純粋で最強な九尾ちゃんと怯える飼い主   作:臆病者の呪術師

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身体の弱い少年と、それを治そうと冒険をした二匹の猫の話


少年と猫と主

 

「けほっ、けほっ」

 

少年は布団に包まりながら、咳き込む。

 

「にゃぁ…」

 

「にゃぁぅ…」

 

そんな少年を心配して、二匹の猫はすりすりと身体を擦り付ける。

 

「タマ、マロ…大丈夫…僕も、毎日お薬、飲んでるから…けほっ…けほっ…頑張れば治るはずなんだ…お父さんもお母さんも…薬の為に仕事をいっぱいしてるから…僕が頑張って治さないと…」

 

少年の家族にとって、薬は高価なものだった。

しかし両親は何とか治したいと仕事をかけ持ちし高価な薬を買い漁って少年に与えていた。

 

あれ程までに笑顔だった両親は、今では笑わなくなった。

 

ただ少年が咳き込むだけで心配し、少年は毛布で包まれ食事も元気になれるものを与えられる。

 

心配してくれる両親を嬉しく思うも、少年は両親をこんな風にした自分の病が許せなかった。

 

一刻も早く、一刻も早く、この病を癒してまた家族と笑い合いたい。

 

少年はただそれだけを願って、毎日食事と水、薬を飲んではただジッと治るのを待っていた。

 

そんな少年を見てきた、タマとマロはどうしようと考える

 

『ご主人の弱りが治らない』

 

『くすりというのがダメかもしれない、何か他にないのか?』

 

二匹は少年の側を離れ、町を歩きながら考える。

 

「ふむふむ、私が知らない間に人の世とは変わったみたいだな…だが…病は未だにそのままか…私が知る薬草があれば、殆どの病は治ると言うのに……彼奴ら、まさか教えてやった事を忘れたのか…?」

 

ボロボロの外套で全身を包み込んだ者の独り言に、タマとマロは反応する。

 

二匹は急いで、その声の主の元へと向かう。

 

『そのやくそー、教えてくれ!』

 

『それでご主人が治るのか!』

 

にゃぁにゃぁと自分の足元で鳴く猫を、その者はしゃがんで見つめる。

 

「どうしたお前達?何?飼い主が弱っていて薬が効かぬ?それで薬草のある場所を教えて欲しい…と…ふむ…」

 

その者はそのまま空を見つめて考える

 

「…ここで使って良いモノか…まぁアイツらとまた会えるかもしれんしな…」

 

何かしらを決めたその者は、二匹の猫に告げる

 

「その薬草は険しい所にあってな、今のお前達ではそこへ向かっても無駄死にをするだけだ。だから私が力を与える、だが私でさえもお前達がどうなるのかは分からない…それでも良いか?」

 

『構わない!ご主人の為なら!』

 

『弱っているご主人の助けになるなら何でもいい!』

 

「……そうか。お前達は優しくて、とても良い奴らだ…良い存在に成れるといいな…」

 

その者の声音はどこか懐かしむような声だった。

 

そうしてぼんやりと紫の光を二匹へと当てる。

 

メキメキと何かが成長する音と共に、二匹の姿は変わった。

 

尾は二つに分かれ、身体は成長し二回り程大きくなった。

 

「うむうむ、成長したな。お前達」

 

そう言ってその者は笑う。

 

『これでやくそーを取りに行けるんだね!』

 

『早く、案内して!』

 

「急かすな急かすな、どれ…私と一緒に行こうじゃないか。私も久々でね、正直どうなってるか分からないから気を付けて行こう」

 

そう言うと、その者と二匹はその場から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

険しい山の麓に、一人と二匹は転移した。

 

『すごい!すごい!こんなのを使えるのか!』

 

『お前、もしかして凄いやつなのか?』

 

「いやいや、私はこれでも千分の一の強さになっていてね。こういう事は全然出来るけど、戦いとなれば多分…君達を頼る必要があるかもねぇ…

 

さぁ行こうか、この山の山頂にその薬草はあるはずだからさ」

 

そう言って、その者は二匹を先導するように歩き出した。

 

険しい道のりを二匹は軽快に登る。

 

しかし先導するその者は、息切れ気味だった。

 

「はぁ…あれ…?おかしい…なぁ……私はこの程度でへばってしまう…体力では…ない…はず…」

 

そのままへたり込んだその者を二匹は心配する

 

『お前、大丈夫なのか?』

 

『無理したらダメだぞ?』

 

「君らに心配されちゃうと、旧友達に笑われてしまうなぁ…よっこらしょ…ふぅ…行こうか…もうそろそろ着くはずだ」

 

ふらふらしながら立ち上がったその者を心配するようにタマとマロは寄り添った。

 

そうして、ふらふらしながら山頂へと辿り着く。

 

「あー…やっとたどり着い……は?」

 

『ここ、やくそーがあるのか?』

 

