【水星の魔女×結界師】ドーモ、トシモリ・ゼネリです。ここどこ? 作:駒由李
原作:機動戦士ガンダム 水星の魔女
タグ:クロスオーバー クロスオーバー コラボ 年齢操作 墨村利守 二次創作 未来パラレル シャディク・ゼネリ
▼この間風呂に入ってるときに、ふと「トシモリ・ゼネリ……」と思いついてできました いつもの成長利守です
pixivより転載
拝啓、実家のお祖父様、お父様、お兄様方。お元気でしょうか。僕は現在、人類が宇宙進出を果たした時代でとある大企業のCEOの養子をやっています。お前は何を言っているんだ? と思われるでしょうね。僕自身が1番そう思っています。
「……もうすぐ7年かぁ……」
森林エリアにて、無造作にしゃがみ込んでいた僕はぷちぷちと草を毟る。罪のない雑草たちを散らばせながら、僕はごろりと芝生の上に寝転んだ。
投影された青空。偽物にしては青かった。棚引く雲も偽物なのだろう。それらを眺めながら、僕はぼんやりととりとめもない回想をする。
今の僕の身分は、アスティカシア高等専門学園経営戦略科2年。ベネリットグループ御三家のひとつであるグラスレー社ゼネリ家の次男。行く行くは跡継ぎのシャディクのサポートをするよう引き取られた養子である。
勿論僕は西暦の人間だ。なんでこんなことになったかはわからない。
烏森の封印騒動を経たのち、なんとなく墨村・雪村両家のわだかまりが解けた頃。父が出版社に行き、祖父は雪村家で茶を出され、次兄は時音とお菓子作りに興じ、長兄は覇久魔の裏会で刷新された組織で仕事に追われていた。まぁつまり、僕はほったらかしだった。もっともほったらかしは今にはじまった話ではなかったので特に気にせず本を読んでいた。
その本の内容を具体的には憶えていない。なんとなくSFだった、という記憶はある。読んでいる最中に眠気を覚えて、畳の上で眠りについた……のだと思う。
気付いたら、どこかの炭鉱だった。ヘルメットと作業着を着た男性らに何事か話しかけられていた。心配そうな顔をしていたから「どうしたんだお前」と言うことを言われていたのだと思う。ただなにせ当時は10歳、日本語しか解さなかった子どもだったので推定英語で話しかけられてもわからなかったのだ。
そこからあれよあれよと言う間に大人から大人に引き渡され、気付いたら孤児院にいた。そこが孤児院だとわかったのも、偶々親切にしてくれた同じ孤児院の子どもが言葉を教えてくれたからだ。その子どもは僕より1歳上で、孤児院の中でも抜きん出て出来が良い子どものようだった。その親切を全身で受け止めて、僕はなんとか自分の置かれている状況を理解しようとした。ついでに勉強もした。
それで僕は、どうやら自分が相当未来の世界に来てしまったことを知った。それも地球ではない。そもそも孤児院に来るまでに宇宙船のようなものに乗せられたし無重力状態も経験したので察してはいたが、どうやら地球が人類の嘗ての故郷になりつつあるとまでは思わなかった。所謂異世界転移の可能性も考えたけども、とりあえずはタイムスリップの方向で考えた。勉強して辿った歴史だと、どうやらそちらの方が無理がないように思われたからだ。
それで僕ができたことと言えば、勉強だった。学べるものは片端から吸収した。モビルスーツとやらの動かし方も習得した――僕にとって幸いしたのは、結界師と言う空間把握能力に長けた家系のおかげでモビルスーツの動かし方の把握も難しくなかったことだった――。孤児院はどうやら大きい企業の私立施設のようで、出来の悪い子どもをタダで養育してくれると思えなかったからそれはもう必死で学んだ。教育を与えてくれるだけ温情だと思いながら、将来の自分はどうしているだろうなと思ったものだった。多分この施設を運営する会社の社員をやっているのではないかとも思った。たぶん社員を育成するためにも施設をやっていたのだろうし。
予想は外れていなかった。ただし斜め上だった。僕はCEOの養子になったのだった。ただし、跡継ぎではなく次男。それも、シャディク――僕に親切にしてくれた1番できの良かった子どもの補佐になるように言われて。
そして現在、アスティカシア高等専門学園に入学して勉強している。義父や義兄にはパイロット科に入るように言われたが、義兄がパイロット科なのだから広い視野を持つためにも経営戦略科を選択した。そこでも学びながら日々を過ごしている。
「……いつか帰れるかなぁ……」
「どうした、トシモリ。こんなところでボーっとして」
「義兄さん」
不意に声を掛けられ、慌てて半身を起こして振り返る。そこには相も変わらず胸元を大胆に広げた制服の着こなしをしている義兄――シャディクが立っていた。彼はいつも通りヘラヘラ笑いながら歩み寄って来た。そして僕の隣に座る。
「頭に草がついてるよ」
「おっと」
「取ってあげるからじっとしてて」
――僕の無駄に長い髪の毛。これは僕が唯一家族を思い起こさせるものだから手入れは欠かしていなかった。
ざらりとした黒髪。あれは、母の――
「ご家族のこと、思い出していたのかな」
急に核心を突かれて動揺してしまう。いけない、これではシャディクの補佐は務まらない。「何のことかな」としどろもどろに言い返すしかない。そんな僕を微笑ましいものを見る目で見ていたシャディクは、草を払い終えただろう僕の髪に触れた。
――シャディクには、自分のことを話している。自分が恐らく過去から来た人間だと。泣きながら話した幼いあの日。シャディクはただ僕の肩に手を置いていた。
髪に触れた手を振り払った。
「思い出さない日はないよ。僕はいつか絶対帰ってやるって決めてるから」
「そのためには時間遡航技術を開発しないとね。……俺が社を継いだらウチで開発するようするから、それまでは俺の側にいてね」
そう言って、シャディクは僕の頭に唇を落としていった。そして立ち去る。
その後姿を見送った僕は、そのまままたぼんやりと景色を眺めた。
――譲れないものはあるのだ。たとえ今の義兄が僕に執着している節があろうと。
僕は立ち上がると、思い切り背筋を伸ばした。そして尻についた草を払うと、校舎へと戻ることにした。昼休みはもう終わる。
あぁ、そう言えば元の時代ではもう母の失踪届が受理された頃だろうと思いながら。
これはシャディク・ゼネリがシャディク隊を連れて敗北を喫してから1週間ほどあとのことだ。
End.