陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

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通りすがりのハーゼ様

☆1
(:3 っ)3二二二つ様


いつの間にかこんなにもの評価を頂いておりました! ありがとうございます‼︎

さて本日は……ちょっとぐたっとしてしまいました。自分でも書いてて味気ないと感じますが、次回は挽回したいと思います!

それでは本編の方をご覧いただいたらと思います!


第2章 アレクシア王女誘拐編
5話 復讐者、過去に助けた親子と再会する


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事魔剣士学園へと入学した俺の初日は……すごく、すっごく疲れた。

 

 何故かって? そんなの……姉さんが夜俺の部屋に忍び込んで添い寝されたからに決まってるだろ? 分かりきった事を言わせるなよ……

 

(1ヶ月に1回のペースで会っていた筈なんだが……)

 

 人の成長は早いという事か……どこがとは言わないが、この前会った時よりも大きさも弾力も違った。それも朝起きた時に味合わされたが……

 

(気配察知はしていた筈なんだがな。姉さんはそれをすり抜けて来たって事だよな? 姉さんはいつの間にアサシンになった……)

 

 それに姉さんは昔よりも抱き付きが非常に強くなった。それだけだったらまだ何とか耐えれる。それぐらいにまでは耐性が強くなった……と思いたい。だが……

 

(なんで俺の頭を抱える様にして眠ってるんですかね〜……)

 

 1番の問題はここだ。頭を抱える様にしてってなると必然と……分かるだろ? 起きたら視界が薄暗いし、頭の方から姉さんの寝息が聞こえるし、それに良い香りが鼻腔をくすぐって顔の正面から少し柔らかい何かに包まれている感覚……

 

(もう何だよあれっ⁉︎ おかげで俺は恥ずか死ぬ一歩手前だ‼︎ ホントに誰か助けてくれ‼︎)

 

 そんな願いが通じたかは分からないが、入学式の日に生徒代表として挨拶していたローズ会長が来てくれた。

 

 何でローズ会長が来てくれたかと言うと、簡単に言えば姉さんとローズ会長が同じ教室で友人同士だからだそうで、登校する時もいつも同じくらいの時間なのだとか。

 

 それで姉さんの部屋を訪ねたらいなくてどこに行ったのかを考えていたところ、姉さんが昨日『これでアルジ成分を毎日補充出来る』と言っていた様で……。それが何の事か分からないでいたみたいだけど、アルジという俺の名前が入っていた事でもしかしたらと思い、他の人に聞き回りながら俺の部屋に訪ねてみたら、案の定姉さんが俺の事を抱き枕状態にしている所を発見した、という訳で……

 

「ほらクレアさん! 行きますよ‼︎」

 

「いぃぃやぁぁぁっ‼︎ 離してぇぇぇっ‼︎」

 

(あぁ姉さん……おいたわしや……)

 

 その時の俺はそう思わずにはいられなかった。

 

(にしても普段あんなに凛々しい姉さんが俺と離れるだけでこうなってしまうとは……)

 

「入学早々ごめんなさいねアルジくん」

 

「いえ、実家にいた時は姉さんの抱き枕にされる事なんて日常茶飯事でしたんで……」

 

 まぁ1ヶ月に一度のペースで会っていたとしてもこの2年間は寂しかったんだろうな……

 

「姉さん」

 

「っ⁉︎ あ、アルジ……」

 

 姉さんは少しビクつきながら俺を見る。あの顔だと俺から嫌われたとでも思っているんだろうが……

 

「そんな顔しなくても大丈夫だよ姉さん」

 

 そう言いながら俺は姉さんの頭を撫でる。手からサラサラとした髪質が伝わってきて、姉さんがどれ程髪を大切にケアしているのかが分かる。

 

「姉さんが寂しかったっていうのは、何となく伝わるから。それに俺もこの2年間、姉さんがいなくて寂しかったと思っていたのは事実だし、今朝は急な事で驚いたけど、嬉しかったのは変わらないから」

 

「んっ///あ、アルジ……」

 

