転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
なんかそこはかとなくベトナム臭が……
さて、1943年のバレンタインデーを三
「小野寺君、ちょっと日本皇国陸軍と掛け合って”チ38式半自動歩兵銃”を5000丁ほど都合できないか聞いてみてくれないか?」
ちょっと上司が何を言ってるのかわからない小野寺は、
「は? それは構いませんが……なんでまた」
そう、サンクトペテルブルグ大公領は、旧チェコ・現ドイツ企業のチェスカー・ズブロヨフカ社から直接、チ38式の原型となったZH-29半自動小銃を購入できる立場にある。
実際、ZH-29の半完成品を購入して、サンクトペテルブルグの工廠で半自動狙撃銃の”SG43(Scharfschützen Gewehr 43:43年式狙撃銃)”なんて「形はなんちゃってSVDドラグノフ。ただし、7.92㎜×57弾やロングストローク・ガスピストンなどは中身的にはツァスタバM76モドキ」というキメラっぽい狙撃銃に仕立て直していたりするのだ。
「いや、SG43は狙撃隊に回すつもりだし、スコープがドイツ頼みなせいであんまり量産利かんから。
「それこそ、ZH-29をまんま導入すればいいのでは? あるいはSG43のスコープ無し増産するとか」
「ぶっちゃけ、スコープレスって前提にするとチ38式のが命中精度良いんだよ。小銃擲弾、オプション無しで撃てるのも美味しいし」
「あー、わかりました。そういうことなら、とりあえず問い合わせだけはしてみますよ」
「あと、何て名前だったっけ? あのM79モドキの擲弾銃」
「”二式四十粍擲弾銃”ですか? 実はあれ見た目はM79のまんまですけど中身はトリガーがダブルアクションになってたり、中折れ式のショットガンみたいに空薬莢押し出すエジェクターが追加されてたりと細々とした改良されてたりするんすよ」
一応、小野寺君は日本皇国陸軍所属の武官ですよ?
いつまで皇国陸軍に在籍してるか知らんけど。
「あー、そうなんだ? ついでにそっちも購入できるか問い合わせてくれ。できれば、擲弾も含めたライセンス生産もだ。支払いは現金でも金塊でもその他の物でもいい」
サンクトペテルブルグ
結局、
・ドイツ式の小銃擲弾は、いちいち空砲を装填しないと発射できない
・また、その場合も反動と設計上の問題で肩付けで発射できず、ストック底部を地面につけて発射するタイプで照準が難しい。
・擲弾用照準器も嵩張り、小銃への取付が面倒で戦場で紛失しやすい
という理由で実戦だとイマイチ使いづらいと判断され、コストダウンと生産工程の圧縮を兼て小銃擲弾発射機能をオミットしてしまっていた。
その分、銃口部分にはシンプルながらマズルブレーキに加えてフラッシュハイダーの機能を持たせた改良型を採用した。お陰で銃口部だけはなんかM16A2っぽい。もしかしたら、AK74の”ゴツいマズルデバイス”を作るのが手間なだけだったのかもしれないが。戦時下だし。
この改良型マズルブレーキに加え反動をコントロールしやすいストレートストックの形状と適度な重量、毎分600発程度の発射レート、AKMの7.62㎜×39弾より8㎜クルツ弾の方が幾分弱装だったことの相乗効果で、結果としてセミオートに加えフルオート射撃もよりコントロールしやすくなったようだ。
AG43の現状における標準オプションは銃剣だけとなったが、ドイツ式小銃擲弾の戦場での実用性とAG43の更なる製造工程の簡略化と製造コストの圧縮をトレードオフと考えるなら、それなりに意味のある決断だった。
その点、クルスの購入希望品。小銃擲弾発射機能を重視した火力バカと評判な皇国のチ38式半自動歩兵銃はよく考えられていて、
・小銃擲弾用照準器は折り畳み式で最初から銃本体に組み込まれており、使用時に起立させると、同時にガスカットオフ機能が働き、銃内部に余計な高圧ガスが逆流しての損傷を防いでいる
・銃身先端には消炎器、制退器、擲弾発射器を兼ねた構造デザインで、小銃擲弾発射に部品の取付や取外しは無用(史実のBM59ライフルと同じ造り)
・小銃擲弾その物がバレットキャッチ方式の空砲ではなく実包で発射できる物で、小ぶりなせいもあり肩付け発射が可能で照準がしやすい
などの特徴があった。
