転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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という訳で、今回はリチャードIV世とドロシーちゃんがメインのエピソードです。

まあ、視点が違えば見えてくるものも変ってくる訳でして……
今回は前話の反動(?)で、イラスト多めでお送りします。

国王夫婦は相変わらず”過剰に仲良し”なのでご注意ください。






第412話 1943年12月25日、デンマーク(ちょこっとノルウェー)並びに”英国国王夫妻”の反応 ~グリーンランド侵攻の解釈とアラスカ準州の意義について~

 

 

 

”アメリカ合衆国軍のグリーンランド侵攻”

 

 これは欧州各国の新聞や週刊誌のヘッドラインを飾った文言だ。

 そう、そこに米大統領ルーズベルトが謳った”進駐”という文言ではなく、明確な「米国の侵略」という文字だけがあった。

 

 まず、この米国の暴挙に真っ先に反応したのは、当選のように被侵略被害国であるデンマークの国王”クリスティエルンX世”であった。

 

 

「アメリカの大統領とやらが『デンマークがドイツの傀儡国家』などという妄言をもとに、れっきとした独立国であるデンマーク王国の植民地で在り、固有領土であるグリーンランドに宣戦布告もなく(・・・・・・・)侵攻”したのだ! この卑怯卑劣な”侵略行為”に対して我らは断固とした抵抗の意思を示すっ!!」

 

 この宣言と同時にデンマークは国際連盟の臨時総会開催を要請、その緊急性を鑑みて1月中にも開催が決定されたのだ。

 あまりにも当然の対応だった。

 

 だが、国連臨時総会が開かれる前に主要各国は既に動き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 場所は再びロンドン、バッキンガム宮殿。

 時間は12月25日、日没直前の午後3時(グリニッジ標準時)。

 

 

【挿絵表示】

「フフ……フフフッ。あの腐れ植民地人の末裔共が、随分と楽しませてくれるじゃない♪」

 

 おおっ! 基本、裸族なドロシーが珍しくまともな服着てるっ!?

 あの後オールナイトになったかどうかは不明だが、どうやらロンドンにある世界的に有名なイングランド国教会ロンドン教区主教座聖堂(カテドラル)、セント・ポール大聖堂で行われたクリスマス・ミサに、この国王夫妻は参列できたらしい。

 

 まあ、セント・ポール大聖堂とバッキンガム宮殿はすぐそばなのだが……時差の関係で、あの合衆国書記長(ルーズベルト)の問題発言ならぬ問題宣言があった時間は、ミサの最中だったようだ。

 そして、バッキンガム宮殿に慌てて戻り、今は夫婦そろって詳細を執務室で確認していたようだが……

 

 

【挿絵表示】

「ふん。相変わらずふざけた真似を……」

 

 とりあえず、シャワーを浴びて頭をクリアにしたリチャードIV世が、そう面白くなさそうに返した。

 

「そう? 私は流石に諧謔(ユーモア)よりも冗句(ジョーク)が好まれる国らしい、斬新でユニークな自殺、じゃない”自滅法”だと思うわよ? 流石はコメディアンが巨万の富を築けるってお国柄、国家単位で渾身のギャグに体を張るのね? 見上げた芸人根性だわ♪」

 

 実に英国人らしい皮肉を羅列するドロシーではあるが、的外れなことは言ってない。

 

 

【挿絵表示】

「これ、要するにヤンキーが『軍隊いない土地は我が国(アメリカ)にとって”未占領地であり空白地帯”。だから軍隊のっけて実効支配すれば我が国の領土』って宣言してるようなものでしょ? これじゃあ国際秩序もへったくれも無いわ。”覇権主義(グレートゲーム)”ってこんな乱暴で出鱈目なものじゃないもの」

 

 服を脱ぎながらそうドロシーが言えば、

 

「普通に他国が受け入れられるような物じゃないな」

 

