最終回です。
ーーーCASE OF ILLUMIーーー
キメラアント事件により死亡した前会長ネテロの後任を決める為に会長総選挙が行われた。オレは選挙に関しては全く興味は無かったが、とある事情によりその会場であるハンター協会本部へと足を向けた。
「ヒマなの?」
「なんだイルミか♠︎そっちこそ♣︎」
その事情とは勧誘(スカウト)だ。今オレが考えている計画を実行するに当たり、オレ1人では恐らく手が足りない。単純な手数ならオレの能力でいくらでも調達できるが、今必要としているのはオレと同じレベルの戦力だった。
「ヒソカってニュース見ないタイプだよね。こっちから連絡しようとしても全然連絡つかないし普段何してんの?」
「あ、ゴメンゴメン♣︎この前映画見に行った後に電源切ったままだった♦︎」
だがその必要は今無くなった。目の前の奇術師こそオレが一番接触しやすく、尚且つ戦力として頼りになる人物だったからだ。
(…何よりオレあんまり友達いないし。一応、ステラがいるかも探したけどこっちはいなかったな。こういう行事をサボるような奴じゃないと思うけど一体何してるのやら……)
ヒソカの他にもう1人利用できそうな友人もいたが、こちらとは接触することはできなかった。ステラの性格の都合上、彼女に頼るのはヒソカと連絡がつかなかった時の保険だったが。
内緒話の為に場所を大型飛行船のバーへと移したオレ達は、現在のキルアの置かれている状況とアルカの能力及びその危険性について話した。
「ネテロが薔薇を使うほどの怪物、その側近を倒す為にゴンはある意味で死よりも重い制約と誓約を念じたんだろう。それを元通りにするという「お願い」は金や医学のレベルを遥かに超えている」
「けどその荒唐無稽なお願いもそのアルカの力を以ってすれば容易に叶うワケだ♠︎」
「その通り。そして残されるのはキルアじゃ到底叶えられない3つの「おねだり」と失敗した際の罰ゲーム」
「罰ゲームの効果でキルア自身とキルアが一番愛し長く共にいたゴンの2人が死ぬ……♣︎」
「え?」
「え?」
そこでお互いの認識に齟齬があることに気づいた。そういえばヒソカに最初に話した時に興味を惹く為にゴンを話題に出していたのを思い出す。
「…もしかして、前に言ってた「2人とも」ってキルアとゴンの事じゃなくて、キルアとキミの事?」
「うん、そーだよ」
「…ボクも大概だけど、キミも相当だな……♠︎」
「それもだけど何よりこの「お願い」の犠牲者は万単位だと思ってるから、失敗したらオレだけじゃなくてヒソカも死ぬと思うよ?」
「あー、それは困るね♠︎」
1人の人間を殺すのに対しての犠牲者は十数人程度で済むが、逆に1人の人間を甦らせる、治すのにどのくらいの犠牲者が必要なのかは把握していない。だが、壊すより治す方が遥かに労力が要るであろうことは想像に難くない。
除念するという点においても同じことが言える。念能力における除念のリスクを踏まえてもその犠牲者は途轍もない数になるだろう。今までオレ達がそれを検証しなかったのはそのリスクを恐れてのことだった。
その後アルカの暗殺をヒソカに協力してもらうことになったが、解散する直前にヒソカの携帯が鳴る。一度席を立とうとしたヒソカをオレは止める。携帯にはステラの名前が映っていた。
「ここで取って」
「…了解♦︎」
ステラは選挙に来なかった。それを意味することは、彼女にとってそれ以上に優先すべきことがあるのを示唆している。丁度現在アルカを連れ戻しに実家に帰っているキルアのように。
「久しぶりだねステラ❤︎」
「用件だけ話すぞ。近いうちにお前を殺りに行く」
「…それってデートのお誘いかい?」
「…………まぁ、そう捉えて貰ってもいい」
「キミの方からそんな熱烈なアプローチが来るとは嬉しいね❤︎ あー、でもコッチも今し方予定ができちゃってさ♣︎」
