ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかif 白兎と雷花の残響・残香   作:青色のラピス

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第十話 壁

アレンの『魔法』―――【グラリネーゼ・フローメル】。

『敏捷』の強化及び速度を威力に変換する『魔法』。

要するに走る速度が上がり、その上がった速度が直接破壊力に変換される『魔法』。

特に威力変換に限度はなく、アレンの耐久限界が無ければこの世の全てを破壊することも可能な『魔法』である。

 

まさに【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】に相応しい戦車の歌である。

 

そしてこの『魔法』を成立させたアレンは何物にも阻まれない戦車と化して戦場を縦横無尽に駆け抜ける。

そしてそれは相手が誰であっても関係ない。

例え、格上―――【蛮勇の牙剣(ブルーター)】フィル・ライガーが相手であってもだ。

 

(成程な、この『魔法』を使ってこその【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】か。さっきよりかは噛み応えがありそうだ。)

 

「でもどうせならさっさと使っておけ―――っと。」

 

巻き起こる旋風がフィルの頬をそれだけで斬り裂く。

それは異常とも言える速度にまで加速したアレンの光の轍が破壊力を有している証左でもある。

 

「全く、フレイヤのとこはこうやって発破かけないと面白くならない。ミアの様に泰然自若とされてるのも困りものだけどな。―――【邪悪を憎め、聖剣(マサムネ)。】」

 

剣に淡く輝く光が燈る。

禍々しい二振りの凶刃には到底相応しくないものだが、これがフィル・ライガーの持つ『強化魔法』なのだから仕方がない。

フィルは強化された二振りを握り、アレンへ斬りかかる。

 

「―――遅ぇ!」

 

だが、アレンはそれを軽々しく回避する。

しかもアレンが横切るだけで破壊力がフィルを襲う。

 

「くはっ、一回避けただけで粋がるなよ。」

 

全身を襲う危機感を心底心地よさそうにしながらフィルは笑みを深めていく。

建物を利用して、縦横無尽に飛び回り、時には地面に降りて追いかっけこに興じる。

攻勢は一転してアレンにあった。

 

しかし、だからといってアレンが絶対的に優位な訳ではない。

切り刻まれた全身からは絶えず赤い血が零れている。

全身に身を護る装具さえも赤く染まり、その濃さが濃い程にアレン・フローメルの蠟燭は短くなっていく。

 

当然、熟練の剣士であるフィルがそれを理解していない訳ではない。

 

「くはっ、いいぜ。どうせ墓場送りならイキのいい奴がいいからな。」

 

迫りくる戦車に対して欠片も恐れを感じる事無く、剣士は凶悪に笑う。

まるで何時も行っている公園を前にした子供の様に無邪気な表情で。

 

 △▼△

 

「「うおおおおおおおおおおおッッ!!!」」

 

野太い咆哮と共に大剣と大戦斧(グランドアックス)がぶつかり、歪な衝撃音を響かせる。

ドワーフであり、頑強さと怪力を第一とするザス・タイソンとガレス・ランドロックの戦いはこれ以上のない程に肉弾で白兵だった。

 

得物を力いっぱい持ち上げて、そのまま相手に叩き付ける。

炸裂した時の衝撃は凄まじく、その衝撃波で土埃が巻き起こる。

 

「がははははっ、どうしたガレス! ワシを倒さねばあの娘っ子は死ぬぞ!」

 

「言われずとも分かっているわ! 死なせたくないなら、そこをどかんかぁ!」

 

「ワシをどかしたいなら、力づくと決まってあろうが!」

 

がははと大笑いするドワーフの大男。

真っ白い髭を生やし、漆黒の武具を身に纏う老戦士はガレスでさえも乗り越えられない巨壁として立ちはだかっていた。

 

「しかし、ガレスよ。お主も変わるものじゃ。闘いしか頭のないお主があのような娘っ子に気を使っておる。ワシの知るお主なら他のことなどまるで見えていなかったのにのう。……ああ、いやそんな顔をするでない。」

 

「何が言いたい……。嫌味なら、それこそお主に見合わぬものであろうよ!」

 

「嫌味ではないわい。単純にお主の変化を嬉しく思っておるだけよ。」

 

再び振るわれる大剣。

ガレスが咄嗟に反撃をしようとするが、到底間に合わない。

大剣はガレスに直撃し、何度目か分からない土の味がガレスの口腔に広がった。

 

(くっ……儂の方はアイズの下にはいくのは無理そうか。リヴェリアに託すしかないのか……?)

