ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 W―ディテクター編 LIV 煌天の剣VS暴虐雷霆

 

〜レイside〜

 

[ウラノス]の双剣と、[ゼウス]の槍がDキューブのバトルフィールド。

天空神殿の中央舞台でぶつかりあう。

ガンッ!ガンッ!ガンッ!と双剣と槍がぶつかる音が高々に響き渡る。

 

「ガーダインより強い・・・・・・」

 

今の打ち合いで、ガーダインが操っていたゼウスより遥かに強いと理解(わか)った。

でも―――

 

「ナメるなよ!」

 

6翼の子機(ビット)全てを操り、砲撃を放つ。

上、左右、真横、前後、とありとあらゆる角度から射出し、純白のエネルギー砲撃がゼウスに向かって射出される。

 

「ふっ。その程度の砲撃・・・・・・!」

 

放たれた砲撃を尽く避けるゼウス。

あっという間にウラノスとの距離を詰め。

 

「なっ!?」

 

戦斧かと見紛うほどの大きさになった槍で横薙ぎに殴って来た。

いや、アレは槍ではなくハンマーだ。

 

「武器が変形した・・・・・・!?」

 

咄嗟に双剣によるクロスブロックでガードする。

 

「ガーダインにはゼウスを使いこなすチカラが無かっただけのこと。アレだけチカラこそ正義だと言ってたクセに、自分はそのチカラを全く扱えてないのだから。滑稽だわ」

 

気絶して倒れてるガーダインに侮蔑と軽蔑の眼差しを向けて言う檜山真実。

 

「何を驚いているの?お前だって武器を変形させるじゃない」

 

「ああ。そうだった、ね!!」

 

LEXのCCMを操作して子機(ビット)の4翼をそれぞれ2翼ずつ、『ネビュラ』と『アステラ』に合体させる。

 

「形態変換(アームドチェンジ)、星刃(シュナイデン)!!」

 

子機(ビット)と合体させ、剣戟をゼウス向かって飛ばす。

が、放たれた光刃をゼウスはハンマーで迎え撃って消し飛ばした。

長剣から大剣程にまで大きくなった双剣を振るう。

 

「その大きさじゃ素早い動きは無理でしょ!」

 

ブースターを掛け、一瞬でゼウスへと剣の間合いに入る。

 

「それはどうかしら?!」

 

「っ!」

 

間合いによる双剣による横薙ぎを、ゼウスはハンマーではなく、形状を刀身の短い雷の剣のような形に変化させて受け止めた。

 

「まだあるのか!」

 

追撃せずバックステップでその場から離れ、残った2翼で牽制する。

砲撃ではなく、射撃による光弾で近づくことが出来ず、その場で光弾を防ぐゼウス。

その間に体勢を立て直す。

 

「(確認しただけでも、ゼウスの武装は、槍、ハンマー、剣の近接系3種。武装の形状からして恐らく遠距離系への変形はない。いや、それでもどんな隠し玉があるか分からないかれ油断出来ない)」

 

ガーダインが使いこなせなかったゼウスを完璧にこなしてるのは、さすがLEXの妹。

兄妹そろってLBXの操作スキルは一級品。

もしLEXと同じなら、あのゼウスには取っておきの奥の手がある。

あそこまで兄のLEXに妄執しているんだ。可能性は無くはない。

ありとあらゆる可能性を示唆。

予測・演算を可能な範囲で行う。

そこに。

 

「―――ヒロ、ラン!コンビネーションでレイを援護だ!!」

 

「「了解!!」」

 

「っ!」

 

兄さんの[イカロス・ゼロ]、ヒロの[イカロス・フォース]、ランの[ミネルバ改]がゼウスに向かって攻撃しに行った。

 

「兄さん!?」

 

「レイ、一人でやるな!俺たちもいることを忘れるなよ」

 

叱責する兄さん。

兄さんたちは連携してゼウスを攻撃する。

だが。

 

「甘いわよ!」

 

武装形態を剣からハンマーにしたゼウスによって、イカロス・フォースとミネルバ改が一緒に吹き飛ばされ、イカロス・ゼロは壁面へと叩き付けられる。

 

「っ!」

 

「つ、強い・・・・・・!」

 

「バンさん。このゼウス、さっきまでのゼウスとは別物です!」

 

