ロークの微妙な反応に自分の推測が間違っていたかとゼルは首を傾げる。

 

 対するロークはゼルの勘違いを利用するべきか否かに思考を巡らせていると笑い声が耳に入ってくる。

 

「えっと……」

 

「っと、すまないね。何だか君を見ていると昔の自分を思い出してね」

 

 言葉に詰まっていたロークはゼルのその言葉を聞き、訝しげな表情を浮かべる。

 

「昔のヴァルハート様を……ですか?」

 

「ああ、君は少し私に似ているよ」

 

 名門のエリートであるゼルと契約精霊すらいない半人前の自分では似ても似つかない筈だが、一体どこが似ているというのだろうか。

 

「実を言うとね、私も学生時代に君のように契約精霊を呼ばずに戦っていた時期があってね」

 

「え、ど、どうしてですか!?」

 

 そんな疑問に答えるようにゼルが発言にロークは驚愕する。

 

 あんな立派な精霊と契約しているのに呼ばずに戦うというゼルの行動が理解できないロークは気付けば理由を尋ねていた。

 

「自分の契約精霊がこの上なく嫌いだったからさ。勿論、今ではそんなこと無いけどね」

 

「どうしてお嫌いに? とても立派な精霊だと思いますけど」

 

 ゼル・ヴァルハートの契約精霊レグルスは火属性と光属性という二つの属性を有する珍しい精霊であり、その強さは王国中に知れ渡っている。

 

「ハハハ、確かにね。けれど当時は落ちこぼれのレッテルを貼られて捻くれていたこともあってね、自分の契約精霊の素晴らしさに気付くことができなかったんだよ」

 

「落ちこぼれって、ヴァルハート様がですか?」

 

「ああ。今でこそ私は『炎獅子』なんて大層な二つ名を授かり、宮廷精霊師の地位にいるけど、学院時代は落ちこぼれと言われていたんだよ?」

 

 

 一体、彼のどこに落ちこぼれ要素があるのか? ゼルで落ちこぼれなら契約精霊のいない自分は一体何なのか。

 

 そんなロークの内心を察した様子でゼルは自身の服に刻まれた竜の紋章を指でトントンと叩く。

 

「ヴァルハート家は代々、炎竜と契約を結びその名を轟かせてきた家系だ。故にヴァルハート家で炎竜と契約ができなかった者にはその時点で落ちこぼれの烙印が押されるんだ」

 

「それだけで……」

 

 たったそれだけの理由で落ちこぼれ扱いされてしまう、その事実にロークが絶句しているとゼルは苦笑を浮かべる。

 

「精霊師の名家とはどこもそういうものさ、特に歴史が長ければ長いほどね」

 

「………」

 

「まぁ、そういう背景もあってね。親に家、それに精霊を含めて全てが嫌になった当時の私はこの身一つで戦っていたんだ」

 

 最後に「今の君のようにね」と付け足して話を終えるゼルにロークは暫くの間、言葉を失っていたがやがてゆっくりと口を開いた。

 

「なら、どうしてヴァルハート様は一人で戦うことを止めたのですか?」

 

「単純だよ、一人で戦うよりも精霊と共に戦うことが強いという至極当然の事実に気付いたからさ」 

 

 ロークの問いにゼルは紅茶で喉を潤した後に答える。

 

「霊術や剣術、それに戦略と一人でも戦えるように技術や知識をどれだけ蓄えようと強い絆で結ばれた精霊との連携はそれらを凌駕する。一人で戦っているとそれを実感する機会が何度もあった」

 

「………」

 

「実力で遥かに劣っている優秀な精霊師、天変地異さえ巻き起こせるような最高位の精霊、一人では決して勝つことのできないそんな格上の相手も契約精霊と共に戦えば勝てる可能性がある。結局のところ精霊師とは契約精霊と契約者が揃ってこそ、その本領を発揮するんだよ」 

 

「………」

 

「とはいえ……君が何故、契約精霊を呼ばずに戦わないのか。何か事情があるのは分かるし、その戦い方を否定するつもりは無い」

 

 まさにその通りだとゼルの話に耳を傾けていたロークはその言葉に驚きで顔を上げる。すると、どこかいたずらっ子のような笑みを浮かべるゼルと視線があった。

 

「否定されると思ったかい?」

 

「正直、そう思いました」

 

