パーティメンバーの一人を理不尽な理由で追放しようとしている冒険者パーティがあった。
団長を含む、仲間たちは冷たい態度と酷い言葉を投げ付け、その人物をパーティから追放をしようとする。
だが、そんな彼らにも口には出せない事情があり……。
思い付きと悪ノリのありがちテンプレートファンタジー第二弾。


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冒険者パーティから追放する奴がイイ奴過ぎて死人が出る件

 冒険者パーティの一人を除き、全員が宿屋の大部屋に集まっている。

 全員推し黙ったまま、椅子に腰掛けて最後の一人が現れるのをただ待っていた。

 それから少し経ってから部屋の扉が開き、申し訳なさそうな表情でその待ち人が入って来る。

 

「ごめん。いい薬草を探してて遅くなっちゃった。それでメンバー全員での話し合いっていうのはもう始まってるの?」

 

「ちょうどさっき終わったところだ。ツイフォース。お前を……このパーティから追放する」

 

 俺はそう言って、遅れて来たそいつの荷物を放り投げた。

 

「ま、待ってよ。団長、俺が何をしたっていうんだよ。突然、パーティ追放だなんて……。まさか、集会に遅れたせい?」

 

 荷物を受け取り、今にも泣き出しそうな顔で俺を見上げている男の名前はツイフォース・ワイカーソル。

 俺が作った冒険者パーティ内で薬師を担当している。

 モンスターとの戦闘では物陰に隠れていて、一切活躍しやがらない。

 筋力も魔法力もまったくなく、下級モンスターのコボルトからさえ、身を隠すくらい臆病だ。

 

「ああ、理由は……別にある」

 

「じゃあ、俺が戦闘じゃ役立たずだからか? 剣も魔法も使えない奴だからなのかっ?」

 

「……そうだ。お前がこのパーティの……お荷物だからだ。分かったらさっさと出て行け」

 

 だけど、俺や他のパーティメンバーはちゃんと知ってんだ。

 こいつが戦いで傷付いた俺たちを癒すために、物陰でその傷にもっと適した薬を作ってくれてたことを。

 決して我が身可愛さではなく、俺たちを全力で助けるために戦闘からは離脱せずに身を隠してることを。

 こいつが一番仲間想いだってことを。

 しかし、俺はこのパーティの団長。

 仲間の命を何よりも優先しなければならねぇ。

 ……だから! 

 俺はツイフォースをパーティから追放することに決めたんだ。

 

「ああ、なんて可哀想なツイフォースさん。でしたら、私もあなたと一緒にこのパーティを抜けますわ! 二人きりで一緒に冒険をしましょう」

 

 椅子から立ち上がり、割って入って来た黒髪の少女はツイフォースの腕に自分の腕を絡み付ける。

 メリア・ゴードン。

 先日、このパーティに入った呪言師の少女。

 そして、数刻前にやって来てツイフォース以外に死に至る呪いをかけ、俺たちを脅している魔女。

 こいつがツイフォースに執着しているのは薄々勘付いていた。

 それにそこら辺の呪言師とは一線を画す実力を持っていることにも。

 だけど、まさかここまでイカれた方法取るなんて考えもしなかった。

 奴はどのダンジョンに向かうか決めようと集会を開いた俺たちに呪いをかけ、こう言い放った。

 

『私がツイフォースさんと二人きりで冒険の旅に出られるよう、彼をこのパーティから追放しなさい。さもなくば、呪いによってあなたたちは全員もれなく出血死することになるわ』

 

 全身から血が噴き出し、内側から弾けて死ぬ呪い。

 団長として、パーティメンバーをそんな目に合わせる訳にはいかねぇ。

 俺だってまだ死にたくねぇ。

 クソッタレのメリアだって、そんなにお気に入りの男を殺すような真似はしないはずだ。

 だから、メリアが全員の呪いを解くために俺はツイフォースを売ると覚悟を決めた。

 悪いな、ツイフォース。本当にお前には悪いと思ってる。

 だからよ、恨むんなら俺一人を恨んでくれ。

 

「メリア。君の気持ちは嬉しいけど、呪言師はこのパーティに必要な存在だ。……わかったよ、団長。俺はこの瞬間からパーティメンバーを辞めるよ」

 

 ツイフォースは儚げに微笑んでから、メリアの腕を引き剥がした。

 まあ、ツイフォースはそう言うよな……。それがこいつのいいとこでもあるんだが。

 メリアが呆気に取られた顔をした後、ツイフォースに見えない角度から三白眼で俺を睨む。

 その途端、指先の血管の一つが破け、つうっと一筋の血が流れ出す。

 ぐおおおおお! 痛ってぇ!