ほんの少しの打ち合いだけでゼウスの性能の高さに慄くヒロとラン。

その間にもゼウスは打ちのめすようにイカロス・フォースとミネルバ改を攻撃する。

 

「兄さんとヒロは僕のサポート!ランは遠距離から援護!前は僕がやる!!」

 

横槍をするように、ブースターを掛けてイカロス・フォースとミネルバ改への攻撃を中断させるウラノス。

 

「レイさん!」

 

「ゼウスに攻撃する暇を与えるな!攻め続けろ!!」

 

「「「了解!」」」

 

ガギンッ!という音とともにゼウスと近接戦闘を繰り広げる。

今のゼウスの武装形態は槍。

さっきの攻防を見て、武装形態を変更するにはある程度の時間がいる。

それはほんの一瞬のことかもしれない。

だが、その一瞬を潰せばいい。

思考を加速させる。

攻撃(ラッシュ)、攻撃(ラッシュ)、攻撃(ラッシュ)だ。

 

「小癪なマネを」

 

ウラノスの攻撃の合間に、イカロス・ゼロとイカロス・フォースによる攻撃と、ミネルバ改による援護射撃が入りゼウスは防戦一方になりつつある。

ゼウスのことを何とかしないといけないのもそうだが、肝心なのは・・・・・・

 

「アダム。イブ・・・・・・」

 

「パラダイスのコントロールを、檜山真実から取り戻さなければメインレーザーを止めることは出来ない」

 

僕らと檜山真実の戦いを見ながら父さんが大空博士に言う。

ゼウスを何とかしつつ、檜山真実からパラダイスのコントロール権限を取り戻さなければ、メインレーザーをどうにか出来ないしNICSも解放出来ない。

どうするかゼウスを相手にしながら思考していると、大空博士が。

 

「私に考えがあります」

 

と告げた。

 

「なにか手段があると?」

 

「ええ」

 

そう問う父さんに頷き大空博士が叫んだ。

 

「アダム、イブ!!私よ。大空遥よ!応えて。アダム、イブ!!」

 

・・・・・・・・・・それ考えや手段じゃないし。

奥のアダムとイブに向かって呼び掛ける大空博士に呆れた感情を抱く。

しかも―――

 

「私の声は聞こえてるはずよ!応えて!!」

 

「無駄なことを」

 

「(煩い・・・・・・)」

 

檜山真実の言葉とほぼ同時にそう思った。

アダムとイブでなければこの状況を止められない。

確かにそうだ。

パラダイスの全てを管理しているアダムとイブ。

だが、だからと言ってアダムとイブに責任を追求するつもりはない。

全ての元凶は何も考えもせずに生み出したヒト・・・・・・・・・大空博士にあるのだから。

ホント、同じ科学者でも父さんと大空博士では、考えることの差が違う。

そう考えてると、奥のアダムとイブからポワン、という電子音が響いた。

一応反応はあったようだけど。

 

「しつこいわね」

 

「それはどうも!」

 

剣型の武装から他に変えられないからか苛立ちを露わにして言ってくる檜山真実。

横薙ぎからの攻撃を受け止め、『ネビュラ』で突きをする。

だがそれを身を捻って躱すゼウス。

さらに、後ろ回し蹴りをするも左手で受け止められ、足を掴まれて吹き飛ばされる。

吹き飛ばされながらも、2翼の子機(ビット)で死角からの砲撃をしながら、『アステラ』を投げ付ける。

投げつけた『アステラ』を弾き、素早い速度で砲撃の2射を躱すゼウス。

躱したところにイカロス・フォースとイカロス・ゼロが攻撃を仕掛け、ミネルバ改が援護射撃するが。

 

「遅いっ!」

 

動きが見えているのかと見紛うほどの俊敏でミネルバ改の弾丸を首を傾けて避けるゼウス。

そのまま強引に武器を変形させてハンマーへと変え、イカロス・ゼロとイカロス・フォースを横殴りにしながらミネルバ改も巻き込んで、3機まとめて吹き飛ばした。

 

「もらった!」

 

「なにっ!?」

 

兄さんたちに気を取られたのが油断の隙。

攻撃した体勢のゼウスの背後からズサっ!と音を立ててウラノスが『ネビュラ』で貫く。

貫きながら、射線上の床に落ちていた『アステラ』を拾い。

 

