キングマンボ。史実では欧州の芝マイルで活躍、三つのG1タイトルを獲得し、芝ダートや距離を問わずに名馬を輩出してきた名種牡馬ともなった存在。それはウマ娘としても変わる事がなく、G1三勝を遂げ、現在は実家の海運業を手伝いながらも自らスクールを設立、後進の育成に尽力しているレジェンドウマ娘の一人。
「しかしメジロランページが此処まで気さくなウマ娘だとは思わなかったな、もう少し硬い物だとばかり……」
「俺から硬い所の要素ってあるのか?基本やりてぇようにやってるだけでしかないから何とも言えないなぁ……マスコミのあれこれを言われたら何とも言えないんだけどさ。まあ気楽に頼むよ、俺自身は堅苦しいの得意じゃないんでね」
「まあ当人がそういうならこっちも気楽にいかせて貰うが……よくよく考えてみればあれだけ暴れ回っていたウマ娘が堅苦しい訳もないか」
「どういう意味だおい」
色々と物申したい所もあるが、キングマンボにはデビュー前の面々の相手をして貰う事にした。どうやらキングマンボも後進育成のスクールをやっているらしいのでそういう意味でも適役と言える事だろう。
「……」
「どんな印象?」
「あれだけハチャメチャにやっているくせにメニュー自体は極めて堅実で基礎的な物なんだな……育成方針も酷く突拍子ないものを覚悟していたのだが」
「人を何だと思ってんだテメェ」
これもこれまでの行いのツケなのだろうか……毎度練習云々で同じ事を言われている気がするのだが……。
「だが極めて正しい事だ、欧州では優秀な者だけに厳しい上に応用を重点に置いてトレーニングを与え、それ以外には雑なトレーニングを課す事も少なくない」
「なんだ海外は随分と意味分からねぇ事やってんだな」
「いや、全く以て耳が痛い話だよ。有望株だけに注力するというやり方を否定する訳ではないが、それでは指導者の実力のなさを自己主張しているようなものだ」
一流の指導者であるならば一流の選手を鍛えてこそ一流だという考えがあるのだろうが、ランページはそうは思わない。一流であるならばどんな選手でもキチンと育てられて満足がいく結果と共に引退をさせてやれる存在だと思っている。
「ンでお前さんから見て気になる奴いるか?」
「……実力、という意味合いではないのだが……」
そう言って向ける視線の先には……
「やるデ~ス!!!」
「ちょっエルちゃんそれは無理じゃない!!?」
「為せば成る、な差せば成らぬ何事も!!ってこの前の金曜ロードショーで言ってたデース!!」
「エルちゃん凄い凄い~頑張れ~!!!」
トレーニング用のシンザン鉄を付けながらも巨大なタイヤを引っ張っているエルコンドルパサーの姿がそこにあった。高負荷メニューに加えてはいたが、今の段階であれを引っ張れるのは中々だな……と思っているとキングマンボがぼそりと呟いた。
「彼女からは運命的な何かを感じずにはいられないな」
「またそれか、色んなウマ娘から聞くが流行ってんのそれ」
「分からないが……本当に何かを感じるんだ」
まあ恐らく史実要素なのだろうが……キングマンボはエルコンドルパサーの父親でもあったのでそれがウマ娘では運命的な何かを感じる要因になっているのだろう。ならばキングマンボはエルコンドルパサーの指導をさせておいた方がいいかもしれない。
「お~いエル、ちょっと来てくれ」
「Why?あっは~い今行くデース!!」
「タイヤは外してから来んかい!!!」
そんな寸劇染みた所もありながらもやって来たエル、改めて見てみると確かに二人は似ている気がする。キングマンボがマスクを着けば判別は体格以外では難しくなる恐れすらある。
「海外から来たキングマンボ、キングのお袋さんが呼んでくれた人だ」
「キ、キングマンボさん!!?欧州でG1三つ取った凄い人デース!!?」
「まあ俺の方が凄いんだけどね、G1獲得数は」
「君にマウントが取れる人など、それこそキンチェム公ぐらいだろうに……」
分かっている、分かっているからこそ言っているのだと胸を張っているランページに溜息を吐きながらもキングマンボはエルコンドルパサーをじっと見る。それに呼応するようにエルもキングマンボを見る。
「フム……」「ムムム……」
「何がムムムだ、どったのよお二人さん」
「「運命的な何かを感じる……!!」」
「何、俺だけすげぇはぶられてるんだけど」
「でも、私はランページさんにも運命的な何かを感じているデース!!」
「えっ俺にも?」
そんな事もありながらも、エルはキングマンボの元でメニューを行う事になり、ランページはデビュー前組の指導に注力する事になった。ある意味でこれが一番助かるかもしれない……。
「あっそうだ、来週にはカノープスの面々来るからな」
「ええっカノープスの皆さん来るんですか!!?」
「ついにで来なくてもいいだろうリギルも合流します、マジで来なくていい、リギルだけ蹴り出せねぇかな……」
「なんで―――ってああそうか、フローラさんがいるからね……」
「アヤベさん、フローラにさん付けは要らねぇぞ。いや付けてやれ、あいつら妹からさん付けで呼ばれてダメージ甚大で最近マジで体調崩してきてるから」
「なんでなのよそれはそれで……」