転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
相変わらず、内容に色気はありませんがw
さて、遥か極東の弓状列島で近衛が黄昏ていた頃……
「まあ、前世から言われていた事だが、”テロとの戦争”ってのに明確な終わりはない。確かに一つの組織自体は壊滅させることはできるが、必ず残党は出る。そして、その連中がまた別の名前で、似たり寄ったりの組織を作ったりするんだな」
「えっ? それって今生でも、”赤い旅団”みたいなのが、ワンサカワンサカ出てきて
場所はローマ、”トレヴィの泉”の背景(?)として有名な今はマリアンナと和仁の居城でもあるポーリ宮殿。
厳密に言えば、二人のプライベート・スペースであるリビングの一つだった。
「ワンサカって懐かしのレナウンCMソングじゃないんだから……いや、相対的に考えると、未来の歌なのか? アレ」
まだ婚姻届提出してないので、今のところは親王殿下の和仁は、転生者らしいパラドックスを味わっていた。
「まあ、”赤い旅団”を名乗るかどうかは今のところわからんが、とりあえず”類似品”は今後も出てくるだろうな。なんせ元祖で本丸のソ連が崩壊した後までその手の連中が残ったくらいだぞ?」
「うへぇ~」
心底嫌そうな顔をするマリアンナだが、
「ただ、前世より数を抑制すること自体はできる。マリアンナ、アカ組織の指導部にいる思想的に修正不可能なほどガチのコミュニストってのは、実は知識人階級や富裕層の”高度教育”を受けた者が多いってのは知ってるか?」
「えっ? そうなの?」
「ああ。統計的にも出ているが……例えば、内戦でカンボジア国民の1/3を殺したって言われてる”ポル・ポト”って知ってるか?」
「えっ? 前世の話? それなら、まあ、詳しくは無いけど現代史で習った記憶があるわ」
和仁は頷き、
「あの男、自称”貧しい農民出身で、貧富の差の不条理を正すために共産主義に目覚めた”的な発言してるけど、実際のポル・ポトの実家ってのは『12ヘクタールの土地(9ヘクタールの水田と3ヘクタールの農園)を所有する中々裕福な中産階級(カンボジア全体のレベルから見ると十分富裕な自作農の規模)で、当時カンボジアの宗旨国だったフランスに留学し、共産主義に傾倒したのはその留学中』さ。立派に”ブルジョワジー”なんだよ」
この時代の日本でも似たような話があり、例えば(作中の近衛の後ろ盾として出てくる明治の元勲”西園寺”翁のモデルの)西園寺公望の孫”西園寺公一”が、「イギリスのオックスフォード大学へ留学中にマルクス主義に傾倒し赤化」し、父からコネで宮内省入りを勧められたが「マルクス主義者である」として頑として拒絶、その後にソ連のスパイだった朝日新聞記者・尾崎秀実と親交を持ちゾルゲ事件に連座して逮捕、有罪となり、公爵家を廃嫡となるという筋金入りだ。
まあ、そんな話をしなくても、冷戦華やかし60年代、学生運動が最も激しかったのが東大や京大なんかの最高学府やそれに近い官僚が就職先に入るようなエリート養成大学で、所謂「頭でっかちが思想を拗らせて革マル派や中核派なんかの運動に傾倒する」というのが当時はありきたりな話だった言うと分かりやすいだろうか?
「だが、末端の構成員となると話が変わってくる。”富の公平分配”みたいな耳触りの良い表層的なことは知っていても、小難しい理屈なんて知らない者が大半だ。そんな連中がどうしてアカになるのか……根本的に言えば、『金持ちに対する妬ましさ』さ」
「えっ?」
「あのな、”赤色勢力組織”の大多数を占める労働者階層ってのは被雇用階層であり少なくない人間が中産階級以下の出身、もっと言えば貧困層。まともな教育を受ける機会がなく安い賃金でこき使われるか、あるいは農民なら土地を持たない搾取される側の小作人だったりする。んで、そういう階層は得てして『自分達の労働で裕福な生活』をしている富裕層を妬むし、それを……貧富の格差を容認している社会を不条理だと考えるようになる。まあ、それが『現状の社会に対する鬱憤や不満』が憎悪に転換するって訳だ。社会主義や共産主義の標榜する革命思想が、”階級闘争”に終始するってのはそのあたりが理由だろうな」
そして、『社会主義・共産主義こそが人間にとっての理想社会』と信じる思想拗らせた弁の立つインテリゲンチャの指導者が、『労働者による公平・平等な社会の実現』を囁き扇動するってのがプロレタリアート革命、要するに”赤化”のお決まりのパターンだ。
「はっきり言えば、人間は有史以来本質的な意味で平等も公平も実現できた試しはない。当然だよな? 生まれた時点から公平でも平等ではないんだ。生まれた国、地域、家、個人が持ってる資質に能力や才覚、あらゆる先天的要素に後天的要素……どれも同じ物は一つもない。そいつを流血量で修正しようってのが、革命思想ってもんなんだが」