「お返し!!」

 

振り抜きざまに斬り払う。

 

「なっ・・・・・・」

 

クリティカルヒット。

確かな手応えを感じた。

ゼウスの胴体に『アステラ』による傷跡が走る。

驚きに目を小さく見開く檜山真実だが、すぐにそれは元に戻った。

 

「やるわね。だけど、これならどう?」

 

「っ!」

 

ゼウスの様子が変わったのを見て距離を取る。

そして。

 

「お前たちの希望を、目の前で断ち切ってあげる!ゼウス、ギガボルテックモード!!【ギガボルテックモード!!】」

 

「ギガボルテックモード!?」

 

「(やはり特殊モードを隠し持っていた!)」

 

驚愕する兄さんたちに対して僕は、やはりと言う感情だった。

僕の予感通り、特殊モードがあった。

発動した特殊モードで、檜山真実のCCMの画面が白く光、変形する。

変形したCCMから赤い空間ウインドウが飛び出す。

そして天空からゼウスを雷光が貫き、神々しくも禍々しいとも感じとれる雷霆がゼウスを包み込んだ。

苦しみにもがくような動作後に、ゼウスの周囲を包み込む蒼白の雷膜。

その所作はまるで―――

 

「[イフリート]のインフェルノモードと似てる・・・・・・」

 

LEXのイフリートの特殊モード【インフェルノモード】に酷似していた。

やはり兄妹と言うべきなのか。

僕のその呟きは誰にも聞かれることなかった。

そこへ、ゼウスのギガボルテックモードにランが突進する。

 

「だからなんだぁっ?!!」

 

「待てラン!!」

 

突っ込むランに制止の声を掛けるが、ランのミネルバ改はゼウスに格闘戦を仕掛ける。

だが、ミネルバ改の攻撃は先程とは比べ物にならないほどの俊敏差で動くゼウスに掠りもしなかった。

その動きはまるで雷速のようで、目にも止まらぬみたいだ。

ゼウスはそのまま無手の拳でミネルバ改を攻撃していき、浮き上がったミネルバ改を地面に叩きつける。

拳による肉弾戦の戦い。

まるで、イフリートを彷彿とさせる戦いだ。

叩き付けられたミネルバ改の変わりに、今度は兄さんとヒロのイカロス・ゼロとイカロス・フォースが空中に浮くゼウス目掛けて飛んでいく。

 

「これ以上は!」

 

「やらせない!」

 

「神の鉄槌を、喰らうがいい!!」

 

ゼウスへ向かっていくイカロス・ゼロとイカロス・フォースに、ゼウスは拳から雷の砲弾。

雷砲を放つ。

イカロス・ゼロとイカロス・フォースはギリギリのところを躱していくも、雷砲の密度が近づくにつれて激しくなっていき、ついには雷砲を喰らってミネルバ改と同じ高台に撃墜する。

 

「させない!」

 

追撃で雷砲を放つゼウスの背後へ、ブースターを吹かして一瞬で飛び上がり、ゼウス目掛けて『ネビュラ』と『アステラ』の二刀を振りかぶる。

だが、ゼウスはその不意打ちにも近い攻撃を受け止め、右ストレートで殴って来た。

 

「っ!」

 

兄さんたちのイカロス・ゼロたちの反対側に吹き飛ばされるウラノス。

さらに追い討ちをかけるようにウラノス目掛けて、イカロス・ゼロたちに喰らわせた雷砲が雨槍のように降り注いできた。

咄嗟に双剣でガードするも機体の所々に雷砲のダメージが入る。

 

「お前たちの力はこんなモノ?アレだけ息巻いていたのに不様な姿ね」

 

僕に向かって不敵な笑みを浮かべて言う檜山真実。

 

「ふっ。世界を終わりにする邪魔はさせないわ」

 

「終わりになんてさせるか!!」

 

「っ!」

 

ダンっ!!と大きな音をあげて、一気にゼウスへと接近する。

 

「減らず口を。手も足も出ない癖にどの口が言う?」

 

ギチギチとウラノスの双剣とゼウスの拳がぶつかり合う。

空中で高速移動しながらそれぞれの剣と拳が衝突する。

上下から2翼の子機(ビット)による砲撃を放つが、雷を纏った拳で弾く。

その戦闘間にも、大空博士は。

 