クルス的には将来的に”ツァスタバM70B1N”のような小銃擲弾をきちんと使えるAG43の発展型を作りたいのだが……
今は少しでも”現在進行形でできる火力強化”に勤しみたい。
「りょーかい」
なんて小野寺がお気楽な返事をすると同時に部屋がノックされ、クルスの腹心”サンクトペテルブルグの三羽烏”の一人である”アルフレート・シュペーア”が執務室に入ってくる。
所属は一応、ドイツ軍需省で軍需相のトート博士の部下だった筈だが……多分、本人もそれを忘れている臭い。どちらかと言えば「サンクトペテルブルグの生産・商業統括官」と言った方が今となっては通りが良い。
文字通りサンクトペテルブルグ産業経済の”元締め”だった。
「
かつてチェコの国営兵器工廠だったブルーノ兵器廠だが、チェコのドイツ併合後は民営化され今や世界屈指の軍用銃器メーカーとして元気に兵器商人をやっているようだ。
「へぇ? 何をだ?」
「ZB30軽機関銃ですよ。ドイツの本年度発注を当て込んで作ってた分が、余剰在庫になったんで買わないかって話みたいです」
「あー、”FG42軽機関銃”が制式化されたからなぁ」
どうやらドイツ陸軍は、今年からZB30の購入を中止してFG42に全面的に切り替えるようだ。
(そりゃアレZB30より軽いしな。分隊支援火器として使うなら、軽いに越したことはない)
ちなみにサンクトペテルブルグは何気に旧チェコ企業とのつながりが深い。
例えば機関銃一つとっても、例えば同じブルーノ社のVZ37重機関銃を生産戦車である”KSP-34/42”の車載銃として購入&ライセンス生産していた。
クルス自身も旧チェコ・現ドイツの自動車メーカー”タトラ社”のT77aやT87をプライベートな愛車としてるのも相まって、一部企業では「困った時の大公頼み」と言われてるとか何とか。
「近場のお得意様だから声をかけてきてくれたってところか。数は?」
「とりあえず即納分は1万丁ほど」
「良いよ、あるだけ買おう。シュペーア君、買取金額を含めて商談は君に任せるよ。もう概算請求はできてるんだろ?」
「ええ。こちらに」
書面内容を確認してサインしてから、
「それにしてもタイミングが良かった」
「何がです?」
「今、ちょうど皇国製の自動小銃を導入できないか相談してたところなのさ」
驚くべきことにこの世界線では、
・旧チェコ:ZH-29半自動小銃、ZB26系列軽機関銃
・ドイツ:FG42軽機関銃、Gew43半自動狙撃銃
・日本:チ38式半自動歩兵銃、チ38式半自動狙撃隊、チ29式半自動歩兵銃(ZH-29のライセンス生産品)、チ26式/30式分隊機関銃(ZB系列の軽機関銃)
・サンクトペテルブルグ:SG43自動狙撃銃(ZH-29ベース)
以上の銃は全て7.92㎜×57(8㎜マウザー弾)を使用するだけでなく、
元々はZB26の弾倉から始まったのだが、それがZH-29が同じ弾倉を使えるように設計された為、そこから広まったという感じだ。
この弾倉、装弾数に応じて各国で実にバリエーション豊かに製造され、それこそ10連発、15連発、20連発、25連発。30連発と5連発単位で製造されている。
ちなみに日本皇国陸軍では軽くて短い10連発は隠れての射撃や伏せ撃ちする機会が多く、狙撃という使用用途上そこまで装弾数が多くなくてもよいチ38式半自動狙撃銃向け、銃撃戦に手頃で伏せ撃ちでもある程度対応できる20連発がチ38式半自動歩兵銃向けに、分隊支援機関銃には連射するし、弾倉を銃の上側に装着するので長くても問題のない30連発がそれぞれ用意され使い分けられている。
とはいえそれはあくまで原則で、例えばシモヘイの相方小鳥遊はフランカー任務でチ38式半自動狙撃銃を使う時は20連発を好んで使う。
一般的には皇国軍では一般兵と分隊機関銃手が弾切れの時に弾倉を補完し合えるのが意義が大きいと言われている。
クルスが言っているのもまさにそれで、分隊選抜狙撃手と軽機関銃手が弾倉補完できたら、結構美味しいと考えていた。
現在、絶賛生産中のサンクトペテルブルグ版分隊支援火器”TM43(Truppen Maschinengewehr 43:43年式分隊用機関銃)”は前述のAG43自動小銃と同じ弾倉で交換ができるので、対として丁度良いと。
