純粋で最強な九尾ちゃんと怯える飼い主   作:臆病者の呪術師

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とても悪いタイミングで、クラマが一人で妖の根城であると思われる山へ向かう話。




不穏な山 前編

 

クラマは任務の為にとある山を訪れていた。

晴れやかな空模様の中で、その山の上にはどんよりとした雲が風によって動く事もなく居座っていた。

 

クラマは任務として与えられた紙を見直す。

 

【その山に濃密な妖気の気配有り。その正体を調査し、可能なら討伐すべし】

 

その紙を見直したクラマは改めて山を見る。

 

乱雑に生えた木々に鬱蒼と生える雑草。

その山からは野生動物の鳴き声などせず、風が吹く事もない。

 

そんな不気味な山を見ながら、クラマは呟いた。

 

「これ明らかに僕が行けるレベルじゃないよな」

 

クラマは強さ的には中の上だ。

潜在的な強さは相当とは言え、キンコとギンコの式神の契約が切れている時点でその潜在的な強さは化け物クラスであるセイメイやドーマンには遠く及ばない。

 

もし、この山を九尾や鬼などを始めとした高位の妖が根城にしていた場合、何の対策もせずに踏み入れた瞬間にクラマは遠隔からミンチにされてしまう。

 

更に都合の悪い事に、相方であるシュリは別件で駆り出されており、キンコとギンコは定期的に来る周期のモノによって動けず自室に篭っている。

他の呪術師達もそれぞれの依頼や任務に駆り出され、大屋敷で動かせる人員はクラマだけだった。

 

つまりこの場にはクラマ一人しか居ないのだ。

 

一応、クラマも自分の出来る限りの耐性付与や符や札を持参した。

 

しかし、いくら小細工をした所で高位の妖はその溢れる妖気で消し飛ばして来る。

 

分かりやすく言えば常に『いてつくはどう』を放って来るのだ。

 

クラマはそれをよく理解している、伊達にキンコとギンコという九尾と共に過ごしていない。

 

「符術『絡繰操糸』」

 

クラマは念には念をと、自身に一つの符を使用する。

 

符は問題なく発動し、内包された力を発揮した符は燃え始めボロボロと崩れ去った。

 

これはクラマが気絶もしくは死亡した場合、符によって付与された糸で身体を動かして逃走と自身の身体の一部を喰らった妖を自害させる為だ。

 

不思議な事に符によって付与された呪術は並の妖の妖気であれば解除される事がない。

 

札と符の開発者たる高名な呪術師曰く、『札は霊力による干渉、符は内包した力の付与である』との事。

 

簡単に言ってしまえば札は使用すると霊力を消費して発火を始めとした自然現象を発生させたり札を中心とした爆発など、基本的には周りへと干渉する。

符は逆に符の中に内包された力を身体に纏わせるもので、これは発動すると基本的に効力がなくなるまでずっと残る。

 

呪術師は基本的に札を愛用している中、クラマは符のとある特性を理解している為に符を好んで使っていた。

 

その符の特性というのが、捕食などによって妖の体内に取り込まれた場合に付与された力が妖のモノになるというものだ。

 

これは呪術師にとって不利な特性だった。

何せ式神や自身に付与した力を、相手は身体の一部でも捕食してしまえばその効力を受ける事が出来てしまう。

 

この事もあって、場数を踏めば踏むほどに呪術師達は札を使う機会が増え代わりに符を使うという事自体が減っていく。

 

クラマはそんな符の弱点を逆手に取り、改良を重ねた結果…人と妖で効力を分ける事に成功した。

 

そしてこの工夫は、符を新米や中堅の呪術師に分けている現在でもバレていない。

 

最後の保険をかけたクラマは山へと足を踏み入れた。

 

…この最後の保険をかけた事が、クラマの生死を分ける事になった。

 





札と符
呪術師が携帯する消耗品。基本的に呪術をバカスカ撃てる呪術師は少ない為、基本的に札や符を使って削りながら自身の呪術を織り交ぜて戦う。

呪術師は地味な符による付与効果よりも、爆発力のある札を好む傾向があり、符を使うのも新米〜中堅上りたてまでだったりする。

実際札の場合、目眩しや地面に設置して罠にしたりと汎用性が高い。

しかしクラマは地味ながらもバレにくい符を愛用し続け、改良しようと手を出した。
仕事が終われば部屋に篭って改良の為に符を弄る毎日が実を結び、効力を分ける事に成功した。

しかしこの改良はセイメイとドーマンに筒抜けであり、二人はそこから更に手を加えている事をクラマは知らない。
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