☆10
FEVERTAKAYU様
☆9
姉妹の兄で弟2様 カイオー様 テト·ストラトス様 琲世(頭髪不安定)様 ファイターリュウ様 HAZIME00様 E-ST様
☆8
林原先生様 岩盤マン様
☆5
通りすがりのハーゼ様
☆4
Nissan様
☆3
暁瑠衣様 最果て様
☆2
トレアートル様
☆1
sen000様
☆0
ゆうすぎ様
沢山のご評価そしてお気に入りを付けて下さり誠にありがとうございます‼︎ まさか短期間でこんなにも多くの評価が付くとは思わず驚いております‼︎
しかしながら0をつけられてしまった事は、あぁ〜この読者の方にとっては面白くも何ともなかったんだなぁ〜、と残念に感じております。確かに私の書く内容が万人受けするものでない事は理解しているつもりですが、やはり読者様の時間を使って読んで下さったにも関わらず、それに見合わなかったんだなと考えると申し訳なくも感じてしまいます。
この評価を受けてしまった事は仕方ないと思いますが、それにもめげずに書いていくつもりです。
また今回は、アレクシアさんを好きな読者の方々に対して不快に感じてしまうかもしれません。自分でもこの様に書くつもりは無かったのですが、書いてたら自然とその様になってしまいました。ですがこの内容も今後の展開に必要だと個人的に考えておりますので、何卒ご了承の程よろしくお願い致します。
それでは本編をどうぞ!
アレクシアさんが兄さんと昼食を一緒にした翌日、その機会はすぐ訪れた。俺がいる剣術のクラスはアレクシアさんとミリアさんが一緒で、他の生徒達も成績順で選ばれている現時点でのエリートだ。そこに今日から兄さんが加わる。
「今日からこの剣術クラスに加わるシド・カゲノーくんだ。皆仲良くするようにな!」
そう言ったのはこのクラスの授業を受け持つゼノン・グリフィ先生だ。この学園の剣術指南役でもある。綺麗な金髪をロン毛にならない所で切り揃え、顔は好青年で女性からは強く逞しくそして優しい人と評価をもらっている様だ。その評価通り普段の生活で欠点という欠点は見つけられないほど立派な大人に見える。
(まぁ見えるだけだが……)
そういう奴に限って裏ではドス黒い組織に入ってたりやってたりとするもんだ。実際俺は転生してきた世界でそんな例を何十回以上見てきたことか……途中から数えるのもやめたな。
(まぁ目立った動きがないから何もしないが……)
そしていつもの如く授業が始まる。ペアを組んで木刀を打ち合うというものだが、このクラスはまともに授業をしていると思う。思うというのは、噂で下のクラスに行けば行くほどチャンバラじみた事になりがちなのだとか……
(確かに木刀持ったらそうしたいよな〜)
だって幼少の頃とかよく友達と一緒に手頃な大きさの木の枝を持ってチャンバラしてたし……あぁこれは転生前の話だな。
ともかくそういった気が抜けないって事だと思う。だが力を持つのなら正しい扱い方を覚えなければならない。でなければ最悪取り返しのつかない事にもなるからな……
「今日も一緒のペアだ! よろしくね‼︎」
そして俺はいつも通りミリアさんとペアを組んで授業を進めていった。最初一緒に受けた時に思った事は……この子は実力を隠し持っているといった点だ。
(確かにこの授業をどこかで監視されていると思ったら実力とか見せれないよな?)