「国連への臨時総会開催と非難決議は既定路線だけど、でもそれだけじゃあ済まないわ。それとこれ、自覚の有無関係なく我が国(イギリス)にも”また(・・)”喧嘩売ってるわよね?」

 

「ほう? ドロシー、お前はどう解釈している?」

 

 するとドロシーは実に楽しげに、

 

 

【挿絵表示】

ケベックは国連認定のテロ組織”自由フランス”に占拠されてる現状、おまけに売却した北アイルランド全域の基地化に戦略爆撃機の恒久的配備……さて、ここでグリーンランドを占拠して基地を置く地政学的な意味は?」

 

 

【挿絵表示】

「アメリカとの有事の際、北部大西洋ルートへの圧迫。必要であれば、英国本土とブリテッシュ・ノースアメリカ(=カナダ)の通商路遮断」

 

 淀むことなく答えるキング・リチャード。

 

「その通りよ。カナダでの現地生産能力向上させて、自給自足を目指してるけど……現状ではカナダ配備兵力を現地だけの生産力で維持するのは難しいわ」

 

 実はカナダ西岸(太平洋岸)は、アラスカが米国の準州化(アラスカの正式な州への昇格は史実では1959年)したことにより閉鎖されてしまい、補給路を繋げることができない。

 史実と違い、米国と日本は交戦状態に無く、その為にアリューシャン方面に緊張が高まることはなく、軍事的には未だに戦力は閑散としているが(地政学的にアラスカは日本やソ連、中国など”太平洋を挟んだ敵性国家”があれば、その価値が出る)、おかげで北米大陸の英軍は「太平洋から日本皇国伝いに支援を受ける」事ができないのだ。

 

 むしろ、アラスカ準州と日本の関係は、史実と異なる極めて重要な繋がりがある。

 史実でも”この世界線”でも、1928年の世界恐慌によって当時のアラスカ経済の生命線である水産物と銅の価格は下落し、賃金は下がり就労者の数は半数以下になったことがあるのだ。

 史実では1935年にルーズベルトがテコ入れを行ったが、”この世界線”ではアラスカ経済の危機を知った日本皇国が、「アラスカ産の海産物と銅の買い付け額の大幅な増額」を申し出たのだ。

 ルーズベルトの日本人感がどうあれ、これはアラスカ準州経済にとり渡りに船で在り、死活問題であった。

 また、日本皇国にとって国家の順調な富裕化と右肩上がりの人口、肉食より魚食を好む国民性、食品冷凍技術の進歩にまた銅素材は電気インフラの拡充に必要な国家戦略物資の確保という状況だったので実に都合が良かったのだ。

 そう、1930年代では珍しい日米Win-Winの関係であった。そして、この大口輸出は今でも続いている。

 

 そういう意味では、アラスカは(下手をすればアメリカより日本の方がその価値を認める)重要な土地であり、全米各州の中でも日本への貿易額、輸出依存度の高い地域でもあった。同時にそれは反日思想が強いルーズベルトへの反感も強い地域という意味とそう違わない。

 事実、この地には今の米国には珍しく日系企業が出先機関を置いて存在していた。

 ただし、これは日系米国人が存在しているという事を意味してるわけでは無く、あくまで居るのは「現地の日本人駐在員」であり、日米関係悪化や有事の際にはいつでも脱出できるように人員数も絞られていた。

 具体的には、水産業(水産加工業者)と海運業者がほぼメインだった。

 鮮度が命の水産品に関しては現地加工したほうが都合の良い物が多いため、現地雇用の確保も含めて水産加工工場が日本資本で建設されたが、インゴットに加工してしまうと戦略価値があがってしまう銅に関しては、銅鉱石のまま輸入となっていた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「今すぐ英国と戦争するつもりは流石に無いでしょうけど……そういうことを考えているのは、ルーズベルトの側近にはいるでしょうしね。いずれにせよ”英国式の報復(オシオキ)は、今すぐする必要はないわね。直接的な被害者では無い上に、どんな手を使うにしても根回しは必要となるでしょうし」

 

