現代艦しか建造されない鎮守府(仮)   作:秋月艦隊

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第41話 暗躍する娘達【艦娘side】

時刻は午後5時ほど、赤道に近くまだまだ日が高い時間に鎮守府内の艦娘は一か所に集められていた。

 

「ブルーリッジ…本当にここに集めて良かったのですか?」

 

インディペンデンスの不安そうな声と集まった者たちからの懐疑的な視線が集まる…その代表者は勿論キーロフである。

 

「今更、貴様の能力は疑っていないが…この場所はなんだ?馬鹿げた話なら容赦はしないぞ」

 

苛立ちを隠さずキーロフが問いただす。

何せ皆が集まった場所は普段使用する作戦室や執務室では無く、資源を保管しておくために建てられた倉庫の奥であったからだ。

鎮守府の主要な建築物とは物理的に離れた場所にあるこの倉庫に休憩中の艦娘を集めるのはいささか…いや、かなり不自然で怪しい行動であった。

それこそ、ブルーリッジと同様にその”能力だけ”は信頼してもいいと認めているキーロフもその評価を取り消すべきかと思う程度には不穏な空気が漂っていた。

 

「いえ、今回皆様に集まってもらった理由の重大性を考慮しての場所です」

 

ブルーリッジは毅然と言い放った。

彼女は続けて語る。

 

「提督が内地への帰還を大本営より命じられました」

 

「ほう…確かに馬鹿にはできないな」「…今さらですか」「ニホン――懐かしい響きですね」「帰れるのか?またあの場所に?」「呆れる…」「はぁ、大本営め」「信頼出来るの〜?」「…はぁ」「内地!日本に?やったー!!」

 

集まった艦娘たちが口々に思いを口に出す。

喜ぶもの、不安がるもの、思考を巡らせるもの、そして忌々しく考えるものなど、艦娘達の止めどない言葉はその件の重大性を何よりも証明していた。

 

「――そこまで、話を続けますよ」

 

ブルーリッジは止まりそうにないと判断し、軽く手を叩き話を進めた。

話の続きが話されるたびに三者三様の感情を受けべていた艦娘達の表所はこわばる、衝撃からか聞こえてくる話の内容が頭に入っていないであろう者もいた。

しかし、ブルーリッジは構うこと無く話を続け大まかな内容を伝えた、話が終わった後の艦娘は始めの反応から一転し、重苦しい沈黙がのしかかっているのか誰一人として口を開かない。

 

「――う、うそだよね…ねぇブルーリッジ?」

 

明るい茶髪をハーフアップにまとめた艦娘が顔を引きつらせながら問いかける。

理解したくない話の内容に途中から意識を半ばショートさせていた少女は認められないとばかりに彼女を見やる。

 

「…いえ、全て事実です」

「そ、そんなわけ無いよっ!だって提督さんはすっごい人で強くて優しいのに、そんな人が勲章をもらうでもなく強制的に出頭させられるなんて!ましてや――日本が…そんな国なわけ…」

「現実を受け入れなさい”いずも”――貴女の記憶の中と今の国家…特に内地は別物よ、それに事実として提督の身に危険が迫っているのに、貴女は過去に縛られて何もしないつもり?」

 

ブルーリッジの斬り裂くような言葉に拳を握りしめる。

いずもは悔しげに視線を足元に向ける。

そして幾ばくかの瞬きの後決意を持って顔をあげた。

 

「うんうん…私は提督さんを守るよ」

「えぇ、良い答えですねそr「でもっ!」…何でしょうか」

「日本のみんなもちゃんと守るっ!艦娘として一番大切なのは提督さんだけど!それに匹敵するくらいみんなを守るって約束したからね!」

 

ニカッと太陽のように笑う彼女に呆れたように溜息をこぼすブルーリッジ、周囲は何とも言えない雰囲気で曖昧に笑う者と誇らしげに笑う者たちに二分された。

クックッとこらえきれない笑みをこぼすキーロフを睨みながらブルーリッジは話を続けた。

 

「はぁ…提督を最優先にするのであれば問題はありません、ご自由に守って下さい」

「まっかせてよっ!ちゃんと約束は果たすよ、提督は何があっても守り抜くからさ!」

「…いいでしょう、話を続けます」

 