だから俺もそれに合わせる。元々組む相手と同じくらいで調整しようと思っていた所だから丁度いい塩梅だ。それで日に日にそこから上手くなっていく様に見せかけていった。
「流石はアルジくんですね。今日も魔力の流れが綺麗です」
「そういうミリアさんこそ、前の授業よりもさらに精錬されていると感じる。まぁ本来の実力はもっと上の方なんだろうがな?」
「それを言ったらアルジくんだって……この授業が児戯に見えているんじゃないかな?」
「いや? 改めて学びの楽しさを感じてるよ」
「ふふっ、アルジくんらしいですね」
そんな会話をしていると、不意に兄さんとアレクシアさんの打ち合いが目に入る。
いつもながら思うが、アレクシアさんの剣は基本に忠実だ。それに兄さんも忠実に合わせていく。そんな様子をチラチラ見ながらしていたら、今日の授業も終わっていた。
そして着替えようとしてその場を去ろうとした時だった。
「今日の授業……やけにこっちをチラチラ見ていたわよね?」
「(まぁ流石に気付くよな……)まぁな。兄さんとペアを組んでいたから、どんな様子か気になってな」
「フンッ、随分と余裕そうじゃない?」
「別にそうでもないが?」
「嘘ね。だってあなたは相手の剣を弾きながらこっちを見続ける余裕があったでしょ?」
「という事はアレクシアさんも俺を見ながら兄さんの剣を弾いていた事になるが?」
「シドくんが私に合わせてくれる様に振るっていたから余裕があっただけよ」
「(さいで……)で? 兄さんはどうだった?」
「……綺麗な型だったわ。基本に忠実で。でもそれだけ……私は嫌いな剣だと感じたわね」
「嫌いな剣……ね。確かに兄さんの剣は他の人から見ると平凡な剣にしか見えないだろうな。まぁ自分も人の事は言えないが」
「……は? 自分も人の事は言えないって……何を言っているのかしら?」
「そのままの意味だが?」
「……っ‼︎ あなた……私の事を馬鹿にしているのかしら?」
「(なんだ? アレクシアさんの様子が急に怒っている表情になったが……)何故そんな怒気を孕んでいるか分からないが、俺からしてみれば、俺の剣も兄さんと同じく平凡で凡人の剣だが?」
「……あなたがそんな事を言うの? その剣の腕前でそんなに魔力の流れも自然で! それが凡人の剣⁉︎ ふざけないで‼︎」
「アレクシアさん?」
そばにいたミリアが心配そうな表情になってアレクシアに声をかける。だがアレクシアにはその言葉は届いておらず、ただ目の前のアルジを非難する。
「あなたの剣は……私の中で理想の形なのよ! アイリス姉様と同じ何者にも引けを取らない最強の剣! なんであなたがそう扱えるのかなんて分からないけど、でも私はそんな剣を、私が理想としている剣を振るえているあなたが羨ましくて妬ましいの‼︎
それをあなたは自分で凡人の剣というの⁉︎ どこまで私の事を馬鹿にすれば気が済むのよ⁉︎ 私の気持ちも知らないでそんな事言わないで‼︎」
そう言ってアレクシアさんは俺から離れていった。
(アレクシアさんの気持ち……ね)
確かに彼女の事は聞いていた。王国最強の剣の腕前を持つアイリス・ミドガル。その妹にあたるアレクシアは必然的に比べられている事を。
(立派な人が周りにいると、それに近しい者は必然的に比べられる。過度な期待を持ちかけて、立派な姉がいるのなら妹もそれぐらい出来るだろうと……)
ここだけはどの世界に行っても一緒だな。固定観念がこびりついているというか……
「アルジくん、大丈夫ですか?」
「ん? あぁ。別にあれくらい大した事ないさ。でも……アレクシアさんには申し訳ない事を言ったかもしれない」
「申し訳ない?」
「俺だって彼女が陰でどう言われてきたかを分かっていた。分かっていたはずなのにあんな言葉が出てしまって、彼女の誇りを傷付けてしまった。まっ、こんな事を言うとまた馬鹿にしているのかって言われるんだろうな」
