転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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書いておいてなんですが……いや、ホント懲りねぇなぁ~と。





第363話 主にイタリア版「懲りない面々」のせいで、事態はより愉悦……もとい。混沌な方向へ向かってゆく?

 

 

 

 さて、バチカンは皇族から若いプリンスを使者として送り出すことでとりあえずの解決をみせた。

 それもどうかと思うが……まあ、権威で釣り合いとるならそう悪い選択ではない。

 なお、お目付け役として駐”イタリア()王国”大使という名目で、外務省外交官の”日高信緑郎(しんろくろう)”を一緒に派遣することとなった。

 後に”ロック(・・・)”というなんか「東南アジアの犯罪都市に居そうな」感じの仇名が知られるこの外交官と殿下のコンビ、果たしてどのような珍道中を繰り広げられるか後世の楽しみとするとして……

 

 とにもかくにも、日本皇国本国の今村元帥率いる遣イタリア総軍とローマ暫定政権の停戦は、ローマ政権の臨時首班ピエモンテ・パドリオが降伏文書に署名することで成立した。

 それと同時にバチカンのローマ教皇庁から正式に「新イタリア国王であるアオスタ王を祝福する」という声明が出され、アオスタ公改め”アオスタ王”の権威の補強と正統性の主張を行った。

 だが、現王から正式な王位継承を受けた訳ではない(現状では禅譲どころか簒奪すらもできない)、法的には現イタリア王国はサヴォイア旧王とアオスタ新王の二人の王が存在していることになる。

 

 あー、つまりだ。

 首都のローマ政権が降伏した以上、国際慣例的に言うと今は……

 

 ”イタリア王国は新旧王朝の内戦状態(・・・・)にある”

 

 ということになる。

 はい! 日本皇国にとって”最悪の展開”の一つ来ましたぁ~。

 そう、

 

 ・首都を陥落させれば、普通は戦争は終わる……筈だった

   ↓

 ・せっかく首都を無血開城させて陥落させたのに、現国王と総帥が逃げたので戦争を法的な理由で終わりとはできない(一つの王国に二人の王)

 

 そう、上陸から僅か1週間で、「戦争の意味」が変わってしまったのだ。

 それもより面倒な方向に。

 更に、

 

『余はローマを放棄し、王都を”ミラノ”に遷都する。日本皇国に告ぐ。王権は未だに余の元に在り。かつて貴国がギリシャ王グレゴリウスⅡ世がクレタ島イラクリオンに遷都した際にそれを認めた以上、今回もまた認めなければならない』

 

 と王権を放棄していない以上は法的には未だにイタリア国王、サヴォイア王ヴァレンティーノ・エマヌエーレⅢ世がラジオ公共放送にて宣言。

 これはある種の牽制、あるいは日本皇国に対する挑発ともとられかねない発言だったが……ちなみにこの時のサヴォイア王の表情は『絶対に王位は譲ってやるもんか!』と覚悟ガンギマリ状態だったらしい。

 とりあえず、通称”サヴォイア朝ミラノ・イタリア王国”が歴史に忽然と誕生したのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 さて、賢明な読者の皆様なら、エマヌエーレⅢ世やその裏側に居るムッソリーニが何を考えているのか察せられたのではないだろうか?

 

 そう、端的に言えば”時間切れ(タイムアップ)”だ。

 いくら日本皇国でも50万もの大軍勢をいつまでもイタリアに上陸させておく訳にはいかない。

 早ければ今年中、遅くとも1年以内にはイタリアの状況がどうあれ撤収の話が出てくるだろう。

 しかも日本人は欧州の基準からは考えられないほどハーグやジュネーブなどの国際戦時条約を律儀にあるいは病的に遵守し、英国人のような多連装舌を実装していない。

 つまり、間違っても非武装の民間人がわんさかいる都市居住区を空爆したりしないだろうし、陸兵による住民虐殺など以ての外だ。

 ナポリ郊外の戦いを見てればそれがよく分かる。

 ならばミラノの中心地にある”スフォルツェスコ城”を新たな王城と定めれば、そう迂闊なことも強硬なこともしないだろう。

 確かに皇国軍の「ルールを遵守する表の性質」を鑑みた、厭らしくも上手い生存戦略である。

 

 無論、エマヌエーレⅢ世もムッソリーニも日本人が全部イタリアから出て行くとは思ってないし、イタリア全土奪還は難しいとも思っていた。

 だが、首都のある中央部と貧乏な南部はくれてやるから、「近代工業化に成功した豊かな北部」は領土として抑えておきたいというのが本音だ。

 かつてのミラノ公国版図とまでは言わないが、具体的にはミラノを中心にアドリア海側からヴェネツィア、パルマ、ジェノヴァ、トリノを結ぶラインの内側だ。

 19世紀の”イタリア統一運動(リソルジメント)”で祖国統一を成してから100年も経たずに再分裂するのは業腹だが、現状では致し方なしだ。

 ちなみに英国人の手に落ちたシチリア島のことはミラノ政権の頭からはすっかり抜け落ちていた。

 単に今すぐ英国人と交渉するのを嫌がっただけかもしれないが。

 あるいは国際戦時法を盾にとれば、日本人なら丸め込めると考えたのかもしれない。

 

 という訳で彼らが主張する「ローマ放棄後の防衛線(名目上の国境線)」は、サンマリノ⇔フィレンツェのライン。

 このラインとヴェネツィア⇔ジェノヴァのラインの間が言わば緩衝地帯になるという思惑だ。

 そこで臨時司令部をローマではなくとりあえず、ナポリに開いた遣イタリア皇国軍臨時総司令部(最終的にはローマに移動予定)の総司令官である今村は、とにかく治安維持を最優先とし、海軍と空軍の航空隊で制空権確保(エアカバー)を行いつつサンマリノ、フィレンツェ更にはボローニャに陸軍先遣隊を、ついでに港湾都市のリボルノとピサに海軍陸戦隊を急行させた。

