迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第27話

 夕闇の空、ハイエルフの里をシュードは1人歩く。

 

 あの事件以降、長老に頼んだとは言え道行く彼等はシュードを見るや否や跪き道を開ける状態である。

 

 そんな様子にシュードは少しやらかした思いで一杯だった。

 

 気まずいなぁと思いながら動物達が休む水辺に歩いて行く。今は人よりも動物達と戯れたい気分だった。

 

 丁度、そんな時だ。急ぎ顔の焦ったハイエルフの義兄に会ったのは。

 

「っ!? み、見つけましたっ……!! 風神の神子様っ……!!」

 

「そんな様子で……。何かありましたか?」

 

 この際、今日は風神の神子である呼称は訂正しない事に決めていた。

 

 みんな混乱しているのだ。今日くらいは我慢しよう。そんな事を思っていると義兄は決死の覚悟を決めて謝罪した。

 

「今朝は大変っ申し訳御座いませんでしたっ……!! 風神の神子様とは知らずにご無礼を働いてしまいました!!」

 

「頭を上げてください。あれは風を隠していた自分にも非があります。郷に入れば郷に従う。

 

 オイラの故郷に古くからある言葉です。オイラは次元転移者。長老にも言いましたが余所者です。

 

 それなら、この世界に入った以上この世界の……ハイエルフのルールを守らなかったオイラにこそ非があります。

 

 どうか、顔を上げて下さい。食事を共にした同胞よ」

 

 必死に謝罪をする義兄はしゃがんだシュードによって起こされ手を差し伸べられる。

 

「っ!? なんとっ!? 私なんかにその様な事を掛けて下さいましてっ……!?」

 

 ハイエルフの義兄は自決する覚悟でここに来たのだろう。

 

 謝罪する彼は涙で顔が濡れていて今朝は見なかった短剣を持っていた。服も自害しそうなほどの軽装だったからそう思った。

 

「貴方がご結婚されると言うのに面倒を掛けてすみませんでした」

 

「あっ、いえ……神子様が謝る事ではありません」

 

「オイラは今、ここで1人音楽を奏でたいのですが……聞いて行かれますか?」

 

「っ!? そんな名誉な事を私がっ……!? よろしいのでっ……!?」

 

「食事を共にして迷惑を掛けた貴方だからこそ、です。それに今日は良い星が見える。

 

 1人寂しく音を奏でるよりも誰かに聞かせる為に音を奏でたい。それを聞く事で今回の一件は不問とします」

 

 元々、今朝の段階でチャラなのだが元の世界にいる長寿のエルフ達も頑固だからこうして理由を付ける必要があった。

 

「っ!? 有難き幸せで御座います!」

 

 そして、彼は袋からトゥーラと言う楽器を取り出すと懐かしむ様に音を奏で始めた。

 

 この曲は旅で知り合い短い間だったが師事したトゥーラ弾きの地の精霊の紋様がある老人から教えて貰った曲だ。

 

 名前は確かジャンとか言う老人で昔若い頃は何処かの一族で何か使命を抱えていたとか言っていた。

 

 彼は同じ精霊の紋様がある自身とは違い精霊を宿していなかった。

 

 偶にそう言う存在も居る。生まれ付きとは違い成長段階で段々と浮き彫りになるタイプだ。

 

 オイラの宿す精霊も正式には風の精霊の分霊であり正しく風神なのか怪しいと思っている。

 

 今、奏でている曲も本当は彼の結婚式の時に一発芸的な感じで奏でる予定だったモノだ。

 

 その曲の名前は結局教えてはくれなかったが悲しくも切なく、それでいて何処か故郷に通じる何か懐かしさが感じる曲だった。

 

 ジャン師匠もこの曲に思い入れがあったのか何度も弾いている内に勝手に覚えてしまった。

 

 風と音楽は相性が良い。だからだろうか? 短い間でも大抵の楽器は習熟出来てこの曲も自然と出来る様になっていた。

 

 曲を奏でている内にシュードの周りには動物達が集まりだして共に音を奏でる。

 

 もう夜だと言うのに彼等は曲に合わせて自身の鳴き声を発する。ちょっとした大道芸みたいだが今はこれが良かった。

 

 夜の景観に合わせてトゥーラで次々と音を奏でる。

 

 時折、袋から出した酒を義兄と飲み交わしツマミを食す。音楽に協力してくれた動物達へ食料を渡して奏で続ける。

 

 そうなるとシュードを気に掛けていたハイエルフ達も自然と集まる。

 

 そして、シュード達に倣い酒やツマミを飲食しながらその音を聞いていた。

 

「これにて貴方の罪は削がれました。だから、そう気に病まないで下さい」

 

「……感謝致します」

 

 ハイエルフの義兄はシュードの心遣いに涙していた。

 

 ハイエルフはヒュームと違いそれはもう長く生きる。

 

 だから、知らなかったとは言え風の神子であるシュードへの無礼は一生物の後悔となる。

 

 それを分かっているからシュードはあえて名誉な事を罰として罪を削ぐ機会を与えてくれた。

 

 シュードの隣で音を聞き、共に食事を交わす行為は後ろにいたハイエルフ達にとっては羨望だった。

 

 例えそれが、罪を削ぐ為の罰だとしても一生自慢出来る位には風神の神子と言うのは凄いのだ。

 

「さぁ、もう夜も遅いです。休みましょう。君達もこんな時間に悪かったな。でも、楽しい夜だった。ありがとな」

 

 シュードは共に音を奏でてくれた動物達に感謝すると彼等もそれに応える様に鳴き声を上げて去った。

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