ずいぶんと魔化魍戦で精神的にすり減っているだろう頃合いですが、猛攻防の中のちょっとしたひと間での出来事。
時空を飛び越え、大騒ぎ忍者達とのクロスオーバー作品です。
(ニンニンは添える程度の登場ですが)
中の人ネタです。
暗い。ここは闇の中だ。
いや、地獄か?少なくとも、此処が天国ならば、こんなに気持ちが重くなるような何処までも続く黒い世界では無いはずだ。
まぁ、それも生きてる内の思い込みなのかもしれないが…。
轟鬼と別れ、一体どれ程の間、時が経ったのだろうか?
一体、何時まで俺はこの闇の中をさ迷うのか?
返魂の術の呪縛から解放されているものだと斬鬼は思っていた。轟鬼によって救われた。と 。
この世に、魂と呼ばれるものが存在するのならば、斬鬼は確かに救われた。救われ、その魂は天に昇っていた。予期せぬアクシデントに見舞われたのだ。
轟鬼の顔を思い浮かべていた。
涙を目に一杯溜めながら、精一杯に笑う轟鬼の顔を…。
心地の良い光に包まれていた。
例えるなら、春の夢現の中の様な温かさ。夏の川のせせらぎと木漏れ日の中に身を投じるような爽やかさ。秋の夜長の安らかさ。冬の街を覆う静けさ。それらが体を包んでいるような安心感。ずっとこのままで居たい。そう思わせる空間。長い時間、そこにいた。意識がはっきりしていると、下の方にたちばなが見えたり、皆の姿を見る事が出来た。
あ、また眠気を誘う。うとうとと温かな光に身を任せ、瞳を閉じる。
冷たい風を感じた次の瞬間、風がうねり、身が空気の乱れに引き込まれ、カッとフラッシュが焚かれたような強い閃光に目が眩んで目を閉じた。
しばらくして、風が止み、そろりと目を開けると 目の前に手が迫ってきていたので、反射的に身を引いた。
その正体を知ろうと、顔を上げると狐面の何かが居た。
童子でも姫でもない。
異質なそれを危険だと直ぐに感じ取った。だが、遅かった。
四方八方から、黒い何かが飛んでくる。必死に避けようともがくが、避けきれる数であるはずも無く、黒いそれにあっという間に飲み込まれた。飲み込まれる直前に狐面の声が微かに聞こえていた。
「血となり、肉となれ…。妖術………。」
次に意識が戻った時には闇の中だった。見えるものも無い長く続く暗黒をさ迷い、さ迷い……。
どんどん俺が俺で無くなる感覚を覚える。
記憶が曖昧になる。轟鬼や仲間達の顔を思い浮かべる事が少なくなっている。
意識がある時に、考えない事なんて無かった轟鬼の事を考える事が無くなってくる。
皆を忘れていく。俺を忘れていく。
闇の先に何を望んでいたのか、解らない。
あぁ…。遠退く。
俺は…。一体、誰だ?