疲れながらもブルーリッジは話を続ける。

今さらこの程度では支障は出ない、どうであろうと東側からやじが飛んでこない以上ここでの会話は対して意味を持たない。

結局は予想通りの結果になるだけだ。

 

「目下最大の問題は護衛戦力についてです、これに関して意見がある方はどうぞ」

 

そう告げると艦娘達から一斉に声が上がる。

 

「私としては護衛は同郷の者で固めるべきだと思うが」

「それは無いな…実力で決めるべきではないか?」

「搭載兵装の数で決める気まんまんなのはダサいですよ〜」

「…長距離索敵網は必要不可欠では?ここはスーパーキャリアーの戦力を」

「ごえい、であって殲滅力はいらないんじゃ」

「ふゆつき、あいつらにまともな話を期待するのは辞めておいたほうがいい」

 

思い思いの言葉で相手を蹴落とそうとする娘達。

そんな面々を冷ややかな目線で見る一人の艦娘がいた。

 

「――別に人数を縛る必要は無いのではないでしょうか」

 

周りの艦娘が全員彼女の方を見る。

彼女―――アーレイバーク級イージス艦ミリアスは眼鏡の向こう側に見える鋭い視線を持って応えた。

 

「内地の大本営や民間人にバレなければ何の問題もありません、それどころか想定される緊急時に即座に対処するためにも戦力は多ければ多いほどいいはずです――ですよねブルーリッジ」

「──えぇ、120点を差し上げます」

「お世辞は結構です、茶番は終わりにして本題に移って下さい」

「相変わらず連れませんね…分かりました、それではここからが本題です」

 

彼女は怪しい笑みでこちらを見やる。

ゾッとするほど冷徹な目で見られ、艦娘達は薄ら寒さと…隠しきれない胡散臭さを感じ不穏な空気感になる。

 

「勿体ぶらずに早く言え」

 

そんな空気をキーロフがバッサリと切り捨てる。

ブルーリッジは主導権を失ったことを肌で感じ、面倒に思いつつ本題に移った。

 

「えぇ、まぁ…単純に考えましょう」

「単純?ですか?」

「はい。日本にはこんな言葉があると聞きました」

「それは…なに?」

 

インディペンデンス、ふゆつきの合いの手に答えるようにその言葉を口にした。

 

「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」

「「「???」」」

 

刹那、倉庫内の空気が凍りついた。

インディペンデンスやふゆつき、すずづきも”は?”といった表情を浮かべキーロフやミリアスなどの艦娘も頭痛がするかのように額を抑えた。

唯一納得して呑気に「なるほどーそう言う手もあるんだねっ!」とうなづいているのは、いずも1人だけである。

 

「それは…なにかの冗談か?」

「笑えないわねぇ〜バレなきゃ何やっても良いってヤンキーでは教えられたの〜?」

 

日本出身のイージス護衛艦のあたごとあしがらの2人から非難するような発言がなされる。

しかし…

 

「──致し方ないな」

「うん、しょうがないね」

 

同じ出身の汎用護衛艦すずづきとふゆつきは真逆にブルーリッジの発言を肯定し、積極的に認めるような立ち位置に立った。

 

「祖国に対し弓引く行為だぞ…それを理解しているのか?」

「先に手を出したのは大本営だ、そこを履き違えるな」

「ま〜気持ちはわかるけど、ね?流石にまずいんじゃないかしら」

「問題があったとして立ち止まる理由にはならん」

「実力行使も、やむなし」

「「…」」

「「…」」

真っ向から対立する両者。

日本出身のものとしては二対二の状況であり、平行線である以上結論を出すには同郷の最後の1人に聞く他ないとほぼ同時に視線を向ける。

 

「え?私?」

「お前以外誰がいる!」

「うん…いずもはどう思う?」

「私?私はいいと思うなー」

 

いずもはあっけらかんと応える。

 

「そもそも一番大切なのは提督さんのことを守る事何だからね〜」

「だが国際法や我々の信頼に泥を塗る行為だぞ!」

 

吠えるあたごにいずもは笑みを浮かべる。

 