 

 ▼△▼

 

一方でリヴェリアの方も決して戦況が良いという訳では無かった。

縦横無尽に激走する魔導師、いや要塞に【アストレア・ファミリア】共々蹂躙されていた。

 

「一方的だなぁ……。流石は【ヘラ】の魔導師と言った所か?」

 

「五月蠅いわね、お世辞いうなら捻り潰すわよ。」

 

戦棍(メイス)を一振りすると、横から茶々を入れたエレボスが恐怖で表情を引き攣らせた。

普通なら一笑に付す行為だが、女神ヘラの眷属なら本気でやりかねないという凄みがあった。

 

「……ま、まあ捻り潰すならまず先に目の前の女の子にして欲しいなぁ……なんて?」

 

「どうしてそこでへたれるのかしら……最後まで言う気がないなら黙ってなさいな。」

 

呆れながら戦棍を構えなおし、エレボスから視線を外す。

そして魔力を練りながら、再びリヴェリア達を見据える。

魔導師一人が相手でありながら劣勢を強いられている彼女等はそれでも諦めずに気炎を吐いていた。

 

その様子を鬱陶しそうに眺めながら、メナは『詠唱』を行う。

 

「―――【魔竜爪牙(クルーグス)】」

 

竜の爪牙を模した風撃が岩盤を広範囲に抉る。

『大災厄』にも劣らない魔導師の砲撃に少女達の陣形が崩れる。

 

「気を付けろ、各個撃破する気だ!」

 

リヴェリアがメナの目的を察知し、防御魔法を展開しようと『詠唱』を始める。

 

「年だけ重ねただけなの、アンタ? いの一番に殺すならアンタ以外にいないでしょ。」

 

だがリヴェリアが『魔法』を完成させる前にメナの戦棍が炸裂する。

前衛戦士にも匹敵する膂力から繰り出される鉄槌は簡単にリヴェリアを魔杖ごと叩き折った。

しかし、仮にも第一級冒険者である彼女を完全に殺しきることはできていない。

 

「―――リヴェリア様!」

 

「リオン、焦らないで! 輝夜、いくわよ!」

 

「言われずともだ!」

 

そして止めを指そうとも少女達の奮闘がそれを阻む。

メナ・ガイアードという怪物からすれば脅威という程ではないが、嫌らしい所で食らわされる攻撃は苛立ちを誘うには十分だった。

 

「……前言撤回、作戦変更よ。【鉄人】! 纏めてブッ飛ばすわよ!」

 

「はぁ!? ちょっと待て! お前の火力でやれば後ろの超大型(モンスター)ごと殺しかねんぞ!」

 

ガレスと鎬を削るザスに作戦変更を一方的に告げると返答など知ったものかと魔力を集中させる。

そして、『魔法』を放つための一単語(ワンワード)を荒々し気に世界に叩き付けた。

 

「【魔竜咆哮(フレス)】!!」

 

その瞬間、竜種の息吹(ブレス)もかくやという程の魔炎が現れた。

収束するはずの焔は拡散し、18階層の大半を焼き尽くす。

『大災厄』によって破壊し尽くされたはずの『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』をさらに焼き尽くす。

天蓋となり地面を映す水晶が真っ赤に染まり、終末を幻視する程の光景だった。

 

「……フィンが持って行けって言った理由が分かったぜ。」

 

