転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

302 / 439
どうやらルーズベルトが、”モロッコ攻略(トーチ)作戦”の陣容を発表したようですよ?





第299話 ペタン首相はカサブランカにやって来るヤンキー義勇軍(特に戦艦)に大変ご立腹のようですよ?

 

 

 

 1943年2月14日、あの占領されたムルマンスクへとノコノコやってきた合衆国レンドリース船団がまとめて拿捕された”セント・バレンタインデーの喜劇”からちょうど1年。

 その国際的な恥辱を払拭でもしたかったのか、アメリカ合衆国大統領フランシス・ルーズベルトは大々的に、

 

『不法占拠されたモロッコ奪還を目指す、”正統なるフランス”である自由フランス遠征軍の支援』

 

 を高らかに宣言した。

 そして、ルーズベルトは特にこの言葉に拘った。

 

「我々こそが、偽りの支配者、邪悪な圧政者より民を解き放つ解放者(リベレーター)なのだっ!!」

 

 アメリカ人が正義が大好きなのは割といつもの事だが、”解放”という言葉もまた好む。

 例えば、ニューヨークの”自由の女神”、「Statue of Liberty」。正式名称は”Liberty Enlightening the World(世界を照らす自由)”。

 解放を示す”Liberation”、解放者となる”Liberator”、スペルを見てわかる通り語源は同じラテン語の”Liber”。

 

 一方、同じく自由を意味するFreedomの語源は古英語の”frēodōm”、直接的には「自由の権利」という意味になるらしい。

 日本人には感覚的に理解しにくいが、”Liber”に端を発する言葉は「(自分の意志で)勝ち取った自由、能動的自由」、”Free”は「生物が生まれながらに持つ自由、受動的自由」というニュアンスがある。

 更なる語源まで調べると中々愉快な変遷(例えば、古英語の”freo”は「束縛されていない/愛されている」という古代ゲルマン語由来とされている)を辿っているのだが、現代英語においでは意志に関係なく落ちる”自由落下”は「free fall」であり、決して「liberty fall」とは言わない。

 

 ついでに言うと、現代において左派を示す”リベラル(Liberal)”も同じく”Liber”が語源で本来の意味は「自由主義」。そして史実のルーズベルトが大統領となった1930年代以降のアメリカ合衆国民主党の政治思想が「ニューリベラリズム(新自由主義)」……この政治思想をドイツ語で示すと「左派自由主義(Linksliberalismus)」となるのだから、こうなんというか色々繋がって実に興味深い。

 

 まあ、この世界線のルーズベルトが何を言いたいのか、何となく察せられると思う。

 そして、史実のルーズベルトなのだが……カサブランカ会談で戦後のモロッコ独立への支持を表明し、民族主義政党では大西洋憲章などの第二次世界大戦中の宣言に基づいてモロッコの独立を主張した。

 したのだが……モロッコが実際に独立したのは、第二次世界大戦終結から11年もたった1956年、ルーズベルトはとっくに墓の下だ。

 いかに口約束だったかわかるだろう。

 

 更にはこの世界線では、”大西洋憲章”すら不成立だ。

 史実以上にルーズベルトの語るモロッコの独立は、「絵に描いた餅」だろう。

 無論、ルーズベルト本人はそれを自覚している。言わば、確信犯的行動だ。

 

 それよりも重要なのは、『自由フランスがモロッコを奪還し、アメリカは主役ではなくサポート役として支援する』というスタンスだろう。

 故に今回のモロッコ攻略作戦、”トーチ作戦(・・・・・)”には米軍は正規軍ではなく義勇兵団として参加……要するに史実における日中戦争時の”フライング・タイガース”と同じ手口だ。

 世界線が変わっても、どうやら中身は大差ないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、これに激怒したのが、世間的ではなく世界的にはこっちが「正当にして唯一のフランス政府」であるパリに居る現政権首相フィリベール・ペタンだ。