 

 そして、お約束の上記都市の「無防備都市宣言」と在イタリア軍の投降。

 いや、ローマが降伏してるから当たり前と言えば当たり前なんだが……

 そして、同時に「イタリア新国王アルヴァトーレ・アオスタに恭順と忠誠」を宣言し、現地イタリア軍は”イタリア解放軍”に書類上は合流してそのまま市内と周辺の治安維持に勤しむことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがしかし……旧王の発言で刺激されたのは、皇国軍やイタリア解放軍だけでは無かったのだ。

 

 まず前提を言おう。

 ムッソリーニ政権とムッソリーニの古巣であるイタリア社会党や新進のイタリア共産党と不穏な状態にあると以前に記した事があるが……

 どういう訳か、「日本皇国軍ならびにイタリア解放軍の支配地域」では意外なほど大人しかったのだ。

 実際、皇国軍は共産パルチザンの暗躍に備えて対ゲリコマ用の不正規戦・非対称戦即応部隊を準備していたが、全く出番が無かったわけでは無いが、想定していた出動数よりずっと少ない出番だった。

 

 だがこれは、明確な理由がある。

 まず、各地に張り付かせていた共産党や社会党の間諜が目の当たりにしたのは、皇国軍の圧倒的な火力。

 イタリアの正規軍を苦も無く排除してゆくその姿に戦慄を覚えた。

 ぶっちゃけ、装甲戦力なんて持ち合わせていない自分達がどう足搔いても対処できる相手では無かったのだ。

 次に戦慄したのは、皇国曰く『帰還事業』。

 正規戦が駄目なら皇国の弱点とされていた「民衆を不安や不満を煽って暴徒化させる」事を画策していたのだが……これも日本人が「額面通りに海外に置き去りにされたイタリア将兵を帰郷させている(お土産付き)」で水泡に帰した。

 国に見捨てられた家族との再会を喜ぶ大衆を前に、間諜の身バレリスクと引き換えに扇動したとしても効果が薄いことなど馬鹿でもわかった。

 皇国軍が「暴徒鎮圧が弱点」とされていたのは、「その経験がない」事が根拠とされているのだが……そもそも「民衆暴動による治安悪化が起きないように尽力してきた」のなら経験の積みようがない。

 

 そしてラスト、屠龍改と零式改対地掃射機によるポテンツァ空襲の時、実は皇国軍の空爆後のイタリア軍の動向を探らせるべくゲリコマ1部隊をポテンツァ周辺に潜ませていたのだが……見事に巻き添えを食った。

 皇国軍にとっては撃った意識すらないだろうが、空襲の規模と性質から考えてイタリア軍の傍に居すぎたので流れ弾が飛んできたと言うべきだろう。

 

 だが、相手は襲撃機と対地掃射機。流れ弾でも飛んでくるのは1発ではなく鋼の集中豪雨だ。それも当たれば人間など一撃で木っ端みじんの。

 九死に一生を得て脱出できたごく少数の人間はそのほとんどが精神の均衡を崩し、例え体は無事だったとしても心に消えない傷を負った。

 まあ、満足に訓練も受けていない人間の眼前で人間が肉片となって四散すれば、PTSD大量生産にもなろう。

 

 しかもその惨状を目の当たりにする最中、「北アフリカやバルカン半島でイタリア人やその他を数百人は射殺している狙撃手」がイタリアに来ているという噂が伝わってきたのだ。

 

 ここで死んだ目になったイタリアン共産党&社会党幹部は、『皇国への抗戦拒否』の方針を決定した。

 金持ちをリンチにかけたりと血生臭いことには慣れてるグループではあったが、それはあくまで「マフィアの抗争」レベルの話であって、「機械的に大量殺戮」されることなど誰も経験していない。

 

 

『とりあえず日本人の支配地域は放棄。全土奪還は今後の課題として、まずは北部に我らの戦力を集中させ、堕落した国王と奸臣ムッソリーニを討つべきだ』

 

『異議なし! 我らが優先すべきは日本人との戦争ではなく、ファシスト共を打倒し、愛すべきイタリアに社会主義革命を起こし、更なる飛躍を目指す事だ!』

 

『元々、日本人も国王とムッソリーニを討つため動いている! 我らの行動は受け入れられるだろう!』

 

『そうだっ! 我々が起こすのは戦争ではなく”革命”なのだ! まずは北部を我らが社会主義共和国としようではないかっ!!』

 

『『『『異議なしっ!!』』』』

 

 いやそういうのを日本語では”火事場泥棒”と言うのだが……ちなみに日本人がとても嫌悪する行為である。

 結局のところ、彼らは日本人というものをよくわかっていなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、はい……イタリア”旧”国王は、好き放題言い始めるし、イタリアン・アカ(”赤い旅団”の先輩か?)は皇国そっちのけでおっぱじめようとするわで、ホント混沌なるイタリアが現出しましたw

いや、ホントにどうするんだコレ?

ただ旧王党派も伊アカも誤解してるけど、物理的にも…政治的にも面倒くさくなるからやりたくないだけで、別に皇国は不正規戦・非対称戦、都市ゲリラ相手の闘争が苦手とは一言も言ってなかったりするんですよね~。
いや、まあやりたいのならドウゾドウゾだけどw

ただ、あんまりこすっからいことすると……
そもそも、プリンスが向かってるって意味を解ってるんでしょうかねぇ?

さて、次回はもしかしたら新キャラが出るかも?
それでは次回もよろしくお願いいたします。





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