「国際法なんて本気で機能してると思ってるの?」

「っ…それは…」

「大体、信用を裏切って提督さんを危険に晒している大本営の人たちの信用なんて本当に必要?」

「確かに…提督の身に比べれば些細なことだが」

「でしょっ私たちは提督と日本のみんなを守るけど、別に腐敗した大本営を守る必要はないでしょ?」

「…わかった。確かに提督の安全には変えられない―――だが、攻撃に関しては別問題だ、致し方無い状況になったとしても軍事施設だけを狙わせてもらう」

 

そう言うとあたごはもう話すことはないとばかりに黙り込んだ。

いずもは、そんなあたごの様子にふふっと笑みを浮かべブルーリッジの方を見る。

 

「――話も落ち着いたようですので、編成を発表します。まず空母戦力としては”いずも”と”キティホーク”の2人に日本沿岸に展開していただきます」

「まっかせてよっ!」

「はい――分かりました」

 

いずもが飛び跳ね、キティホークは静かに頷いた。

 

「その護衛をイージス艦のあたご,あしがら,ミリアス…そして今は居ませんがタイコンデロガに任せます」

「承った」

「わかったわ〜」

「了解いたしました」

 

「現在いない原子力潜水艦の3人は太平洋全域に展開し報復戦力として隠密行動を取らせます」

「妥当ですね」

「まぁそれでいいだろうな⋯で、残りは?」

 

残ったのはブルーリッジ,キーロフ,インディペンデンス,すずつき,ふゆつきの5名。

提督の直ぐ側にいられるのは多くとも3人、彼女たちは視線で熾烈な威圧感を醸し出していた。

 

「…まず私は空母打撃群の陣頭指揮を取ります、提督の護衛は…」

 

固唾をのんで見守る艦娘たち。

 

「インディペンデンス,すずつき,ふゆつきの3人です」 

「ふふっいいですね♪」

「ふっ妥当だな」

「いい感じだね」

 

3人が各々喜びを顕にする。

だが、そんな明るい雰囲気も瞬時に消え去った。

 

Ha?

 

キーロフが光の映らない眼を見開いていたからだ。

 

「どうして私が提督のそばにいられないんだ?教えろ?」

「…少しはご自身の火力を思い浮かべてはどうです?明らかに過剰火力です」

「それの何が問題なんだ、飽和的に敵をすり潰す事に問題でも?敵を鉄屑に変えて何が悪いんだ?あ?」

 

ブルーリッジが落ち着かせようとするも効果はなかった。

逆にそれは火に油を注ぐ行為にほかならなかったのは客観的な事実であった。

 

「えぇ…でもこれを聞けば気持ちも変わると思いますよ」

「ほぅ――言ってみろオンボロ

「黙って聞きなさい万年引きこもり

 

お互いに罵り合う。

そしてブルーリッジは決定的な発言を放つ。

 

「我々が留守の間の鎮守府の防衛、そして運営の最高判断を貴女に任せます」

「―――悪くないな」

 

鎮守府における最高判断、すなわち皆の不在時とはいえ提督と同等の権限を持つという事にほかならない。

実力と信頼関係なくして成り立たない、最大限の信頼の証でもある。

多数の航空打撃戦力に防衛設備、更には弾道ミサイルを含む地上発射型長距離ミサイル戦力全般の発射権限すら持ちうる。

それほどの権限は平時であればブルーリッジにすら許されぬ領域であり、鎮守府内において圧倒的な影響力を示せるのである。

 

「えぇ、提督からの信頼なくして成り立たない立場です。精々提督の顔に泥を塗らないよう精進してください」

「誰に物を言っているんだ?大船に乗ったつもりで待っていればいい」

泥船(ソビエト)じゃないことを期待します」

 

提督に対する忠誠心や恋路以前に艦娘として、提督に他の艦娘以上に求められるほどの名誉は無い。

つまり、キーロフがこの提案を断ることなど初めから存在し得なかったのだ。

かくして、波乱に満ちた会議は終わりを告げた。

 

この結果がいかなる結末を迎えるか、それは海の果てに存在する大本営の出方次第だろう。

 




書けたので以下略。
キーロフが単独でも大丈夫かに関しては…まぁ、提督が最重要なので防衛力が落ち、多少の被害が出たとしても許容できるのと、各種防衛設備を活用すれば問題ないだろうという判断です。
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