「それは俺が来て困るような予定か?」
「ボク個人としては別に構わないんだけど…」
「それはオレが困るな」
「!」
2人の会話を聞き逃すわけにいかなくなったオレは話に加わる。
「…イルミか」
「やっほー久しぶりステラ。ヒソカとはちょっと約束があってね。遊ぶのはまた今度にしてくれないかい?」
「約束…ね。そんなの俺と遊んだ後でもできるんじゃない?女の子ひとり殺るくらいだろ?」
「…何を知っている?」
こちらの計画の内容を匂わせる発言をするステラにオレは警戒する。
「おっと失言…相手がキルアなら魔法って言って誤魔化してたんだけどな」
不自然にキルアのことを話題に出すステラに対し、オレは彼女にゾルディック家の事情、場合によってはオレの計画まで既に知られていることを想定する。
「キルアの差し金かい?」
「あの子は関係ないよ。俺がどうやってアンタらのことを知ったかは企業秘密」
仮にキルアからアルカの存在を聞いたとして、オレがアルカを狙っていることなどは分からないはずだ。そこに辿り着く為にはゾルディック家の複雑な事情に精通している必要がある。
「謎と秘密は人を美しく魅せるお化粧だからね❤︎暴くのはナンセンスさ♠︎」
「ヒソカの意見に同意すんのは癪だけど、俺としてもこっちの事情は探らないで貰えると助かる。こっちだってヒソカとの決着を付けたいだけでそっちの邪魔するつもりはないから」
ステラに同調するヒソカを見て、情報提供者の正体はヒソカかと一瞬疑うが即座にその可能性を捨て去る。彼にはオレの話を聞いてから彼女に伝える時間的な余裕が無い。大方、お楽しみが無くなるのを避けたいだけだろう。
それ以外にステラがこちらの情報を知る方法としては彼女や彼女の仲間による能力が挙げられる。残念ながらそのケースだと警戒や対策はほぼ手遅れだ。彼女に関しては放置しておくしかない。
ステラとの電話を切ったヒソカと話す。ステラが妨害する可能性を加味して計画を変更するか迷うが。
「うーん、ステラもこっちの邪魔しないって言ってたし必要ないんじゃない?ボクの経験上、あのコが人を騙す時は嘘を吐くより真実を隠すような言い回しを好むからね♠︎」
いじらしいよね❤︎ と興奮するヒソカに呆れながら、オレは別のことを危惧する。
「そっちはあんまり気にしてないかな。オレが心配してるのはヒソカがあの子と戦った後コッチを手伝う余裕があるかなんだけど」
「へぇ…ボクを心配しているのかい?」
明後日の方向に勘違いするヒソカにオレはため息を吐く。電話を通して聞こえたステラの声にはひとつの覚悟が込められていた。
「キミがステラとの勝負で昂りすぎて手をつけられなくなるのが一番困るからね」
「……そうはならないように善処するよ♦︎」
今度の勝負は今までの彼らのじゃれあい程度では済まないだろう。その行方にオレも興味がないわけではないが、そんなことよりヒソカが暴走しないかがオレの目下の心配事だった。
ーーーCASE OF STELLAーーー
「…まさかイルミがいたとはな。タイミング的に丁度アルカのことで話してたのかな」
電話を切った俺はそのままキルアに生存報告ついでにイルミ達のことをぼかして伝えようと思ったがやめた。今のキルアは実家に帰省中で恐らく自由に連絡が取れる状況ではない。
これから始まる一連の事件は選挙編と呼ばれ、ネテロの後継となる次期会長を決める選挙に沿って進行するのだが、そこで鍵となる人物は選挙とは無関係のアルカ・ゾルディックだ。
彼女はゾルディック家の末妹でありながらもキルア以外の家族からは家族扱いをされていない背景があり、その理由は彼女の特異性にある。彼女は暗黒大陸由来であるナニカと共存しており、そのナニカの能力によってあらゆる願いを叶えることができるのだ。