また、闇の中を歩く。 この闇を抜ければ、俺が誰か分かるはずだ。俺が何者だったのか、分かるはずだ。
闇に向かって歩を進めた。自分が何だったのか、それを知るために。
悪夢を見る。何年も夢にさえ出なかった斬鬼さんがここしばらくの間ずっと出てくるのだ。
暗闇の中に白い肢体を外に晒し、遠くに曖昧に斬鬼さんの姿が現れ、何かを訴えているように見えるが、俺はその場から身動きが取れず、近寄ることが出来ない。
斬鬼さんの後ろから、般若の面を被った何者かが徐々に斬鬼さんに迫ってきているのを見て、俺は斬鬼さんに注意を促すが、斬鬼さんに俺の声が届かないのか、全く意思疏通が出来ない。歯痒い思いをだき、近付こうともがくが、その場から一歩も動けない。
般若の面は身に衣服と呼べるものは纏っていなかった。白い肢体に白い褌姿で斬鬼さんに迫っていた。斬鬼さんが気配を感じて背後を振り向くのと同じ瞬間に般若面も斬鬼に飛び掛かった。
「ああぁっ!!斬鬼さんっ!!」
思わず声を上げてしまった。
般若面が斬鬼さんを羽交い締めにし、黒い霧のようなものが般若面と斬鬼さんの体を取り巻いていく。
斬鬼さんの表情がどんどん苦しみに歪んで苦し気に声を上げる。
「ぐぅあぁぁっ!……あ"あ"あ"あぁぁぁっ!!」
黒い闇が斬鬼さんを包もうとしている。般若面の男が自分の般若面を片手でほどき、ゆっくりと外していく。男の顔を見て俺はただただ目を見開くしか出来なかった。
般若面から覗いた顔は羽交い締めにされている大切な人と全く同じ顔だったからだ。
斬鬼さんの顔をもつそいつが、斬鬼さんの顔に般若面を押し付ける。
凄まじい閃光を放って雷が斬鬼さんを射つ。
「うわあぁあ"あ"あ"ぁぁっ!!」
「ザンキさんっ!!」
そこで必ず俺は目を覚ます。
尋常じゃない量の汗と心拍数。暗い映画館内で一点に視線が集まってくる。どうやら、叫んでしまった様だ。
隣で日菜佳さんが、ビックリした様な顔で俺を見ていたと思ったら、次の瞬間には、俺の腕を引いて、劇場から引きずり出された。
「ひっ、日菜佳さんっ!痛いっ!痛いッス!」
「トドロキくん。ちょっと我慢してて下さいね~…!」
ショッピングモールから出て、車の前まで来る。そこまで来てから日菜佳さんがやっと腕を解放し、ぐるりと俺の方に向きを変える。夢に見た般若面よりも恐ろしい形相で大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出し……。
「トドロキくん……。私は別に良いんです。お寿司屋で周りからビックリされるくらいにお寿司頬張っていようが、映画を見ようって言ったのはトドロキくんなのに爆睡していようが、良いんです。良いんですけど…!」
相変わらず、ドジを踏んでいるのは、分かっていたのだが……。面と向かって言われると、それはもう傷付く。
「良いんです!ザンキさんは、トドロキくんにとって大切な人です!私なんかが分かるわけ無いんです!トドロキくんとザンキさんの間なんて!」
「な、何でザンキさんが関係あるんスか?今はザンキさんは関係無いじゃないッスか?」
「トドロキくん…。ずっとザンキさん、ザンキさんって魘されてました。私じゃあ、駄目なんでしょうかね?」
「そんな事…!あるわけ無いじゃ無いッスかぁ!日菜佳さんが居てくれたから、俺…。俺、頑張って居られるんスよ?」
「じゃあ、どういう事なんです?」
「それは……。」
今、自分に起きている事を日菜佳さんに打ち明けた。
斬鬼さんが毎夜夢に出てくる事、夢の中で斬鬼さんが斬鬼さんに似た般若面の男に襲われる事。それが自分としては、返魂の術の副作用なのではないかと。