 寧ろあの流れで否定しないのか、とすら思いながら呟くロークにゼルは笑う。

 

「まぁ、君の戦い方が良いとは思わないが、そもそも人に止めろと言われて止めるくらいなら最初からそんな戦い方はしていない筈だ。そうだろう?」

 

「……はい」

 

 何ならローク自身も可能ならすぐにでも今の戦い方を止めたいとは思っている。

 

 けれど、そもそも契約精霊がいないロークには現状この戦い方以外に戦う術が無いのだ。

 

「それならできることころまでその戦い方を貫けば良いさ。君には君の考え方がある。実績もしっかり残している訳だし、君が壁に突き当たった時にまた改めて考え直してみれば良い」

 

「……ありがとう、ございます」

 

 ロークは深く頭を下げて感謝を述べる。

 事情を何も知らない筈のゼルがこうして自分を肯定して背中を押してくれたことは否定されると思い込んでいたロークにとって救いに他ならなかった。

 

「別にそんな深い感謝を述べられるほどの話はていないと思うけど……まぁ、それだけ打ち解けてきたってことかな」

 

 そう言って破顔するゼルに釣られてロークも自然と顔を綻ばせ、場に穏やかな空気が漂い始める。

 

「さて、それじゃ打ち解けてきたところで重ね重ね申し訳ないんだけどもう一つだけアレアス君に聞いいておきたいことがあるんだけど、良いかな?」

 

「はい、何ですか?」

 

 ここまでの会話で警戒心を緩めたロークは何を聞いておきたいのだろうかと思いながら喉を潤すべく注がれた紅茶を口に付ける。

 

「ぶっちゃけ聞くが、アレアス君はレイアのことをどう思っているんだい?」

 

「ごふっ」

 

 まさかレイアの話題が戻ってくるとは予想していなかったロークは激しく動揺して飲んでいた紅茶を思いっきり吹き出してしまう。

 

 一瞬、ロークは噴き出してしまった紅茶の一部がゼルに掛かってしまうと焦るが、飛沫はゼルの顔に付着する直前で一瞬にして蒸発してしまった。

 

「その動揺っぷり、まさか惚れているのかいッ!?」

 

「ちが、ゲホッ! ゴホッ!?」

 

 あまりに精密な霊力操作に啞然とするのも束の間、ゼルの発言を聞いたロークは咄嗟に誤解を解こうと試みるが、先程飲み込んだ紅茶の一部が気管に入って咽てしまい、説明をすることができない。

 

「やはりそうか。先程、言葉に詰まったことと言い、ただの後輩と言うにはやたらとレイアに目を掛けているとは思ってはいたが……」

 

「ゲホッ、ちが———」

 

「まぁ、私が言うのも何だがレイアはミーシャ様に比肩しうるほどの美しさを……いや、可愛さという点で言えばミーシャ様すら上回ると言っても過言では無い、当然と言えば当然だ」

 

 先程までの高貴な雰囲気はどこへやら、一介の親バカへと変身したゼルにロークの言葉が届くことは無く、彼は感情の赴くままに言葉を紡いでいく。

 

「いや、分かっている。無理もないさ。好きな子の父親となれば正直に本音を打ち明けることも難しいだろう。ましてや私は今や宮廷精霊師の立場についているしね」

 

「いや、そうじゃなくて。あの、話を———」

 

「けれどアレアス君、そこまで心配する必要は無いよ。先程も言ったが、私は娘の恋愛には肯定派だ。勿論、相手が常識やモラルが欠如した奴であれば話は別にはなるが、どうやら君はレイアの手紙通り誠実な人間のようだし、問題は無いだろう」

 

「問題だらけですよ」

 

「身分のことを気にしているのなら気にすることは無い。平民やら何やらと階級如きで娘の交友関係を狭めるような狭量さは持ち合わせていないからね」  

 

「いや、そこじゃなくて……」

 

 交際にあたっての身分の違いを気にしている訳では無く、その前段階の時点で色々と間違いがあるので正したいのだが、話が通じそうにないとロークが内心で頭を抱えているとバンッと荒々しく部屋の扉が開く。

 

「「ッ!?」」

 

 話に集中していたロークとゼルはと突然の音に驚きながら入口の扉に視線を向けると大股でこちらに近付いてくるゼルの娘ことレイアの姿が視界に入った。

 