 

「どこの世界に、戦艦・空母を有する義勇軍が居るっ!!」

 

 そう、モロッコ攻略戦に『自由フランス軍輸送船団』の護衛として参加する艦隊は当時、米国が大西洋側で機動的に運用できる全力と言ってよかった。

 1943年1月現在で戦力化されている米国戦艦は、

 

 14インチ砲戦艦

 ・ニューヨーク級戦艦×2隻

 ・ネバダ級戦艦×2隻

 ・ペンシルベニア級戦艦×2隻

 ・ニューメキシコ級戦艦×3隻

 ・テネシー級戦艦×2隻

 16インチ砲戦艦

 ・コロラド級戦艦×3隻

 ・ノースカロライナ級戦艦×2隻

 ・サウスダコタ級戦艦×4隻

 の22隻。

 更にこれに現在、急ピッチで戦力化を図っているのが、16インチ砲戦艦の、

 ・モンタナ級×5隻

 ・アイオワ級巡洋戦艦×6隻

 で、1944年後半までには保有戦艦は33隻になる予定だ。

 また、太平洋戦争が勃発していないので、モンタナ級の竣工に合わせるようにパナマ運河の第3閘門設置が行われてパナマックスが引き上げられている。

 戦時体制でないのにこれとは相変わらずアホみたいな国力だ。

 ちなみに史実のアラスカ級大型巡洋艦の建造予定はない。

 というのも、史実のアラスカ級が「ドイツのドイッチュラント級装甲艦に対抗するため」という名目で計画されたが、今生では「各国の30ノット異常の速力が出せる巡洋戦艦(シャルンホルスト級、レナウン級やフッド、金剛型など)に対抗する」為の”巡洋戦艦(実質的に高速戦艦)”としてアイオワ級の建造が優先され、大型巡洋艦計画と統合されたようだ。

 その分、39年の欧州で大戦勃発を契機にアイオワ級は最初から6隻同時建造とされ、43年後半から随時、参戦予定だ。

 

 

 

 さて、肝心の「自由フランス船団護衛義勇艦隊」の内訳だが……

 (16インチ砲戦艦、最高速27ノット以上の中速戦艦)

 サウスダコタ級:インディアナ、マサチューセッツ

 ノースカロライナ級:ノースカロライナ

 (14インチ砲戦艦、最高速21ノットの旧式戦艦)

 テネシー級:テネシー

 ニューメキシコ級:ミシシッピ、アイダホ

 ペンシルベニア級:アリゾナ

 

 インディアナを旗艦とする16インチ砲戦艦3隻は敵艦隊が出てきた場合は積極的に迎撃する前衛艦隊、メリーランドを旗艦とする14インチ砲戦艦4隻は船団直掩となっていた。

 独ソ戦開戦以来、レンドリースの円滑化の為に大量発注された”米国戦時標準量産船(リバティ船)”主体の輸送船団の巡航速は精々10ノットかそれ以下、ならば旧式の低速戦艦でも十分に護衛足りえる。

 皮肉なことに、ムルマンスクやアルハンゲリスクが受け入れ港となるレンドリース北海ルートが物理的に潰されてしまった為に、一時的に大西洋方面のリバティ船に余裕が生じていた。

 更に空母は、

 ・レキシントン級:レキシントン

 ・ヨークタウン級:ヨークタウン、ホーネット

 という大艦隊だ。

 戦力的には、史実のカサブランカ沖海戦ベースで空母で3倍、戦艦基準なら実に史実の7倍(!)、米国保有戦艦のほぼほぼ1/3という大戦力だ。

 つまり作戦参加艦船は合計200隻を超える。

 ノルマンディーの予行演習かな?