 ……同行できるよう、俺にもっとツイフォースを傷付けろとでも言わせたいのかよ。

 だが、これ以上大切な仲間に言う酷いことポンポン思いつかねぇよ!

 やべぇ。俺、もう駄目かもしんねぇ……。俺が惨たらしく死んだら、新しい団長の下でパーティでも作ってくれ。

 生を諦めかけた時、ガタンと椅子に座っていた軽戦士のボレルが口を挟む。

 

「おいおい、ツイフォース。お前みたいな何もできないクズが一人でどうしようっていう気だよ。大人しく、お優しいメリアの慈悲に縋っとけって」

 

 ボレル……! お前、まさか悪口が苦手な俺のために悪役買って出てくれたのか!? 

 

「ボレル……そんな風に俺のことを思ってたのか……友達だと思ってたのに」

 

 嘲笑気味に言うボレルにツイフォースは俯いてしまう。

 そんな訳ないだろうが!

 あいつの代わりにそう叫んでやりたい。

 ボレルが獣人だったことで依頼人に反感持たれた時、お前は真っ先に弁護してくれただろ?

 その時、ボレルがどんだけ救われたか。俺は知ってる。

 クソッ。頼む、ツイフォース。この魔女、引き取ってくれぇ!

 願いを込めて、目を向けるが……。

 

「いいや、俺みたいなクズにメリアみたいな優秀な呪言師は不釣り合いだ。このパーティの大事な戦力だからな。俺もしばらく一人になりたいんだ……」

 

 ノオオオオオオオオオオ!

 今度こそ、俺は死ぬ。身体から血を出しながら弾けて死ぬんだ。

 俺だけじゃない。このパーティ、全員死亡確定だ。

 ツイフォースがイイ奴過ぎて、みんな死ぬぅ――!

 絶望を感じた時、今まで押し黙っていた女神官のデュナが話し出した。

 

「なら、さっさと一人で消えればいいじゃない。それなのに言い訳ばかりして、本当は一人になるのが怖いんでしょ?」

 

 冷めた目でツイフォースを蔑んでみせた。

 それを受けて、悲しげにツイフォースは卑屈な笑みを浮かべる。

 

「デュナ……はは、そうかもな。俺はまだ受け入れられてないのかもしれない。こんなにみんなに嫌われてたなんて想像もしてなかったからさ……」

 

 バッキャロー! 本当はな、デュナが一番お前のこと気に入ってんだよぉ!

 前にサソリのモンスターの毒を受けたデュナを二日も徹夜で看病してくれたよな?

 副作用の出ない解毒薬を作るために手のひらに色んな薬品付けて、ボロボロにしてまで治療してただろ。

 あの時からデュナはお前に惚れてたんだ!

 そう言ってやりたい。

 だけど、今はパーティメンバー全員で生き残ることが重要だ。

 恋心まで押し殺した乙女の皮肉、お前に届けぇー!

 そして、傷付いた心を癒すためにそこの外道女を連れて行ってくれぇ!

 

「でも、受け入れないといけないよな。決めたよ、やっぱり俺一人でパーティから出て行く」

 

 力強く宣言するツイフォース。

 俺に三白眼を向けて、更に呪いを強めるメリア。

 後ろに回した手の甲から流血が止まらない俺。

 イヤァァァァァァァァ!

 死んじまう。死んじまうぞ、俺。

 このままだと本気でお亡くなりになってしまう!

 まだやり残したこと、沢山あるのに……未練たらたらなのにぃ!

 だが、絶望感に打ちひしがれる俺に最後の砦であるパーティメンバーの声が聞こえた。

 

「メリアさんもこのパーティの方針に異論があるなら、パーティ抜ければいいのでは?」

 

 メンバー最年長のエルフの精霊術師、ベルノートが眼鏡を指で押し上げながら提案した。

 これにはツイフォースだけでなく、メリアさえも僅かに驚いた顔を見せた。

 基本的に無口なこのエルフの声を聞くのは俺ですら久しぶりだから仕方ない。

 しかし、ナイスだ!

 ツイフォースを傷付けて、メリアを連れて行かせる方向ではなく、メリア自身を一緒に追放する方向に持っていく。

 これならツイフォースは遠慮することなく、同行を願い出ることができる。

 この流れに俺も乗るしかない!

