転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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あの赤い国家の最上層部が、いよいよ動き出すみたいですよ?





第321話 ”大祖国戦争”における大反攻計画と現状における国土確認

 

 

 

 さて、モスクワでレニングラード(・・・・・・・)奪還作戦』が最初に協議されたのは、ソ連崩壊後に公開された資料によると1943年3月の事、自由フランス軍と米国”義勇”兵団がモロッコに乗り上げた頃だったと記されている。

 

 そのきっかけは、『米軍による仏領モロッコの占拠成功』の一報だったようだ。

 ソヴィエト連邦書記長”イジョフ・スターリン”は、かねてよりドイツによるソ連への圧力提言の為、アメリカ合衆国に欧州方面へ第二戦線の構築を”厳命”していた。

 正確に言うなら、大統領の側近を始め、アメリカ政府機関、アメリカ国内の民間シンクタンク、民間平和団体、宗教関連団体、出版社などあらゆる場所に潜む国際共産主義に忠実な下僕たち(インターナショナル・コミンテルン)にだ。

 作中にも何度か彼らの存在は出てきたが……

 興味を持たれたのなら、「米国共産党調書」、「敗戦革命戦略」、「太平洋問題調査会の内情」、「第7回コミンテルン世界大会と人民戦線の詳細内容」、「ベノナ文章」などを検索してみて欲しい。

 1930年代から40年代の”史実のアメリカ合衆国”が、どんな国だったかよくわかる、非常に愉快な内容が読めるはずだ。

 

 そして、スターリンは「モロッコの占領」を第二戦線構築の足掛かりとなる最初の成功としてみなし、それを……

 

大祖国戦争(・・・・・)のおける大反攻へと繋げる重要な転換点”

 

 とすべく思案していたのだ。

 

「諸君、世界の目は北アフリカ大西洋岸へと向いている。そしてアメリカはモロッコで勝利を収めた。ドイツの走狗となった忌々しいフランスから削り取ることに成功したのだ。無論、これは十分ではない。しかし、反攻への第一歩であることは間違いない」

 

 スターリンの頭に”自由フランス”なる言葉はない。

 皮肉なことにスターリンにとってのフランスは”パリの主人”の事であったからだ。

 スターリンにとり、自由フランスとは「アメリカ人にいいように使われる道具と化した叛徒(・・)」の事であった。

 自分達が対ドイツ戦に投入している、そして都合が悪くなればいつでも粛清できる(切り捨てられる)”共産パルチザン”、補充に困らない「消耗品としての戦力」でしかなかった。

 

 粛清をやり過ぎて赤軍の弱体化は困ったものだし、これまでの戦争での赤軍の消耗も頭が痛い。

 無論、革命に燃える同志たちは日々、偉大なるロシアの各地より集い、順調に訓練もしているが……国軍と違い、消耗しても困らない戦力はあって困ることはない。

 

「そこで反撃の一手として、レニングラード(・・・・・・・・)を奪還し、反撃の狼煙としようと思うのだ」

 

”ざわっ!!”

 

 その時、ソ連最高意思決定機関に集った者達はスターリンの言葉にざわめき、戦慄したという。

 スターリンは敵国民も自国民も関係なく、ある意味平等・公平に地球上全ての人間の死者数をただの統計学上の数字にしか思ってない男だが、バカではない。

 いきなりサンクトペテルブルグを神の恩寵が働き陥落させられるとは思ってはいない。

 だが、「国家の方針と指針を示す」事が自分の役割だと理解していた。

 

「アメリカ人からの搬入はどうなっている?」

 

 スターリンにとり、レンドリースは「偉大なる共産主義が勝利する為に必要な、アメリカに居る同志からの”貢物”」であるため、贈られるのが当然な物であった。

 流石は「感謝という感情を持つのは犬畜生」と言い切る男、面の皮の厚さが自分の名前を冠した戦車の砲塔正面装甲以上だ。

 

「はっ! 北海ルートは残念なことになりましたが、ペルシャ湾ルート、渤海ルートは万全です」

 

 一人がそう報告したが、実際にはペルシャ湾ルートはかなりキナ臭くなって来ているのだが……

 現状、安定的に使えると言えるのは渤海ルート(史実の太平洋ルート)だけだ。

 米領山東半島、米領遼東半島に囲まれた渤海湾に運び込まれたレンドリース物資は、国民党実効支配領域(史実の満洲)に張り巡らされた”米国満州鉄道網(American Manchuria Train Network:AMTN)”を伝って内陸部へ輸送され、路線連結を果たしたポグラニーチナヤ駅(現在の綏芬河駅)でシベリア鉄道と接続され、物資はダイレクトにモスクワへと搬入されている。

 

「日本人は、『戦争当事国への幇助はできない』という建前で、自国領海のレンドリース船団の通行を禁じていますが、それ以上の事はしてこないようです」

 