「応えてアダム、イブ!!応えて!!」

 

とアダムとイブに煩いほどに叫んでいた。

やがて―――

 

 

『大空遥の音声パターンと一致』

 

『承認。入力チャンネルを解放』

 

『『こんにちは、遥さん』』

 

 

感情のない、ただ答えるだけの機械音声が響いた。

 

「アダム、イブ!今すぐパラダイスを止めて!!」

 

 

『パラダイスの停止は承認できません』

 

『大空遥にその権限はありません』

 

 

アダムとイブがそれぞれ喋るも、大空博士のお願いは却下される。

 

「無駄だといったはずよ」

 

大空博士を見ずに、呆れ口調でCCMを操作してゼウスを動かす。

背後に回り込まれたゼウスの右拳を『アステラ』で滑らせて、空いた胴体を蹴る。

蹴って動きがブレた所に、死角に回り込んでゼウスの頭部めがけてかかと落としをして地面に叩きつける。

 

「アダム、イブ!私の言う事が聞けないの?!」

 

大空博士が懇願するも、アダムとイブは全く返事をしない。

人工知能とはいえ、やはり機械ということか。

 

「お願い!パラダイスを止めて!!アダム!!イブ!!」

 

再度懇願するも、うんともすんともアダムとイブは返事をしない。

返事をしないどころか、応える様子すら感じ取れない。

そんなアダムとイブに大空博士は。

 

「私は世界最高の人工知能として、貴方達を作り上げたわ」

 

と顔を俯かせて言う。

 

「より高度な物を造り上げるのが科学者の役目。それがどう使われようと、私には関係ないと。でも間違っていた。産み出した者としての責任がある。そのことに気づいたの。今更かもしれない。でも大切なのは、自分自身の間違いに気づき、認め、正していくこと。正しい科学は未来へ受け継がれ、間違った技術は消さなければならない。お願い、パラダイスを止めて!!アダム!!イブ!!」

 

そんな独り言のような懺悔みたいな告解をする大空博士。

正直、今それ言う必要性あったか?って気分だ。

煩いし、姦(かしま)しいし、ウザイ。

大空博士の告解?みたいな独り言にもアダムとイブは全く反応しない。

だが。

 

「聞いてくれないのね。聞いてくれなければ、手動遮断装置を使って、貴方達を完全消去しなければならない」

 

その言葉で僅かに反応した。

その一言に反応した、ということは・・・・・・・・・・

 

「(嫌な予感がする)」

 

こういう時の直感はハズレた試しがない。

杞憂かもしれない。

いや、杞憂であって欲しいが・・・・・・

だが、大空大空博士の言葉に反応したことを考えると・・・・・・・

 

「はぁ・・・・・・」

 

呆れて溜め息が思わず出る。

 

「大空博士。煩いので黙ってくれます?」

 

「れ、レイさん?」

 

戦闘中にも関わらず冷たい声が出る。

 

「貴女の告解なんてどうでもいい。そんなにしたきゃ一人で孤独にやっていろ。もしくは教会にでもいって懺悔でもしてれば?結果として貴女がした事が今現状を引き起こしているんだから」

 

「っ」

 

「レイさんそんな言い方は!」

 

「事実でしょ?」

 

母親を庇おうとするヒロ。

だが、ヒロには悪いけど、今この状況はすべて何も考えせずにしたそこの一人の科学者(バカ)のせいだ。

 

「どう使われようと関係ないって言ってるけど、それって結局は誰かに責任転嫁してるだけだよね?自分には関係ない、使った人の責任だって。普通だったらこんなこと言わないよ。しかも今更生み出した者としての責任があるとか、巫山戯てるの??責任無くしてよく科学者が務められるな」

 

大空博士への言葉がどんどん冷徹になる。

同じ科学者でも父さんとは天と地の差がある。

父さんは自分の行いに"責任"をもってやっている。

だから、生み出した者としての責任があるからディテクターとしてあんなことしたんだし。

まぁ、許せないけど。

それに対して、大空博士は"責任"なんて知ったことない、ってスタンスだ。

ただ自分の好奇心が満足すればいい、という自己満足心で動いている。

 

「しかも、それってヒロに言われて気づいたんでしょ?ハッキリ言ってバカじゃない??父さんの言葉を借りるなら、『新たなテクノロジーに携わるものほど、人間の良心を忘れてはならない』を貴女は全く理解していない」

