どちらもない交ぜにして、時間は過ぎていく。
裏も表もあるけれど、でも。
気持ちの芯は、変わらない。
ちょっと無神経だったかな、と枕に顔を埋めながら私は思う。こっちの意思を示すのは良いけど、行きたいカフェがあるとかそんなのわざわざ事前に言うことか。そうなると大喜くんはそっちに合わせてくれるだろうから、ジャージ買いにいくのに余計な寄り道をさせてしまうんじゃないか。目的があって出掛けるのに、それを同行者の都合で変えさせるのも忍びない。
遡ること数時間、合宿帰りの玄関前で大喜くんは不意に言ってきたのだ。今度の休み出掛けませんか、と。
まあ、それは構わないし――嬉しいと言えば嬉しい。とは言えほんの少しだけ、疑問はあった。話が突然な事、そして
でもそこに触れる事はなく話は終わって、恙無く時間は過ぎて。
今更ながら私はこうやって、色々考えてしまっている……というわけ。
どうせ大した頭でも無いくせに、一回考え出すと止まらないから始末に悪い。
それにしても、大喜くんから誘ってくるなんてどういう風の吹き回しだろうか。これじゃまるで、所謂一つの――デートではあるまいか。つまり大喜くんは私を、
「あー……いや、いやいや。いやいやいやいや。まさか……うん」
大喜くんは単に買い物がしたいだけ、私を誘ったのはただの気紛れ。そう思わなければ、あれこれと宜しくない事を考えてしまいそう。そもそもが自意識過剰過ぎる、こんなワンパクで逞しい子相手に
でももしかしたら、もしかしたら。
「蝶野さんと、何かあった……のかな……」
大喜くんと蝶野さんは、
それに本当なら私は、それを邪魔しないように身を引かなければならない筈だ。私は大喜くんを「気になっている」、蝶野さんは大喜くんを「好き」。その差は歴然だ、そんなのは分かりきっている。二人の事を思うなら、用事があるとか言って断るべきだ。
だけど、……それでも。
私は少しずつ大喜くんを好きになりつつあるし、近付きたいとも思っている。その気持ちを嘘にしたくはない。
まったく、酷い女だな私は。後輩から好きな人を奪おうとしているみたいじゃないか、これじゃあ。
難しいな、まったく霊長は。
どうしたものか、と寝返りを打つと隣室からも何やら物音が聞こえてきた。
ひょっとして大喜くんも、色々考えているんだろうかな。
……なんて、柄じゃないな。こういうのは、さ。
「千夏、こっち! パス!」
「っぃ、…遅いって! 」
渚の進行方向目掛けて打ち出した筈のボールは、何もない空間を通り抜けてコートの外へ。あぁ、もうちょっと進んでてくれれば通ったのに。どうも渚は足が止まる癖があるんだよね、ディフェンス向きだし仕方ないんだろうけど。
いつものように練習中の私たちは、これまでと何も変わっていない。合宿を経ても、やるべき事は変わらないから。
ただ前を見て挑んでいく、それだけだ。
それだけなんだけど、でも。
今はほんの僅か、心に引っ掛かるものがある。
同じ体育館に大喜くんと蝶野さんがいる、それが何処か気まずい。だからって練習の手を緩めたりはしないけど、どうも胸の奥に異物感がして仕方ない。
この微かな息苦しさは、なんなのだろう。
その正体が分かれば、楽になれるのだろうか。
まあ――今は堪えよう、考え事をする暇なんか無い。
今日も今日とて、頑張らなければ。私は部活で手一杯なんだから、集中しよう。
大丈夫、きっと問題ない。
差し込む秋の陽射しを受けて、私は気合いを入れ直す。さあ続きだ、行こうじゃないか。
頑張れ私、進め私。