転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
実は彼、厳密には軍人ではなく……
「貴仁兄、
「種子島? 鉄砲伝来と宇宙センター?」
「”
まあ、この過去が”この世界線”での事実、あるいは史実であったかどうかは定かではないが……だが、この世界線の戦国時代、後の徳川家康は元服の時、信長の妹であるお市の方と婚姻して信長から一文字とり、”信康”を名乗っていた事も純然たる事実である。
また、信康時代に「幼子達を集めて一か所に放尿させ、そこから”硝石丘法”を用いて大量の硝石精製に成功し、戦国時代に織田鉄砲隊の原動力となった」という記述が、この世界線の”信長公記”に思い切り記載されているのだ。
実際に集めたのは家康ではなく奥方のお市で、集められた幼子たちは実は織田家にゆかりのある武家や商家など身元がしっかりした家の次女以下の子供であり、同時に側室候補も兼ねていたとする資料もある。
驚くべきはフリントロック式の銃が銃器最先端の筈の欧州で登場するのは史実では17世紀に入ってからで、”硝石丘法”に至ってはフランス革命の頃に開発された精製方法であり、もし「幼女の尿から硝石を作った」のが事実であるのなら、高確率で家康は転生者だったのだろう。
蛇足ながら家康とお市は生涯にわたり大変仲睦まじく、信長の上洛と天下統一を見届けながら史実よりも少しだけ寿命が短かったのは、お市に先立たれ、気落ちし寝込むようになったからだと言われている。
ただ、家康の遺した数々の発明は、遷都により尾張幕府から江戸幕府になっても織田幕府を支え続けたとされている。
「ついでに宇宙センター、ああ、公民含めたロケット発射台を複数備えた宇宙開発基地の建設が予定されているのは、今生では種子島じゃなくて”
ちなみに宇宙センターが種子島になったのは、宇宙センターの設営が1960年代、つまり”沖縄返還前”だったことも理由だ。
これは未来予測になってしまうが、”この世界線”では沖縄は確かに「基地の島」と呼ばれることもあるかもしれないが、それは米軍基地ではなく「
四半世紀先の沖縄県人にとり、ロケットの打ち上げ風景は日常に溶け込むかもしれない。
「えっ? じゃあ種子島の、えっと”噴進飛翔体研究所”っていうのは……」
「ありていに言えば……科学技術省の看板借りてる『皇国陸海空三軍統合の将来
「えっ!?」
史実でも、1930年代より陸海軍がそれぞれ誘導弾の研究を行っていたが、戦局悪化もあって陸海軍の垣根を超えて技術のすり合わせをしようと”陸海技術運用委員会”が設立され、その中で甲乙丙の三種が試作されたのが”イ号一型”誘導弾シリーズだ。
しかし、設立されたのは1944年9月の事……時すでに遅しだった。
しかし、この世界線では、欧州で二度目の世界大戦勃発を鑑みて、1939年に陸海空の誘導弾開発部門より研究者や開発者を選抜抽出し、種子島に設営された射爆場付の大規模研究・実験施設に招集されたのだった。
それが、”噴進飛翔体研究所”の正体だった。
「そこの技術統括責任者をしてるのが、貴仁兄ってわけ。成果は結構出てるんだぜ? 史実では未完成だった”イ号一型”誘導弾シリーズは、甲乙は誘導方式こそ前世と同じ無線式の”MCLOS(Manual Command to Line Of Sight:手動指令照準線一致誘導方式)”だけど、液体燃料じゃなくて扱いやすい固体燃料型だ。前世と違うのは、甲乙共に量産性を考えて誘導装置を含めて可能な限り部品共用性を持つように設計されている。ただ大きく異なるのは発射プラットフォームが甲型が”空対艦”、乙型が”艦対艦”を示す事か? まあ、どっちも試験配備はもう始まってるよ」
どうやら初期作戦応力は既に獲得できる水準の完成度に至ったらしい
中身は別物だが、重量だけは史実準拠で甲型は1400kgと重く、対して乙型は半分以下の680kg(一般に航空魚雷は800kg)程度なので、このような開発コンセプトになったのだろう。
「丙型は前世の”音響感知追尾”型じゃなくて、ケ号爆弾(赤外線追尾対艦誘導爆弾)の
驚いた事に、おそらくは世界初の赤外線追尾兵器”ケ号自動吸着弾”も、既に開発されているらしい
「え~と、兵器はそんなに詳しくないけど、要するに『日本の未来兵器を開発する秘密研究所の所長さん』がお兄さんって事でおk?」
「その認識で間違ってない。まあ、皇族が所長を務めてるから”お飾り”だと誤認されるのも、皇族が居座ってるのだから警備が厳重でも不思議じゃないと思われるのは都合がいいしな」
まあ確かに機密保持というより皇族がいるから厳重警備という事にした方が、他国の”無駄な注目”は集めないだろう。
「その言い回しだと、お飾りじゃないってことよね?」
「ああ。貴仁兄は昔から”神童”の二つ名を持ってたんだよ」
「えっ? ”
※”アマデウス”の本来の意味はラテン語で『神の寵愛を受けし者』
「いんや。貴仁兄にこれといった”異能”は顕現してなかったはずだ。むしろ、異能が無いのにそこまでできるのが凄いというか……俺たち五人兄弟で一番性格的にも物理的? いや権能的にぶっ飛んでるのは文字通り”
「えっ? 『ロケットマンだベイビーっ!!』って奴だっけ?」
「そりゃ”黒い珊瑚礁”の方。そういうのは
飛ぶ方じゃなくて飛ばす方。まさかアポロ計画でも狙っていたりするのだろうか?