その強すぎる力と相応の代償を危険視したゾルディック家によって彼女は厳重に監禁されていたのだが、ゴンを救う為にキルアが彼女を連れ出すのが選挙編のおおまかな流れである。
そして先程の電話でイルミに伝えたように、この件に対して俺が手出しすることはない。何故なら、選挙編は蟻編以上に最初から結果が決まってるからだ。イルミはアルカの暗殺を狙っているが、「命令」によって自由にナニカの力を行使できるキルアは文句なしで最強の組み合わせだ。相手が誰であろうとも、キルアの手を掻い潜ってアルカを暗殺することは不可能だろう。
さらに当の選挙に関してもこれまた最初から結果が決まっている。俺が介入する余地なんてなにもない。
「選挙サボったのも今回のじゃ結果が決まらないのが分かってたからだしな……」
だからこそ俺はヒソカを倒すことだけに集中できるのだ。
そして現在俺が頭を悩ませているのが「いつどこでヒソカと戦うか?」だ。選挙編の後であればヒソカも俺との戦いに喜んで付き合ってくれるだろうしその為の場所もアイツが用意してくれるだろうが、俺の個人的な気分の問題で選挙編までに決着を付けたい。だがその為にはヒソカがどこで何をしているかの情報が必要だ。
ヒソカは電話では俺の参戦を歓迎したが、友人であるイルミとの約束がある以上はその気持ちとは裏腹に俺に計画を漏らすなんてことはしないだろう。仮にヒソカから聞いたところで俺の方が到底信じられん。
それに、今の俺はイルミ達にとって「何故かこちらの事情を知る人物」であり、情報アドバンテージで優位に立っているが、俺がヒソカやイルミに計画を聞いてしまうと「俺が何を知っていて何を知らないのか」が割れてしまう。弱みを見せれば彼らがこちらに牙を剥く危険性がある以上、俺は彼らに対し「中立かつ油断ならない人物である」ことをアピールする必要がある。
俺としてはヒソカが誰かを殺す場面に介入して犠牲者を減らしたい所である。例えばイルミがキルアに宣戦布告する場面に俺がいれば、執事達を襲うヒソカを止めてゴトーを生存させることができるだろう。
だがそれは無理だ。原作知識によって先の未来が分かっても、それが具体的にいつどこで起こることなのかは分からない。ヒソカに聞いても先の理由で答えてくれることはないだろうし、それはキルアに聞いても同様だろう。現在キルアとの連絡の代役をしている執事達にとってアルカは最上位の機密事項であり、彼女を移送する経路も同じく他人に明かすことは絶対にないからだ。
ヒソカに関しては絶対にないとは言い切れんが…もしヒソカがイルミを裏切ったりなんかしたらキルアvsイルミvsヒソカvs俺で話がめちゃくちゃになってしまう。比較的穏便に済むであろう話を進んで壊したくはない。
かと言って選挙編が終わったらヒソカは旅団と本格的に戦い始めるので、俺がヒソカと戦うならここしかないのである。
だが幸いにも、選挙編には確実にヒソカと戦えるタイミングが存在する。
「やはりそこを見据えて動くしかないか……」
ーーーCASE OF KILLUAーーー
アルカを連れたオレ達は執事であるカナリアの運転する車によってゴンの元へと向かっていた。そんな中、オレの携帯電話が鳴るのを聞いて執事であるゴトーが取った。
ゴトーは電話越しに何度かやり取りをし、携帯を耳から離してオレに聞いてきた。
「ステラと名乗る人物から」
「アイツ生きてたのか!代わってくれ」
オレとゴンを逃す為にカイトと一緒にピトーの足止めをしたステラが生きていた。カイトの肉体は見つかったのに対し彼女は見つからなかったことから、何処かに逃げ延びた筈だと僅かな希望を持っていたがそれが事実であったことに安堵する。
電話を代わるように要求したオレに対しゴトーは一瞬迷ったが、この前のレオリオとの通話でオレが機密情報を教えるようなことはしなかったことから信じて代わってくれた。