「……辛くはないですか?」
「辛い……か。こんな事は、今までにも良くあった事だからな。気にしてなんていられないさ。さて、このまま話してたら次の授業に遅れるし、そろそろ行こうか」
「あ……う、うん」
アルジ達はそこで話を切り上げてその場を後にした。
side アレクシア
(あぁもぅ〜……ホントにムカつく‼︎)
何が「自分も凡人の剣だ」よ⁉︎ どこから見たらそんな感想に至れるのよ⁉︎ 訳が分からないわ‼︎
「アレクシアさん、そんな難しい顔をしてどうしたの〜?」
そう呑気に聞いてくるのは、隣に腰掛けているシドくん。通称ポチだ。
「あぁ、さっきの授業の事を思い出してたのよ」
「そう言えばアルジの方に言って何か話してたよね?」
「えぇ。本当にムカつくわねあの男! 自分の剣を凡人の剣だって言ってたわ‼︎」
「あぁ〜……あれどう見たって凡人じゃないけどね」
「そうよね⁉︎ 私間違ってないわよね⁉︎ というかあなたはどう思っているのよ?」
「どうって……何が?」
「はぁ〜……あのね、ポチはアイツのお兄さんなんでしょ?」
「そうだね」
「でも剣術やら頭脳やらの才能を全部持っていかれているじゃない! それで周りから比べられたりして悔しくないのかって言ってるの‼︎」
「いつのまにか僕の事を馬鹿にされている様な……まぁそれは今は置いとくとして、それで才能云々が弟であるはずのアルジに全部持っていかれて自分ではどう思うのかってこと?」
「さっきからそう言ってるでしょ? やっぱりあなたはポチね」
「(なんで毎回一言多いんだろうな……)まぁ……そもそも僕とアルジは本当の兄弟じゃないしね。才能を持っていかれたって話だったら、多分全部姉さんに持っていかれたんじゃないかなと思うんだけど」
「……えっ? 待って……聞き間違いかしら? ポチとアイツが本当の兄弟じゃない?」
「うん、そうだよ。僕と姉さんは本当の兄弟だけど」
「……じゃあアイツは何なの? どこかの貴族から引き取った養子とか?」
「う〜ん……それが分からないんだよね〜。僕が生まれた日に屋敷の敷地内に雷が落ちて、その落ちた所で揺籠の中にいたって話を聞いたんだけど。最初は使用人見習いにしようって話らしかったんだ。でもまだ小さかった僕と姉さんがそれに駄々こねたらしくて、それで養子って事に収まったんだ〜」
(はっ? なにそれ? そんな事ってある? それよりも……)
もはや人と呼べるの? ポチが生まれた後に違う家で生まれた。それだったら、例え養子であっても兄弟としての関係は説明がつく。取り敢えずアイツの成り立ちをより詳しく聞けそうな内容がないかポチに話を促した。でも……
(アイツがどうやって生まれたのかが詳しく分からない)
どう聞いたって雷と一緒にやってきたという解釈しか持てなかった。非現実的ではあるけれど……
(それだったらアイツは何? 私達が信仰している神様や女神様が遣わしたとでもいうの?)
もしそれが本当だったら……アイツは人間ではないと言う事になる。ただそれがもし事実なら、あの実力も納得ができる。納得できるが……
『嫌いな剣……ね。確かに兄さんの剣は他の人から見ると平凡な剣にしか見えないだろうな。まぁ自分も人の事は言えないが』
『俺からしてみれば、俺の剣も兄さんと同じく平凡で凡人の剣だが?』
(……ホントにムカつく)
自分は最初から才能があって産まれたくせに、それを否定するかの様に自分の剣を凡人の剣って言って……
(私が……どれだけ努力しても至れない領域を持ってるくせに‼︎)
「あぁもうっ! アイツの事を考えたら益々腹が立ってきたわ‼︎ ポチ、甘い物を食べに行くわよ‼︎」
「えぇ〜……さっき食べたばかりじゃん? それに食べ過ぎはふt「ポチ〜? これいらないのかしら〜?」ワンッ‼︎」