「それにまたこうして過ごせるんだから、また昼ごはんとか一緒に食べたりしてさ」

 

「うん……うんっ‼︎」

 

「じゃあ俺もそろそろ準備しないとだから。ローズ会長、姉さんをよろしくお願いします」

 

「えぇ、分かりました」

 

 因みにクレアさんを連れて行ったローズさんは先程の光景を見て、クレアさんがアルジの姉というよりもアルジさんがクレアさんの兄に見えると思ったそうです……

 

 

 

 

 

 

 入学初日でそんな事があったのが“一つ”。そう、これだけでは終わらなかったんだよ……

 

 それは入学してから数日後の事だった。俺が放課後帰ろうとしていたところ……

 

「すみません! あなたがアルジ・カゲノーさんで間違い無いですか⁉︎」

 

 振り向くとそこには女の子がいて、顔を見るとどこかで会ったような会わなかったような……

 

「あぁ、はい。確かに俺がアルジ・カゲノーだけど、君は?」

 

「あっ、申し遅れました! 私はミリア・レーグリンと言います‼︎」

 

「ミリアさん……で良いかな? それで俺に何か用かな?」

 

「はい! 実は……私コトハさんの関係者でして……」

 

「っ⁉︎ ……違うところに行って話そうか」

 

「勿論です! あっ、それとアルジさんに会いたい人がもう1人いるので一緒に良いですか?」

 

「(もう1人?)あ、あぁ……構わないけど」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

 ミリアさんが頭を下げたと同時に何処かにハンドサインを送っていた。それもしたかどうか分からないくらいのスピードで。

 

(成程、この学園にも潜んでいるであろうディアボロス教団に気取られない為か)

 

 彼女達がディアボロス教団にマークされているかどうかは分からないが、念を押して悪い事はない筈だ。

 

(それに入学前にコトハさんが伝えていたのはこの事か……)

 

 魔剣学園に入学する前、使い魔経由でコトハさんから手紙が届いたのだ。その内容はこの大陸の言語ではなく『ホウライ』で使われていた言語だ。そこには、入学と同じ時期に組織に属する人が俺に挨拶をしにくるのでそのつもりで、と簡単に言えばこう書かれていた。

 

 ん? 何故ホウライの言葉が読めるかだと? そんなの現代の日本語と全く一緒だったからだが?

 

(まぁこのミリアって人がディアボロス教団側ならば、その時はその時で対処するが)

 

 俺は人気が無いところに移動する。ミリアさんは素直に着いてきているな。

 

(それで俺に会いたいって人は……この人っぽいな)

 

 魔力感知で俺達を一定の距離を保って着いてくる人も確認して、俺とミリアさんとその人を同時に認識阻害の魔法をかける。そうする事で、例えディアボロス教団の連中が追ってきても撒けるだろう。

 

 しばらく歩いて、人気の無い校舎裏に辿り着いた。それからしばらく待つともう1人現れる。多分この人がミリアさんが言っていた俺に会いたいという人だろう。

 

 その人はグレーの髪をした男の人で、年齢で言えば30代半ばを過ぎだろうか。その男の人が俺の目の前に来ると、急に片膝をつく姿勢になった。

 

「アスタロト殿……ご無沙汰しております」

 

「……はっ?」

 

 俺は目の前の男にそう言われていた。それに続いてミリアさんも片膝をついて……

 

「数年前私の命を助けてくれてありがとうございます」

 

(あぁ、そういう事か)

 

 そう言われて漸く繋がった。初めてコトハさんに会った時に言われた事、数年前に親子を救ったという話……それが目の前にいる人達なのだと。

 

「なるほど……数年前に悪魔憑きで苦しんでいたのがミリアさんで、あなたがその父親という事ですか」

 

「仰る通り。私はオルバ・レリグレット。数年前まで子爵の位についておりました。本来なら少し落ち着いた時点であなた様に会いに行くべきだったのですが、こんなにも時間が経ってしまい……」

 

「あの時も言ったと思いますが、俺は俺のなすべき事をしたまでです。お礼を言われる程でもないですよ。それにレリグレットとは、ミリアさんと苗字が違うようですが」

 