 あえて状況が流動的になりやすいペルシャ湾ルートを深堀せずに、安定性の高い渤海ルートのみに言及する幹部である。

 スターリンの機嫌を損ねたら、いつ重鎮でも粛清されるかわからない……それが今のソ連であった。

 

「同志マツオカが随分、努力をしてくれているようですな」

 

 そうベリヤは補足する。

 マツオカと言えば当然、日本皇国外務省ソ連全権特命大使『という役職にある』、”松岡洋左(ようじ)”のことだ。

 実権ならびに皇国への影響力は、「大島駐ドイツ大使より下」といったところだ。

 何しろ、モスクワあるいはソ連に常駐している訳ではない。

 つまり、用事があればソ連に来るというスタンスではあるのだが、ソ連にとっては貴重な皇国外務省内のシンパであり、情報源でもあった。

 松岡の仕事は、「皇国の対ソ政策を自分の功績のように思わせソ連に伝えさせること」、「そして皇国がつかませたい情報をソ連に伝達すること」だ。

 要するに……情報学的な”デコイ”、あるいは”観測気球”だ。

 

「日本は敵国ではあるが、我々と対決する気は相変わらず皆無ということだな?」

 

да(ダー)。彼らはユーラシア大陸に何の興味も示していません。地中海、あるいはイタリア人との戦争で手一杯なのでしょう」

 

「レニングラードの頭目は既にドイツ籍となっており、日本と連携する兆候はありません」

 

 次々と「皇国はソ連と戦う気は無い」と肯定する重鎮たち。

 まあ、それはそれで間違いではないのだ。

 実際、今更シベリアだの中華だの朝鮮半島などに皇国は未練も他意もない。ぶっちゃけ関わるのも面倒なだけの場所だ。

 だが、かといって全く付き合いを失くすというのも危険なので、時折、松岡に全権大使という役職を与えて「様子見」に行かせていた。

 まあ、皇国に都合が悪い行動をした場合は、”事故死”する手筈になっているのは追記しておく。

 

「結構だ。ならば太平洋方面は心配せずに良いということだな?」

 

 スターリンはそう確認し、

 

「では、我々は憂いなく祖国奪還に勤しめるということだ」

 

「同志書記長、物資の備蓄はまずは一度の勝利であるのなら十分な備蓄はありますが、我々には不足しているものがあります」

 

「言ってみたまえ」

 

 スターリンが促すとその重鎮は、

 

「兵士です。同志書記長」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 発言したのは、スターリンが戦死を恐れて前線に出せなくなった「赤軍で唯一頼れる男」の”ゲオルグ・ジェーコフ”元帥だった。

 

「もしレニングラードを攻略するのであれば、ドイツの南方軍集団、中央軍集団、北方軍集団に増援を出させないように動かねばなりません」

 

 ジェーコフは地図を見やり、

 

「まず、レニングラードを奪還するためにはノブゴロドを奪取する事が肝要。ノブゴロドを放置すればいかな大群でもレニングラードの防衛線力と挟撃され摺り潰される。”金床と金槌”です」

 

 つまり、サンクトペテルブルグの防衛線力に抑えられている間、ノブゴロドの配備軍に後方を突かれるということだ。

 

「そして、その間にモスクワに戦力展開できるドイツ軍に戦術的自由選択を与えるのも悪手です」

 

「具体的には?」

 

「我々がノブゴロドを攻略に戦力を割いている間に、モスクワを包囲されたら目も当てられません」

 

 極めて真顔で言うジェーコフに周囲は息をのんだ。

 

「ノブゴロド、レニングラードに大軍を差し向けた後、モスクワを包囲攻撃されれば連携を取るのは難しくなるでしょう」

 

 ジェーコフがソフトな表現をしていることは、誰しも理解していた。

 万が一にもノブゴロド攻略中にモスクワを包囲され陥落すれば、レニングラード奪還どころではなくソ連の国家存亡に直結しかねない。

 

「特に危険なのは何処だね?」

 

 スターリンが問えば、

 

「南方軍集団なら最も戦力を集結させているヴォロネジ、続いてオリョール。中央軍集団ならスモレンスクとブリャンスク。北方軍集団ならボログダとヴェリーキエ・ルーキ」

 

「同志元帥、ヴェリーキエ・ルーキはともかく”ボログダ”を攻め落としたのは、スオミ人(フィンランド軍)ではないのかね?」

 

 正解である。

 ちなみにその時、正確にはソビエト連邦共産党中央委員会ビルとその周辺の政府関連施設に対する集中絨毯爆撃、つまり二度目のモスクワ大規模爆撃が行われている。(一度目は第二次スモレンスク防衛戦の最中でクレムリン宮殿が物理炎上した)