「まずは王室外交でデンマーク王室と連絡を取り、連携を確認すべきだろうな」

 

「それにノルウェー王室にもよ」

 

 ”この世界線”では、ノルウェー王国はドイツの侵攻を受けておらず、また史実同様にデンマーク国王とノルウェー国王は”実の兄弟(父親は先代デンマーク国王)”なのだ。

 少し歴史をかじると、ノルウェーは1905年まではスウェーデンとの同君連合(複数の君主国の君主が同一人物である状態・体制のこと)であったが、それが解消されノルウェー王国として独立する際に、現デンマーク国王の弟が”フレデリクⅦ世”(史実での名はホーコンⅦ世)として即位していた。

 

「まあ、英国が実際に動くのは、”あの男”が動きを見極めてからでいいと思うわ」

 

「”あの男”? ヒトラーか?」

 

「まさか。性格的にヒトラーは動かないわよ。ただでさえ、米国に『デンマークを傀儡にしている』なんて因縁つけられてるんですもの。自ら進んで火の粉をかぶりに行くほど殊勝な人間性じゃないでしょ?」

 

「となると……」

 

 ドロシーはニヤリと笑い、

 

 

【挿絵表示】

「”セント・ピーターズバーグの漢(The Man of Saint Petersburg)”、現代に蘇った”雷帝(グロズヌイ)”よ♪ あの苛烈な”アカの天敵”が、こんな美味しいシチュエーションで大人しくしてるなんて到底思えないもの」

 

「ほう? ドロシーはそう見るか?」

 

「あの大公にして枢機卿、”バルト海条約機構(Baltische Vertrags Organisation:BVO)”が正式発足前の黎明期から関わっていて、”バルト海特別平和勲章”なんてユニークメダルを賜って貴族となった上に、未だに強い繋がりがある……そして、デンマークはバルト海沿岸諸国、”BVO”加盟国だからね。動かない理由がないでしょ?」

 

「お前にそこまで評価されるか……少しばかり嫉妬してしまうな」

 

 

【挿絵表示】

「あら、嬉しい♡ リチャードにもそういう感覚ってあったのね?」

 

「そりゃあ俺とて人間だからな。一応は」

 

 するとドロシーは再びドロリと瞳を濁らせて、リチャードの手を引きベッドルームへと誘い……

 

 

 

 

【挿絵表示】

「ねぇ、リチャード……なんかあなたの言葉で滾ってきちゃった♡ まだ夕方だけど、シちゃおっか?」

 

「やれやれ。困った愛妻だな? この”好き者(イログルイ)”め」

 

「あら? 私をそういう風に”調教”したのはリチャードでしょ?」

 

「事実ではあるな」

 

「ふふっ♡ まだ12月25日、クリスマスだもの♡ リチャードぉ、お(なか)にいっぱいプレゼント頂戴♡」

 

「プレゼントをいっぱい貰えるほど、良い子にしていた自信はあるのか?」

 

 

【挿絵表示】

「私みたいな”悪い()”が大好きなくせに♡」

 

「その通りだ。愛してるぞ、ドロシー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リチャードIV世国王、脱いだら(筋肉的な意味で)凄いんです(挨拶

まずは前話との落差よw
当事者たるデンマークと間接的圧迫を受ける英国じゃあ、そりゃ見える物も違うってもんです。
グリーンランドに基地置かれたら、アメリカの有事の際、北大西洋ルート・オンリーのカナダとの通商路はいつボコられてもおかしくないですからね~。

ドロシーちゃん、割としっかり、いや”俯瞰的に”状況を見ているようです。
まあ、英国の”裏の宰相”ですからw
そして、あくまで冷静なリチャード国王陛下。

まあ、英国は確実に”仕返し(オシオキ)”をするでしょうが……それは今すぐにでは無いようです。
というか、割と的確にクルスが見られているあたりw

そして、次回は件の”サンクトペテルブルグの漢(The Man of Saint Petersburg)”かな?

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次回もどうかよろしくお願いいたします。



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