「この学園にも教団の息の根がかかっている連中がいる事を掴みまして、そいつらに怪しまれない為に、私は剣術の授業を担当するクレバー・レーグリンとしてこの学園にいます」

 

「そして私はクレバーさんに養子として迎えられたというかたちでミリア・レーグリンと名乗っているんです。因みに本名はミリア・レリグレットと申します!」

 

(ふむ……結構設定が凝ってるな)

 

「それと私からも……あの時私を救ってくれてありがとうございました! あのまま教団の手にかかっていたら私とお父様がどうなっていたか……想像を絶する事になっていたかもしれません。

 

ですから、アスタロト様がお礼を望んでいないとしても私は言いたいんです! あの時私を地獄から救ってくれて……本当にありがとうございました‼︎」

 

「(……ここまで言われたのならお礼はいい、で通すわけにはいかないかもな)あなた方の気持ち、確かに受け取りました。俺も、あなた達を救えて本当に良かった」

 

「っ! ハッ‼︎ 娘共々救われた私の命、アスタロト殿のお役に立てるよう

全身全霊で参らせて頂きたい‼︎」

 

「こちらこそ、若輩者の身ではありますがよろしくお願いします」

 

 こうして俺はコトハさんが所属しているトップのオルバさんと、その1人娘であるミリアさんと会い、改めてオルバさん達と協力体制を引くこととなった。

 

「因みに私はアルジくんより年上ではあるけど同じ一年生だから、もし何かの授業で同じだったらよろしくね‼︎」

 

 まぁ真面目な話はここまでで、ミリアさんは最初に声をかけた時と同じ様にフレンドリーな口調になっていた。

 

「あぁ、俺も不慣れな事が多々あるからその時はよろしく頼む」

 

 だから俺もフレンドリーに返した。返したんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルジ……その女の子はどこの誰かしら?

 

「っ⁉︎」

 

 背後から急に声をかけられた。にしても認識阻害はまだかけている筈だから、ここまで接近されて気付けないなんて可笑しな話なんだが……

 

 まぁ簡単にいうと振り返れば姉さんがいた訳で……

 

「えっ?」

 

「あら聞こえなかったかしら? その女は誰って聞いたのよ?

 

(な、なんでそんなに怒っているんですか姉さん? 目のハイライトは……うん、ちゃんと仕事しているな。ってそうじゃないだろ⁉︎)

 

「いやぁ〜、この前助けた人がたまたま同じ学園の同じ学年で、それでお礼を言われていたんだよ」

 

「ふ〜ん……でもこんな人気の無いところでやらなくても良いわよね?」

 

「ま、まぁ……そうなんだけど……」

 

「そうよね? さぁ、お姉ちゃんが納得できる説明をして頂戴?」

 

「えぇっと……それは……」

 

「それは?」

 

 俺がどう答えようかしどろもどろになっている時だった。

 

「あの! 実は私がここに呼び出したんです‼︎」

 

「……あなたは?」

 

「私はミリア・レーグリンと言います! この間アルジさんに助けられて、それでお父様にも話したらお父様も是非お礼がしたいって言ってくれたんです。でもお父様は剣術の教師をしているので、公の前で急にお父様も頭を下げたら変に注目を浴びるんじゃないかと……だから私がこの場所を指定したんです‼︎」

 

「すまない。君は確かアルジくんのお姉さんだったね。名前はクレア・カゲノーさん、であっていたかな?」

 

「は、はぁ……」

 

「私はクレバー・レーグリン。この学園で剣術を教えている教師だ」

 

「あぁ、あなたが今年から赴任してきた剣術教師……でしたか。それにとても腕が立つと噂で聞きましたが」

 

「腕が立つかどうかは自分ではよく分からぬが、教え子達が立派に学んでいければ良いと思っている。私がここにいるのは娘がさっき言った通りでね。私に対しての配慮もしてくれてと、自分には勿体無い娘だと思っている。

 

そんな娘がアルジくんに助けられたと聞いたからこそ、私も是非お礼にと思ったのと、娘の友人となるのならこれから仲良くして欲しいとお願いしていたところなのだよ」

 

