愚者と翡翠の魔女
作者:

原作:モンスターハンター
タグ:R-15 オリ主 残酷な描写
 《先生》或いは《母》と呼ぶべき人は、実に老獪極まる女傑だった。
 第一線を引いて久しいというのに「散歩に行ってくる」と言って小一時間居なくなったと思ったら、数日前に大繁殖の兆候があると話されていたルドロスの皮を大量に抱えて帰ってきたり、ハンターになって間も無い自分へ毒の対処法を教えるのに「モノは試しだ」と言って笑いながら毒テングタケをこちらの口に突っ込んできたような人だ。(ちなみにその時解毒薬もくれたけど、実のところ今でもちょっと恨めしく思っている。とても怖かった)
 酒場で《魔女》なんて通り名で呼ばれているのを聞いた事もある。
 数多く聞いた話を総合すると、彼女が加わったパーティはたとえクエストに失敗しても必ず誰一人として欠けずに帰ってきた、とそんなところからそのように呼ばれるようになったらしい。
 よく酒場の隅で飲んだくれてべろんべろんになった老人達が口々に話しているので、本当なのか疑問に思って「あの話は本当なのか」と彼女へ直接尋ねたことがある。
 彼女はあまり現役時代の話をしたことはなかったので、純粋な興味もあった。
 しかし少し驚いたような顔をしてから「嘘ではないね」と、普段はっきりものを言う彼女には珍しく曖昧にそう答えて「また今度な」と付け足すようにそう言うだけだった。
 結局、本人の口からその〝魔女伝説〟とやらを聞くことは終ぞ叶わなかった。
 差程遠くもない、数年と少し前。
 彼女が目の前から忽然と姿を消したからだ。
 別に何か彼女にそうさせるような出来事があった訳では無い。
 強いて言うならば、自分がどうにかこうにか一人で雌火竜を狩ることが出来るようになったのを見届けて、それから離れていったような気がしている。
 ――本当のところは、分からないけれど。

 思えば、自分はあんなに傍にいたというのに《先生》或いは《母》と呼んだ彼女のことを何一つ知らなかった。
 知っているのは彼女の名前と、必要なことを必要なだけ教え込む熱心さと、《魔女》と呼ばれていたらしい、という過去だけだ。
 そんな彼女を、自分は今でも探している。
 風の噂に魔女のような女ハンターがいる、なんて、多分どこかで第一線に戻って生きているらしいことを聞いたから。


 見つけたらどうするのかって?
 まぁ言いたいことは山ほどあるけれど。

 そうだな。
 自分はまだ、拾ってくれたあの人に礼を言えちゃいない。
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そんなマイハンターの話。riseベース。
気まぐれ更新。
  愚者の記憶
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