転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
アハハ! シフトの関係で遅れたGW(本日1日だけ)だZE!(号泣
連休? 知らない子ですね。
それはともかく、本日はまさかのヒトラーの愛妻、”エヴァンジェリン・ヒトラー”が主役という変化球的なエピソードです。
あとちょい短めなのはご容赦を。
第426話 エヴァンジェリン・ヒトラーという女 ~女には色々な貌があるという当たり前の現実と”とある島”~
さて、唐突ではあるが……ヒトラー総統の愛妻、”エヴァンジェリン・ヒトラー”は専業主婦ではない。
「”局長”、今回のレポート、ここに提出しておきますね?」
「ええ。ありがとう」
”ドイツ国立先端技術研究所”、特殊核物理学研究局の局長というのが彼女の公式な
ちなみにこの国立先端研究所は軍港の街”キール”の郊外にあり、国立ではあるがエヴァンジェリンの実家であり街の名にもなっている地元の名家で巨大資産家の”キール家”がかなりの金額を出資していて、その流れでエヴァンジェリンが一つの研究局のトップに座っているとされていた。
もっとも、彼女の旦那が誰だかはとても有名なので、”親の七光り”的な事を言う命知らずは中々いない。
居たとしたら、既に”行方不明”になっていそうだ。
ちなみに特殊核物理学研究室の研究内容は「核分裂の連続制御」、つまり、次世代技術である原子炉の基礎技術研究を行うセクションの一つであった。
その中でエヴァンジェリンの評価は「研究者としてそこそこ優秀でそれなりの実績も挙げている」というもので、「穏やかで話の分かる上司」として部下からも相応に人望があるというのが”表向き”の人物像だった。
実際、部下の中には隠れファンもいるらしい。
また、エヴァンジェリンが研究者として活躍することで「女性の社会進出に寛容な
しかし、多くの読者紳士淑女の皆様の想像通り、彼女はヒトラーの妻や特殊核物理学の研究者という以外にも別の顔を持っていた……
☆☆☆
国立先端科学技術研究所の敷地は、その昔はとあるユンカーの大邸宅があった場所であるらしい。
そして、その土地には知る者がほとんどいない地下坑道があった……
「ようやく、”成った”わね……」
そう独り言ちながら秘密の地下坑道を歩くエヴァンジェリン。
彼女の行く先には、完全電化された地下シュタットバーン(=小型列車)が停車していた。
彼女が乗り込むのを確認するとシュタットバーンはゆっくりと動き始める。
一度も地上に出ることなく向かった行き先は、軍港としても巨大なキール港の外れにある、地上部分だけ見るとただの港の倉庫街に見える一角、その地下であった。
そう、ここはその存在を秘匿されている国家機密の一つ、
「”エヴァンジェリンお嬢様”、お待ちしておりました」
そう恭しく頭を下げる初老の如何にも執事然とした男に案内され、エヴァンジェリンは慣れた雰囲気でUボートの乗船タラップを登って入艦する。
停泊していた潜水艦は、最新と言ってよい水中高速型の”XXI型”、その”特別仕様”だ。
そう、このドイツ海軍には書類上存在しないXXI型Uボートは、潜水艦の王道と呼べるような通商破壊作戦などに投じられる攻勢的戦闘目的の船ではない。
それとは真逆……自衛装備を満載した「有事の際における要人の国外脱出」を目的に建造された、言ってしまえば「存在を隠匿されている”海中お召艦”」であった。
同時にそのような存在のUボートの母港に設定されているこの隠蔽地下ブンカードックの最大の特徴は、ドックに注水することで一切の人目に触れられることなく直接、海中へとUボートが漕ぎ出せる事であった。
”タリン沖殲滅戦”以降、バルト海での対潜哨戒警戒活動は後の世界基準から考えるとさほど厳しいものではない。
とはいえ、これらを容易に擦り抜けられる危険な水中高速型潜水艦を建造できる国は限られており、そのいずれの国とも今のドイツは交戦状態に無かった。
とはいえ、従来型の……例えば、米軍現役のガトー級やパラオ級、最新のチンチ級にそれらに劣るソ連潜水艦がこの海域に侵入しようとすれば、相当に冒険的行動を強いられるのは間違いない。
そんな状況の中、”お召Uボート”はバルト海を擦り抜けて一度北海を目指し、英国の哨戒網に引っ掛からないように”この世界線”ではドイツの友好国であるノルウェー沖を航行しながら更に海中を北上するのだった。
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そのドイツ海軍艦籍簿には記載されていない”お召Uボート”が1944年3月末日に辿り着いたのは、バレンツ海にある”ノヴァヤ・ゼムリャ”。
幅2~3kmと狭いマトチキン海峡で繋がる北島(セヴェルヌィ島)と南島(ユージヌィ島)からなる場所だ。
ちなみに海峡と南北島全ての総称で”ノヴァヤ・ゼムリャ島”と呼ばれる事もある。
そして、そのノヴァヤ・ゼムリャ島に近づいた頃合いで、
「お嬢様、こちらにお着換えください」
この時代の潜水艦としては規格外の個室が与えられていたエヴァンジェリンは、実直な執事の言うままに、”まるで軍服のような”黒い衣装へと装束を変えていた。
「まあ、こんなものよね?」
そこには既に、『そこそこ優秀でそれなりの実績も挙げている研究者』や『穏やかな上司』という顔は無く、むしろ、鋭さや凄味をそこはかとなく感じさせるどこまでも怜悧な表情が浮かんでいた……
☆☆☆
かつてソ連の領土とされていたこの極北の島は、今はアルハンゲリスク攻略戦などでのドイツ側の勝利などで、ソ連の北海・バレンツ海方面軍も海軍も壊滅したことで、今はドイツの勢力圏となっていた。
あれから約1年……北極観測所や測候所という名目でレーダー施設を含む小規模ながら飛行場や港を含む基地がトート機関により築かれている。
既に各施設は稼働を開始していたが……驚くべきは、島表層に林立する建屋以外にもこの島には施設があった。
いや、むしろ表層にある建物群は「世間や世界を欺くためのダミー」であり、この”ノヴァヤ・ゼムリャ島”の本性にして本懐は、全ては見えない”地下”にあった。
実はドイツ屈指のチート技術集団であるトート機関が、この島にどれほど尽力したのか?
それを示すのが、キールのそれと比べれば遥かに小規模だが、Uボートが潜水したまま入港できる隠蔽地下ドックがこの島に存在していることであろう。
そして、「存在しない」はずのこの極北の地下Uボートドックでエヴァンジェリンを総出で出迎えたのは……
「「「「「「「エヴァンジェリン・ヒトラー
カールハインツ・フォン・ヴァイツゼッカー、ヴァルター・ハイゼンベルク、ワルター・ボーテ、ラベルト・デペル、ハンネス・ガイガー、クラウザー・クルシウス、そして
実に錚々たる物理学者、科学者、博士たちだった。
そして、彼らには”ある共通項”があったのだ。
という訳で、エヴァンジェリンが再登場でした。
それにしても”秘密のお召Uボート”で向かった先がドイツがソ連からもぎ取った”ノヴァヤ・ゼムリャ島”……
そして、エヴァンジェリンを出迎えた面々の顔ぶれ……
あれ? この面子って……
いや、”
さて、この章では”オーバーロード”や”バグラチオン”に向かってゆく44年の流れを中心に追ってゆきたいかな~とか考えています。
どうか新章もよろしくお願いいたします。