「成程……そういう事だったのですか」

 

「うむ。確かに場所はこんな人気が無いところでも良かったと思うのだが……」

 

「……分かりました。それで……ミリアさんだったかしら?」

 

「あっ、はい!」

 

「私はクレア・カゲノー。アルジの姉にあたるわ。この子はしっかりしているんだけど、時折ズレているところがあるから心配なの。同じ一年生という事なら、どうかこの子の友人として見てやってくれないかしら?」

 

(ね、姉さんっ⁉︎ それってどういう事だよ⁉︎)

 

「こういう事よ?」

 

(えっ⁉︎ もしかして心読まれたのか⁉︎)

 

「ふふふっ、仲が良い姉弟なんですね!」

 

「そうね。だからアルジが変な女に引っかからないかも不安なの」

 

「なるほど! でしたら私はアルジくんが変な女に引っかからない様に見ていたら良いんですね‼︎」

 

「そういう事。そう言った意味でも、アルジの“友人”としてよろしくお願いするわね?」

 

「はい! 任せて下さいクレアさん‼︎」

 

「ふふ、素直な子ね。それともうアルジに対しての用は済んだのかしら?」

 

「はい! さっき済みましたよ‼︎」

 

「ならアルジを連れて行くわね。また会ったらその時はゆっくりお話でもしましょう。じゃあアルジ、行くわよ」

 

「えっ? あ、あぁ……じゃあミリアさん、それにクレバー先生もわざわざありがとうございました。それじゃあまた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまぁ……そんな事があった。まさか数年前に助けた親子にこうしてまた会えるとは思ってもみなかったが、俺が選んだ場所が悪くて姉さんにはあらぬ疑いをかけられてしまったよ。それもミリアさん達のおかげで助かったが……

 

(それにしてもあの後姉さんが凄くスキンシップしてきたんだが……)

 

 一緒にお昼を食べた時はアーンをされたり、帰る時にたまたま姉さんと会って一緒に帰ったんだが腕を組まされたり……極め付けは門限まで俺の部屋で一緒に過ごした事だ。

 

(あの時は何故か膝枕されたんだが……姉さんの目を見ると断れなかったな)

 

 だって断ろうとすると上目遣いして目を潤ませてくるんだぞ? そんなの断れる訳ねぇだろ……

 

(というか入学早々姉さん絡みでしか疲れてないよな?)

 

 今更気付くとか……姉さんに言われた通り俺の感覚は他の人よりもズレているのかもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで魔剣士学園に来て7ヶ月……周りでは気が合う人同士で友人になったりと、そこかしこでコミュニティが出来上がっている。

 

 それでたまにミリアさんと一緒の授業になったり、その時にオルバさんやコトハさんがどうしているかも聞いたりした。今はディアボロス教団も表立って大きな行動は起こしていないと聞く。まぁ水面下で色々とやっているらしく、その時はバレない様に妨害工作を仕掛けているらしい。それで奴さんも慎重に動いている様だな。

 

 それでアルファ達七陰達からも現在の進捗を聞いたりしている。ディアボロス教団の事でオルバさん達が掴めていない内容だったり、シャドウガーデンの運営の事についてだったりと……

 

(現状ではこっちも動くには時期尚早ってところだろうな……何かあったらすぐ知らせが来る様になってるし、それまでは学生生活を楽しむとするか)

 

 そして俺はというと……

 

 

 

 

 

 

 

「何で兄さんは俺に着いて来るんですかねぇ……」

 

「えっ? だってその方がモブらしくて良いかなぁ〜と」

 

 そう、基本的にどこかへ移動しようとしたらもれなく兄さん“達”も着いて来る。達という事は兄さん以外にもいるという事で……

 

「毎度毎度思ってるけど、やっぱりアルジの方がシドの兄貴なんじゃねぇか? にしても俺達随分見られてるよな。しかも可愛い女の子にまで……これって漸く俺にも春が来たって事だよな! なっ‼︎」

 