「やっほー、久しぶりだねキルア」
「オマエっ…!生きてたならもっと早く連絡しろよ」
予想以上に元気そうなステラの声を聞いて安心したオレはつい彼女に悪態を吐く。
「ごめんごめん。あのあと命からがら逃げ延びてさ。最近まで治療とリハビリで忙しかったんだよ」
「そうか……元気そうでホントに良かった。でもゴンが…」
ステラの生存を喜びたいのは山々だったが今はそれどころじゃないオレは、ゴンの現在の状況を話そうとするがステラに遮られる。
「知ってるさ。ゴンは今死にかけてるんだろ?」
「ああ。……もしかしてステラもゴンを助けるつもりか!?」
「あー、まあ…結果的にはそうなりそう、なのかな……?」
今までの様子から一転してステラの不明瞭な返事を不自然に思いながらもオレはステラに協力を呼び掛ける。
「それならオレに協力してくれないか!?詳しくは話せないけどゴンを助ける確実な手段があるんだ!」
計画の大まかな部分はモラウ達の協力により目処が立っているが、アルカを家族から守る為には1人でも多くの手が欲しい。特にステラは強いし人格的にも頼りになる。
今までも手を貸してくれたステラなら間違いなく協力してくれるだろうと思っていたオレはその期待を裏切られる。
「あぁごめんね。こっちもやる事があるからそっちは手伝えないかな」
「えっ……」
思うような返事を貰えず一瞬呆気に取られるオレだったが、ステラの現在の状況を考えて彼女の言いたいことに合点がいく。
「そうか!治療とリハビリで忙しいって言ってたな。こっちこそ無茶を言って悪かった」
「いや、そっちは終わってる。やる事ってのはヒソカとの戦いだ」
「…え?そんなこと?」
瀕死のゴンを助けるよりヒソカと戦うのを優先する?あのステラが?
頭に浮かんだ困惑を他所にステラはその後も意味が分からない言葉を続ける。
「だがヒソカが何処にいるか俺にはサッパリ見当もつかなくてな。こうやってキルアに連絡したのもヒソカの場所に心当たりがないか聞きたかったからなんだ」
「…そっ……」
「そんなこと、俺が知るわけないだろ!ステラはゴンが心配じゃないのかよ!?」
困惑のままに叫ぶオレに対しステラは何も言わない。オレは今までの彼女との変貌ぶりに激しく動揺し、その原因を頭の中で探る。
答えはすぐに出た。
「もしかして…オレ達に愛想を尽かしたのか……?」
ステラがあの時ピトーと対峙して大怪我を負い、彼女の兄弟子であるカイトを亡くしたのはオレ達の弱さが原因だ。もしあの時オレとゴンが彼女達の足を引っ張らないくらい強かったら、2人を置いて逃げるなどせず4人でピトーを撃退することができただろう。
ステラにはオレ達を憎むべき十分な理由がある。
そんなことにも気付かず、ステラなら助けてくれると高を括っていたオレに対して彼女が愛想を尽くしたのも当然だと思えた。
「ほ、本当にごめん……!謝っても許されることじゃないけど…オレ達が弱いせいでステラとカイトは……!」
「……」
「で、でもゴンだけは助けてくれないか!?アイツはカイトの仇を討つ為に命を賭けたんだ!オレのことが許せなかったとしても、ゴンだけは……!」
オレの必死の懇願に対し、電話の向こうからはしばらく押し殺した声が聞こえ、その後ステラは口を開いた。
「…大丈夫。俺は怒ってないし、ゴンとキルアも何も悪いことはしてないよ。2人なら大丈夫だと思って調査に同行させたのはカイトだし、俺だってその判断に賛成だったんだから。強いて言うなら、あの時の全員に非があることで2人だけの責任じゃない」
「で、でも……それじゃ」
優しい言葉でオレを慰めていたステラはその後一転して語気を強めて話す。
「それに…仮にカイトを見捨てたことに対しての責を問うのであれば、それは俺以外にないからな。お前達の実力も判断も何一つ関係ない」