自分の背丈と同じくらいある大楯を構えながら、冷汗を拭うライラ。

小柄な小人族(パルゥム)とはいえ、それをすっぽり覆い隠せる程の大きさであり、それに見合う性能を有していた。

 

「対魔法に限られるとはいえ、Lv.7の高火力を防ぐとはな。」

 

「……アンドロメダが死んだ目をしていたのはこれのせいですね。」

 

アスフィの友人であるリューは複雑な心境だが、そうも言ってられなかった。

この魔道具の防御範囲外にいたガレスとリヴェリアは全身が大火傷で、生きているのが不思議な位だった。

敵であり、メナからすれば味方のはずのザスもかなりのダメージを負ったようで膝をついている。

 

「何よ、諸共殺す気で撃ったのに誰も死んでないじゃない。」

 

「……アリウスめ、だからあれほど【ヘラ】は止めておけといったのに―――ゴホッ、がふっ、ぐほぉっ!?」

 

呆れてものも言えないというザスがいきなり喀血を始めた。

焼き切れて出血しないはずの傷からも血が零れている。

そして一番異常なのは血色だった。

 

鮮やかな赤色ではなく、どす黒い真っ黒な血。

どんな病気にかかればそんな血色になるのかと治療師(ヒーラー)が見れば驚愕することだろう。

何故か粘り気を有し、抑えている手や零れた先の地面にへばりついていることも不気味に映るはずだ。

 

だがその不気味さがオラリオにとっての救いであった。

 

「……フィンが言っていた。お主等【ゼウス】と【ヘラ】には()()があると。」

 

「……現在のオラリオの最高戦力はLv.6の【猛者】一人。最大戦力もLv.5とLv.4……Lv.8の【超人】一人で三回は全滅させることができる戦力差だ。ならば初戦と決戦の間に間が空いたことに疑問が生まれる。」

 

「―――だから限界があるとフィンは睨んだわけだ。長期間、あるいは長時間戦闘ができない何らかの原因があるとな。」

 

ガレスとリヴェリアの推理に対してザスもメナも何も言わなかった。

ただ無言で戦士は口を拭い、武器を構える。

 

「全く、相も変わらず頭の回る奴よ……小人族(パルゥム)なのが勿体ない奴じゃ。」

 

明確な解を示すほど、彼の人格が良い訳ではない。

しかし、その台詞がフィン・ディムナの予想が正しいことを示していた。

少なくとも、目の前で証拠を晒した【鉄人】ザス・タイソンには明確な活動限界が存在することを。

 

 △▼△

 

死を見ている。

死に慣れている。

死に瀕している。

死を振りまいている。

死に、焦がれている。

 

フィル・ライガーは生まれについて覚えていない。

気が付けば刃を握り、小動物を殺していたことが彼の原点(オリジン)だ。

大きくなるにつれて殺す生き物は大きく、強くなり少年と呼ばれる年頃にはモンスターを斬り殺す事が日課になっていた。

 

そんな頭のおかしい若者が小人族(パルゥム)とはいえ、オラリオで勇名を馳せたことは不思議な事ではないのかもしれない。

そしてその頭のイカレ具合は戦車を前にしても変わる事はない。

 

寧ろ、【黒竜】に敗れたあの日からその凶気はさらに加速していた。

全身を走る忌々しい感覚が、フィルを囃し立てて、凶気を呼んでいるのだ。

 

「―――【正義を笑え、魔剣(ムラマサ)】」

 

蛮勇を冠する彼に『正義』はない。

だがしかし、『邪悪』との区別もない。

邪悪を憎みながら、正義を笑う彼はバラバラに斬り裂かれた亡骸だけを夢見て凶刃を振るうのだ。

 

一瞬でフィルがアレンの視界から消え失せた。

現『都市最速』と元『都市準速』の最高速度はアレンに軍配が上がる。

しかし、急な回答やか最高速への時間の短さなど小手先の技術は圧倒的にフィルが優れる。

アレンは早すぎるあまり、同じ土俵に立つ敵を知らないための差であった。

 