 

大空博士への評価が0からマイナスに入りかけていたところに。

 

「私も山野レイと同意見よ」

 

と檜山真実が言ってきた。

檜山真実の大空博士への視線は軽蔑や侮蔑を表していた。

 

「今貴女がした事が結果として私をさせている。しかもアダムとイブを消去するですって?そんなことはさせないわ!!」

 

と檜山真実が猛烈に反対する。

そしてそれは、ゼウスの攻撃をさらに強く、激しく、鋭くしていった。

 

「ミネルバ!!」

 

一瞬でミネルバ改に接近するや、下から右アッパーでミネルバ改をステージのはるか上空にある高台へと吹き飛ばした。

そのまま追い掛けるように飛び上がるゼウスを、イカロス・ゼロとイカロス・フォースが阻むも、赤子の手をひねるように簡単に往なす。

 

「お前たちにあるのは、絶望だけなのよ」

 

言いながら、ウラノスをステージ下部の高台へと蹴り飛ばす。

 

「っ」

 

ミネルバ改の元へ行かせないように、子機(ビット)で妨害するも。

 

「邪魔!!」

 

雷速機動と言える程の速度で砲撃を避け、子機(ビット)を殴るゼウス。

 

「レイ!」

 

「!?」

 

突然ランに呼ばれ、ランを見る。

ランを見ると、ランは何か決意を固めた眼で僕を見た。

 

「(何をするつもりラン!?)」

 

何をするつもりなのか思っていると。

 

「必殺ファンクション!」

 

「っ!?」

 

ミネルバ改のいる高台に姿を現したゼウスに、完全な不意打ちでミネルバ改が必殺ファンクションを発動させた。

 

「(そう言うことか!)」

 

僕らの稼いだわずかな時間で体勢を直し、姿を見せたと同時に放つ。

必殺の一撃を。

 

「【アタックファンクション!炎崩し・極!!】」

 

ランのCCMからシステム音声が響き、ミネルバ改が焔に包まれたように紅く光り、太陽コロナのような灼熱の一撃が虚を突かれたゼウスへと迫る。

もしこの必殺の一撃が決まれば・・・・・・!

だが―――

 

「っ!そんな・・・・・・」

 

ゼウスはギリギリのところで、ミネルバ改の放った灼熱の焔を避けた。

 

「っ」

 

けど僕の眼は、ゼウスがミネルバ改の焔を避けた瞬間、完全に避けられず、左脚がほんの微かに掠っていたのを見逃していなかった。

 

「ゼウスでなければ決まっていたわね。これで終わりよ!―――必殺ファンクション!!【アタックファンクション!GODネメシス!!】」

 

しかし、ミネルバ改はゼウスの放ったまさに神罰とも言える神の雷光の一撃を喰らいブレイクオーバーとなった。

あの一撃を喰らったら、いくらウラノスでも恐らくは耐えられない。

それは兄さんとヒロのイカロス・ゼロとイカロス・フォースもだろう。

あの一撃の威力は並大抵の必殺ファンクションより強力。

イカロス・ゼロの【メテオブレイカー】や、風摩キリトの[デクーOZ]に放った僕の【シャドウ・エクスプロージョン】に匹敵するレベルだ。

 

「ミネルバ改がやられた!」

 

「くそっ!」

 

「残るは3体」

 

ミネルバ改がやられ顔を歪ませる兄さんとヒロに、余裕綽々風の檜山真実。

どうやら檜山真実はゼウスに致命的な弱点が出来たという事に気づ

いていないらしい。

 

「せっかくの必殺ファンクションも無駄だったわね」

 

「っ・・・・・・」

 

「いや、ミネルバの必殺ファンクションは無駄じゃ無い。ランのお陰で、ゼウスに致命的な弱点が出来たよ」

 

「「「っ!?」」」

 

冷やかすように告げる檜山真実の言葉に反論する。

 

「弱点?ゼウスに弱点なんかありはしないわ」

 

嘲笑うように返してくる。

やはり気づいてない。

その慢心こそが、大きな弱点でもあるのだが。

 

「ゼウスは完全なる"最強"の機体。弱点なんか、存在しないのよ」

 