「ザンキさんを、ちゃんと安らかに逝かせてあげられたと思ってたんスけど…。そうじゃ無いんじゃないかって…。何かを訴えているように俺には見えたんス。」
「返魂の術の副作用……。でも、そうしたら、もっと早くに現れても良いんじゃあ無いですか?もっと違う何かが働いているような……。」
考えても、答えは出なかった。
それは、日菜佳さんも同じ様で。ウーン。と唸ってパッと顔を上げると、
「父上やヒビキさんにも相談してみるのはどうでしょうか?もしかしたら、何か記録に残っているかも知れないです!」
そうと決まれば、戻りましょう!と日菜佳さんが運転席に乗り込もうとしている所を制止し、自分が運転席に乗り込む。日菜佳さんも微笑んで、助手席に移った。
結局、おやっさんにも響鬼さんにも、斬鬼さんが夢に現れる理由は分からなかった。
夕刻になって、元々人気の少ない寺の裏側。ひっそりと佇む斬鬼さんの墓に向かって手を合わしていた。
"財津原家之墓"と彫られた墓石はよく手入れされていて、頻繁に誰かが此処を訪れて居る事が分かる。
その、頻繁に出入りしている一人が自分だという事もよく知ってる。
ジョギングの途中に此処を訪れて、手を合わすのが日課になっていた。
無論、今日はジョギングの途中に立ち寄った訳では無い。
その石に手を添える。ヒヤッとした石の質感とザラッとした砂の感触が指に触る。
『どうしたら、斬鬼さんを助けられるんスか?斬鬼さんを放っておけないッス。』
グッと唇を噛み締めて、石に添えていた手に力を込める。
突如、突風が俺を襲い、あまりの風の強さに思わず目を伏せた。
遠くから、声が聞こえる。
「うおぉぉぉい!目ぇ覚ませってぇっ!!」
「ぅんもぉう!お兄ちゃん駄目だよ!この人、魘されてるじゃん!目が覚めるまで、そっとしておいて上げようよ!」
その声は何も遠くから聞こえていた訳でなかった。俺の方が、気が遠くなってたみたいだ。起きようとした時に、ふと気になる言葉を聞いた。
「それにしても、あの
「うんうん。鬼みたいな顔で鬼だよって言っちゃってさ……。」
それは、斬鬼さんがよく魔化魍達と対峙した時に発する威嚇の様な口癖と全く同じだった。
ガバッといきなり起きたからか、声の主達がビックリして動きを止めた。
「そいつはっ!!他に何て言ってましたか!? どんな人だったッスか!?」
「まぁまぁ!落ち着いてくれって!」
「落ち着ける訳無い!!その口癖はっ!!俺のっ!!俺の…師匠だった人の…!」
一通りの事情を忍者だと言う俺よりちょっと若造に説明してやると、ビックリした様に白色のスタジャンの女の子が声を上げた。
「じゃ、じゃあ。お兄さんは、10年前の人で鍛えて鬼になって。鬼は妖怪退治の専門家みたいなもの?」
「妖怪じゃ無くて魔化魍ッス…。まぁ、別に間違いじゃ無いか……。」
「……で?そのザンキって言う鬼が夢に現れる様になって気がついたら此処に居たって訳だな?」
「助けたいって願ったら、此処にいたんスよ…。」
「そして、
「霞姉……!全然フォローになってないよ!」
「いや、きっと…。そうだったんです。ザンキさんは俺の事が心残りで…死ぬに死にきれなくて……!……申し訳ないです…!ザンキさん…!」
「……と、言うか。ただ口癖が合ってるってだけで、本当にザンキと決まった訳じゃないし、イーズィーだな。」
「それはっ…!そうッスけど…。でも、何も関係ないって事は無いと思うんです!座眉雷蔵だか、蛾眉だか知りませんけど、俺もそいつをこの目で確かめたいッス。」
ゲロゲロゲロゲロ……
何やら床の間にあったカエル型の何かが反応を示している。