 この発言をしたのは、俺と同じく田舎からやってきた領主の息子で『ヒョロ・ガリ』という。普通に読んだらヒョロガリだな。コイツは顔面偏差値はそれなりだと感じるが……

 

(成績は力を隠している兄さんと同じかそれよりも下……って所だな。普通にしていれば彼女ぐらい出来そうなものを)

 

 だがいかんせん言葉遣いや行動がそれをマイナスにしている……

 

「確かにアルジくんの方がお兄さんに見えますよね! それにしても僕達凄く注目されていますよ! これで僕もハーレムまっしぐらでしょうか‼︎」

 

 そう言ったのはジャガ・イモで……

 

(なんか俺の周りにいる同学年の奴でまともな名前がいねぇ……)

 

 勿論ミリアさんは省くが……それより何だよヒョロ・ガリって⁉︎ 何だよジャガ・イモって⁉︎ この名前考えた両親! 特に母親は自分のお腹を痛めて産んだ命なんだからもうちょっとマトモに考えて名前を付けろ‼︎

 

 まぁともかくそのジャガ・イモは、自分達が注目されていてしかも女子達にも目線を向けられているから、自分にも早く春が訪れるかもしれないと思ったんだろうな……

 

(確かに注目は集めている。でも実際を聞いてみろ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ! アルジくんよ! 今日もカッコイイわね‼︎」

 

「そう言えば聞いたか? またアルジが困っている人を助けて、それが王族関係者に連なる人だったらしくて褒賞を貰ったって話らしいぜ」

 

「でもそれを断ったってお話も聞いたわよ? 何でも当然の事をしたから大層なお礼は受け取れないって」

 

「普通だったら貰うよなぁ〜。俺だったらそのまま貰うけど」

 

「分かってないわね〜? そこがアルジくんの良いところなのよ! それに私達にも優しくしてくれるし」

 

「確かに困ってたらいつの間にか居て助けてくれるもんなぁ〜」

 

「それにアルジくんが時折見せる微笑みを見るとなんかキュンッてきちゃって……」

 

「分かる! 分かるわよそれ‼︎」

 

「それにしてもアルジくんの後ろに着いている人達って誰かしら?」

 

「さぁ知らね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまぁ……こんな感じだ。そして残念な事にヒョロとジャガ……君らは何で俺のそばに着いているのかの疑問しか持たれていない様だぞ。

 

「うんうん! 流石は王道主人公の道を行くアルジだね‼︎」

 

「……そんな言い方やめてくれよ。俺はどこにでもいる様な一般人だ」

 

「いやいやそんな訳ないでしょ? だって模擬戦であれあんな化け物級の腕前を持つ姉さんを簡単に倒せるじゃん? それは最早一般人とは言わないよ」

 

「……今兄さんが言った台詞をそのまま姉さんに伝えても良いか?」

 

「ごめんなさい調子に乗り過ぎました……」

 

「はぁ〜……謝るくらいなら最初からそう言うなっての」

 

 そんな他愛のない雑談をしながら学校の敷地内を歩いていると、もうここ数ヶ月で見慣れた光景に遭遇した。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、麗しの女神よ! どうか私と清く正しい交際を‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 それはアレクシアと呼ばれる女性に男子が告白する場面……その男子は豪勢な花束を持って告白するあたり、かなりの本気度と覚悟を持って行っているのだろう。いやぁ〜青春しているねぇ〜。

 

 

 

 

 

 

 

「興味ないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 振られてしまった男子は膝からガクリと崩れ落ちる。はい、ここまでが1セット。

 

(全く……俺は後何回この光景を見せられるんだろうな)

 

 これは入学当初から見られた光景で、告白する男子は毎回違い渡すものは違えど何かを用意していた。そして全て断られている。

 

 最初の頃は……まぁ彼女にも好みがあるから振られるのは仕方ないと思っていた。なにせ彼女はこの国の第二王女だ。おまけに美人ときたら誰だって放っては置けないだろうな。

 