「何処に消えやがった!?」

 

血飛沫をまき散らしながら、前に立つ『闇派閥』を巻き込みながら戦車は爆走する。

近づけば敵味方関係なく攪拌される『光の轍』を残して、走っている。

獣人の持つ優れた五感を総動員し、忌々しい小人を追っている。

 

「―――ここさ、ここにいるぜ?」

 

ぬるりと刃が伸びた。

建物の隙間、子供一人が入り込めるかどうかの隙間。

思いもしない場所から伸びた武骨な刃に戦車は反応出来なかった。

 

「がふっ……!?」

 

戦衣(バトルクロス)に内臓を貫通し、背骨まで達した。

『恩恵』をもってしても致命傷、だがフィルは容赦なくアレンを地面と縫い留めた。

下半身と上半身の神経を断たれたアレンの下半身が脱力し、一番の武器が奪われる。

腕を振るい、槍を喰らわせようにも倒れて満足に振るうことができない。

 

「必ずしも早い奴が勝つんじゃないだよ、覚えときな。もう死ぬけど。」

 

二振り目の凶刃が閃いた。狙いは戦車の首。

確実な死を求めての一撃。

近くに助ける者はいない。いや、厳密に言えば助けられる者はこの場にいなかった。

 

そう()()()には、いなかった。

 

「―――相も変わらず無茶苦茶だね、君は。」

 

黄金の穂先が空気を斬り裂いて、刃を弾いた。

それが投擲されたものだとフィルはすぐに気が付いた。

そして、その槍の担い手が穂先と同じ黄金色の小人だということもだ。

 

凶人の顔に血が滲む。

裂けた皮膚だけでなく、眼や口端からもどす黒い血が流れている。

歪んだ顔をさらに歪ませて、凶悪に笑みを浮かべた。

 

「―――フィン! フィン・ディムナ! 次はお前か!」

 

アレンの身体から刃を引き抜く。

戦車が口から大量の血を吐き出し、フィルの半身が赤く染まる。

その染みが吹き飛ばしてしまう程の初速、だがフィンは動じる事無く二振り目の槍を構える。

 

「いい加減に、小人族(パルゥム)最強の称号を譲ってほしくてね。後は、結構僕も怒っているんだよ。」

 

「そんなことはどうでもいい! 俺は殺したい、お前も殺したい! それだけだろう!」

 

凶人は進む。

自分のことや都市の未来などかなぐり捨てて。

破綻者としてただ、爆走するのみなのだ。

 

「【魔槍よ、血に捧げし我が額を穿て】―――【ヘル・フィネガス】」

 

指先に集った紅い魔力が勇者の額を貫いた。

それが引鉄(トリガー)となって、フィンに秘められた狂猛が顕れる。

蒼い瞳は真紅よりも赤い紅に変わる。

理知的であった顔つきは凶暴さしか感じさせない表情を刻んでいる。

 

「おいおい……お前『高揚魔法』使って俺達に勝ったことないだろ。お前が冷静さ失ったら勝てる勝負も勝てなくなるぜ。」

 

フィルが露骨に萎えたという表情を作った。

実際、フィンの『高揚魔法』こと【ヘル・フィネガス】は身体能力と向上と引き換えに術者の理性や知性を奪う。

フィンの強みはその頭脳にある。

 

人類有数の策略家であるフィンは戦況を予測し、優位性を確保。

そして戦いの中で修正を繰り返しながら自身の優位性を崩さないことが強みである。

わざわざその強みを捨てる事になる【ヘル・フィネガス】。

はっきり言って適正と全くあっていない大ハズレ。

それが【ゼウス】と【ヘラ】の共通認識であった。

 

「どうかな、試してみないと分からないんじゃないか?」

 

黄金の穂先と凶刃が交差する。

魔法の力で『昇華』にも匹敵する力を得たフィンの膂力は凄まじく、強化された格上の剣戟とも互角に応じることができる。

 

(―――いや、何かおかしくないか?)