「おっ!出やがったなぁ!よしっ!あんた、動けるんだろ?一緒に来るか?」
「はいッス!」
粗方の敵を忍者達はバッタバッタと倒していき、後一押しという所まで追い詰めた。
忍者達が必殺技を決めようとする所で、カッと雷が前方を遮った。
恐ろしい程の殺意。そんなものを感じた。そいつは鬼のようにも見えたが、鬼とは別の存在らしいことは手に持つ切っ先の鋭い武器を見て良く分かった。刀のように細いフォルムだが、尺は刀よりも大剣に近い長さだろうか、美しい弓形の剣だ。
「おう、まぁーたお前らか……。」
「
「あん?」
こいつが、
「ザンキさんっ!!ザンキさんッスよね!?」
「何だ?お前は?忍者じゃ無いみたいだな。お前もオレと命のやり取りをしようってのか!?」
「俺は…!俺はただ確かめたいだけなんです…!」
音枷に手を伸ばし、ゆっくりと爪弾く。雷が轟き、鬼へと変身した。
「うおおぉぉぉぉっ!!見ろよ八雲っ!トドロキさんかっっけぇぇぇ!!」
「わーーーっ!やっくんやっくんスッゴいよ!」
「お前ら、目の前の敵に集中しろ!イーズィーだな!」
烈雷も烈斬も無いのが心許無いが、それでもやるしかない。
ゆっくりと、相手との距離を詰める。相手もジリジリと距離を縮めて来た。足を止めた時の足元へ視線を寄せる。対峙する相手は軸足の足先を外側へ向けて、もう一方で地面を馴らして止めた。それは、斬鬼さんの癖でもあった。これではっきり相手が斬鬼さんであると確信した。
「ザンキさんッ!目を覚まして下さいッ!ザンキさんは……。人を苦しめる事が大嫌いだった!元のザンキさんに戻ってください!優しいザンキさんに…!」
「さっきから、ザンキ、ザンキ煩い奴だ!オレは牙鬼軍団の一番槍。
鋭い剣撃は斬鬼さんの太刀に良く似ているが、斬鬼さんはもうちょい一つ一つがコンパクトな太刀だ。たぶん、膝を庇っての事だったのだろう。
「どうした?どうした?!威勢が良いだけか?」
「っくぅ!!」
烈雷さえあれば……。
強く願ったその時に、
烈雷目掛けて飛び出し、空中で烈雷のボディを掴んだ。 着地してから、体を振り子の原理で回し烈雷の切っ先を相手に向ける。相手もそれに対応して素早くかわし、直ぐに迎撃体制を整え向かい討ってくる。
戦いづらい…。
いつの間にか後手、後手に回り戦況は圧され気味だ。
「トドロキさーん!俺達も加勢するぜーー!」
「来ないで下さい!これは、俺の戦いなんです!」
「けど、負けちまうよ!」
「おら!よそ見してて良いのか!?」
「くっ!?うわあぁぁぁぁっ!!」
もろに攻撃を受け体がその反動で宙に舞う。地面に体を叩き付け中々足腰が立たない。
「グッ……。クソッ……!」
「終わりだ…!」
もう駄目だと思ったその時、霧が辺りを覆い忍者に体を支えられて、その場を離れた。
「大丈夫か?トドロキさん?それにしても、やっぱり
「
「あんた、さっきので良く分かったんじゃないのか?
「いくらトドロキさんの頼みでも、
「確かに、あんた達の敵かもしれないッス。だけど、ザンキさんは俺の…師匠なんス…。無償の愛を注いでくれていた。そんな人だった…。今度は俺がザンキさんを助ける番なんス…。」
「師弟愛ですね……。」
「霞姉、泣いてる?」
「?いえ。全然?」
そうは言ったものの、全く
「あんたの師匠なら、あんたは
「強いて言うなら、間合いッスね。でも、中々……。」
「一人じゃ無理でも俺達がフォローするぜ!そうしたら、間合いなんか関係ないだろ?」
「あんた達……。」
「協力するぜ!トドロキさん!」
ゲロゲロゲロゲロゲロ……
床の間のカエル型銃が一斉に鳴き出した…。
