純粋で最強な九尾ちゃんと怯える飼い主   作:臆病者の呪術師

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外の化け物の商人、異形の運び屋

 

ここは都より近くにある港。

各地から運ばれて来る商品を受け入れる、都の生命線とも言える場所だ。

 

そんな港の日陰に、赤い外套を身に纏う。白い肌の女性が居た。

この港にて、唯一『外の国』からやって来た商人であり、『外の国』の化け物だ。

 

彼女の扱う商品は唯一無二であり、一介の商人から豪商、呪術師までがお世話になっていたりする。

 

そんな彼女は今日も日陰でぼんやりと客が来ないかと待ち続ける。

 

そんな時、馴染みの客がやってきた。

 

「こんにちは…あの、前に買ったあの不思議な菓子はありますか?」

 

「あれ、また欲しい」

 

それぞれ、金と銀の尾を揺らす九尾の狐だ。

 

「不思議な菓子…ああ、チョコレートですか?お待ち下さい!」

 

そう言って商人はニッコリと笑うと自らの影に手を入れ、ゴソゴソと漁る。

 

ニュッと出したのは、小瓶とそこに詰まった茶色の液体…チョコレートである。

 

「こちらでよろしいですか?」

 

「…前回と同様の量が欲しいのですが…」

 

金の九尾は申し訳なさげにそう言う

 

その言葉に、商人は眉を下げて謝罪する。

 

「申し訳ありません、売り出してみたら豪商から名主等が欲しい!と言われ…予約済みが殆どなんです…」

 

「そっか…なら、仕方ない…」

 

しゅんとする銀の九尾に、商人は慌ててフォローを入れる

 

「で、ですが!今日は運が良い事に『運び屋』が来てくださいますので、もしかしたらチョコレートもあるかもしれません!」

 

その言葉に、二人は顔を上げる

 

「それは本当ですか!?」

 

「はい、可能性の話になるので…確実にとは言えませんけど…」

 

そう言って苦笑する。

 

それとほぼ同時に、商人の影がゴポゴポと泡立つ

 

「あ、来たみたいですね…お二人とも少し離れて下さい」

 

「ん、わかった」

 

「了解しました」

 

スッと離れると同時に、商人の影から何者かが這い出て来る。

 

「はー…今回も面倒だったな」

 

ゴキゴキと首を鳴らして愚痴るその者の見た目は変わっていた。

 

その身を黒い外套で包み、その下には真っ黒な軍服のような物を着ている。

腰には軍刀を下げ、手には白い手袋を付けている。

 

気怠げな真っ黒な目は商人を見つめ、次に二人の九尾を見る。

 

「吸血鬼さんよ、お客の数は正確に見ておくもんだぞ」

 

「へ?」

 

キョトンとする商人に、その者は溜息を吐いて指を指す。

 

「この二人の後ろにもう一人居るんだよ。ったく…混ざりもんとその元が居るとかどんな世界だよ」

 

そう溜息を吐くと同時に、二人の九尾の後ろにもう一人が現れる

 

「ふぁっ!?本当に居ました!」

 

「…何故、分かったんですか?」

 

金と銀の尾を揺らしながら、その存在は鋭く睨む

 

その視線に怯みもせずに、その者はヘラヘラと笑って言う

 

「何、こっち側に足を踏み入れかけてるやつなんて早々見ないからな、バレるもんだろ」

 

そう言ってケラケラと笑うと、そのまま商人に巨大な黒い袋を渡す。

 

「どっかの世界じゃ今日は『クリスマス』ってのらしいぜ、だからチョコだの菓子は多めだ。何もかもが真っ黒なサンタ様からのクリスマスプレゼントってな!」

 

そう言ってケラケラ笑いながら商人の影の中へとその者は沈んで行った。

 

その姿をポカンと見る二人の九尾と、その影をじっと見るその存在を尻目に、商人は商品を確認する

 

「あ、チョコレートは前よりも多めにありますね…買っていきますか?」

 

「「全部ちょうだい!」」

 

ハモる九尾を見て、商人はクスクスと笑う。

 

しかし、その存在のみは、じっと商人を見つめて問いかけた。

 

「先程の者は一体何者ですか?」

 

その言葉に、商人はうーんと悩んだ後に答える

 

「…えーっと、今は『彼』でしたね…彼は、【シェイプシフター】です。外の国にも、この国にも、そしてどこであっても概念として存在する。そんな…バケモノ…?ですね」

 

でも良い人…人…?ではあるんですよ、と続けて言う商人は、チョコレートを九尾の二人へ渡し、お代を受け取る

 

「…まぁ、いいです。目的は達成しましたし…」

 

「はやく、帰ろう」

 

「ですね」

 

そう言って帰路に着く三人を、商人は手を振って見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その者…シェイプシフターは、真っ黒な世界で一人佇む。

 

「しかし、アレが想いが混ざって生まれた化け物か…末恐ろしいもんだな」

 

シェイプシフターはそのまま歩き始める。

 

「つまる所、アレがどっかから越えて入って来てる訳か…」

 

そのまま歩き続けたシェイプシフターは、不自然にひび割れた空間を見つける

 

「なるほど、ここから入って来たってか……チッ、あの世界のヤツ(・・)に細工されてやがる…」

 

シェイプシフターがひび割れに触れようとするも、黒紫の煙が湧き上がり、その手を毒々しく染める。

 

手袋を引き千切る(・・・・・)ように捨て去ったシェイプシフターは、そのまま袖から新しく手袋を生やし(・・・)、ブラブラと振るって呟く

 

「こりゃ、あの世界の奴らに自分で対処して貰うしかねぇか…ま、負けちまっても別に問題はないが…」

 

そう言ってシェイプシフターは、ひび割れを放置し黒い空間の奥へと歩いて行った。

 

 

 

 

 





商人
外の国の化け物…吸血鬼という存在。
争いが嫌いな為、逃げるようにしてクラマ達の住む国へとやって来た。
そのまま居着くも、金も何もない為に困っていた所でシェイプシフターと遭遇し、商人としてのノウハウ、商品をどう手に入れるかを教えて貰い、現在では唯一の外の国の物を扱う商人として暮らしている。

シェイプシフター
謎の存在。スイコの存在に気付いた者。
特定の姿を持たないが、現在の軍服の姿がしっくり来るらしく普段はこの姿をしている。
商人に足りない商品を融通する『運び屋』として動く代わりとして、彼女から様々な話を聞くのを対価としている。

しかし、世界を越え、どこかの世界を知るような口ぶりから、スイコが警戒している。
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