それはこちらに有無を言わせない強い口調だった。再度口調を和らげたステラはオレの先程の困惑にも答えた。
「さっきの俺がやりたいことの話は今後の布石みたいなものでな。キルアも中々面倒な状況にいるんだろ?心配しなくても多分キルアの力にはなるだろうから安心してくれ」
確かに今のオレはアルカというゾルディック家の最上級の機密を保持しなければいけない状況にあり、この会話も執事によって盗聴されている。不用意なことを言えば最悪オレは即座に帰宅しなければいけない。
だが先程その状況に対して困惑していたレオリオと違い、余りにも聞き分けが良すぎるステラに対し、オレは前々から思っていた感想がつい口に出た。
「やっぱストーカーだろ。オマエ……」
その後、イルミの強襲によって執事達と分断されたオレはアルカを連れて空港に行き、合流した執事達に複数の飛行船を取らせそれぞれにゴンのいる病院までの別のルートを取らせることでイルミの眼を撹乱することに成功した。
オレは飛行船を操縦しながら、モラウに連絡して対イルミの切札として他のハンターにイルミの狩り(ハント)を要請する。
その段階になって、オレはステラの言っていた「布石」というのが見えてきた。
(オレを直接助けはしない、けど多分オレの力になることで、更にヒソカと戦いたいから奴の場所を教えてくれという発言……!)
オレはハンター試験の時にヒソカと変装していたイルミが一緒に行動していた光景を思い出した。
(まず間違いなくこの騒動にヒソカが関わっている!そしてヒソカがどの立場で参加するかを考えたら、間違いなく兄貴の協力者しかない!)
そこまで考えると、自ずとステラが何の為にオレに電話したのかが分かった。彼女はヒソカがイルミの協力者としてオレと敵対することを知っていて、その阻止に動くつもりだったのだろう。
ヒソカの場所をオレに聞いたのも、オレならヒソカが待ち構えているであろう場所が想定できるからであり、つまり……
「ここまでオマエの掌の上ってことか?」
「まあね。魔法で予知した的なアレよ」
「もう言い訳も大分適当になってんな……」
実際、ここまで正確にオレやイルミの状況を把握し、その先の展開を見通せるのだからなにか魔法のような力があるのもあながち間違いではないのだろう。
以前にも彼女は何か隠しているような素振りを見せていたし、色々と世話になっている以上オレからは追求するつもりはないが、かといって言い訳が適当すぎるのではないかとオレは明後日の方向の心配をしながら、飛行船のルートとそこからヒソカが出現すると予想されるポイントを教えた。
ーーーCASE OF HISOKAーーー
キルアを逃したボクとイルミは、二手に別れてキルアとその仲間が操縦する飛行船を追跡していた。元々イルミには密告者が居てキルアが操縦する飛行船を把握しており、キルアに正解を知っていることの違和感を持たせない為にハズレを狩るのがボクの仕事だった。
二手に別れる直前、イルミはこうも言っていた。
(事態がゾルディック家の範囲を超えてここまで大きくなった以上、ステラが手出ししてくるかもしれない、か……。確かに、ボクが知る彼女なら一般人や名も知らぬハンター達が犠牲になってるのを見れば止めようとするだろうね)
針人間を狩りに来たハンター達を狩りながら、ボクはその時を心待ちにしていた。
「こんな風にね❤︎」
背後からのナイフによる奇襲を構えたトランプで迎撃する。その一撃に込められた本気の殺意は思わず逝ってしまうくらいには鋭かった。
その一撃でボクは先程までの狩りを中断して彼女と対面する。彼女の方も助けたハンターを逃した後にボクへと向き直る。
「やぁ♦︎ 直接会うのは久しぶりだね♠︎」
「俺としてはもう二度と会うつもりは無かったんだけどな」
