正直に言うと予告風になっているのかすら分からん。だってそう言うの見ないから。
心して見て置け、栄養不十分でもやしにもなれなかった種のなれの果てである。
「僕にはヒーローなんて似合わない。貴方は……僕なんかよりも強い火を、心に秘めている」
「フィリップさん……」
「知っていますか? 夕暮れ事務所の事を」
「あ、はい。代表ヒーローのヒーローネームはダウン、夜明けっていう意味を持つ名前で、個性は刻印、確か触れた物を発熱させる個性でした」
「流石ですね。……数年前、彼は当時の私を守って、命を落としたんです」
紅茶のカップに口を付けるかと一瞬迷って、触れた手でカップが静かに卓上を滑る。
昔は紅茶を淹れるのに慣れなくて、彼に何度か微妙だと言わせてしまった。今は上達したけれど、彼の前にそのカップを置く機会は既に失われていた。
「彼だけじゃない。サイドキックの
皆の顔を思い出しては、彼を苛める声と幻聴とが聞こえてきて、思わず眉を顰める。
お前の所為だと、余計な事をしなければ皆生きていたのだと。
「彼らの代わりを私が勤める……なんて思い上がった事、考えられません。私は……」
「この世界の個性は、大きく二つに分類できるの。個性因子と呼ばれる、ある日突如として広まった個性。そして……光の種による個性」
「光の種……?」
「ええ。噛み砕いて言うと、それは人々の可能性を指し示す物。往くべき所を見失った人々に、指標を見せる存在。それが光の種よ」
「そう、ですか。二種類の個性がこの世に……」
高く積み上げられた本と天井まで届く程の本棚の下で、蒼い髪の彼女は本を一つ取り出して僕に渡す。
「個性因子による個性は、あくまで身体能力の延長線上にあるもの。けれど光の種は、心の力を実体化させる事が出来るの」
「EGO……ですか」
受け取った本の表紙を見て、思わずそう呟く。『EGO関連の暴走事例』、と書かれていた。
「ええ。そのEGOっていうのはつまり、光の種に由来する個性の事よ。……それ、世間じゃねじれ事件って言われてるけど、私たちはEGOの暴走と捉えてるわ」
「……」
「個性とは違って、強い意志と自我を抱く事で、EGOは初めて発現されるわ。けれど、もしも意志が揺らいで自我が歪んでしまうと……それは自我を取り込んで、暴走するの」
ドキリと、どうしてか心が大きな一拍を打つ。
何故だか嫌な予感がした。無意識に浮かんだ想像を、暗に彼女が認めている様な気がした。
「しっかり読んでおきなさい。心の問題だから対策は難しいけれど、備えるくらいは出来るわ」
「はい……」
「それじゃあ、私は別の仕事があるから。ローラン、後は頼むわね」
「はいはい、しっかり見ておきますよ。アンジェラ」
もしかして……と、期待するような、あるいは恐れる様な曖昧な感情のまま、ページを捲る。
そうすると、遂に見つけてしまった。私の知っている土地で、あまりにも思い当たりのある事例が、ある一ページに綴じられていた。
心が何かでかき乱されている感覚がする。僕の心を乱す声が聞こえる。黙ってくれ、黙ってくれ、僕はそんなつもりなんじゃ……。
「……盗み聞きとかそういうじゃないんだが……アンタの生徒から聞いたよ。サルヴァドールに育てられてたんだって?」
僕が薄暗い何処かに沈んでいくところを、男の声が引き上げた。
……今、サルヴァドールと言ったか? 僕の聞き違いだろうか。普通皆はヒーローネームで読んでいるし、エンデヴァーといった有名どころは兎も角、本名はあまり知られていない筈だ。
「はい、僕の師匠でした。子供も居たというのに、僕に色々教えてくれて……。貴方は、知り合いだったんですか?」
「まあな。顔を合わせて、肩並べて戦って……あとはまあ、幾つか貸しがあった。一緒に戦ったのは煙事件の時の事なんだが、知ってるか?」
「いえ……」
「そうか。ああ、そっちにも書いてあるかもしれないな。あれも、まあ……一応EGO関連の事件だったから」
「……」
正直、このページをあまり読みたくは無かった。最後まで読まず、ローランさんが言う煙事件の項目を探す。
探せば、直ぐに見つかった。他のページでは暴走した姿が描かれていたが、これにはそれが無かった。
「あー、そっか。色々事情があるもんな……。詳しい情報が載ってないって事は、あれ、言わなかった方が良かったか? まあ、えっと、これは内密にしてくれるか?」
「……はい」
「まあアレだ。……アンタに助言、って程でもないんだが。一つ覚えておいてくれ」
「これもそれで、それもこれだ。関わりたくないとか言って距離を置くより、きちんと向き合った方が良い」
「皆さん……」
「フィリップ。今すぐに逃げなさい!」
「私と一緒に行きましょう。大丈夫です、先生たちが守ってくれます!」
また、守ってくれる。
また、誰かを犠牲にする。
嫌だ。もう誰かを犠牲にして逃げたくはない。
──いや、これはただの虚栄だ。
誰かの為になんて言って、結局は自分の為にやっている事だった。
認められようと、誰かの為に行動していただけだった。
「嫌だ」
「何を言っているんですか?!」
「もう、悲しみばっかりを抱いては居られない。悲しみに暮れて、挫折ばっかりして蹲ってなんか居られない」
「……! その翼は……!」
「この感情を捨て去ることはできないけれど。……それなら、いっそ」
「フィリップさ────」
「悲しみを抱いたまま、何度だって起き上がってやる」
「フィリップ……。黄の灯火」
誰か書け。
フィリップが特色を授かるとしたら、黄の灯火? 都市らしさがあるばかりで、ヒロアカらしさは感じないなあと。
物語としては学校に教育実習生(とは名ばかりの事実上の生徒)として引き入れられて、主人公たちと一緒に物語を歩む感じ。
クラスのお兄さんポジみたいな事になると思う。
オリジナル設定として、ヒロアカ世界における個性には、原作通りの個性と光の種由来の個性が存在します。
世間一般には同一の物と捉えられてますし、なんならそんな種類があるなんて知られてませんが、例の図書館組は光の種の秘密を知っています。あるいは光の種を撒いた主犯。設定としては後者を想定してるけど、物語の展開しやすさとか面白さで考えると、やっぱ前者が良いかも。
物語として締めるなら、オリジナル展開の中でやった方が良い気がする。物語設定改変も良いとこだ。光の存在の所為で、多分色んな所で辻褄が合わなくなるぞ。
あとの妄想(設定)は、活動報告にでもまとめておこうかと。
……気が向いた時に。