純粋で最強な九尾ちゃんと怯える飼い主 作:臆病者の呪術師
……大金に目の眩んだ愚か者が、そのツケを払う羽目になる話
これは、とある土地の話だ。
その土地は何年経とうと、果物のなる木々が生え、大地は青々と草を生やし、その土地に生きるものに活力を与える。
そして、そんな豊かな土地は当然ながら権力者や妖怪に狙われる。
しかしその土地に踏み入った者は誰一人帰って来なかった。
それはその土地の奥の奥、朽ち果てた家の側に眠る。一匹の獣が原因だった。
その獣はスヤスヤと眠っている。
しかし、土地に何者かが足を踏み入れた。
獣は即座に目覚め、唸り声を漏らしながらゆっくりを起き上がり、その侵入者の元へ歩き始める。
◆
「ったく、こんな豊かな土地を手に入れるってだけなのになんで俺達が雇われなきゃならねぇんだ」
「入った奴らが誰一人帰って来てないんだ、妖怪の仕業だってお偉いさんも考えるだろ?それに報酬も結構割高だったしよ、ちゃちゃっと終わらせて報酬貰ってパーっとやろうぜぇ?」
「それもそうだなぁ、パパッと終わらせるとすっか」
土地に足を踏み入れた、二人の呪術師はそんな事を言いながらも周りを警戒する。
「しかし、豊かな土地だよなぁ…木々が雑に生えてんのがいただけねぇが、果物とか生えてるしな」
そう言って呪術師の片割れが木になった果物を取ろうと手を伸ばす。
しかし、その腕は次の瞬間に消えてしまった。
「なっ!?お、俺の腕がぁぁ!?」
肘から先がなくなった腕を抑えて、男は叫ぶ
もう片方は周りを警戒して札を構える。
「ちっ、カマイタチか何かか?」
その時、茂みがガサガサと音を立てる
二人は警戒して、その場を飛び退く
そこに居たのは獣だった。
白く巨大な一匹の獣だった。
その獣は怒りの籠った目を二人へ向ける。
「ちっ、やるぞ!コイツが主だ!殺せば解決だ!」
「俺の腕を奪った罪、その体で味わえや!」
◆
「げほっ…ぁ…」
「な、なんだこの獣ぁ…」
二人の呪術師は四肢を噛み砕かれ、胸を引き裂かれ、息も絶え絶えだった。
そしてそんな呪術師を見る獣は
前足が引きちぎれ、所々に火傷を負っている。
しかし獣の先から黒いモヤが現れ、ちぎれた前足に引っ付くとズルズルと戻って引っ付く。
そのままモヤが収まれば、ちぎれた前足は元通りだというように獣は前足で大地を踏む。
火傷も黒いモヤに包まれれば元通り
「ば、化け物だ…こんなの勝てる訳ねぇだろ…!」
「く、くそっ!最初から分かってたらこんな依頼受けてなかったのに!」
金に目が眩んだ二人の呪術師か最後に見たのは
大口を開けて二人を喰らおうとする、獣の口の中だった。
◆
ゴリゴリと、『侵入者』を喰らいながら、獣は思い出す。
獣はいつも思い出す、大切な主人の言葉を
『███、私はこの家を離れなくてはならない。私の家族と家の事を頼んだぞ』
獣はいつも思い出す、無力な自分が家族を守れなかった。あの時の事を
『ああ、███は無事だったのね…ごめんなさい貴方…家と子供を守れなくて…』
そして獣は再び決意する。
この土地はご主人と、家族の土地だ。
誰にも、誰であっても、踏み荒らさせはしない。
とうの昔に獣は妖になっていた。
主人の家族を盗賊に殺されたあの日に、獣は一匹で盗賊共を殺し尽くした。
そうして、恨みや憎しみが獣を妖へと変えた。
『侵入者』を喰らい終えた獣は、朽ち果てた家へ戻る。
そこが守るべき場所なのだと、主人の帰る場所なのだと
獣は今日も、土地と朽ちた家を守り続けている。
来るはずのない、主人の帰りを待ちながら
皮肉の土地
『皮肉の土地』、それは妖と化した獣の副次効果によって生まれた自然豊かな土地。
そこには野生動物がのびのびと過ごし、木々に果物がなっており、人や妖からすれば楽園だろう。
しかし、その土地へ人や妖が足を踏み入れれば死があるのみなのだ。
妖しくも美しき獣
その獣は主人の帰りを待っていた。そんなある日の時、獣と主人の家族は盗賊に襲われる事となり、主人の家族は無惨に殺されてしまった。
主人の家族を守れなかった獣は力を求めた。
渇望するままに、力を求めた。
そうして、力を求めながら『侵入者』を殺して喰らい続けた獣は、いつの間にか妖となっていた。
しかし、獣は妖と成り果てても力を求めた。
主人の土地を守る為に、土地から呪いなどと言った負の力をを吸い上げた。
そうして吸い上げられた土地は緑が豊かになり、野生動物も入ってくるようになった。
それと同時に土地を狙って権力者が現れ
良い土地なので、人を誘い込む土壌にしようと妖が来るようになった。
皮肉にも力を求め続けた獣は永い戦いをする事になる。
しかし、獣が倒れる事はない。
帰って来ると信じる主人を待ち続ける為に、死ぬ事は出来ないのだから