「やぁ、レイア。良いところに丁度、君の話をして———」

 

 笑顔で愛娘に話し掛けるゼルに対してレイアの顔は表情こそ笑顔だが、纏っている圧から怒っていることを察してロークは冷や汗を流す。

 

「お父様、ちょっとこちらへ」

 

「えっ、何? どうしたの?」

 

「ローク先輩、少しお父様をお借りします」

 

「は、はい……」

 

 レイアから放たれる圧の凄まじさを前にしてロークは素直に指示に従い、ゼルは愛娘の行動に困惑しながら部屋の外へと連れ出されていく。

 

「お父様、先輩に何を———ッ!!」

 

「えっ、いやだってお前、アレアス君のこと———」

 

「ちが———だから———をしないでッ!!」

「いや——私はお前のこと———」

 

「余計なお世話だよッ!!」

 

「………」

 

 ロークは耳に入ってくる親子の会話の一部に静かに耳を傾ける。

 

 聞こえてくる会話は途切れ途切れで内容の全貌こそ把握することはできなかったが、レイアの怒声と困惑を感じさせるゼルの声音からある程度、どんな話をしているのかは想像することができた。

 

「そういや親父は元気にしているかね……」 

 

 二人の会話を聞いている内にロークも自身の親のことを思い出し、物思いに耽る。

 

 思えば父親に才能があると背中を押されてこのユートレア学院に入ったことが苦労の日々の始まりだった。

 

「一体、親父は俺の何に才能を感じたんだが……」

 

 ふとそんな疑問がロークの脳裏に浮かぶ。

 恐らくは霊力量辺りで判断したのだろうが、今考えると随分と適当だしその言葉を真に受けて調子に乗ってユートレア学院に入学した自分も自分だなとロークは苦笑する。

 

「あの、ローク先輩」

 

「ん?」

 

 恥ずべき過去のことを思い返していると父親と話を終えたらしいレイアがおずおずと声を掛けてくる。

 

 扉の方に視線を向ければ案内をしてくれた初老の執事とゼルが会話をしていた。どうやらこってり絞られたらしく、その様子は見るからに落ち込んでいる。

 

「その……先程、お父様が話していたらしい一連のことについてですが」

 

「ああ、大丈夫だよ。全部冗談だと思って聞いていたから」

 

 恥ずかしそうに話すレイアにロークは視線をゼルから戻すと気にするなという意味合いでそう呟く。

 

「………」

 

「ん? どうした?」

 

 が、気遣いのつもりで発言した言葉に対してレイアは何とも言えない様子でジッと見つめてくる為、ロークは首を傾げる。

 

「いえ、何でもありません」

 

「そ、そう?」

 

 そう口にするレイアから不満の気配を若干感じながらもロークは変な発言はしていない筈と自分を信じ、特に追及はせずに頷く。

 

「それにしてもいい父親だな」

 

「否定はしませんが、過干渉なところは直して欲しいですね。可及的速やかに」

 

「ま、まぁ、レイアの為を思ってだし……」

 

 そう瞳を据わらせながら呟くレイアにロークはゼルをフォローしようと試みているとその張本人が近付いてくる。

 

「あー、アレアス君。先程はその、色々と失礼したね」

 

「い、いえ、全然」

 

 ゴゴゴという効果音が聞こえそうな圧をレイアが放っているのを背後に感じながらロークはゼルからの謝罪を受け入れる。

 

「それで謝罪の代わりという訳では無いけど、良ければ一緒に食事でもどうかな? 昼はまだだよね?」

 

「はい、是非。ご迷惑でなければ………」 

 

 タダ飯が貰えるならとロークはゼルの誘いに前向きな姿勢を見せながら横目でレイアの反応を伺う。 

 

「お父様?」

 

 すると案の定と言うべきか、先程の一件もあってレイアは疑心の目をゼルへと向けていた。

 

「レイア、違うぞ。本当にただ食事に誘っているだけだ。変な意図は無い」

 

「……信じていいんですよね?」

 

「勿論」 

 

「……分かりました」

 

 レイアは父親の言葉を信じて頷くと打って変わって笑みを浮かべながらロークへと視線を向ける。

 

「ローク先輩、ご迷惑でなければ是非ご一緒にしましょう」

 

「あ、うん」

 

 レイアの変わりようにロークはどこか複雑な笑みを浮かべながら頷くのだった。

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