転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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あーあ、ついにやっちまったよ……






第370話 致命的な破綻

 

 

 

 さて、その夜の事……

 

「「命の奪い合いで滾っちゃった♡」」

 

 どうやらヘーゼルとグレンダ、どうやら発情中らしい。

 戦地から後方へ戻ってきた兵士が、娼館通いするのと似たような心理だろうか?

 いや、なんかそれとは本質的に違う気もするが……興奮してるのは確かだろう。

 しかも片割れはしっかり短く巻いて、白と黒の色違いの下着と準備ばっちりだ。

 

 

【挿絵表示】

「「マスター、私たちも”扱い慣れたお気に入りの道具(・・・・・・・・)だよね? なら、ちゃんと”メンテ”して?」」

 

 どうやら、信緑郎の”本番”はここかららしい。

 まあ、「良い道具を所有する喜び」というのがあるのなら、道具側からの「所有される悦び」のもあるのだろう。きっと。

 少なくともヘーゼルとグレンダは、恋人同士のような”人間同士の脆弱な関係性”は所望していないようだ。

 うん。やっぱり予想通り”重かった”なぁと。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 さて、今回の一件は大きな波紋を呼んだ。

 ロックや双子の行動が問題視されたのではなく、『親王殿下の護衛』が出張る羽目になったことが殊更問題とされた。

 だが、それもわずかな時間のことだった。

 何故なら……

 

「ここは地獄だ……」

 

 ヴェネツィアに辿り着いた北イタリア出身の新イタリア軍兵士はそう呟いたという。

 

「「バカ共が……好き放題やりやがってっ!!」」

 

 パルマでは新たな愛銃片手に下総兵四郎が、ジェノヴァでは”ZM42小隊汎用機関銃”片手に舩坂弘之が異口同音にそう吐き捨てた。

 そういうほど、三都市はしっちゃかめっちゃかだった。

 

 一斉に大規模武装蜂起した共産ゲリコマが、周囲に市民が居てもお構いなしに黒シャツ隊や旧王派軍人だけでなく、各都市の治安部隊にまで殴りかかったのだから当然であった。

 戦闘シーンを書くよりも数字を示そう。

 ”ローマは一日にしてならず作戦(Operation Rome wasn't built in a day)”の発動からこの蜂起が起きる前まで、皇国軍との戦闘で戦死したイタリア軍人は10万人は越えたが15万人には届いてなかった。

 まあ、独ソ戦に比べれば恐ろしく少ないが……あれだけ降伏が相次げば、無理なからぬ数字であろう。

 無論、行方不明者や戦傷者はもっと出ている(不思議と他国に比べてMIA認定の人間の生存率が高い気がするが……)のだが。

 市民をはじめとした一般人・非武装者の被害はかなり低い。

 これは皇国軍が都市部、特に民間人居住地への攻撃を意図的に避けていた事が大きい。

 この戦争の意義の一つは「帰還事業」であり、その大義名分がある以上、「兵士の故郷を吹き飛ばしてどうする」という事だ。

 基本的に民間人の被害は、軍事施設や戦略目標に居合わせた労働者が主だった。

 

 しかし、この三都市+ローマ蜂起での犠牲者数は30万人を越えた。

 そこには無差別テロじみた攻撃に巻き込まれた多くの市民、民間人が含まれていた。

 共産ゲリコマ、黒シャツ隊&旧王派、都市自警団の三つ巴ともなればさもありなんだが、無秩序に拡大し拡散した遭遇戦じみた都市部での内戦は、あまりにも夥しい流血と死者を生み出した。

 

 それは都市戦というよりは、より世紀末的な情景だったという。

 故に日本皇国軍がとったのは、緊急事態的な措置。

 

「武装解除に応じぬ者は、全て敵対勢力と見做し討伐せよっ!!」

 

 出されたのは人格者で知られる温厚な今村とは思えぬ、檄文ともいえる激しい命令だった。

 事態はそこまで悪化していたのだ。

 

 当然のように真っ先に応じたのは救援を出した側と思われる各都市の市長側に付いた自警団だった。

 聞けば自警団の中核となっていた面子は、かつて暗殺されたバルボ元帥のシンパであり、ムッソリーニにより軍部から放逐された面々だったらしい。

 反ムッソリーニではあるが、非共産系のパルチザンと言ったところだろうか?

 

 彼らのある程度は組織だった抵抗、奮戦があったからこの程度の被害で済んだと言えるのだが……それでも、夥しい市民の犠牲者が出たのは事実だ。

 そう、言うまでもなく皇国の「民間人の被害を極力減らす」という戦争方針は脆くも崩れ去った。

 

 確かに皇国軍がイタリア市民を殺して回ったわけでは無い。

 また、市民を撃つ共産パルチザン、いや共産ゲリコマの姿はバッチリ画像に収められたし、黒シャツ隊残党の出鱈目な戦いもまた同様だった。

 それを討伐する皇国軍は、野蛮かもしれないが、それでも正義は主張できるかもしれない。

 だが、皇国の戦争計画は明らかに狂ってしまったのだ。

 そして、それはやがて修正不可能なほどに軌道を外れてゆく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!!? ミラノが陥落して旧王と王子が公開処刑(ギロチン)で首跳ね飛ばされただぁっ!!?」

 

 近衛の絶叫が、首相官邸に木霊した……

 

 

 