「ザンキさんッ!目を覚まして下さいッ!ザンキさんは……。人を苦しめる事が大嫌いだった!元のザンキさんに戻ってください!優しいザンキさんに…!」
奴の言う事は覚えも無い。"ザンキ"という名にも覚えが無い。だが、一つだけ、引っかかるものがあった。奴の立回りを俺は知っている。
似た立回りを受けたのかもしれない。ただの偶然なのかもしれない。
気にする程でも無いはずなのに、何かが引っかかる。
「むしゃくしゃするなぁ!クッソッタレがぁぁぁぁッ!」
腹正しい。奴の存在が気に食わない。この気持ちを晴らすため、
ヒトカラゲが街を襲っている。
天晴達は忍者一番刀に各々のニンシュリケンをセットし、ニンシュリケンを回転させ、ニンニンジャーへと変身した。
一斉にヒトカラゲ達に飛び掛かる。
一足遅れて、轟鬼が駆けつけた。一度、立ち止まり、音枷に手を伸ばす。音枷を引き伸ばす寸前で、足元の地面に数発小さく爆発が起こり、横に跳びながら、弦を爪弾き、轟鬼へと変化した。
ヒトカラゲ達の中から、般若面の
「おい、緑のぉっ!俺ともう一度勝負しろぉ!!」
「天晴、皆さん…!お願いします!力を貸して下さい!」
「当然っ!皆行くぜっ!」
天晴達ニンニンジャー達が一気に距離を詰め、隙の無い剣劇を浴びせている。自分も攻め込もうと一歩進む脳裏に、ずっと見ていた夢の光景を思い出した。
あいつは般若面を斬鬼さんに押し付けていた…。
突破口かどうかは分からないが、やってみるしかない。烈雷を構えて走り出した。
「うおおぉぉぉぉぉぉっ!」
地面を踏み切り、相手に切りかかる。
「おぐぅっ! 貴様っ何をぉっ!」
般若面を片方弾く事が出来た。もう一方は自然と顔から剥がれ落ちる。
般若面に向かい、烈雷で貫き、そのまま音撃斬の形に姿勢を整える。
「音撃斬!雷電激震っ!……てりゃあっ!」
烈雷を掻き鳴らし、音撃を注ぐ。
「があああぁぁぁっ!」
「あぁ…!
狐面の小姓十六夜九衛門が何やら小槌を振ると黒い闇が小槌から涌き出てきて雷蔵の体に取り巻く。
ガクンと全身を脱力させた後に暗黒の念を放出させながら、
「九衛門ん~……!俺を舐めるなぁ!余計な事を……!」
般若面が雷蔵の顔にまた現れている。般若面はあまり関係なかったのか?今度は雷蔵自身に音撃を与え、邪気を封じられるか試してみよう。
グッと烈雷に力を込める。
ニンニンジャー達も力を振り絞って応戦する。先程の雷蔵と比べ物にならない位のパワーで攻撃を与えてくる雷蔵に何とか音撃を与えようともがく。突如雷蔵の動きが止まる。
「うぐぅぅぅぅぅっ!があああっ!何なんだっ!一体どうして言うことを聞かないんだぁあぁぁぁっ!動けぇ!」
その場で苦し気にもがく雷蔵の体の中心から、光が点滅している。
「何っ!?そんな……!まだ鬼の魂が消滅していないなんてっ!?」
「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
雷蔵の中から別の肉体が分離する。
深緑の皮膚に金色の玄が胸を通り、腕の部分、顔の部分には自分と違って銅色の皮膚色を持つこの鬼は…。
「ザ、ザンキさん……!」
「トドロキ……。」
斬鬼の背後に
「緑のぉぉぉぉっ!!」
斬鬼は轟鬼の右手から烈雷をひったくり、その勢いで体を翻し、放たれた相手の斬撃をいとも簡単にいなす。息をつく暇など相手に与えず、そのまま烈雷を振りかざし、相手の懐へ潜り、一気に烈雷を突き込むと力で地面に相手を降り倒し、斬徹を烈雷にセットし、音撃斬の態勢に入る。
「音撃斬・雷電激震!!」
ギャンと一哭き。
そのまま連続で斬徹を爪弾き音撃を与える。
「失礼っ!」
九衛門が雷蔵の顔の般若面を奪い取る。