 

「そうだな。おい、メリア。団長であるこの俺の決定が気に食わないなら、お前もツイフォースと一緒に追放してもいいんだぞ?」

 

 できるだけ不自然にならないように尊大に言った。

 一拍してから流血部位が腕まで広がる。

 な ん で !?

 何で今、呪い強めた!?

 俺の態度が気に入らなかった?

 どんだけ、身勝手なんだこのクソ女……。

 でも、これでツイフォースも納得してくれるはず。

 そう思った俺が視線を移すと。

 ツイフォースは土下座をしていた。

 

「えっ!? おまっ、何やって……」

 

「団長。それだけは許してやってくれないか。メリアはただ俺に同情しただけなんだ! 俺が追放されるのは仕方ない……でもメリアは違う! 俺と違って才能がある。みんなにも頼りにされてる」

 

「あ、あの、ツイフォース……?」

 

 俺が土下座をやめさせようとするが、ツイフォースの嘆願は止まらない。

 

「俺は情けない薬師だ。皆みたいに格好良く戦えない。でも……それでも追放されてまで、パーティに、みんなに迷惑かけたくないんだ……!」

 

 鼻を啜りながら、床に涙をこぼして俺たちに顔を上げる。

 

「俺はこのパーティが……大好きだから! 短い間だったけど、俺の、最高の居場所だったから!」

 

「ツイフォース……お前、そこまで俺たちのことを……」

 

 その言葉に思わず、俺まで涙ぐみそうになる。

 俺だって、お前を最高の仲間だって思ってるよ!

 

「だから、メリアを追放するのは許してやってくれ!」

 

 ぐおおおおぉぉぉぉぉぉ!

 やめてくれぇ! その流れだとメリアを追放させづらくなるぅぅぅ!

 ヤバいヤバいヤバいヤバい。

 ツイフォースがイイ奴過ぎて、俺たちの生存方法が断たれちまう!

 もう出血部位が腕だけじゃなく、腹まで来てる。

 死が近い! 死神さんが気軽に挨拶しに来そう!

 ここは押し切るしかねぇ。

 

「だ、駄目だな。俺の決定が聞けない奴はこのパーティに居る資格は……」

 

「待ってくれ、団長……ひょっとして怪我、してないか? 団長から血の匂いがするんだが」

 

 あっ、まずい。俺の出血に気付かれたら、こいつのことだ。

 最後の治療をするために、その原因が何か探るはずだ。

 病気や怪我じゃないと分かったらメリアの呪いにまで辿り着いちまう。

 そうしたら、メリアだって猫を被るのをやめて、ツイフォースにも呪いを掛けかねない。

 最悪だろうが、そんな展開……!

 

「さっさと失せろ! お前の顔なんか見たくねぇんだよっ!」

 

「せめて手当てだけでも……」

 

「何度も同じことを言わせるな! このクズがっ!」

 

 食い下がろうとするツイフォースを蹴り付けて、俺はこの部屋から必死で奴を追い出した。

 薬だけでも作らせてくれと頼むあいつを宿屋から遠ざける。

 ツイフォースがパーティから追放されると、メリアが呆れたように言った。

 

「本当にあなたたちは使えないわね。私は彼と二人きりで居る口実が欲しかったのに」

 

 そのまま背を向けて、部屋を出て行こうとするメリアを俺は呼び止めた。

 

「おい、待てよ」

 

「何かしら? ああ、解呪のことね。残念だけど、死の呪いは解けないわ。対象者が死ぬまで呪いは残り続けるの。たとえ、私が死んでもね」

 

 白々しくとぼけた後、口元を手のひらで覆って意地悪く笑う。

 悪意と嘲りだけで作られた笑みは美しい顔にもかかわらず、不快に感じられた。

 

「……最悪、そんなことだろうじゃねぇかって気はしてたけどよ。実際に言われるとキツイな」

 

「あら? 絶望しないの? 潔いのね。まあ、どうでもいいわ。それじゃあ、私も彼の後を追わせてもらうわ」

 

 扉に手を掛けようとするメリア。

 俺はゆるりと腰に携えた剣を抜く。

 

「何のつもり……?」

 

「行かせねぇよ。少なくともツイフォースの元にはな」

 

 冷ややかな視線と共にメリアは振り向いた。

 漏れ出る魔法力は魔法の素養のない俺にすら目視できるほど濃い。

 上級モンスター……いや、最上級モンスターでさえ、ここまでの魔法力は持っていないだろう。

 

「まさか、私がただの呪言師の小娘だとでも思ってるの?」

 