「それがボクとデートしてくれるなんて、どういう心境の変化があったんだい?」
「…ま、吹っ切れたってヤツさ。俺とお前の腐れ縁もいい加減清算したくなってきたしな」
一度彼女は間をおいてこちらを睨む。その全身からは凄まじいほどのオーラが放たれていた。
「今までの遊びとは違う。本気でお前を殺しに行くぞ」
「…へぇ♣︎ そこまで言うのなら覚悟はできてるのかな?」
「あぁ。お前が勝ったなら煮るなり焼くなり好きにしろ」
「その言葉が聞きたかった❤︎」
その言葉を皮切りにボクらは互いに得物を構え、駆け出す。
「当然な風船人形(ワンダーバルーン)!」
「伸縮自在な愛(バンジーガム)!」
ーーーEPILOGUEーーー
「うおーっ!たっけーっ!」
「さすが世界最大の樹!!」
アルカの能力によって無事復活を果たしたゴンは今まで探し求めたジンの待つ世界樹へと向かっていた。キルアとアルカ、そして俺の3人はゴンの付き添いに来ていた。
「今まで散々迷惑かけてごめん、色々とありがとうね2人とも」
「…まあ、こっちこそお前のお陰で得られるものはあったしな。ピトーは1人で倒すとか、お前は関係ないとか言われた時はかなりへこんだケドな〜」
「うぅ……ごめんよぉ」
「お兄ちゃん!」
ここぞとばかりにゴンを口撃するキルアとそれを嗜めるアルカのやり取りを見ながら、俺はこの光景まで辿り着けたことに感動を覚える。
だから、肩の荷が降りて2人に本当のことを教えたくなったのは仕方のないことなんだろう。
「こっちこそ、皆に謝らないといけないかな」
「え?ステラが謝るようなことってしたっけ?」
「いつもオレ達の方が助けられていた気がするが……」
今まで騙してたことに対する申し訳ない気持ちで2人から目を逸らしつつ、今まで隠していたことを伝えようとする。
「…キルアは何となく気付いてるかもしれないけど、俺はお前達が思ってる以上に色んなことを知ってたんだ。ゴンがジンの息子だってことも出会う前から知っていたし、アルカちゃんがどんな力を持っていて今までゾルディック家からどんな扱いを受けていたのかも知っていた。…そして、ゴンとキルアが出会ってから今までの旅路も2人と出会う前から知っていた」
「???」
「…ステラが度々魔法だって言って未来予知じみた予測をしていたのはそのお陰ってことか?」
「そういうこと」
言ってることがよく分からなくて頭にハテナマークを浮かべるゴンと今までの俺との会話に納得するものがあったのか俺の言いたいことを理解するキルアに、本当に言いたかったことを伝える。
「…それで、カイトがピトーによって殺されてしまうことも、2人が命を賭けてキメラアントと戦うことも、カイトが後に生き返ることも最初から知っていたんだ。だから俺は直前までカイトを見捨てようとしてたし、俺達がピトーに敗北したのはその気の迷いによる産物でもあった。…だから……」
俺の言葉を引き継いだのはキルアとゴンだった。
「だから、カイトが死んだのはステラの責任だってか?それはぜってーねーよ」
「そうだよ。カイトだってピトーにトドメを刺し損ねたことをステラに謝っといてくれって言ってたし、あの時はみんな力不足だったんだってオレも分かったんだ」
「つかそれ、この前ステラが自分で言ってたじゃん。皆に責任があるからオレ達は悪くないって言いながら自分が悪いって言い出すのダブスタだぞ」
「うぐ」
心の矛盾点を突かれて凹む俺を見てゴンが助け舟を出してくれる。今日のキルアはやけに切れ味が鋭くて困る。
「えっと…そういえば伝言は受け取ったけど、ステラはカイトに会うもりはないの?」
「あぁ…今みたいな話すると多分ぶん殴られるだろうからな……」
「(それが分かっていながら直接会ったら言うつもりなのは誠実なんだか面の皮が厚いんだか……)」
