──すべては君の為に。
短編、起承転結の四話で締められたらいいなと思います。
次回更新は未定です。
暇つぶし。
結末は決まってるけど書く時間がない。
気分次第。
それでもよければどうぞ。
◆◇◆
そこにはありとあらゆる恐怖があった。
その巨大さへの恐怖。
それが迫りくる恐怖。
敵わないと思い知らされる恐怖。
人々は逃げ惑い、
所詮は
敵わないと瞬時に判断し逃げに徹することが間違いだとは誰も言えまい。
その判断は正しい。しかし誰もが逃げ急ぐあまりこの場は混沌に満ちていた。
そんな人の流れに逆らって突き進む、一人の男がいた。
男は運命の流れに逆らって悠然と歩を進める。
その足取りに躊躇いはなく、それどころか気品すら感じられる。
その顔に恐怖はなく、むしろ笑みすら浮かべていた。
中学生らしからぬ
日本人らしからぬプラチナブロンドの髪を
男は町を破壊しながら迫ってくる巨悪の前に立ち塞がり、
その拳を天へと突きだして、
──名乗りを上げた。
「──我が名は、──“ゼノ”!!!」
そのえらく透き通るような声はただ一言で、──この狂騒の響き渡る世界を塗り替えた。
逃げることだけに一生懸命だった者たちに、
転び、走れず、ただ恐怖に涙目になっていた者たちに、
逃げることはせずとも、挑むことは躊躇っていた者たちに、
その声は不思議と胸に響いた。
心に安心を、頭に冷静さを与えた。
「あの巨大ロボットを打ち滅ぼし!
──この場のヒーローになる者の名だ!」
彼はそう宣言した。
ありえない。無茶だ。勝てるはずない。
人々は内心そう思う。自分らはまだ中学生であり、それはつまり彼もまた自分たちと同い年であるということだからだ。
しかし、でも、だけど。
彼の力強い声が、彼の自信に満ち溢れた背中が、威風堂々とした態度が、
──そのカリスマが、彼らに一考の余地を与えた。
──彼なら、もしかしたら。
そんな可能性を、そんな希望を与え得るカリスマ。
それは資質。大いなるヒーローになる為の資質である。
「──しかし!
オレ一人の力ではあれほどの大敵には勝てない!」
彼はしかし言った。
己では倒せないのだと。
──ああなんだ。
結局自分たちにも戦わせるのか。そういう算段だったのかと、そう落胆の念が、
期待を裏切られたような
自分たちが協力したところで、勝てるはずがない。
自分たちには挑む勇気などない。
そんな自虐と己への失望の念が、彼らの心に浮かんだ。
──しかし、そんな彼らにゼノは言う。
「──大丈夫!
君たちを危険な目に合わせることはしない!
だけど少しだけ!
君たちの力をオレに分けて欲しい!」
──力を、わける?
何を言っているのだろうと、誰もが思った。
しかし、その声は真剣そのもの。
信じていいのか、ただのペテン師なのか。
どうしたらいいのかわからず戸惑う人々。
信じたい、しかし信じきれない、
そんなもどかしい思いを感じる。
そんな民衆に彼は言った。
「──呼べ。
──我が名を呼べ」
ただ、呼べ、と。
呼んでどうなる?そういう個性か?