毛沢東語録によれば『銃口から政権が生まれる(槍杆子裡面出政権)』、『造反有理(「造反に道理あり」、「謀反者こそ正義」)』、『革命に罪はない』であるらしい。
まあ、「現状の秩序」、あるいは”法治国家という概念”その物を真っ向から否定・拒絶してるのは間違いない。
基本、暴力主義的な革命を推奨してるのだから、さもありなんだ。
「俺はこの世に格差がある以上、あるいは人間の感情から嫉妬ってのが無くならない限り”あの手”の連中はいなくならないと思ってるが……まあ、是正程度ならできなくはない」
「どゆこと?」
「プロレタリアート革命、っていうか大概の革命の参加者の妬みよりもっと根っこにある根源は、『
「……重いわね」
「そうか? 反社会的勢力に身を投じる『訳アリ』な連中と、方向性が違うだけでその本質においては大差ないさ。まあ、だから地味で地道なな上に長期的な政策によって”赤化ゲリコマ予備軍”を随分と減らすことができる」
「あー、なんか答えが見えてきたかも」
和仁は苦笑し、
「雇用の創出による失業率の低下、大衆全体での所得引き上げなんてその典型だ。知ってるか? イタリアってのは、21世紀に入っても”最低賃金”の法的規定がなく、各業界の労働組合と使用者団体が結ぶ”団体労働協約 (CBA)”を基にした”業界ごとの契約(CCNL)”で職種別の最低賃金が決定される……なんて具合だったはずだ。要するに法的制約がないせいで年がら年中”春闘”やってるようなもんさ。これじゃあ、労働者環境の改善もままならないのも頷ける」
「まあ、確かに”明日に不安”が無いのなら、もしくは”守るべき今”があるなら、頭でっかちな思想を拗らせない限りはそうそう”出たとこ勝負の暴力主義革命”なんて博打はうたないか……」
和仁は頷くと、
「人間ってのは、とりあえず今日を心配なく過ごせるなら、大抵の日常の不満は飲み込めるように出来てるんだ。まあ、それが適応力ってもんだと思う。そして現実に落とし込んで問題となるのが、北部イタリアの復興なんだよなぁ~」
「ああ、ミラノとか特にそうだけど、イタリアの工業地帯って北に集中してるから……」
「ああ。ただ、足掛かりがない訳じゃない。ムッソリーニに暗殺されたバルボ将軍の遺産ってのがあってな」
「ねえ、それって”
「そうだ。まあ、技術開発やらのエンジニア集団はサンクトペテルブルグに避難して飛行機やらを作っているが、連中のネットワーク自体はイタリア国内に残って、”北伐”でも暗躍したらしいんだ。なんで接触しようと思ってる」
「またなんでよ?」
「あー、どうやら高確率でバルボ将軍ってのは俺達と同じ”
「えっ? もしかして”アエタリア・マフィア”って、『転生者の互助会』みたいな要素もあるってこと?」
どうやらマリアンナは単に転生者というだけでなく、地頭もかなり良いっぽい。
「ああ。基本、秘密結社みたいなもんだから接触するのもそれなりに大変だろうが……やる価値はあると思う。その先にあるものを考えるとな」
「”その先”?」
マリアンナの疑問符を浮かべた表情に
「俺は基本的に”ヒコーキ屋”だ」
と極めて真面目な顔で返す和仁だったが……
「いや、皇国親王でしょ? 今はまだ」
「混ぜっ返すなよ。まあ、国外組の預かり元のドイツやサンクトペテルブルグにもお伺いを立てにゃならんが……イタリア航空産業の復興、それも軍用機よりどちらかと言えば民間機を中心とした開発・製造を北イタリアに根付かせたいたいなって思ってな」
やはり前話で近衛首相が懸念していた通り、この皇子様は中々に規格外な存在らしい。
真っ赤な流血は伴わなかったけど、アカい話題の二人でしたw
うん。なんか和仁、割とトンデモネー感じのイタリア復興プラン考えてね?
それはともかく、「何故、イタリアが赤化してしまったのか?」のおさらいみたいなエピソードでした。
なんせ和仁は、マリアンナ娶ると”サヴォイア公爵”として、アオスタ王を補佐して戦後イタリアの面倒を見る側になるし、マリアンナはその妻なのだから、現状を振り返り反省して将来の展望につなげる、「今よりずっと民衆が”食える”イタリア」の為に必要かな~と。
えっ? 和仁は”和平の象徴”、”お飾り公爵”じゃないのかって?
HA-HA-HA、生体CCV能力を持つ、皇国にいた頃には「女の柔肌より鋼の翼が好きな変人殿下」が、そんな立場で大人しくしてる訳じゃないですか?
本人はきっと、皇族としての権威や皇国空軍技術開発部のコネを遠慮なく使う模様w
さて、次回は今回の続きの会話イベント、和仁の具体的な戦後復興プランが明らかになるかな?
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