 

「いえ。ボログダに駐留していたフィンランド軍は、アルハンゲリスクを攻撃したドイツ北方軍集団主力と入れ替わっています」

 

 スターリンの眼前で”アルハンゲリスクを陥落させた”と言わないあたり、ジェーコフの政治センスを感じる。

 

「フィンランド軍は後方に下がり、オネガ湖/ラドガ湖のカレリア周辺に主に展開しているようです。残りはカレリア地峡とコラ半島ですね」

 

 本来、前線を受け持つのはドイツ軍なのでこれはこれで順当な配置転換と言えた。

 少しこれは解説が必要だろう。

 43年現在、フィンランド軍とドイツ北方軍集団、そしてサンクトペテルブルグ大公領管轄は、以下のような防衛管轄区分になっていた。

 分かりやすいように当時ではなく現在の地名を近い配置をまとめてみると

 

 ・フィンランド軍:ムルマンスク州、カレリア共和国、レニングラード州の一部(カレリア地峡、ラドガ湖・オネガ湖南岸)、ボログダ州の一部(ヴィテグラ、ベロエ湖付近まで)

 

 ・ドイツ北方軍集団:アルハンゲリスク州、上記のフィンランド軍管轄以外のボログダ-チェレポヴェツ-ウスチュジナ以北、ボログダ-ベレズニク-ヴェリスク以西のボログダ州、ペストヴォ-ボロヴィチ-チフヴィンで囲まれたノブゴロド州東部。ポルホフ-オストロフ以南のプスコフ州

 

 ・サンクトペテルブルグ大公領:サンクトペテルブルグを起点に東側は北からヴォルホフ-キリン-チュドヴォ-ノブゴロドが南端。南の境界は東からノブゴロド-ソリツイ-ポルホフ-オストロフ。西はエストニアとラトビアの国境

 

 大雑把にアルハンゲリスク-ボログダ-ノブゴロド-ヴェリーキエ・ルーキ-を結ぶラインの西側がサンクトペテルブルグ大公領、ドイツ北方軍集団とフィンランド軍の勢力圏だ。

 ヴェリーキエ・ルーキより南はドイツ中央軍集団の領域で、その防衛戦は南下してスモレンスクへと繋がる。

 故に最前線は北から反時計回りを描くようにボログダ、ノブゴロド、ヴェリーキエ・ルーキとなる。

 

 

 

「レニングラードに近いな……」

 

「だが、10万にも満たぬ戦力だろう? 実際、ボログダを維持できずあっさりドイツ軍に明け渡すほどだし」

 

 何やらルーシ的な視点だとそういう解釈になるらしい。

 

「スオミの軍勢は、レニングラードの機甲予備という考え方で問題ないでしょう」

 

 そしてジェーコフは議論を修正し、

 

「以上のような理由から最低でも、以上に挙げた場所に『ドイツ人が迂闊に兵力を動かせないと判断できる兵力』を駐屯させる必要があるのです。せめて、それぞれの方面軍主要前線拠点であるヴォロネジ、スモレンスク、ボログダには最低限」

 

「ですが、それら三か所に配置し、尚且つノブゴロドを攻略するには兵力が全く足りていないのです」

 

 赤い名将は苦悩を吐露したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、サンクトペテルブルグと絶対呼ばない今日も元気にルーシな皆さんでしたw
きっと、レニングラードをサンクトペテルブルグと読んだら利敵やら内通やら背信やらで粛清対象でしょうw

今回やたらと地名が出てきましたが地図とかイラストで載せられると良かったんですけど、何故か○ーグルマップやアースが上手くダウンロードやプリントスクリーンできなく、他のフリー系地図もこれといった物がないので皆様でそれぞれ確認して頂けるとありがたいです。

本分でチラッと触れましたが、現在のドイツ勢力の全体占領領域は、北から順に反時計回りに

アルハンゲリスク→ボログダ→ノブゴロド→ヴェリーキエ・ルーキ→スモレンスク→ブリャンスク→オリョール→ヴォロネジ→シャフティ→ロストフ・ナ・ドヌー→クラスノダール→ピャチゴルスク→グロズヌイで構成されるラインの西側って感じですね。

うん。ソ連、けっこう持ってかれてるなw
ただし、今生では消耗の激しくなるだろうスターリングラードやサラトフはまだ攻めてないので、損耗自体は史実よりもずっと低い水準で抑えられているようですよ?

まあ、この世界線のヒトラー(転生者)は、「無理攻めして戦争を台無しにするタイプ」では無いですし、何より無駄が大嫌いですからw

それにしてもここから巻き返さなくてはならないジェーコフ元帥、いと哀れなり。

さて、次回はソ連側のとある人物にスポットを当ててみたいと思ってます。

次回もどうかよろしくお願いいたします。

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