 だがあまりにもこの光景が何回も続けば呆れてしまう。告白する男子もそれなりに良いとこ育ちの人が多いし、性格までは分からないが……まぁそこは付き合いだしてから分かる事だから、それで剃り合いが合わなければ別れれば良いだけだ。

 

 で、俺は告らないのか……と? 何を言われるかと思えば……

 

(確かに顔付きも整っていると思うし、第二とはいえ王女は王女だ。立場もそれなりの位置だ。もし運良く彼女に出来て将来のお妃にでも出来たなら逆玉の輿にもなるし重要なポストにも付けるかもしれないから、変な事をしない限りは自分の代は安泰だろうな……)

 

 だが俺は今のところ彼女に興味すら覚えない。だから告る事はないな。

 

(幼少から七陰のアルファ達と接しているから、美人=告るになんて構図にはならん)

 

 因みに俺はこの学園に入ってからは……度々女生徒並びに何故か女性の教師から呼び出されては告白を受けていた。呼び出す女性達については……普通に顔が整っていたりスタイルも均等にバランスが取れていたりと、普通に美女が多い。最初に転生された世界がここだったら、多分俺も普通にOKしていたと思う。

 

(まぁ俺がカゲノー家に引き取られていなかったりアルファ達と出会っていなかったらの話だが)

 

 それも最初の1、2ヶ月ぐらいでパタリと止んだな。一体何が原因なのか分からないが、まぁ俺が硬派な人間に見えた結果からだろうな。さっきの様に遠巻きから俺に視線を向けたりヒソヒソ話をしたりとぐらいはあるが、ただそれだけで……

 

 まぁアレクシアさんには申し訳ないが、姉さんの方が綺麗で可愛らしく見えるし……

 

 クレアの影響か、アルジも若干シスコンを拗らせていた……

 

 

 

 

 

———一方この方は———

 

 

 

 

 

 

「はっ‼︎ アルジが私の事を綺麗と言ってくれた気がする‼︎」

 

「きゅ、急に何を言い出すんですかクレアさん?」

 

 聞こえない筈の電波を受け取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

————場はアルジ達に戻る————

 

 

 

 

「でだ。例の約束覚えているだろうな?」

 

「僕ら3人の中でこの前の魔力量テストが1番低い人がアレクシアさんに告白する事ですね!」

 

「あぁ〜、確かそうだったね〜」

 

「あぁ〜、確かそうだったね〜……じゃねぇぞシド! 今回はお前がテストが1番下だったんだからな!」

 

「そうですよシドくん‼︎ 覚悟は出来ていますね⁉︎」

 

「はいはい出来てるよ〜。それに告白の内容は昨日夜なべして考えてきたんだ」

 

 後ろで兄さん達が阿呆な事を話し合っている。

 

(いくらモブになりきるからってそこまでやるか普通……)

 

 まぁ兄さんが他の人に迷惑をかけないというならそれで良いが……

 

 

 

 

 

 

 それで放課後になったわけだ。俺はさっさと家に帰ろうとしたのだが……

 

『アルジにも僕のモブ道(勇志)を見届けて欲しいんだ!』

 

 そう言われて俺は兄さんに引っ張られてここまで来た……はぁ、帰りたい。

 

 目の前には兄さんに呼び出されたアレクシアさんと、緊張しているフリをする兄さん。んで少し離れた草むらにはヒョロとジャガが兄さんの告白する瞬間を緊張した面持ちで見ている。

 

(はぁ……俺からしたら本当に無駄な時間なんだが……マジで帰りたい)

 

 でも帰ったら帰ったで兄さんが難癖つけてきそうだしなぁ〜……

 

「あ……ア、ア、ア、アレクシアおうにょ……!」

 

(うっわぁ〜……)

 

 確かにありがちな告白の台詞だな。あれがガチだったら、恥ずかし過ぎて噛んだんだよね? それだったら仕方ないよな……ぐらいで終わらせれるんだが。

 

(あれわざとだからなぁ〜……なんでこんな仕組まれた様な茶番を見せつけられないといけないんだ俺は?)

