転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
というか、
「さて、”草”に不足を感じていないのなら上出来でしょう。そして、まず英国版の”V-1”、”V-2”……特に英国式”V-1”開発に関して事前に”草”にやってほしい事が二つばかり」
「あら? 何かしら?」
「一つは電波測定器を用いた米国レーダー並びに通信機能の周波数特性と出力の割り出し。もう一つは”草”への秘密裏の無指向性電波発信装置の供与と米軍基地への設置。電波発信機の周波数は米軍のレーダー/通信周波数に被る事が最良かと」
「ほう。随分と面白い提案だな……狙うのはV-1の”
リチャードが言う”HARM”とは、正式名称”AGM-88 High-Speed Anti Radiation Missile(高速対輻射源ミサイル)”。
電波の発生源に向かい飛んで行く空対地型の「対レーダーミサイル」だ。
「技術水準的には、その前身である”AGM-45 シュライク”が妥当なとこでしょうが……相手のレーダーサイト、あるいはレーダーが設置してた基地の大まかな位置さえ分かっていれば、オートパイロットと指令誘導、慣性航法を組み合わせれば的電波受信可能エリアまで誘導することは可能でしょう。ビームライディング方式の指令誘導に妨害電波をかけてくるなら、その
無論、現代のリングレーザージャイロを用いた高精度慣性航法装置やGPS誘導に比べれば精度は格段に落ちるだろうが、史実よりも技術加速が進んでいる”この世界線”の英国なら、確かに現状の技術の組み合わせでも作れないことはないだろう。
「言ってくれるじゃない? 今生では早々”電子産業のトップランナー”は明け渡す気はないわよ? アメリカは勿論、例え日本が相手でもね」
「そりゃ心強いことで」
クルスはそう小さく笑うが、
「しかし、それだけの装備とまともな威力の弾頭を積もうとしたら、V-1のパルスジェット(推力300kg)じゃ明らかにパワー不足だろう?」
そう返すリチャード。この漢、やはりただの脳筋ではないようだ。
まあ、本当に脳筋では腹黒王国の王様などできないだろうが。
「既に生産体制が整っている”ダーウェントMk.Ⅳ(推力1100kg)”に換装すべきでしょうな。それに対する改造自体はできる。ついでに航法装置に連動する電波高度計の設定は500m以下、可能ならば200m以下を巡航する設定すると良いでしょう。米軍の戦闘機は全般的に低高度の舵の利きが悪い。それにその程度の高度なら地形追従飛行というほど難易度は高くはない」
ついでに高度が低いほど敵レーダーには捉えられにくいのだが、それは同時にミサイル自体も電波を捉えにくいということになってしまうが……
「一定の距離を飛んだあと目標に近しい場所で
「……技術的に無理とは言わんが、すぐには難しいな」
「直ぐにである必要は無いでしょう。むしろ45年以降でも構わないくらいだ」
「ほう? それはどういう意味だ?」
リチャードの問いにクルスは事も無げに、
「今次大戦でアメリカはイギリスに正面切って喧嘩を売る余裕は無くなるってだけです」
「そのこころは?」
今度はドロシーの問いに、
「ほぼ確実視される”
「凄い自信ね?」
「相応の根拠があるもんでね」
「ふーん……それは聞かない方が良い話かしら?」
「迂闊に喋って良い話ではないですね」
(まあ、俺とて防衛プランの全貌をつかんでる訳じゃないんだがな……)
実際にクルスが把握してるドイツの”44年度国防計画”は今のところは断片的な物でしかない。
それに、
(サンクトペテルブルグが直接的であれ間接的であれ担当するのは”
「”V-1”の方向性は分かった。対電波発信源誘導型地対地巡航弾という方向性は良いだろう」
「米軍のレーダー/基地規模の大型通信機周波数、そして英国の”草”が破壊必要ポイントに持ち込んだ電波発信源……一つのミサイルに全ての周波数に対応できるようにするのではなく、電波帯ごとに逆探シーカーを調整するのが良いでしょう。技術的なハードルを下げてローコスト化。使い方はしょぼい数の随時発射ではなく、最低でも数百発規模の一斉射、飽和攻撃を基本方針に」
そう言い切るクルスはさらに、