 

 まあ、とりあえず作戦成功(=勝利)を渇望するアメリカの”トーチ作戦”にかける本気度や意気込みは察せられるが……

 ただ、ここまで戦力が投入されることになったのは、当然理由がある。

 現在、フランスが持つ戦艦はリシュリュー級4隻、そのうち大西洋に配されているのは半分の2隻であり、その戦力に対する牽制なら明らかに過剰戦力だ。

 となると、牽制しているのは明らかにジブラルタルに配備されている英国艦隊、キング・ジョージV世級3隻だろう。

 そして、元々の護衛艦隊が「投入できる最大戦力」に格上げされたのは、日本人の天城型2隻と金剛型2隻が英国本土からジブラルタルへ舳先を向けてからだ。

 

 無論、現状で米国は正面切って英日と事を構えるつもりはない。

 そもそも、これだけの艦隊戦力を用意し大西洋に集結できたのは、太平洋方面で英日と殴り合ってないし、当面はその予定がないからだ。

 戦艦ベースで考えるなら、戦力化できている戦艦の中で日本本土に配されているのは大和型2隻、皇国保有戦艦のほとんどは、イタリア戦に備えるという名目で今や地中海に集結している。

 英国東洋艦隊に配されているのはR級の旧式戦艦ばかりで、脅威にならないとは言わないが積極的攻勢に出れるような状況にない。

 アメリカ国内には、「日本は真珠湾への奇襲攻撃を狙っている」と叫ぶ者もいるようだが、真珠湾だけでも2隻の16インチ砲戦艦と2隻の14インチ砲戦艦が舳先を並べており、英日の太平洋方面艦隊が総出でしかけてきても、返り討ちにできると米国海軍は踏んでいた。

 ただし、同じく米軍も太平洋方面で英日に積極的攻勢を仕掛けられるほど良好な状態にないのだが。

 

 米国政府の見解も、英日の戦力配備の偏りから即時開戦は無く、将来的はともかく『今は英日とは”舌戦”の段階』と踏んでいた。

 皮肉にもこれは日英首相の「今の太平洋はにらみ合っておけば十分」という見解とも一致していた。

 確かに現状、日英は軍艦のみならず米国レンドリース船団の領海通過を禁じ(つまりレンドリース船団はジブラルタル海峡やマラッカ海峡を通過できない)、その対抗処置として米国は軍民問わず日英船籍の全ての船のパナマ運河通行を禁じたりとかなり険悪だが、かといって実際に弾丸を撃ち合う気はないというところだ。

 

 今回の米”義勇”護衛艦隊の「ドイツの水上艦隊と正面から殴り合いができる艦隊規模」も、フランスだけでなく日英駐ジブラルタル艦隊にも「手を出せばただでは済まない」と認識させ牽制することが目的の一つであり、上陸における支援砲撃(艦砲射撃)などは行う予定だが、それ以上の予定あるいはそれ以外の目的はない……少なくとも米軍はそのつもりであった。

 まあ、ジブラルタルに戦闘艦をかき集めた日英の思惑も、同じく「ジブラルタルに手を出すなら覚悟できてんだろうな?」という意味での示威行為なmので、どっちもどっちだろう。

 

 

 

 ただし、戦争は計画通り・予定通りに行くことの方が少ないのは、皆様もご承知の通りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




自由フランスのモロッコ奪還を支援する予定の米国義勇軍が義勇軍(笑)になった件について。

まはや「自由フランス軍が口実、本体は米軍」である事を隠そうともしてませんw
おそらく人類史上最大規模(かもしれない)義勇軍の爆誕ですw

特に投入艦隊戦力は、フランス海軍どころか水上艦だけなら史実より強化されたドイツ海軍と正面から殴り合いができるレベルですね~。
何しろ、現在戦力化できている米国保有戦艦のほぼほぼ1/3が投入されるという有様です。

ただ、ペタンもただでモロッコをくれてやる気は無いようで……
次回は、本来は無理ゲーのモロッコ防衛戦を練り練りするパリ政権の様子など。

これからもよろしくお願いします。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。