 

「す、す、すすす、好き、好きれすぅ〜……つ、つつつ、つき、つき、付き合ってくぁさぁい?」

 

 腰から90度前に曲げて右手を握手するかの様に突き出す。これが兄さんが夜なべして考えたモブらしい告白の仕方の様で……

 

 まぁこれで兄さんのターンは終わったな。これを受けて王女様は……まぁ結構良いとこ育ちの人も振っていたから普通に兄さんm「分かりました」……はっ?

 

「えっ?」

 

「よろしくお願いします」

 

(……どういう事だ?)

 

 兄さんもこの展開は予想していなかったらしいな。呆気に取られたような顔をしている。そして告白を受けた王女様の方は済ましたような顔をしていて……

 

(……何か裏を感じるな)

 

 ともかくこの告白イベントとやらは終わったし、俺は早々に帰らせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 告白イベントが終わった3日目……その日も今朝からまた姉さんの抱き枕にされ、そこにローズ会長が姉さんを迎えに来るというパートを終えてからもう昼食時となった。俺は今日も兄さん達と昼を一緒にしているんだが……

 

 最初の頃は姉さんと一緒に食べていた事が多かったんだが、最近は少し忙しいらしいから今だとこの面子で食べることの方が多いな。

 

(にしても兄さんの顔……ゲンナリしていたな)

 

 3日前の告白イベントで自分が思い描いていたモブ道が変な方向にされてしまった為だろう。その結果が既に学園中に広まっており、兄さんは違った意味で注目を浴びていた。まぁこれも想定外だった事だろう。だからゲンナリとしている。

 

「にしてもお前が告白OKされるなんてあり得なくね?」

 

「いや全くもってそうだよ。自分でもそう思う……」

 

「そうですよ! それだったら僕でも良かった筈です‼︎ 僕も告白しておけば良かったなぁ……」

 

 隣ではそんな会話がなされている。まぁモブらしい事をしたいと常々考えている兄さんの自業自得だが……

 

 それで周りからの反応はというと……

 

 

 

 

 

「あそこに座ってる奴が例の……」

 

「えっ? マジかよそれ⁉︎ あり得なくね?」

 

「どう見たって普通よねぇ」

 

「う〜ん……私はアリかも」

 

「それホンキで言ってる⁉︎ やめときなって‼︎」

 

「でもあの男の子ってアルジくんのお兄さんなんでしょ?」

 

「えっ……えっ⁉︎ それ本当⁉︎ 全然そっくりじゃない‼︎」

 

「良い遺伝子を全部弟が受け継いだみたいな……」

 

「でもアイツ、アレクシア様を脅して彼氏になったって聞いたぜ?」

 

「最低だな……」

 

「こうなれば剣術の授業でペアになった時に魔力操作を誤って……」

 

 

 

 

 

 

 などなど……兄さんを害そうと考えている人もいるらしくて。

 

(まぁ兄さんを襲ったとしても逆に返り討ちにあうか、兄さんがボコボコにされてモブ道云々……どっちに転んでも兄さんにはなんらダメージがないな)

 

 今の状態が一番ダメージを喰らっているので、兄さんを困らせたいならそのまま注目し続ける事が吉だぞ皆。

 

(だが……俺の中でも許せないものがある。それは……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シド

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいヒョロ」

 

「っ⁉︎ な、ななななんでしょうかアルジくん⁉︎」

 

 唐突にアルジから話を振られるとは思っていなかったヒョロが呼ばれて顔をアルジに向けたと同時に、顔を恐怖に染めて脂汗をダラダラと流し始めた。見ようによっては顔色が青ざめて見えるね。

 

「間違えていたら悪いんだが……兄さんがアレクシアさんの弱みに漬け込んで彼女にした……これを吹聴して回ったのはお前か?」

 

「っ⁉︎ い、い、いやいやいや俺はそんなこt「嘘を付いたらこの程度じゃ済まさないが……」……えっ?」

 

「ヒョロ……アルジに嘘なんて通じないから正直に白状した方が良いよ? (はぁ……隣に座っているだけでもビリビリと圧が来る)」

 