ゴンとキルアの2人には特にお世話になったしお世話してあげたとも思ってるから原作知識を持ってるのを教えたけど、それ以外の人にも教えるかどうかは微妙なところだ。
ハンターハンターの初期メンバーと言えばゴンとキルアの2人に加えてクラピカとレオリオがいるが、クラピカには幻影旅団のことで顔を合わせ難いし、レオリオとは関わりが薄い。その他で俺が個人的に親しくしてる人だとカイトが挙げられるものの、先程言った通り絶対俺が怒られる流れになるから嫌だし。
ヒソカ?知らない人ですね……
「そういやヒソカとの対決はどっちが勝ったんだ?」
「え?ステラ、ヒソカと戦ったの!?」
あまり聞いて欲しくなかったことを聞いてくるキルアに、事の顛末を知らなかったゴンがその事実を尋ねる。
「ああ、お前を救う過程でな。アルカを狙ってたのがオレの兄貴だったんだが、その兄貴がヒソカと手を組んでてさ。それでステラがヒソカの足止め役を買ってくれたってわけ」
「そうなんだ…ステラもオレの為に頑張ってくれてありがとうね!」
「あ、ああ。まあでも俺が動かなくても多分上手く行ってただろうけどな。じゃあこの辺で俺はお別れするよ、アルカちゃんもつまらない話に付き合わせて悪かったな!」
「あっはい。ステラさんもお元気で」
退路が塞がれる前に俺は高速詠唱で撤退しようとする。これ以上3人だけの話を続けるのもアルカちゃんに悪いしな!!!
「いや話を逸らすの下手くそか」
「オレもどっちが勝ったのか気になるな〜」
「ぐぬぬ……」
キルアのツッコミだけならまだしも、ゴンに関してはヒソカにいつかリベンジすると彼に誓った身だ。話したくはないが仕方あるまい。
「そんだけ話すのを渋るってことは、ヒソカには負けたの?」
「いや、勝ったよ。勝ったんだけど……」
「それにしては歯切れが悪いな」
「勝ったけども!!!あんま思い出したくないんだよ!!!」
そこまで言って俺は今度こそ撤退することに成功する。全身が熱くて熱くて堪らないが、これは夏の暑さの所為だろう。
「あのヤローっ!もうアイツとはゼッテー会わないからな!」
ーーー???ーーー
「ハロー生きてる?こっちはそろそろキルアの方に行くつもりだからこれ以上はハズレは見れないけど」
「なんとか生きてるよ♠︎ でもちょっと傷が深いから、これ以上はそっちの方は手伝えないや♦︎」
「…それ本当?ま、この後はヒソカが必要な場面はなさそうだからいいけどさ」
「…どっちが勝ったか知りたい?」
「え?キミが電話に出るってことは勝ったんじゃないの?」
「あのコ、ボクが見てない間に随分と成長したようでね❤︎ 試合には負けたけど勝負には勝ったってところかな♣︎」
「へー意外だな。まあいいや、それじゃ切るよ」
「バーイ♠︎」
電話を切りながら、ボクは腕の中で眠るお姫様を連れて歩く。
(本当に可愛いなぁキミは……殺される覚悟はある癖に殺す覚悟はないんだから❤︎ でも相変わらず不思議だよねぇ♣︎ ボクの見立てでは最後の最後でキミは殺せる側の人間だと思ったんだけど♣︎)
「それとも、口ではあれだけ言いながら本当はボクのこと憎からず思ってるのかな?だとしたら嬉しいね❤︎」
「そんな可愛いコを森に置き去りにして風邪を引かせるわけには行かないからね❤︎ ついでに傷も治さないといけないし♦︎」
トランプのジョーカーがどのカードともペアになれるように、道化師は心多くその愛も移ろいやすい。
それでも今だけは、キミだけのペアでいようかな❤︎
思い返せば最後の最後までヒソカに乗っ取られた小説でした。このキャラ余りにも美味しすぎる……
次に書く作品をどうしようか迷ってます。色々とネタは思い付いてるけど熱量と文章力が追いつくのかどうか……活動報告にネタ帳として残しとくので、宜しければ見て読みたい物があればお伝えください。