『変な建物しかないぞ』

 

山頂にあったのは、草原でもなく、ゴツゴツした岩肌でもない。

 

ただ巨大な大社がそこに鎮座していた。

 

「あっははは……まさか敵陣の本丸にそのまま乗り込むとか幾ら私でも…」

 

ダラダラと汗をかき始めたその者をタマとマロは心配そうに見つめた。

 

「ふん、こちらも貴様の顔を見るとは思わなかったぞ」

 

いつから居たのか、大社のすぐ横に人が立っていた。

 

その者は真っ黒な狩衣に身を包み、鋭い目線を送りながら札を構える。

 

「や、やぁやぁ久しぶりだね?ドウマン」

 

「その名で呼ばれるのも千年ぶりだな、『百鬼夜行の主』よ。ノコノコとこの場にやってきたのだ、一先ずは目的を聞こう」

 

そう言いながら放たれるずっしりとのしかかる圧にタマとマロは堪らず地面にへたり込む。

 

『な、なんだこれ…身体が動かない…!』

 

『た、立てないよ…!』

 

そんな二匹を見たその者…主はドウマンに告げる

 

「やめてくれドウマン、この子達は僕の仲間じゃない」

 

「ふん、襲わんと誓えるなら解いてやる」

 

「襲えるわけないだろう!?君ほどの呪術師に襲いかかれるやつなんて封じられたあの子達くらいだよ!」

 

「それもそうだな、そこの二匹はどう成長しようとそこそこ強い妖にしかなれん」

 

ふっ、と圧を解いたドーマンはただジッと主を見つめる。

 

「貴様を倒し、その魂魄をバラバラにしたと言うのに…逃したたった一片から蘇ったか、しぶとい奴め」

 

「ふふ、しぶとさは僕のウリさ!…でも今の君とやり合えば確実に消されるから無理だね」

 

「だろうな、貴様も今は何もしていない。昔の旧友として許してやる」

 

「それは有難い、それはそうと目的について何だけどね」

 

「ああ、聞いてやる」

 

不満な顔のまま、ドーマンは主を睨み付ける。

 

「この子達のご主人ってのがね、病にかかっているからさ。ここに生えてた薬草を分けて欲しいんだ」

 

「……そんな事の為にお前は力の一端を与えたのか?…信じられん…」

 

ドーマンは少々驚いた顔のまま、へたり込んだままのタマとマロを見る。

 

「そうだろう?僕も丸くなったのさ!」

 

「だがあの薬草を管理しているのは私ではない」

 

「……ああ、居るんだ。セイメイ」

 

「居るが、今は書類の山と格闘中だ。早々には出て来れ…」

 

「呼んだぁ?」

 

大社の扉を開けて、ひょっこりとセイメイは現れた。

 

「…………」

 

「……貴様…」

 

『………?』

 

『………?』

 

ひょっこりと現れたセイメイに頭を抱えるドーマンと、そんなセイメイを見て口をあんぐりと開ける主、そして何も分かってないタマとマロ。

 

「全く、いきなり飛び出してびっくりしたよドーマン…それでお客さんは………へぇ?」

 

ドーマンを超える圧が、一人と二匹にのしかかる。

 

「何をしに来たのかな?『百鬼夜行の主』」

 

「き、君は…相変わらずデタラメな強さだな…!」

 

ガクガクと足を震わせながらも主は真っ直ぐにセイメイを見つめる。

 

「ドウマンにも言ったけど、ここの薬草を分けて欲しいんだ…!勿論、僕自身を癒そうって訳じゃない…!この子達のご主人って人を治してあげたいだけなんだ…!」

 

その言葉を聞いたセイメイは、ぽかんとした顔をして主を見つめ、あれ程あった圧はふっと消える。

 

「え?君が、人の為に…?まるで最初の頃の君じゃないか!」

 

あっはっはっはっ!と笑いながらセイメイはグッタリしてしまったタマとマロを見る。

 

「なるほどなるほど、君達はご主人の為に、妖になったんだね」

 

そう言って二匹を微笑ましい顔で見つめる。

 

「良いだろう、分けてあげよう!」

 

「ありがとう、セイメイ…」

 

主は頭を下げる。

 

「いいよ、君と私達は殺し合いをした仲とは言え、あれから1000年経ったんだ。人と妖の諍いは続いているが、君が起こした『百鬼夜行』クラスの事は、1000年の間に起こってないよ」

 

「流石に起こされたら僕の面目丸潰れだからやめて欲しいなぁ…あの子達が他の人についたら僕、立ち直れないや」

 

「ホント、昔に戻ったな君は」

 

そう言ってセイメイは式神を呼ぶ。

 

そうしてやってきた虎の式神は主へ威嚇しながら、セイメイに薬草を渡した。

 

「ほら、薬草だ」

 

ぽいっと投げ渡されるそれを主は慌てて受け止める。

 