「いいや。死の呪いなんざ、英雄クラスの冒険譚でも聴かねぇ。大方、正体は古の魔族か何かだろ?」

 

 メリアは、いや、メリア・ゴードンと名乗っていたそれは角と蝙蝠のような翼を服を破きながら生やす。

 紫色に発光する鱗に包まれた姿は人型ではあったが、人間と形容するには醜悪過ぎた。

 

『何故、それが分かっていながら我に歯向かう? 死の呪いに掛かるよりは容易く死ねるとでも思ったか?』

 

 耳まで裂けた口から、長い牙と二股に分かれた舌を出して語る。

 赤く膨張した眼球は昼に食べたトマトそっくりで気分が悪い。

 

「……決まってんだろ? 俺は団長だ。パーティメンバーの命を守るのが俺の役目だ」

 

 皮膚から流れる血が止まらねぇ。

 寒気はだんだんと酷くなる一方だ。

 立っていられるのもそう長くないだろう。

 でもよ、ツイフォースの奴。泣いてやがった。

 命惜しさに仲間を追放するようなこの俺のパーティを最高だって言ってくれた。

 だったら、せめて追放された後の人生にはこんな危険なモンスターは関わらせられねぇ。

 

「それにお前が嘘吐いてないとは限らねぇ。案外、お前を倒せば、呪いが解けて万々歳って行くかもな?」

 

『笑止……。思い上がった定命の羽虫よ。呪いで息絶える前に頭から貪り喰らってやろうぞ』

 

「おー、こわ。本性がそんなんだからツイフォースに相手されねぇんだよ」

 

 ヤバい。意識が朦朧(もうろう)としやがる。

 まだこいつに一太刀も浴びせてないのによ……。

 ぐらりと身体が揺れる。

 倒れそうになった時、後ろから誰かが支えてくれた。

 

「団長、一人でカッコつけすぎ。実際は啖呵(たんか)切って、ぶっ倒れそうになるくらい情けないのによ」

 

 軽口を叩いて肩を貸してくれたのは頼りになる獣人の軽戦士。

 

「ボレル……」

 

 その時、ふっと身体の不調が僅かに軽減される。

 

「少しだけなら神聖術で呪いを軽くできるわ。団長が話している間にずっと小声で詠唱してたけどやっと終わったの」

 

 杖を俺に向けてくれているのは逆境にもめげない強かな女神官。

 

「デュナ……」

 

『ちぃっ……小癪(こしゃく)な!』

 

 魔族から放たれる灼熱の火球がデュナに目掛けて放たれる。

 だが、それが彼女に着弾する前に電撃を纏った鳥が火球を翼で叩き落とす。

 電撃の鳥はそのまま、(ひるがえ)ると、長身のエルフの肩に止まる。

 

「精霊は常時魔法力を纏っています。たとえ、最上級の魔族でも詠唱破棄した魔法では彼らに手傷は負わせられません」

 

 眼鏡をくいっと持ち上げるのはパーティきっての知恵者、エルフの精霊術師。

 

「ベルノート……」

 

「何を驚いているのです? 団長」

 

「そうだぜ、団長」

 

「ツイが言うには私たちは最高のパーティなんでしょ? だったら、団長がしゃんとしなくてどうするのよ」

 

 三人の頼りになる仲間にそう言われ、身体に活力が戻ってくる。

 そうだよな……。俺が弱ってちゃ始まらない。

 

「はっ。誰に物を言ってんだか。俺はこのパーティの団長なんだぜ。メンバーの命は俺が守らないでどうすんだよ!」

 

 不敵な笑みを浮かべて、愛剣のロングソードを振りかざす。

 

『羽虫がいくら集まっても羽虫でしかない! それが分からぬのか!』

 

「短いとはいえ、このパーティに居て、俺たちがどれだけ凄いか分からないなんてガッカリだぜ。メリア」

 

 だったら、教えてやる。

 あいつが、ツイフォースが最高だっていったこのパーティの実力って奴を。

 

『その名で呼ぶな、虫けら共が! 我は貴様らを喰らってあの方の元へ向かうのだ!』

 

 翼を動かし、灼熱の火球を、絶対零度の氷柱を、暗黒の毒矢をそれぞれ作り出して、俺たち目掛けて撃ち出す魔族。

 一撃一撃が上位の魔法。即死級の威力を秘めているのが傍目からでも想像できる。

 だがよ――。

 

「お前が行くのは地獄だけだ! 行くぜ、皆! こいつが俺からの依頼(クエスト)だ。依頼内容は『ダチを狙うクソ魔族をぶっ倒せ』だ」

 

「依頼なら、成功報酬は当然出るんだろうな。団長」

 

「団長がこっそり貯めてたヘソクリから出るんでしょ」

 

「ほう。それなら私は精霊と契約するための呪符代も追加でいただきましょうか」

 

 口々に好き勝手なことを言ってくる最高の仲間たち。

 

「まったくよ。格好良く決まらない辺りがこのパーティらしいっつーか、なんつーか。でも、これが俺たちらしいわな」

 

 ――俺たちの最高の居場所はこんなことぐらいじゃなくならねぇんだよ!