 

ふと生じる違和感。

だが全く意に介することなく、剣戟が舞う。

二振りの凶刃は幾重もの重なりを含んだ斬撃を生み出す。

理性と知性を以てしても、野生に回帰したとしても避けることはできない。

受ければ守りごと断たれること間違いなしだ。

 

「相変わらず、凄まじいね。未だに小人族(パルゥム)最強と言われるのも頷けるよ。」

 

それなのにフィンは涼しい顔だ。

嵐のような剣戟を巧みな槍捌きで凌いでいる。

距離を放されないように槍の長さを駆使して先回りし、加速を妨げている。

 

「お前、随分と頭が回ってるな! もしや、理知が残っているのか!?」

 

フィルの表情が笑みに転じた。

自身の流血で赤と黒に染まる顔を凶気に歪めながら剣士は獰猛に戦いを求める。

 

「そうみたいだね。どうやら僕の魔法は怒りが過ぎると逆に冷静さを維持できるみたいだ。こんなに怒ったのは初めてだから知らなかったよ。」

 

「ああ、そうか! 良かったじゃないか、知識が増えてたんだぜ?」

 

穂先が走り、フィルの戦衣に引っかかる。

感情の乗った大振りな一撃だった。

だが威力は増しており、二振りの守りを穿つことができていた。

 

「……ああ、それはそうかもしれないね。でも、こんな思いをするくらいなら知らない方がよかったよ。」

 

「なんだ、誰か死んだのか? こんな戦場じゃ死ぬのは当たり前だろ。」

 

「―――原因になった君が言う事じゃないだろ。」

 

再びの強撃。

普段のフィン・ディムナからは考えられない激情に駆られた攻撃の嵐がフィルを襲う。

だが流石は【ゼウス・ファミリア】と言うべきかフィンの渾身の連撃さえ、掠ることはあっても直撃はない。

 

「ノアール、ダイン、バーバラ、マック……数えきれない仲間が死んだんだ。怒るには十分だろう?」

 

「何だよ、フィン。お前さ、殺す権利は自分達にだけあるって思ってるタイプか? 今まで殺してきたら、次は自分だろう? そいつらは追い付かれただけさ、不思議な話じゃない。」

 

「その論調なら、君こそ真っ先に死ぬべきじゃないか?」

 

「そのはずなんだよ。だから、お前は俺を殺してくれよ。―――【黒竜】さえ、俺を殺してくれなかったんだ。」

 

フィルの再加速が始まる。

フィンの妨害を力づくで破ると全速力で走り始めた。

こうなるとフィンではフィルを補足することはできない。

 

「―――槍を。」

 

使おうか、という選択肢が頭を過る。

【ティル・ナ・ノーグ】を使えば()()にフィルを仕留められる。

どれだけ早くても狭い場所に誘導すればその速度を無意味とできる。

そこに圧倒的な破壊力を食らわせれば決着はつくのだ。

 

だがフィンの『槍』には代償がある。

能力値(ステイタス)を全て『魔力』に費やすため、使えばこの一日は戦力外となる。

冒険者の最高指揮官である自分が無力化される意味を否と言う程に理解しているフィンはだからこそ躊躇った。

 

「―――迷っている暇があるのか!?」

 

超速に到達したフィルの剣戟が頬を掠る。

速度は依然落ちる気配はなく、殺意はますます鋭くなる。

じっくり思考を巡らせる余裕を奪い、フィンの優位性を少しづつ奪っていく。

 

忘れているつもりは無かった。

相手は【ゼウス・ファミリア】。

壊滅してなお、『最強』を欲しいままにする集団(ファミリア)

 

フィン達は一度たりとも破れぬ、絶対なる眷属達。

全力を賭してなお、背に触れられなかった者達。

 

「なあ、フィン。俺を殺すんだろう? まさかお前は他の有象無象と同じじゃないだろうな?」

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