 さて、少し状況を整理しよう。

 イタリア社会党・共産党連合が起こしたヴェネツィア、パルマ、ジェノヴァの大規模攻勢と、王都ローマでの連続多発騒乱は、大方の予想通り陽動作戦であり、その対処にまだ未熟なイタリア新政府と、所詮は進駐軍である遣イタリア皇国軍が対処に追われている間に本命である旧王が示した臨時王都である『本命ミラノで強襲作戦が敢行された』というのが大まかな流れだ。

 

 イタリア赤色勢力にとって乾坤一擲の大博打であり、予備兵力まで根こそぎ動員した大作戦だった。

 故にムッソリーニを出し抜いてサルデーニャ王国時代の旧王都、サヴォイア家の古巣である”トリノ”へ脱出しようとした旧王と王子を網を張って絡め取ることができたのだろう。

 

 更に救いがないのは、王たちの捕縛の直接的な原因となったのは、”側近の裏切り”であったことだ。

 その理由というのも、「家族がアフリカに置き去りにして戦死させられたこと」に対する怨みであり、側近に潜り込み復讐の機会を窺っていたところに赤色勢力から接触があり、情報を売り渡した……という顛末らしい。

 因果応報と言えばそれまでだが、民衆からの人望を失った王家というのは何とも哀れなものだ。

 

 だが、当然のように話がそれで済むわけはない。

 王と王子、そして物のついでにムッソリーニとその愛人を公開処刑したイタリア社会党・共産党連合は、「ヴァレンティーノ・エマヌエーレⅢ世の討伐と同時にかの王が治める”サヴォイア朝ミラノ・イタリア王国”の滅亡(・・)を宣言し、同時に自分達が実効支配するミラノを中心に西のトリノ、ピアチェンツァ、プレシア、ベルガモ、コモを結ぶラインを現イタリア王国より独立させ、新たに”北イタリア社会主義共和国”の建国を宣言したのだ。

 

 はっきり言おう。

 何とも暢気な話である。

 

 イタリアの赤色勢力は、「フランス革命よろしく民心を失った王を倒し新たに共和国を打ち立てた」つもりのようだが……

 だが、日本皇国は一度たりとも”サヴォイア朝ミラノ・イタリア王国”という国家を承認したことはない。

 法的に禅譲していない以上は王権は維持していたが、だが、既にエマヌエーレⅢ世は玉座を失った身であり、実質的な現イタリア国王はアオスタ王であった。

 

 つまり「イタリア本土に別の国家は存在しない(・・・・・)」というのが公式見解なのだ。

 言い方を変えれば、エマヌエーレⅢ世は「生きている限り、退位を求められているイタリア王」である事は変わらないのだ。

 だからこそ、日本皇国はこれまで過剰なまでに「紳士的な戦争」を装っていたのだ。

 「力任せに簒奪した」という悪評を新たなイタリア王アオスタに付着させないためにだ。

 

 繰り返すがエマヌエーレⅢ世は、「生きている限りはイタリア国王」だった。

 だが、彼らは公衆の面前で、言い逃れようもなく殺害してしまったのだ。

 王も、王位第一継承権のある実子の王子も。

 

 そして、イタリア王国新王、法的には暫定国王のアオスタは元々が「サヴォイア王家の分家、公式に王族に数えられる王位継承権を持つ公爵」なのだ。

 つまり、サヴォイア直系の王の血筋がこのような形で途絶えた以上、「正規の方法で王位継承」が確定したのだ。

 

 だが、それは同時に「日本皇国による対イタリア戦争計画”ローマは一日にしてならず作戦(Operation Rome wasn't built in a day)”の致命的破綻(・・・・・)を意味していたのだ。

 

 だが、イタリア赤色勢力は、未だに「自分達が一体何をしでかしたのか?」を理解していなかった。

 日本皇国は作戦終結の宣言をしていない。

 その中で彼らはよりにもよって「王殺し」をしてしまったのだ。

 それも”皇国から獲物を掠めとる”形で……

 

 事態はどうしようもないほど悪化していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で……

”ミラノのギロちゃん”
【挿絵表示】
※なお画像は「ギロチンの妖精」をお題にしたAIパイセンのイメージです。

がご登場と相成りました。
ええ。事態は思いっ切り面倒臭くなりましたよ。これ以上ないほどに。

近衛首相:「おまっ……よりによってフランス革命ゴッコすんなやっ!! これ絶対、”陛下”からの呼び出し案件だろ……」

まさかの”旧王と王子のpナレ死END(?)”で血の気が引いた模様。
なんか、イタリア戦が始まってから、ストレスマッハなお労しやの近衛w
冒頭の微エロシーンは、ミスリードを誘うためのギミックだったり。
ちなみにこの双子、

「「女として愛されるより、道具として所有されて愛でられる方が良いよね♡」」

というタイプの重さ。イタリアらしく在り方としては自発的”義体っ娘(ガンスリ)”系かな?
「使えなくなった道具は、所有者の手にによって処分される」という最後の瞬間を想像してうっとりできるタイプです。

兎にも角にもイタリア篇、ラストスパートに入る予定ですが……
実は次話はまだ一文字も出来上がってなかったり(泣

というか、「20kgの荷物を抱えてエレベーターもエスカレーターもないビルの階段を4階まで2往復+6時間ほぼ立ちっぱなし+その他の力仕事」で土曜日は全身筋肉痛で死んでました(号泣


この体たらくなので、気長にお待ち頂ければ幸いです。



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