 

「へっ。獣人族に伝わる、とっておきの切り札……幻の秘剣を見せてやるよ! 『決死・雷光爆裂斬』!」

 

「神聖術には神のご加護を一度だけ全開にする術があるわ。『ラスト・アドヴェント』!」

 

「伝説には伝説を……。相応の対価と引き換えに現れる究極の始原精霊の姿に(おのの)きなさい! 『アトラ・ムタ・エドケラフタス』!」

 

 仲間の援護の下で走り出した俺は、大きく跳ねると上段から魔族に刃を振り下ろす。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 命を懸けた俺の最後の、最強の、最高の斬撃を叫びと共に解き放った。

 

 

 ***

 

 

「そういえば、ツイフォースさんを追放したっていう冒険者パーティはどうなったんですか?」

 

 そう尋ねられ、俺は首を横に振った。

 

「それがまったく分からないんだ。俺が別れた後の彼らがどうなったのかは何の噂も入って来ない。宿屋があった街では何でも最上級魔族が突然襲来したそうで、冒険者ギルド内でも情報規制が敷かれて、俺みたいな低級ランク冒険者の権限じゃあ調べることもできない」

 

「最上級魔族? エンシェントドラゴン並に古の存在じゃないですか。冒険者ギルドの情報も眉唾物ですね」

 

 小柄な白髪の少女、ベリーチェがリンゴを齧りながら呆れて混じりにそう言った。

 手厳しい意見に小さく苦笑いをする。

 

「そのエンシェントドラゴンが女の子の姿になって、俺なんかと一緒に冒険者始めてる訳だから案外信憑性あるかもしれないよ」

 

「俺なんかって卑屈な言い方はよくないわ。ツイフォースくんには評価されなかっただけで誰にも負けない才能があるわ」

 

 眼帯を付けた赤い癖毛の女性、ロナさんが酒を煽る。

 

「伝説の剣聖にそこまで言われるほどのものじゃないですよ……」

 

「いやいや、ツイフォース。あんたは自分の才能にもっと自信持ちなさいって。“怪我や病気に最適解の治療薬を作り上げる才能”なんて普通誰も持ってないわよ?」

 

 金髪のロール髪の気品漂う風貌とは裏腹にぞんざいな口調の少女、ファルダが肩をバシバシ叩いてくる。

 

「魔導王の称号を持つファルダなら、傷でも病気でも簡単に治せるだろ?」

 

「それがそこまで魔法も万能じゃないのよ。あくまで魔法力で本来起きる事象を捻じ曲げてる訳だから肉体には負荷が掛かる。若い今なら問題ないけど、歳を取り始めると老化の進行や肉体の劣化が著しくなるって訳」

 

「エンシェントドラゴンも魔法に抵抗力があり過ぎて、治癒魔法じゃ効きづらいです」

 

「私も前線で戦うから生傷が絶えなくてね。ツイフォースくんの薬品には助けられるよ」

 

「天下の剣聖サマが何言ってんの? ロナは傷じゃなくて、加齢による身体の不調じゃ……いへへっ、ひゃめっへ」

 

「ううん、生意気な魔導王のほっぺは柔らかいね。このまま、引きちぎれそうだよ」

 

「ロナさん、やり過ぎですよ! 俺の薬でもちぎれたほっぺは治せませんから!」

 

 俺はこうして新しいパーティで騒がしい毎日を送っている。

 皆、俺より遥かに凄い人たちだけど、取り柄のない薬師にも優しく接してくれる。

 この冒険者パーティの一員としての日々は楽しい。

 でも、時々、ふとした拍子に思い出す。

 団長たちは今、どこでどんな冒険をしているんだろうって。

 冒険を続けていれば、どこかでバッタリ会える日が来るのかな。

 もし会えたなら、どんなことを話そうか。

 団長。

 ボレル。

 デュナ。

 ベルノート。

 メリア。

 たとえ、追放されても、嫌われても。

 俺は変わらず君らが大好きだから。


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