それからアレクシアはシドを伴って甘い物が並ぶ露天へと向かった。それに付き合ったシドは、少し懐が暖かくなったという……
side out
あれから数日、アレクシアさんとすれ違う度に滅茶苦茶睨まれる……そして兄さんからは、俺に対しての罵詈雑言をアレクシアさんが吐いているとも聞いた。
(まぁ俺の答え方が悪かったんだから仕方ないよな)
だから俺はその視線を甘んじて受ける事にした。もっと違う答え方があったかもしれないと。あんな答え方以外に、相手が納得するものが……
(だが俺が振るってきた剣は……)
そもそも俺は、最初の世界ではナイフしか振るったことはない。後は拳銃とかか……
(それも白兵戦をする時で、モビルスーツが出てくる世界だったら基本機体に乗って戦ってたし……)
だから俺がまともに剣を振るったのは2回目の転生先が初めてだった。でも俺にはそんな才能はこれっぽっちもなかった。だから毎日毎日アスタロトの力も借りて剣を振るった。毎日何千何万回と振るってきた。その積み重ねが今の俺の剣だ。それを何十年続けてきた事か……
(それを考えると俺の剣は凡人の剣だと考えてた。でもこの世界の周りの人達は……アレクシアさん含めてそうは思わない。少し考えれば分かるはずだったんだがな……)
俺も精神年齢では何十年と生きてきてはいるが、人としてはまだまだってことか。本当に情けないな……
(でも過ぎてしまった事は仕方ないしな)
まぁ直接その罵詈雑言を言われた時はその時で受け止めるとしよう。
(それにしてもアレクシアさんがなんで兄さんを彼氏として選んだかが漸く分かったな)
俺達のクラスを教えている剣術の先生、ゼノン先生とアレクシアさんは婚約関係にあるとの事で。それに対抗する為にアレクシアさんは田舎貴族出身であまり冴えなさそうな兄さんを彼氏に選んでゼノン先生に良い雰囲気を見せつける、という作戦らしい。
(まぁ相手にされず軽く流されてるんだが……)
その作戦はゼノン先生に全く効いていないから別の手段を考える必要はあるが、王女ではあるが学生という身分と人生経験だけでどれだけ出来るかって事で……
(まぁどうやっても中途半端か悪あがきにしかならないんだよなぁ〜)
そんな場面を偶に見ながら数日後、放課後1人で帰っていた時だった。寮に1番近い最寄駅に降りると、どうやら同じ電車にアレクシアさんも乗っていたらしい。しかもこの駅で降りるのは俺とアレクシアさん2人だけで……
「……アンタも一緒の電車に乗っていたのね」
「まぁね。いつもなら姉さんと帰る日が多いんだが、今日は予定があったらしくてね。それで1人で帰っているって訳だ」
「へぇ〜……そうなの〜。でもシドくんから聞いたわよ? アンタとシドくん達は血の通った兄弟じゃないんでしょ?」
「あぁ〜確か兄さんもアレクシアさんにその話をしたって言ってたな」
「……隠さないのね」
「別に聞かれなかったから言わなかっただけで、わざわざ自分から吹聴して回ることもないだろう?」
「……そうね。わざわざ自分から言って回る話でもないわね。なら……アンタは何者なの? シドくんから話は聞いたけど、雷が落ちた場所にいたんですってね? しかも周りには誰もいなかったって話も聞いたわ」
「自分が何者か、か……俺は普通にただの人だとおm「そんな訳ないでしょ⁉︎」アレクシアさん?」
「アンタが普通の人? 冗談じゃないわ! そんな実力を持って……アイリス姉様みたいな剣を持ってるくせに! それだけの才能を持っているくせに! 誰も引き付けないような剣を持ってるくせに‼︎ それを持ってるアンタが自分の剣を凡人だって言うなら私達の……私の剣はなんだっていうのよ‼︎ 馬鹿に……しないでよ……」