やはり疑念は消えず、しかし──。
「さすれば私が君の、──ヒーローになろう」
───。
誰もが言葉を失った。
そのあまりの傲岸不遜っぷりに。否。
そのあまりの差に、である。
自分と、彼との差に、
その確固たる自信が、その圧倒的なカリスマが、
──他とはまるで違う。
──“本物”
故に。
「ぜ、ゼノっ」
ぽつり、ともはや静かになった会場に、
小さなつぶやきが響いた。
その
「ゼノっ」「ゼノッ」「ゼノ」「ゼノ!」
「「「「「「──ゼノ!!!」」」」」」
その場にいた十数人へと波紋が広がり、
皆の心が一丸となって響いたのである。
「──声援、感謝する」
彼の周囲を金銀のオーラが包み込んだ。
まるで神の如く荘厳な
爆発的に膨れ上がったその圧倒的な存在感が、
見るものすべてを魅了する。
その正体は無論──彼の『個性』。
其れは力。
其れはただ一人の為の力。
其れは君の為だけに振るわれる力である。
君たち一人一人の想いが、願いが、
彼の美しく華やかな力の結晶となって顕現するのだ。
其の名は、その個性の名は、
──『
皆の声援が彼に力を与える。
彼はその身を小さくかがめて、
───跳んだ。
その衝撃波は凄まじく、辺り一帯に暴風が吹き荒れた。
──っ。
凄まじい風に目を開いていられなかった少女は、
風がやんだと同時にゆっくりとその瞳を開き、
そうして上を見て驚愕した。
──遥か上空にいる彼の姿に。
「すっ」
「「「「「「すげぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」」」」
一部の男子が大熱狂している。
───。
少女もまた無言で熱に浮かされていた
すごい、すごい。
それはまるで本物のヒーローのようで。
──でも。
それと同時に感じる悲しさ。
自分も、そんなヒーローになりたくてここにきたはずなのに。
それなのに、自分は助けられる側にいる。
しかし、今は彼を応援するべきだろう。
少女は意識を切り替えて、応援する。
「頑張って!」
すると、どういうわけか聞こえていたようで。
彼は上空でこちらに振り向き、親指を挙げてウィンクしてきた。
「──っ!」
その姿はちょっとだけ……格好良かった。
そんな風に大勢の見守る中、彼は唸り声をあげてその拳を振り上げた。
「ウォォォォォぉぉぉぉ!!」
すると、全身に纏っていたオーラが右手へと集まり、
その拳が遥か上空にいるにも拘らず、
地上の人々にも直視できないほど光り輝き始めた。
その様はまるで太陽だ。
おそらく力を拳に集約しているのだろう。
限界まで集約され、白光に至った拳。
その拳を振り上げて、彼はヒーローの専売特許である必殺技を高らかに言い放つのだ。
──ハイパー
──ギガンティック
──アルティメット
──エキセントリック!
──だ、ダセぇ……。
皆が思った。
「──ゼノ・インパクトッ!!!!」
最後までダサい決め台詞。
──しかしその威力は絶大。
高層ビルに匹敵する巨大さと強大さを持ち合わせた破壊兵器をいともたやすく、
──そのただ一撃でもって打ち滅ぼしたのだ。
機械の上半身にあたる部分を、そのかけらも残さずにこの世から抹消せしめたのだ。
───。
誰もが、ポカーンと口を開けることしかできない。
思っていた数十倍の力。
誰もが破壊されゆっくりと後ろ向きに倒れゆく巨大ロボットに気を取られて、
──気づかない。
それを為したヒーローが、
──高速で頭から落下していることに。
否、一人だけが気づいていた。
たった一人の少女だけが、助けられる側であることを嘆いていた少女だけが、
その自然でない様相に走り出すことができたのだ。
そうしてもの凄い勢いで落下してきた彼を、
彼女はその“
「──だ、大丈夫……?」
「あっはっは、すまない。オレとしたことがうっかり力加減を間違えてしまった」
少女は彼の額に大量の汗が浮かんでいるのを見て取った。
彼はきっと無理をしていた。
どのような“個性”をもっているのかはわからないが、
おそらくなにかしらリスクがあるのだろう。
「と、いつまでも重荷になるわけにはいけないね。
失礼した」
「え、ええ」
そういって彼は彼女の舌から降りた。
少女はよく考えたら異性を舌で掴んでいたということに、遅れながら気づいて顔を赤くした。
そんな彼女をよそに男は改めて名乗った。
「オレは“栂”──
──ヒーロー名は『ゼノ』!
よければゼノと呼んでくれ!」
「え、ええ。えっと、ヒーロー名?」
「ああ!
オレはいずれ──ナンバー1ヒーローになる男だ。
なら今のうちにヒーロー名を考えておかなければいけないだろう?」
「そ、そう、ね?えーっと……」
なんとなく、話がかみ合っていなかった。
少女はだいたいの人に話を合わせられる自負があったが、彼ほど我の強い人は初めてだった。
しかし、名乗られたなら名乗り返すべきだろう。
「わたしは、──蛙吹 梅雨よ。
梅雨ちゃんとよんでくれると嬉しいわ。
それと、言いそびれないうちに言っておくわ。
──助けてくれてありがとう。
よろしくね──ゼノちゃん?」
「はっはっは、ゼノちゃんとは初めて呼ばれたな。
──ああ、こちらこそよろしく頼む。
先ほどは助かった、──ありがとう梅雨ちゃん」
そう言って二人は握手を交わした。
──これが、この物語の主人公と、
──そしてヒロインの、初めての出会いだった。
◆◇◆
まぁ、暇な時にパパっと書いてテコ入れしてスッキリした話が書ければいいかなーなんて。更新は遥か先か、もしくは更新されないので気にしないで。