「ん? ロケット? ミサイルじゃなくて?」
どうやらマリアンナも気が付いたようだ。
「あー、貴仁兄はミサイル全体というより推進装置の方かな? 本当は大陸間弾道弾より月ロケット、トライデント潜水艦発射弾道よりH1ロケット作りたいタイプ。まあ、実際にその研究もやってるみたいだけど」
弾道弾と衛星打ち上げロケットは、使われている技術は近似値(迂遠表現)だったりするので……
「だけどミサイル開発の方には……まあ、兄貴以上の”神童”、いや天才というよりむしろ”鬼才”がいるんだよ」
「ちょっと穏やかじゃない感じ?」
「そうでもない。貴仁兄の”
「へっ?」
☆☆☆
「榛名宮貴仁親王殿下の奥方様ってこと? 確か……」
「”榛名宮
「えっと、確か全然メディアに顔を出さない事で有名なお妃様だっけ?」
何やら妙な評判が……
「まあ、間違った評価ではないか。メディアに出ないのは貴仁兄も一緒だけど。基本的に夫婦そろって種子島にこもったきり出てきやしないから」
「……ねえ、それって公務とか大丈夫なの? 主にインペリアル・ファミリー的な意味で」
「”皇族として己の果たすべき役割を果たせ。平時には平時の、戦時には戦時の”ってのが兄上の方針だし。まあ、今の皇族公務は種子島で完結してるってことだろう。俺はそれ以前の基本的な皇族の役割ってのを放り出してヒコーキにのめり込んでいた訳だけどな」
ちなみに基本的な皇族の役割=婚姻だったようだ。
「そして、貴仁兄は奥方、ああ、もういつも通り”希望ちゃん”でいいや。希望ちゃんも種子島に連れ込んでるんだよ。名目上、貴仁兄の内助ってことだけど、実態は大幅に違う」
時代背景的な物もあるのだが……史実の大日本帝国より遥かにマシとは言え、日本皇国においても女性の社会進出はまだまだだ。
依然として「女性は妻となり外で働く夫の帰りを待ち家を守ることが幸せ」という価値観が根強い。
「貴仁兄の功績になってる次世代誘導弾の計画・開発のトータルデザインを練っているのは実際には希望ちゃんだよ」
「ちょっと待って……えっ? その親王妃、希望ちゃんって何者なのよ?」
「ああ、そのあたりは割と秘匿されてるんだっけ。まあ、馴れ初めが馴れ初めだから仕方ないけど……」
和仁はコホンと咳払いして、
「希望ちゃんの旧姓は”糸川”って言うんだけど……聞いたことない?」
マリアンナは少し考え、
「……えっ!? もしかして”日本の宇宙開発・ロケット開発の父”って呼ばれていて、小惑星の名前にもなったって前世のニュースで聞いた記憶が微かに……」
和仁はサムズアップし、
「そう、その糸川一門だよ。それもとびっきりの”異端”だ」
貴仁兄だけでなく、その奥方(皇弟妃)も大概みたいですよ?(挨拶
いや、勿論貴仁親王殿下も大概なんですが。色々と成層圏突き抜けてるしw
とりあえず、
【悲報?】”この世界線”の種子島は宇宙開発センターではなく、ミサイル開発施設だった件について【残当?】
もしかしたら鉄砲伝来の歴史が(主にこの世界線の家康のせいで)台無しになったから、歴史補正力が無駄に作用してミサイル開発拠点になったとか?w
その分、米軍との地上戦が無縁になりそうな沖縄本島には大規模なロケット打ち上げ基地が近い将来できそうですが。
とりあえず、史実よりも日本のミサイル開発は進み、最初期の誘導弾”イ号一型”シリーズは史実より数段技術的に洗練され、既に実戦投入可能なレベルという。
そして、その原動力となったのが研究者たちを統括する貴仁親王殿下……というのは、実は表向きの話で、実はその裏側には愛妻の姿がチラホラとw
いや、なんせ出所は”あのロケット”の糸川家の娘さんですしね~。
次回は日本の戦後軍事の裏側に潜む、彼女とミサイルの話かな?
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