そう言いながらアレクシアさんは……泣いていた。俺はいつも、皆と変わらない普通の人だと思っていた。確かに他人よりも持っている魔力量は多いと感じるし、この世界の剣術は他の世界に比べて発展途上だとも感じる程、俺の剣は強いのだろうと感じる。
だがそれも……俺が他の世界を転々としていたおかげだ。そこで習得した事は引き継がれる。赤子からのスタートでもそれは変わらなかった。その事を差し引いて俺は……自分を普通の人だと思って、姉さんや兄さんにも自分はただの人だと、そう言ってきた。
(でもやっぱり……そういう訳にはいかないって訳だよな。また俺はアレクシアさんに悪い事を言ってしまったんだ)
それは、俺の反省すべきところでこれから直さなきゃあいけない事だと、はっきり理解した。でも……だからこそ彼女にも言うべき事は言わないといけない。
「アレクシアさんは……俺の剣をそう感じてくれたんだな」
「ぐずっ……前からそう言ってるじゃない」
「なら、この剣で既に誰かを殺めていてもそう感じるのか?」
「……えっ?」
「確かにこの剣は、アレクシアさんから見たらお姉さんの剣に近いかもしれない。それを見て羨ましくて妬ましいと言う気持ちは、今までの会話を聞いて何となく想像が付く」
それが自意識過剰で間違ってたら俺は阿呆だが……と付け加えた。
「だが俺は、他からどれだけ言われても自分の剣を凡人だと答える。魔剣士はいつかは誰かを守る為に他人をその剣で傷付けて、最悪殺してしまうだろう。でもそれは誰かを守る為のものの筈だ。それが……俺から見たら羨ましく感じる剣なんだよ。
そして俺は……感情の制御が出来ずに、自分の中で覚悟すらせず相手を殺めた事がある。そんな剣を振るった時点で……俺の剣は凡人のものだと考えている」
そう語りながら俺は遠い過去の記憶を思い出す。とある人から習った時に教えられた、誰かを守る為の剣。それこそが何事においても強い力を発揮すると。
でも俺は……その途中で間違えたんだ。剣を向けた対象に殺める覚悟を持つ事なく、ただ自分の感情を剣に乗せて振るった事を。悪人である事は間違いない。ただそれでも……覚悟がない剣は空っぽで、振るった後はまるで自分の心が空虚だと感じた。
「この話は……兄さんにも話した事がない。アレクシアさんに話したのが初めてだ。まぁこんな突拍子もない話をどう思うか分からないが……それと最後に1つ、君に言っておきたい」
「な、何よ……」
「周りは君の剣を君の姉さんと比べて凡人だなんだと言っているだろうが、俺は君の剣を……綺麗で逞しいと感じた」
「っ⁉︎ は、はぁっ⁉︎ 急に何を言ってんのよ! また私の事を馬鹿n「馬鹿になんかしていない! 本心だ‼︎」っ⁉︎」
「こんな時にそんな下らない事を俺が言う訳無いだろうが! お姉さんと比べられながらも、悔しくてもお姉さんの剣に並び立ちたいと思いながら振るうその剣は……俺は好ましく感じたんだ‼︎ 過去俺が犯した上に成り立っている俺の剣よりも……そんな風に振るえる君の剣が、俺は羨ましいよ」
「っ⁉︎/// ……ふ、フンッ‼︎ 今更そんな事言ったって……アンタに対しての態度なんて改める気はないんだから‼︎」
「別に改めなくても良いさ。全て俺が悪いって、答え方を間違えた俺が悪いって分かってるから。だからアレクシアさんからの怨みの籠った視線も罵詈雑言も甘んじて受けるから。それで気が済むなら俺はそれで良いさ」
「い、良い人ぶっちゃって……」
「まっ、これで俺が言いたい事は伝えた。それじゃあ、また学校でな!」
俺は自分の寮へと帰りながら後ろ手に手を振ってアレクシアさんと別れた。
side アレクシア
帰りの電車にたまたまアイツも乗っていた。さっき中でポチと口喧嘩して機嫌が悪い中で会ったものだから、更に機嫌が悪くなるのが実感できる。
それに乗せて私はアイツに罵詈雑言を吐いてやったわ。日頃の鬱憤を晴らすように、私に対しての陰口のストレスを発散する為に……