雷蔵が爆散し、烈雷から斬徹を外すと斬鬼は烈雷を轟鬼に差し出した。
「ニンニンジャー達。蛾眉さんを倒したと思わないことだよ。あれはボクの考えるところの最強の戦士なんだから。あの程度では倒すことは出来ない。また会おうニンニンジャー。」
闇へと九衛門が消え去る。
スーーと光が指し、轟鬼と斬鬼は頭だけ変身解除をしてお互い向き合い、言葉も無くただ見つめあっていた。ニンニンジャー達が駆け寄ってくる気配にさえ気付かず、斬鬼にただただ視線を送っていた。
「うっ、うおおおぉぉぉぉぉぉっ!?なんかなんかスッゲーーー!一発で
少し、間を置いてから斬鬼さんは俺に問う。
「…何だ?こいつら?」
「あ、えっと…。」
「トドロキさん!ザンキさんスッゲーーーなぁ!ズバーーって斬り倒してギュイーーンって!俺にもあれ教えてくれっ!」
「………ぅッ!」
ガクガクと物凄い勢いで斬鬼さんの肩を揺すってたかと思ったら、いきなりガッと羽交い締めにしている。見るに堪えず制止しようと動こうとした時に八雲が慌てて駆け寄ってきた。
「天兄っ!止さないか!」
八雲が止めに入り、羽交い締めにしている天晴を引き剥がす。
「ザンキさん……!すんません!」
「……。謝るのは俺の方だ。ずいぶんと世話掛けちまったみたいじゃないか。」
顎で天晴達の方をしゃくる。
経緯を説明しないでもこの人には分かっているみたいだ。
「天晴くんが触れるって事は、妖怪でも幽霊でも無いって事ですね。」
「ちょちょちょちょっ…!霞姉っ……!?」
「まぁ、そろそろ消えるだろうな。俺は、死んでる訳だし。」
「ザ、ザンキさん……!」
「…何だ?」
片方の眉が少々持ち上がる。顔には柔らかい微笑を浮かべて佇む、かつての師匠は少しずつ夕陽に飲まれるように、体の輪郭が薄れていた。
「そろそろかな……。じゃあな。トドロキ。」
「ザンキさん。お元気で…!」
「……ッフ。何だよ。死んでる奴に向かってお前…。」
そこで、言葉を途切り…。あの懐かしい大好きなふわりとした微笑みで
「トドロキ。立派にやってるじゃないか。…お前を弟子にして良かったよ。………ありがとう。」
「……はい!ザンキさん。」
自然と自分も笑顔になっていた。一礼し、顔を上げたときには斬鬼の姿は何処にも無かった…。
「行っちゃったね……。」
「とても、安らかな表情でしたね。お空の上でも、あの様な笑顔で見守っているんでしょうか?」
「そうだな。」
「なんか、すっごく格好いい人だったね天ちゃん!」
「そうだなぁ!ザンキさんスッゲーーー格好いいよな…って!俺、まだあのギュイーーンってやつ教わって無かったあぁぁぁっ!」
「お兄ちゃんなんか、直ぐに見限られちゃうよ!」
アハハハと笑い声が上がる。
振り返って、そんな天晴達の様子に微笑んでいると、自分の体も何か薄くなってきているのを感じる。
元の世界に戻る時間が来たのだと悟った。
それは天晴達も同じようで、皆、表情を引き締めた。
「帰っちゃうんだね。」
「残念だな。もう少し仲良くなれると思ったんだが…。」
「きっと、また会えるよね!」
「トドロキさん!今度会う時は、ギュイーーンってやつ教えてくれよな!」
皆に笑顔で応え、お決まりの決めポーズを取ると、突風が巻き起こり、いつの間にか寺の中に戻っていた。
「……戻ったのか?」
辺りを見回して、時計に視線を落とす。あんなに長くいた気がするのに、時計の針は1分と進んでいなかった。不思議な臨床体験に溜め息を漏らし、斬鬼さんの墓に目を移す。
静かに佇む墓標。一瞬柔らかな風が頬を撫でたような気がして、墓標に向かって一礼し、踵を返した。
(完)