ちなみにAG43とTM43は、ちょうどAKMとRPKの関係になる。
「あれ? それじゃあ分隊支援火器、2種類になりませんか?」
そう聞く小野寺に、
「2種類あっても問題はないだろう? そもそも8㎜マウザー弾と8㎜クルツ弾は有効射程が違う。”300m以遠の相手には、分隊じゃ届く武器がありません”では話にならんし」
要するに分隊単位で「射程の長い軽機関銃と小銃を火力補完する分隊支援火器を装備する」と言っていた。
確かに8㎜クルツ弾の有効射程は弾頭重量と初速、空気抵抗の関係やらで300m前後(銃身の長いTM43でも400m程度)とされているが、うん。この男、元とは言えやっぱり皇国人だわ。
「ところでシュペーア君、軍需省を通じて”パンツァーシュレック”の生産、多分サンクトペテルブルグでも可能っぽいから生産許可を打診しておいてくれるかい? なるべく早く設計図や仕様書一式、出来れば現物もいくらか回してもらえると助かる」
「御意に」
ちなみに”パンツァーシュレック”は既に物語初期、41年の”メルクール作戦”の時に試作品が実戦投入されていた個人携行型88㎜対戦車ロケットランチャーで、簡単に言えば『ドイツ版バズーカ』だ。
サンクトペテルブルグでは現在、「”パンツァーファウスト”をより扱いした発展型」という位置付けで”PAG43(Panzer Abwehr Granatwerfer 43:43年式対戦車擲弾発射器)”というのも既に生産されているが、これは「パンツァーファウスト規格の弾頭を使える再装填・再使用できる対戦車擲弾発射装置」で、要するに史実の戦後武器”RPG-2”のパクリだ。
ただ、パンツァーファウスト規格の弾頭を先端に装着して使うように設計(というかこの世界線のパンツァーファウスト自体、史実の後期型と同じで弾頭を再装填して10回程度なら再使用できる)されているので板バネの付いたロック機能があるので、RPG-2と違い下へ向けると弾頭が抜け落ちるという欠陥は回避されている。
『それなりにちゃんとしたグリップや照準器がついてて肩担ぎ射撃でパンツァーファウストより当てやすく、弾頭持ち込めば何度も発射できるのに軽量』とドイツ軍にも納品され空挺や山岳、非機械化の騎兵など装備の軽量化に配慮する部隊に人気の装備だが、パンツァーファウスト同様に射程と命中精度にやや難がある。
それを補完するための提案だった。
まあ後日、『贅沢にも軽量な耐熱アルミを防盾に使った軽量なパンツァーシュレック』の噂がドイツ軍に広がり、「せめて防盾だけでも納品してくれ」と大量発注がサンクトペテルブルグに届いたのは笑い話だろうか?
ついでにパンツァーシュレックとPAG43を掛け合わせて、今度は”ロケット推進式対戦車擲弾”、要するにRPG-7モドキが生まれたりするのだが、それはまた後の話。
兎にも角にも、こうして歩兵個人レベルでサンクトペテルブルグの装備は改良され、収斂され、その威力を上げて行くのだった。
近い将来、その結果と成果を赤軍は存分に味わう事になるだろう。
うん。クルス、まだまだ盛る気みたいっすよ?(挨拶
まあ、兵数で勝てないなら総合火力で勝つしかないですからね~。
その結果、何やら歩兵用装備が、戦車や戦闘機を越えて、一気にベトナム戦争初期っぽくなってる気が……
しかもベトコンと米軍装備がなんか混じってるしw
まあ、この章ではシチュエーション的に歩兵が泥臭く活躍するシーンも出てくるかもしれませんし(えっ?
そして無茶ぶり(?)される小野寺君w
いや、存外それほど無茶じゃないかな?
割と近場(地中海)に皇国は武器集めてるし。
ちなみにサンクトペテルブルグ、レニングラード時代にどこぞの赤色どもが皇帝家やら貴族やらから略奪したものを隠匿していて、持ち出す暇がなかったのかそこそこ隠し資産が発見されたようです。
ヒトラーの計らいで没収された財産はサンクトペテルブルグの復興費用に充てられたり、こうして輸入の支払いに使われたりします。
皇国が欲しがるのは絶対、金やプラチナじゃないでしょうがw
それは次回にでも。
それでは次回もよろしくお願いいたします。
追記
ちょっとクルスの挿絵入れてみましたw
そこそこ容姿の整った細身で40代っぽい髭の東洋人って感じで。
基本、スーツがデフォですw