でも……
(アイツも私の剣が好ましいって言った……)
いつも姉さんと比べられていた私の剣……凡人の剣。自分に才能がない事は、私が1番よく理解している。だから努力して姉に追いつこうとした。それでも返ってくる答えは凡人の剣……
(それでもポチとアイツは……私の剣を好ましく思ってくれた)
ポチはどう思ってそう言ったかなんて分からない。もしかしたらいつもの話の相槌として答えたのかもしれない。
(でもアイツは……アイツの目は真剣だった)
真剣に私の剣を……好ましいと言ってくれた。そう真剣に言われて私は、一瞬……ほんの一瞬嬉しかった。なんでそう思ったかなんて分からないけど……
(で、でもアイツがいけ好かない事は事実よ! だからアイツに気を許すなんてことしちゃダメよ私‼︎)
そう心に決めながらも、私の心はいつもより軽く感じた。
side out
翌日、いつものように登校すると兄さん達が騎士団に囲まれていた。何事かと思って近くにいた人に聞くと、どうやら昨日アレクシアさんが寮に帰っていないとの事で。
それで何かの事件に巻き込まれた可能性が高いと考えた騎士団が、アレクシアさんの彼氏である兄さんを容疑者として連行するって所のようだ。それに昨日最後までアレクシアさんと一緒に帰っていたのも兄さんで……
(いや、最後に会ったのは俺のはずだが?)
もしかしたら裏で何か良からぬ事が起こっているのかと考えついた時、同時に『ディアボロス教団』が関わっているんだろうと当たりをつける。
(そうと決まれば兄さんが連行されるのは面倒だな)
兄さんはシャドウガーデンでトップの存在だ。まぁ兄さんなら「これでまたモブとして一歩近付ける‼︎」と意気揚々に騎士団にわざと連行されるんだろうが、組織的な対面で言えばそれはよろしくない。だから……
「少し待ってくれ‼︎」
俺は兄さんの目の前に立った。
「アルジくんか……すまないがこちらも急いでシドくんを連行しないといけないんだ。アレクシア王女を誘拐した疑いのある人物としてね」
ゼノン先生が厳しい視線を向けながら俺に語りかける。
「それは兄さんがアレクシアさんとよく一緒に帰っているからですか?」
「そうだ。よく彼と彼女が一緒にいる姿を私も学校で確認するし、学校の外でもよく一緒にいると調べで分かっている。そして昨日もシドくんはアレクシアさんと2人で帰っており、そこからアレクシアさんは寮に帰らず行方不明だ。言いたい事は、成績優秀な君なら分かるはずだ」
「なるほど。まぁ言いたい事は分かりますよ。ただあなた方はしっかりと調査していないように感じられるのは俺だけでしょうか?」
「いや、調査した結果だよ。現に昨日2人を見た鉄道の車掌からも証言が取れているからね」
「まぁ……確かにその証言は間違っていないでしょう。ただ1つ訂正させていただきたい事があります」
「訂正? 一体何を訂正するのかな?」
「昨日、アレクシアさんと最後に会ったのは俺だって事ですよ」
「っ⁉︎ 君が彼女と最後に会った……だと?」
「えぇ。まぁ彼女からは俺の不平不満をぶつけられましたが、それに対しても真摯に答えましたとも。それで俺からも彼女に伝えたい事があったらそれを話して、そこで別れました。勿論その場に兄さんはいませんでしたし」
「う、嘘をつくな! それはお前達が兄弟関係だからだろう! 庇い立てするならお前も連行するぞ‼︎」
周りを取り囲んでいた騎士団の1人がそう脅しにくる。まぁ全然怖くはないんだが……
「庇うなんて事しません。事実を言ったまでです。それに俺を連行するならそうしてもらって構いませんよ? 事実彼女と最後に会ったのは俺なんですから」
「ど、どういたしましょうゼノン殿……」
「……分かった。彼がそこまで言うのなら、シド・カゲノーくんではなくアルジ・カゲノーくんを連行して取り調べをしよう。ただし丁重にな」
