純粋で最強な九尾ちゃんと怯える飼い主   作:臆病者の呪術師

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これはなんでもない日常の一コマ

いつもはべったりな二人が、何かしらをするお話


お気に入り100件記念小話 とある日のキンコとギンコ

 

その日の朝、クラマはやけに甘ったるい香りが鼻をくすぐるので早めに起きる。

 

何処から匂うのか、とクラマはキョロキョロと辺りを見渡す。

 

匂いを辿れば、自分の寝室の奥…キンコとギンコの部屋からやけに匂う。

 

何をしているのだろう、と部屋へ繋がる扉へ手をかけるも

 

バチリッ

 

そんな音と共に弾かれる。

 

クラマは呪術師だが、技量的には二人の方が上だったりする。

故に二人がかけた結界を解く事が出来ないのだ。

しかし、結界を張るという事は何か大切な事をしているのだろうとクラマは出てくるまで時間を潰す事にした。

 

「そうだ、前に知り合いの呪術師から貰った本を読もう」

 

思い立ったら即行動、クラマは保管してある収納棚から本を探す。

しかし、本はそこにはなかった。

 

一体あの本は何処だろう?とクラマはしばらくの間探し回る事になった

 

しかし、幾ら探し回ろうと見つかる事はない…何故なら

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

「全く、あるじ様にこんなモノを渡すなど…あるじ様が穢れてしまいます」

 

そう言ってキンコは棚にしまってあった本をチリ一つ残さずに燃やす。

 

「あるじ様が『そういう事』を知るのはまだまだ先でいいのです…」

 

「同感、あるじの『初めて』は私達でいい」

 

ギンコはそう言いながら、ドロドロした物体を見つめる。

 

「商人が言ってた、外の国の甘い菓子…溶かして固めて好きなように形を作れるというけど……茶色一色じゃつまらない」

 

「そうね…せめて色々な色が使えれば…あるじ様に擬似的に私たちを食べて頂けるというのに…」

 

「ちょっと昂る…」

 

ドロドロした物体は溶けたチョコレートだ。

なぜ、キンコとギンコがチョコレートを所持しているのか

 

それは商人から買ったからだ。

なぜ買えたのかと言うと、クラマから小遣いとして渡されているお金(並の呪術師からするととんでもない大金)で買ったのだ。

 

因みにキンコとギンコは、クラマにお金の管理も任されている。本人曰く『自分じゃ使い道が分からないから、二人に任せる』と言われており、そのお金で食事から何まで全て出している。

 

キンコとギンコがなぜチョコレートを買ったのか?

それはクラマに甘味というのを味わって欲しかったのだ。

 

二人は前々から食事に果物や和菓子と言った甘味を用意していたのだが、クラマ自身が遠慮するので廃棄するのも勿体無いと二人で食べていた。

 

何故食べないのかと考えた二人は、果物や和菓子がクラマからすれば『高価なもの』でありそんなお高いモノは自分で食べるより二人に食べて欲しいから遠慮しているのだと結論付けた。

 

そもそもクラマの家系は呪術師なのだが、お世辞にも裕福とは呼べず2人が式神として捕まえられる前から貧しい生活を送っていたのだ。

 

そんなクラマが食べていたのは山へ行って自力で取った山菜に川魚程度で、殆どを家族やキンコとギンコに与えて自分は少しの山菜と小さな川魚を食べるのみだった。

 

二人はそんな食生活をしているクラマを見ているので、こうしてお金が潤沢にある以上は色々な物を食べて欲しいと食事にあれこれ工夫をして食べさせていた。

しかし毎回食事をしては『家族にも食べさせたい』というので稼いだお金の10%+同じ食事をクラマの実家へ送っていたりもする。

 

「しかし、冷やしてしまえばこの通りカチカチと…」

 

キンコはギンコが試しに冷やしたチョコレートを指でツンツンとつつく

 

「でも熱を与えて溶かせば、元のドロドロになる。不思議」

 

「つまり、幾らでも失敗が効くということですね…」

 

ふむ、と考えながらキンコはチョコレートを狐火で溶かす。

 

「しかし、どうやったら食べてくれるでしょうか…」

 

「…あるじ、食べ物みたいな形じゃないと口に入れない気がする」

 

「それはそうですが…かと言って食べ物と似せて作ってしまうと逆に遠慮してしまうかもしれませんね…」

 

キンコとギンコは二人して悩む。

そしてふと、ギンコが思いつく

 

「はっ、丸薬みたいに丸くして、食べさせるとか?」

 

「外の国の薬、という事にすれば…確かに」

 

そうと決まってしまえば作るまで時間がかからなかった。

ものの数分で小粒サイズのチョコレートが出来上がる。

 

「しかし、冷えてしまえばあの硬さ…あるじ様が噛みきれないと困りますね」

 

「丸薬で渡す訳だから…ガリっといけないと不審に思われる」

 

二人は試しに作ったチョコレートをひょいと口に入れて噛み砕く。

 

「ちょっと硬い」

 

「…私達では噛み砕けてもあるじ様には…少々難しいかもしれませんね」

 

どうしたら食べやすくなるのか?と二人は色々な試作をしていく

そうして試作をしていくうちに、チョコレートも少しになってしまった。

 

「……少し食べ過ぎました…うぅ…」

 

「…チョコレートも少しになってしまった、でもこの量なら三粒は作れる…」

 

キンコはお腹を抑えてうめき、ギンコは妖術で『工夫』をしてチョコレートを三粒作る。

 

「後はこれを食べさせるだけ、頑張る」

 

「ふー…落ち着きました…想定よりだいぶ消費してしまいましたが、これなら問題ありませんね」

 

「うん、はやく食べさせよう」

 

そうして二人は結界を解いた。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

ボケーっと天井を見ていたクラマは扉の開く音を聞いて起き上がる。

 

「あるじ、これ」

 

「実はあるじ様に試して頂きたいモノがありまして…それを自室で作っていました」

 

そう言ってギンコが盆に乗った三粒のチョコレートをクラマへ見せる。

 

「外の国と繋がる商人から買った物で作った丸薬、あるじに試して欲しい」

 

「いいの?外の国のモノなんて高かっただろう?」

 

「問題ありません、それにこれならあるじ様も丸薬が使い易くなるかと」

 

「なら、せっかくだし貰おうかな」

 

そう言ってクラマは三粒のチョコレートを一気に口の中へ放り込み、咀嚼する。

 

「ん、甘い…?」

 

「外の国のお菓子で丸薬を包んだ、これならあるじも飲みやすい」

 

「確かに、ありがとう二人とも」

 

そう言ってニッコリと2人へ笑いかけたクラマは

 

「うん…?なんかクラクラす…」

 

パタリと倒れ込んだ。

 

「ん…計画通り」

 

「…後は私達の部屋に運び込むのみですね」

 

実はチョコレートでコーティングされた丸薬は睡眠作用のあるものだったのだ。

 

眠ったクラマを運びながら、二人は舌なめずりをする。

 

そうして自室へと運び込まれると、扉はひとりでに閉まる。

 

それと同時に強力な結界が貼られた。

 

……余談だが、コトに進む前に『なんか嫌な予感がしたわ!』とやってきたシュリによって、キンコとギンコの思惑は未遂に終わった。

 




外の国

クラマやシュリが住む国から、海を挟んだ国。

そこでは血を吸う鬼が居たり、それを狩る専門職があったりするらしい。

他にも様々なバケモノと、それを狩る専門職が居るのだが

彼らからすると呪術師はクレイジーに見えるらしい

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