「ひとつだけの"最強"なんて存在するか。"最強"は、何時だって塗り替えられるものだ。ひとつの"最強"に固執し続けると足元を救われるし、すぐに"最強"から"最弱"へと変化する。だからヒトは、常に"最強"というのを目指すのだから。それに貴女が固執し続ける限り、僕らが貴女に負ける道理はない!」

 

「!?」

 

僕の言葉に初めて檜山真実が怖気付いたような反応を見せた。

 

「さぁ、覚悟しろ。貴女の"最強"を地に引きずり下ろしてやる」

 

不敵な笑みを浮かべると、LEXのCCMが突然純白に光り輝き出した。

 

「ぇっ!?」

 

「なっ!?」

 

「「「っ!!?」」」

 

突然の出来事に唖然となる。

唖然となってる間も、LEXのCCMは形を変える。

CCM本体は変わらずに、上部と左右にひし形のような光の煌めきを現したような図形が現れる。

それはどう見ても―――

 

「と、特殊モード・・・・・・・・・?」

 

ゼウスの【ギガボルテックモード】や、僕の[クロノス]や[カオス]と同じ特殊モードだ。

画面に表示された文字にはDivine Mode(ディバインモード)と表記されていた。

 

「ディバインモード・・・・・・」

 

【ディバインモード】が発動すると同時に、ウラノスを純白の黄金の光りが包み、ウラノスは恒星のような眩い白い輝きを放つ。

その輝きはウラノスだけでなく、武器の『アステラ』と『ネビュラ』にまで行き、さらに残った2翼の子機(ビット)も同じ光りを放った。

 

「・・・・・・父さん、何コレ?僕こんなの聞いてないんだけど?」

 

戦闘中にも関わらず父さんに問う。

受け取った際父さんからはこんなの聞いてない。

もし聞いていたらゼウスが【ギガボルテックモード】使った際に対抗策として使ってる。

そう思いながら訊くと。

 

「いや、私もこんなのは組み込んでない」

 

「はい?」

 

父さんにしては珍しく、とても驚いた表情をしていた。

 

「いや、本当だ。私がしたのはバンたちと同じチューニングと換装などだけだ」

 

「じゃあコレって・・・・・・」

 

父さんにも理解出来ていないとなると、僕なんかでは理解出来ない。

可能性とするならば、ウラノスが自己進化して新たに生まれた、という事だが・・・・・・

 

「まぁ、今はいい。―――いくよ、ウラノス!!」

 

カッ!とウラノスのカメラアイが光り、一瞬でゼウスの背後を取りゼウスを宙から地へと叩き落とした。

 

「なにっ!!??」

 

その速度はゼウスの雷速を越す。

正しく"光速"。

雷を越す光の速さでゼウスを攻撃したのだ。

 

「今の一撃でゼウスのLPの1割強を持ってかれた?!」

 

狼狽える檜山真実。

狼狽えながらも反撃してくる。

だが。

 

「は、速すぎる!」

 

ゼウスの雷砲はウラノスを捕らえることが出来なかった。

しかも―――

 

「っ!?バランス機構が?!」

 

雷砲を撃った反動で、左脚の関節部にダメージが溜まり、左脚のアーマーフレームにひび割れたような亀裂が走る。

 

「こ、こんな事でゼウスが!!」

 

「言ったはずだ。"最強"なんてモノは存在しないと!」

 

「っぐぅぅ!」

 

地上戦は不利と判断したのか、再び宙に上がって空中戦を繰り広げる。

ゼウスの雷速機動を、ウラノスの光速機動が追い掛ける。

空中戦でなら左脚の損傷は大したことないと思ったのだろうが、バランス機構を損傷しているためか、速度は先程まての比じゃない。

ゼウスの振るう雷拳を的確に受け流しカウンターを叩き込む。

 

「これが、ウラノスの・・・・・・」

 

「ディバインモード・・・・・・」

 

「[ペルセウス]のストライクモードよりも速い・・・・・・」

 

ラン、ヒロ、兄さんが順にウラノスを見て呟く。

 

「ここに入る余地なんてないですよバンさん・・・・・・」

 

「あ、ああ」

 

