純粋で最強な九尾ちゃんと怯える飼い主 作:臆病者の呪術師
年末に書くお話、短いです。
こんな作品ですが来年も宜しくお願いします
とある山奥に、朽ちる寸前の社があった。
そこの神様は人々の為にと知恵を与え、力を与え、今はもう無い村を見守っていた。
しかし村人達はいつしか神様を忘れ、作物が育たぬとなれば早々に村を捨て何処へと行ってしまった。
社から離れられない神様は荒れ果て、朽ちていく村をただじっと見つめていた。
神様はその中で、自分という存在が薄くなるのを感じていた。
『このまま時が過ぎれば私は消えてしまう。力だけの存在になれば、私は人々の天災として力を振るうままの化け物になってしまう』
神様は人に忘れられようと村が朽ちようと、神様の矜持として人への災いにはなりたくなかった。
『私の持つ力を全て使って、子孫を作ろう。
だが最初から強力無比な力を振るえぬよう、制限を付けよう』
神様は自分の持つ力を使い、二匹の小狐を生み出した。
二匹の小狐は、社の神様を見つめる。
『私は、お前達の生みの親だ。だが…私はそろそろ朽ち果てる、お前達は私が化け物に堕ちない為に生み出しただけに過ぎない…故に、私はお前達が何をしようと許そう。妖を食って力を付けるのも良い、人に仕えるのも良い…お前達がのびのびと生きるのを、自然の中で見守ろう』
そう言い残すと、神様はサラサラと消えて行った。
二匹の小狐はお互いを見る。
そして、これからどうするべきかを考える
二匹は朽ちた社から離れ、草を分けて何処かへと歩き出した。
そしてそんな二匹が去って行くと共に、朽ちた社は崩れ去った。
二匹の小狐は生きる為にまず水を探した。
水と食料を探す、それが今の二匹にとっての最優先事項だった。
しかし、探し続けても見つからない。
そうして時間を浪費していけば、徐々に日は傾いて行く。
日が落ちれば妖怪が活発的になり、森の中を闊歩し始める。
二匹は妖怪達から逃げながら、必死に生きようとした。
そしてその繰り返しを三日した二匹は、疲れ果ててしまった。
ふらふらと身体は揺らぐ
力もそこまで入らず、二匹は倒れ込む。
致命傷はないにしても、妖怪から逃げようとして出来た細かな傷は多く、地面には血が染み込んでいた。
二匹は思う。
自分達は、ここで死ぬのかと
嫌だ、嫌だ、嫌だ。こんな所で死にたくない、死ねない。
そう思って立とうとするも、身体はぴくりとも動かない。
そんな二匹の元に影が差した。
それは一人の幼い人間だった。
二匹は死を悟る。
しかし、その人間は札を出すと何やら唱える。
二匹は吸い込まれる感覚を覚え、抵抗しようとしたが、そんな力は身体に残っていなかった。
そうして吸い込まれた二匹は、これからどうなるのかと不安になる。
しかし二匹の不安は当たらず、その幼い人間に世話をされ、生きる事になる。
そうして生かされた二匹は名を与えられた時に、一つの誓いを立てた。
『この救われた命、貴方の為に使います』
と
そうして誓った二匹の小狐は、様々な経験、死闘を経て九尾へと至る。
そしてその二匹は九尾に成ったその夜に、朽ち果てた社を訪れた。
朽ち果てた社はもうそこにはなく、ただ草が生い茂るのみ
辛うじて、社の土台だった石がそこにはあった。
「私達を生んでくれてありがとうございます、神様」
「生んでくれなかったら、私達はこんな幸せを得る事もなかった。ありがとう」
そう告げる二匹の頭をそよ風が優しく撫でる
まるで、成長した子を優しく撫でる親のような、そんなそよ風だった。