「君ねぇ!昔から物の扱いだよ!」

 

「いやいや、これでも改善した方なんだよ」

 

「そうだな、月に3回筆を粉砕する程度だ」

 

「それ改善したと呼べるのかい…?」

 

その事を聞いて呆れる主は、へたり込んだままの二匹へ薬草を渡す。

 

「ほら、約束通りの薬草だ。これで君達のご主人が治るといいね」

 

『お前は、どうするんだ?』

 

マロは主を見上げて問いかける

 

「僕は……あの人達とお話があるからね、君達を元の場所に送って、話をするさ」

 

『大丈夫なのか?』

 

「大丈夫さ、ああ見えて殺し合う前は三人で酒を飲み交わしたりしたからね」

 

そう言って主は微笑んで、二匹を元の場所へ送る。

 

「さて、セイメイ、ドウマン。僕が蘇ったのには訳があるから、聞いて欲しいな?」

 

「こっちも1000年の間に色々変わったから教えないとね」

 

「そもそも、貴様があの時に堕ちなければ殺し合いにはならなかったが」

 

「…それは本当に悪いと思ってるよ…反省もしたしさ…ああ、情報交換したらでいいんだけどさ」

 

そう言って、主は笑いながら言った。

 

「君達が封印した僕の『式神』達は元気なのか知りたいな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

元の場所に戻った、タマとマロは駆け出す。

 

大好きなご主人の元へ

 

そうして、家に戻った二匹は

 

「けほ、けほけほ…タマ…?マロ…?何処…?」

 

ふらふらと外へ出ようとしている少年と慌てる両親を見た。

 

両親に怒られたタマとマロは縮こまりながらも薬草を渡した。

 

「全く、居なくなったと心配したらこんな薬草を持ってきたか」

 

「でもこの子達が持ってきてくれたんだし、試してみましょう?」

 

そうして試した薬草は効果覿面、毒味をしようと飲んだ両親と嬉しそうに飲んだ少年は揃ってすやすやり

 

翌日には元気満々で両親の溜まった疲れも少年の病も消し飛び、両親は大喜び

 

タマとマロには少し豪華なエサが与えられた。

 

そうして暫く経ち、少年は両親に告げる。

 

「僕は、もっと色んな場所を見てみたい。だから、旅をさせて欲しい!」

 

そう言って土下座した少年を、両親は優しく撫でる。

 

「いいだろう、これは父さんと母さんでコツコツと貯めた旅の路銀だ…お前を今まで狭い場所に閉じ込めてすまない」

 

「ごめんなさいね…」

 

「いいんだよ、父さん、母さん…僕の為に頑張ってくれて、こうやって路銀まで用意してくれて、僕は幸せ者だよ」

 

「にゃぁ!」

 

「にゃぁぅ!」

 

「それにタマもマロも付いてきてくれるから、寂しくないしね!」

 

「…そうだな、行ってこい。…もし辛くなったら帰って来い、ここはお前の家なんだ」

 

「そうよ、いつでも帰って来てね」

 

「うん!」

 

そうして旅立った少年と二匹は様々な場所を巡った。

 

その中で大屋敷の耳に入り、少年は呪術師として働く事になる。

 

少年は、呪術師になる事の引き換えとして両親に裕福な暮らしをさせて欲しいと頼み込んだ。

 

大屋敷の長は、それを了承した。

 

その日以降、とある呪術師の話が巷に広まった。

 

その呪術師は二匹の猫をお供にして悩みの解決をしている

 

その呪術師はまだ若いと言うのに、子供の面倒や老人の手伝いなどを嫌な顔をせずにしてくれる

 

その呪術師と共に居る猫がヒトになる姿を見た、という者も居る。

 

しかしそんな話よりも確証のある話はこれだ。

 

その呪術師は口癖のようにこう言っている

 

「僕はこの子達に助けられて命を繋いだんです、だから僕も、生きている間は皆さんのお手伝いをしたいんです!」

 

そう言って笑う呪術師と側に居る二匹の猫は、今日も何処かで誰かを助けている。

 




少年

旅をしている間に『猫を二匹連れた少年が妖を倒して人助けをしている』という噂話が流れ、それを聞いた大屋敷の長は探し出して呪術師として迎え入れようとした。

代わりに少年が望んだのは『両親の裕福な暮らし』
自分の為に身を粉にして働いた両親に自分が出来る些細な恩返しになればと頼み込んだ。

その程度ならばと承諾し、少年は今日も何処かで誰かを助けている。

そんな少年のささやかな幸せは、休みの日に家へ戻り両親と共に過ごす事。

タマとマロ

猫又になった飼い猫、元々は野良の子猫だった頃に元気だった少年によって助けられた。
少年に懐き病に伏せた時はずっと側にいる程だった。

そんなタマとマロは大冒険の果てに薬草を手に入れ、今では少年の式神として頑張っている

因みにどちらもメス。
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