ヒロと兄さんが呆然と、ウラノスとゼウスの戦闘を観る。

『ネビュラ』と『アステラ』が振るわれる度に斬撃が放たれ、バトルフィールドの天空神殿のフィールドを斬り裂いていき、斬撃の傷跡を遺す。

ゼウスの拳を双剣で受け止め、双剣と雷拳による剣戟と拳戟で衝撃波が戦いを見守るイカロス・ゼロとイカロス・フォースを襲う。

 

「なにがディバインモードだ!お前たちは絶望するの!!私は必ず、世界を終わりにする!!」

 

「いいや。勝つのは僕らだ。受け継いだ炎(LEX)の意志は、消えることは無い!!」

 

損傷しているとはいえ、ゼウスのスペックは高い。

暴風。いや、天災と取れるような一撃。

けど、コチラも今までの経験がある。

 

「貴女を止める!そうでなければ、この一年の動きが。いや、僕が貴女を探していた意味が。あの人(LEX)の思いが無くなる!!―――必殺ファンクション!!」

 

「っ!」

 

「【アタックファンクション!サウザンド・レイン!!】」

 

ゼウスの上を取ったウラノスの背後に数多の。幾千の魔法陣が覆うように展開され、その魔方陣から蒼白い燐光のエフェクトを纏った剣が、魔方陣を通って空間の狭間より現れる。

 

「―――全剣掃射(フルバレット)!」

 

『ネビュラ』を振り下ろすと同時に、全ての魔方陣から蒼白い剣が勢いよく射出される。

射出された蒼白の剣に対してゼウスは。

 

「調子に乗るなっ!!―――必殺ファンクション!!【アタックファンクション!ケラヴノスジャッジメント!!】」

 

檜山真実が、さっきミネルバ改をブレイクオーバーさせた必殺ファンクションとは別の必殺ファンクションを発動させた。

ゼウスの巨体全身から激しい雷撃が帯、または糸のように拡がる。

雷の色は蒼白ではなく、紅(あか)。

それに伴って、ゼウスの白い巨躯が紅く光り、背部の突起物も深紅に光りだす。

やがて、放たれた紅の雷は、ウラノスの背後の魔方陣から射出された蒼白の剣を次々と迎え撃って落とす。

弾丸のように放たれる剣を、高圧電流の障壁のように拡がる紅雷が迎え撃つ。

ダダダダダダダッ!!!という剣と雷のぶつかり合うけたましい雑音のような衝撃音が絶えず鳴り響く。

 

「さっさと・・・・・・・・・消え失せろっっ!!!!」

 

檜山真実が苛立ちを示しながら叫び、蒼白の剣の雨を迎え撃っていたゼウスの正面に幾重にも重ねられた紅色の多重魔法陣が光り輝き、ゼウスの右拳にバチバチと高々しい威力の雷が収束される。

ゼウスはそのまま右拳を魔方陣目掛けて殴る。

殴られた魔方陣から、超極大の紅雷の砲撃が放たれた。

 

「(コッチが本命!!)」

 

どうやらさっきまで【サウザンド・レイン】を迎撃していたのは、この砲撃を放つための時間稼ぎ。

というより、ゼウスを守るための雷の障壁(バリア)で、その余波だったらしい。

余波だけで【サウザンド・レイン】の剣雨を迎撃するとは・・・・・・

【サウザンド・レイン】は大量の剣を射出して攻撃する広範囲殲滅系の必殺ファンクション。

広範囲殲滅系とは言っても、単体にも使える応用範囲の広い技だ。

広範囲なら多数の敵を殲滅出来、単体なら相手には絶望とも言える殲滅の剣が一斉に放たれる。

一撃一撃が超高速で射出されるため、威力は高くバツグン。

大抵の相手にはそれだけでブレイクオーバー出来る。

問題があるとすれば、それは二段構えのような技や一点特化系には対処が難しいってことぐらいかな。

そして今、ゼウスの放った超極大な雷の砲撃はそれに該当する。

本来なら【サウザンド・レイン】の剣雨をぶち抜きながら、一直線にウラノスを呑み込み、ウラノスをブレイクオーバーさせる。

だが―――

 

「これで終わりよっ!!」

 

「いや・・・・・・まだ、だっ!!!!」

 

それは予測していた。

【サウザンド・レイン】を射出した後、ずっと様子見していた訳では無い。

このような事態に備えて、すでに準備をしていたのだ。

 

「―――必殺ファンクション!!」

 

「なにっ!?!?」

 