「弾頭は予想されるCEP(Circular Error Probability:平均誤差半径)から考えて、100kg級の成形炸薬子弾を多数詰め込んだ”
仮に
「ついでに”V-2”の話をすると、終末速度は弾道飛行の高度的にM4.0以上にはなるでしょうから、今の技術で精密な終末誘導など不可能。なら、慣性航法装置と電波誘導の精度を向上させ、CEPの良好化を目指し、ついでに固体燃料ロケットに設計変更して維持コストの低減を狙うのも手かもしれませんね」
ちょっとドイツに提示した「ロケット液体燃料の強化・最適化による射程の延伸」とは方向性の違うアイデアのようだ。
まあ、ターゲットをアイルランドに絞るなら射程はそこまでいらないのは事実だし、クルスなりに国情というのを配慮しての提言のようだ。
(まあ、独英が戦争再開する可能性は政治状況から考えて、皆無だろうしこのくらいなら良いだろう。それに、この改造プランじゃ英国本土から撃ってもドイツの奥座敷、ベルリンやましてやサンクトペテルブルグまでは届かんし)
一応、クルスなりに考えてはいるようだ。
英国本土から一番近いドイツ本国への距離は大体380㎞程度で、ベルリンまでは800㎞以上ある。
「そっちの弾頭は?」
切り込んでくるリチャードに淀むことなく、
「半徹甲型。初歩的な”ブンカーバスター”というのはどうです? 成形弾頭のクラスターとは対処法が全く違いますから、米軍を攪乱するのに丁度良いのでは? 炸薬は”トーペックス(史実でも英国が開発したRDX42%、TNT40%、粉末アルミニウム18%の混合爆薬)”とかで良いでしょう。もう開発済みでしょう?」
「まあ、あるな」
「容赦ないわね~」
と呆れてるのか感心してるのかわからないような表情のドロシーに、
「容赦して勝てるような相手だとでも?」
「それもそっか。いずれにせよ英国の独力で開発できるようなものばかりの提言で助かるわ♪」
「そういう代物じゃなければ意味など無いでしょう」
まあ、これが後に歴史家、特に技術関係の専門家に頭を抱えさせる”クルス
彼の設計した(メモ書きを含む)には、象徴的な言葉がある。
『クルスデザインに
そう、既存の技術や最低でも数年以内に量産あるいは実現可能な技術を用いて、それを『アイデアと設計の妙でローコスト・ハイスペックにしてしまう』というのだ。
しかも、当初のサンクトペテルブルグ/ドイツだけでなく、やがてバルト沿岸諸国や今回のように英国まで波及してゆくようになるのだが……
その事実は、サンクトペテルブルグ大公ニンゼブラウ・フォン・クルスが死去するまで、あまり公表や公開される事は無かったという。
なので、彼の死後に発表された伝記本は改訂されるたびに「彼の関わった事業や偉業が増えて行く」という珍事が起きることになるようだ。
☆☆☆
「それにしてもドイツってズルいわよね~。こんな頭脳をゲットした上にサンクトペテルブルグに押し込んで、戦後に第一友好国作ろうなんてね」
「むしろ日本は惜しい男を海外に放逐してしまったとも言えるな」
いや、
「そんな大したものじゃないですよ。ほら、どこぞのネコだかタヌキだかモチーフの青い未来ロボの歌にもあったでしょう。”あんなこといいなできたらいいな♪”ってのが。アレみたいなもんです」
「差し詰め貴方は困ったときの”クルえもん”ってとこね♪」
なにやらクルスに新たな属性が追加されたようである。
【悲報】クルス、英国の国情に合わせたV-1巡航弾とV-2弾道弾の現状の技術で実現可能な改造プランを出す【www】
という訳で、クルス、英国王夫妻からもロックオンされたみたいですよ?
まあ、戦後に独立国化が確定しているサンクトペテルブルグの天辺張ってくれた方が都合がよいので引き抜きはかけませんが、絶対に繋がりを持とうとするだろうな~とw
一応、「計画通り完成してもドイツへのダメージは出にくい開発計画」というのは何とも。
存外、そういう”配慮”もリチャードやドロシーは気づいていて、逆に気に入る要因かも?
えー、ちょっと執筆時間の減少やモチベーションの下降で執筆速度は落ち気味ですが、次回はこの会談の続きの予定です。
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