純粋で最強な九尾ちゃんと怯える飼い主 作:臆病者の呪術師
正月、それは人々が新年を祝い、今年も無病息災であれと願う大切な日
そんな日でもここ、大屋敷の呪術師達は仕事をしている…
「よーし!お前ら飲んで騒ぐぞぉぉぉ!」
『うぉぉぉぉぉぉ!!!』
…訳もなかった。
大人の呪術師達は酒をあおり、料理を摘む。
子供の呪術師はみんなで集まって料理を食べながら今年はどうしようかと話をしている。
そんな騒がしい大屋敷の中で静けさを保っている場所が三つあった。
ひとつは大屋敷を管理する大頭の部屋だ。
ここの大頭は酒好きで宴会好きとは言え、新年を祝うよりも大変な事で頭を抱えていた。
「セイメイ様が……今年も来る…」
机の上には
やぁ!一年が経ったし、僕自らでそれぞれの大屋敷を視察します。もし不正や何かあれば……わかるね?
…と、割と達筆な字で書かれた紙が一枚。
これは新年名物となっている大屋敷の視察であり、緩んだ時を狙ってセイメイがやってくる。
大頭達はそれぞれ、きちんと職務を全うしているものの。新年に1000年も生き続けているセイメイが来るとなれば…お腹も痛くなるし、頭も抱えるし、料理の手配どうしようとか考えてしまう。
「ともかく、最高級の酒と料理でもてなそう…」
新年始まって早々の大仕事に、大頭は溜息を吐いた。
◆
そして次に静けさを保っている部屋はシュリの部屋である。
シュリは騒がしい空気が嫌いであり、新年は毎回部屋に篭っている。
しかし、今年はどうやらひとつ違いがあるようだ。
「よし、これくらいでいいかしらね…」
そう言って息を吐くシュリの目の前には、豪華な食材をふんだんに使われたおせちがあった。
シュリはいそいそとそれを包み、ある場所へと向かう。
そんなシュリを後ろで見守りつつ、シュラとモミジは年末の事を思い返す。
〜〜〜
時は年末、シュリは毎年三人で食べるおせちを作りながらブツブツと文句を溢していた。
「クラマったら、年末だって言うのに年越し蕎麦も食べないでずっと部屋に篭るなんて……新年になったらおせち、分けてあげなきゃ…お腹空かせてるかもしれないし…」
そう言ってテキパキと自分達の食べる分とクラマの分を分けるシュリを見ながら、シュラとモミジは思う
(シュリ、美味しいやつとかを優先して移してないか?)
(しかも割と高いものを移してますね……偶には高いものを食べながらクラマと笑い合いたいんでしょうか)
せっせとクラマ用のおせち箱へ詰めているシュリを見守りながら、シュラとモミジは食べたい分を確保する為に腰を上げた。
〜〜〜
そんな訳で出来上がったクラマ用おせちを持ちながら、シュリはクラマの自室を目指す。
クラマの部屋は大屋敷の騒がしさとは無縁な程に静かだった。
「クラマー、開けるわよ」
ガラリと開けた先に、シュリが見たのは
「あるじ様、あーんですよ」
「あるじ、こっちも美味しい」
「二人とも、そんな一気に食えないってば!?」
シュリの持ってきたおせちに負けない程豪華なおせちと、それを摘んで食べさせようとしているキンコとギンコ。
そして、若干お腹の膨れて来たクラマの苦笑いだった。
「く、クラマぁ…!新年早々に何やってんの!」
おせちをすぐ横へ置いて、シュリは怒りを露わにしながらクラマへ詰め寄る。
首根っこを掴んで説教を始めたシュリとクラマをよそに、シュラとモミジはおせちを摘む。
「お、中々いいな」
「割高だったと思いますがこれは…美味い」
しかし、摘んだのはクラマの為にキンコとギンコが作ったおせち
「貴様…!」
「あるじのおせちを食うな!!」
当然怒りを露わにしたキンコとギンコに飛びかかられ、もみくちゃになる。
そうして今年も、騒がしい声が響く大屋敷の上空では
「いやー、この大屋敷は毎年見てて飽きない。いつも活気に溢れて騒がしいからね!」
セイメイは龍の式神に背を預けながら、眼下の大屋敷を見て笑う。
「さて、じゃあ今年もやろうかな。はいっ!よろしく!」
セイメイの声に反応した龍はその口を上空へ向けて上げる。
「ゴァァァ!」
龍の顎から放たれた浄化の息吹は、雲に入り込んで雪と混ざって降り始める。
雪だ、雪だ!とはしゃぐ子供や、それを見守る大人達。
都の人々の笑い声と大屋敷の騒ぐ声。
それを聞きながら、セイメイは笑いながら高らかに声を上げた
「今年も良い一年でありますように!」
呪術師達の新年の裏側
セイメイは新年になると各地の大屋敷を視察する。
そしてその間に来る書類は、ドーマンに押し付けられる。
そうして新年に炙り出された『ウミ』達は、新年を喜ぶ者達には知らぬ所で静かに消される。
因みに、新年の時の妖怪達も自分達で新年だ!と祝いの会を開いたりする為
人と妖、双方がいがみ合う事がない平和な日だったりする。