反撃が来るとは予測してなかったのか驚愕する檜山真実。

だがもう遅い。

ゼウスの一撃はすでに放たれ、ウラノスの右の剣『ネビュラ』には深紅のライトエフェクトが輝いている。

 

「【アタックファンクション!ヴォーパル・ストライク―天(ヘブン)!!!】

 

この【ヴォーパル・ストライク】は、普通の【ヴォーパル・ストライク】より遥かに強大な、今の最強にして最大火力の威力を持つ一撃。

空中に居ても、左の『アステラ』を前にかざして右手の『ネビュラ』を肩の上に、大きく引く構えを取る。

ジャンボジェットのジェットエンジンのような重低音が響く。

深紅のライトエフェクトが【ディバインモード】と合わさって神々しい、紅金のような色に染まる。

勢いよく突き出された『ネビュラ』からゼウスの放った超極大の紅雷と同等の大きさと濃密度をほこった紅金の砲撃が放たれ、ゼウスの紅雷と、ウラノスの紅金が正面衝突する。

 

「「「「っぅ!!」」」」

 

ドガンッ!!!という巨大な衝突音と、眩い閃光弾のような閃光(フラッシュ)がバトルフィールドから放たれる。

眼を開けられないほどの輝きに兄さんたちは手で眼を覆い隠す。

それは後ろのメアやルナ。アミ姉やジンたちも。

目を細めて光りを少し遮断する。

檜山真実も光りを防ぐように腕で眼を覆い隠す。

すでに何秒も、互いの必殺の一撃による衝突で発生した閃光が中央コントロールルームを照らす。

1分。いや、2分??

ほんの数十秒だったのかもしれない閃光がやがて収まり、バトルフィールドの様子が確認できるようになった。

閃光の収まったバトルフィールドは、すでにボロボロと言っても差し支えないほどだ。

兄さんとヒロのイカロス・ゼロとイカロス・フォースは何とか五体満足の無事でいた。

そしてゼウスも所々スパークを発しているが【ギガボルテックモード】はまだ健在でまだ動ける。

それはもちろんウラノスもで。

 

「相殺・・・・・・しただと・・・・・・?!【ギガボルテックモード】のゼウス最強の一撃を・・・・・・!?!?」

 

ありえない、とでも言うように檜山真実は大きく動揺する。

それは後ろに後退するほど。

しかし、その動揺もすぐに消し。

 

「はっ。だが、今のでお前の手札も尽きた!これで終わりよ!!」

 

ぎゅんっ!と拳ではなく、再び雷の槍を顕現させてフルスロットルの突進で上空のウラノス目掛けて一直線に迫る。

 

「レイ!」

 

「レイさん!」

 

兄さんとヒロが声を上げる。

誰もがこれで終わりだと錯覚させられる。

けど―――

 

「まだ・・・・・・・・・・僕の攻撃は終わってないよ!!」

 

「っ!?」

 

僕はすでに3つ目の手段を発動させていた。

CCMからシステム音声が響く。

 

「―――【アタックファンクション!ヴォーパル・ストライク―天(ヘブン)!!】」

 

左手の『アステラ』に深紅のライトエフェクトが灯り、神々しく光り輝く。

 

「左手(・・)!?」

 

この攻撃はアルテミス後に招かれた夜会でのバトルロワイヤルで兄さんにした。

檜山真実が知っている可能性は極低い。

なにより、僕はこの取っておきをあの時の一度しか使っていない切り札。

ジェットエンジンの重低音が一際目立つように響き渡る。

深紅の輝きは炎のように煌く。

 

「決めろ、ウラノス!!!」

 

灼熱燐光。煌炎継承。

一筋の炎の輝きがウラノスの『アステラ』から放たれ、ゼウスを呑み込む。

その炎はLEXから受け継いだ焔にして炎。

咄嗟に止まって防御するもそれすらも、全てを呑み込む一筋の炎。

やがて巨大な爆発音とともに、ゼウスがDキューブのバトルフィールドから高々と吹き飛ばされ、檜山真実のいるパラダイスコントロールルームの階段へと堕ちる。

ガシャっ、ガシャっ!!と音を立ててゼウスは階段の上に堕ち、その動きを止めた。

 

 

「僕の・・・・・・いや、僕らの(・・・)勝ちだっ!!」

 

 

 

 

 

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