 それにしてもアルジは変な所で真面目だよね? 言われているのは僕の事なのに……

 

 それからヒョロは自分がやったと自供した。自供したら許されると思ったのかもしれないけど、それだけでアルジの説教って終わらないんだよね〜……

 

 その説教をBGMに僕は黙々と昼食を食べ進める。因みにジャガはその説教に呑まれて身体を震わせていた。自分が怒られているわけでもないのに……

 

「隣良いかしら?」

 

「えっ?」

 

 唐突に聞かれて振り向くと、そこには3日前に告白に応じたアレクシアさんがいた。

 

「あ、あぁ、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 そしていつもの事という風に隣に座ってくる。それと同時に並べられる色取り取りの食事。

 

「(あっ、そうだ‼︎)随分と量が多いね?」

 

「えぇ、私としては量を少なくして欲しいと頼んでいるのに」

 

「へぇ〜、じゃあ僕も少し貰って良い?」

 

「いいわよ」

 

「やったぁ〜」

 

 そう言いながら行儀を悪く演じながらアレクシアさんの料理を取って口へと運んでいく。これでアレクシアさんからの評価も下がって自然と関係は解消される筈!

 

「兄さん、行儀が悪いぞ」

 

「っ⁉︎ あ、あぁ……ごめん。あまりにも豪勢な料理だったから」

 

 ヒョロに説教をしていた筈のアルジが僕に注意してくる。前の席に座っていたヒョロを見ると……白く燃え尽きて机に伏せていた。

 

「……アルジくんもここにいたのね」

 

「あぁ、アレクシアさんか。こんにちは」

 

「ご機嫌よう。それにしてもあなたのそれは……」

 

「これか? 自分で作った弁当だが? 別に学食を利用する際に弁当の持ち込みは禁止されていなかったし、ちゃんと許可を取って持ってきているからな」

 

「あ、あなたが作った? ふ〜ん……」

 

(あれ? なんかアレクシアさん悔しそうにしてない?)

 

 もしかしてアルジに対抗意識を持っている? あぁ、確か剣術の授業が一緒だって聞いてたな。

 

「そういえばシドくん、もし良かったら剣術の授業を一緒にしてくれないかしら?」

 

「えっ? でも僕の剣術の授業かなり下のクラスだけど?」

 

「あぁそこは大丈夫よ。私が先生に頼んでシドくんを上げてもらうように頼んでおいたから」

 

(えぇ〜……面倒くさい……)

 

 僕はありがた迷惑な申し出を断る事が出来ず、次の剣術の授業はアレクシアさんのクラスで行う事になった……

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 




10000文字を超えたあたりから一度区切ろうと思ってここで止めました。次回はアニメで言うところの『凡人の剣』ら辺の話になっていきます。



解説


◾️クレバー・レーグリン

数年前にアルジが助けた親子で、本名はオルバ・レリグレット。サイトで調べてもオルバさんの苗字が出てこなかった為作者の独自解釈で付けております。

アルジの教え通り魔力の基本操作から修行しなおし、数年前よりも格段に強くなっている。そしてアルジが入学したと同時に自分も名を偽って魔剣士を教える先生として一般赴任している。



◾️ミリア・レーグリン

本名はミリア・レリグレット。オルバ・レリグレットの愛娘で、ミリア・レリグレットとしては休養の為に休学扱いをしている。しかしディアボロス教団が学園側に潜んでいると考え、オルバと共に名前を偽ってアルジが入学したと同時に入学する。

またオルバの指導の下、魔力操作は学年の中でトップクラス。剣術もずば抜けており、アルジ、アレクシアと同じ魔剣士のクラスで授業を受ける。





解説はこんな感じです。それにしても書いてて最近クレアさんがヒロイン力が強くなっている様な……

それとオルバさんとミリアさんの苗字を勝手に付けてしまった件に関して、もしオルバさんとミリアさんの苗字が存在しており、こちらの記述が間違っていたら申し訳ありません……その際は何卒お知らせ頂きましたら助かります。

さて、次回はどう書いていこうか……

と言う事でまた次回をお楽しみ下さい!
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