そして俺は騎士団の人達に連行されて取り調べを受けることになった。
side アルファ
「アルファ様! 至急お伝えしたい事があります‼︎」
「そんなに慌ててどうしたのかしら?」
「実は……」
「っ⁉︎ ……アルジ」
『シャドウガーデン』の規模も2年前に比べたら格段に大きくなり、『ディアボロス教団』に対抗する戦力も揃い始めてきた。今日も王都の情報を精査しようとしていた時、シャドウとアルジに監視をつけていた子から耳を疑う情報を聞いた。
(アルジがアレクシア王女を誘拐した容疑者として騎士団に連行された……)
話を聞くと、まず彼女と恋仲の関係になっていたシャドウが疑われていた様だけど、そこに彼が割って入った。そして彼女が行方をくらませた日の最後に会ったのは自分だと主張して騎士団に連行されていったというのが聞かされた話ね。
それでシャドウは騎士団に連行されずにそのまま学園生活を送っている話も聞いたわ。
(確かに『シャドウガーデン』のリーダーである彼が捉えられるよりも状況としては悪くないはず。それに私達がアルジを秘密裏に助け出す事も出来るわね)
ただ……彼はそんな事を言わないし願わない。ずっと彼と接してきたから分かる事ではあるのだけれど、彼は自分の周りの誰かが傷付きそうになるくらいなら自分が傷付いて事を収めれば良いと考える人だから。現に私が初めて忠誠を誓った時もそんな事を言って、これまでも私達が傷付きそうになった時はすかさず彼が助けてくれたわ。
(でも……私は悔しくて仕方がない)
私は常々彼の隣に立ちたいと、そう思ってきた。あの廃村の隠れ家から離れて2年が経った今、彼の隣に立って一緒に進んでいける程の力があると私は思っているわ。そう思っているのに……
「どうして貴方は……自分が傷付いてしまう道に行こうとしてしまうの?」
私はあなた達に……貴方にこの命を捧げたの。どんな障害でさえも私が切り拓くと言ったのに……それでも貴方は自らが危険を負って、逆に私達の進むべき道を照らしだしてくれる。
「アルジ……」
数分間アルファはその場を動く事なく、アルジがいるであろう騎士団の詰所の方を向いてアルジの身を案じた。
side out
side クレア
「離してぇぇぇっ‼︎ 弟を! アルジを助けに行くのぉぉぉっ‼︎」
「ま、待ちなさいクレアさん! 落ち着いて下さい‼︎」
アルジが騎士団に連行されたと言う話はすぐ私の耳にも入って来た。それでいてもたってもいられずに騎士団の詰所に向かおうとしたのだけど、ローズと他の生徒会役員が私を引き留めて行かせてくれない。
「なんで止めるのよローズ! アルジが誰かを攫うなんて、ましてや悪さをしていない誰かを傷付けるなんてあるはずないんだから‼︎」
「そんな事私だって分かってます! 彼がとても心優しい性格だと言う事は誰もが認めていますし、私だって彼がそんな事をする子だとは思ってません‼︎」
「ならどうして止めるのよ⁉︎」
「あなたが行ったところでどうにもならない事だからですよ‼︎ 止まらないというのなら……」
「きゃぁぁぁっ⁉︎」
ローズによってクレアの右肩が外れる。それはクレアも悲鳴を上げる程の痛みだ。だがそれでも彼女は止まる事をしない。
(こんな痛み……今アルジが受けているかもしれない苦痛に比べたら大した事ないわ! だから待ってて! お姉ちゃんがすぐに行くから‼︎)
クレアはそう願っていたものの、結局ローズに首四の地固めで拘束され、その後アルジが詰所から出てくるまでローズ達生徒会役員達の厳重な監視が付くこととなり、アルジの下へ行く事は叶わなかった。
side out
「ハハッ、特待生様もこの姿になっちゃあ威厳も何もねぇよな⁉︎」
下卑た笑いが尋問室の中に響く。騎士団の尋問官としてこの場にいるのは2人で、階級としてはあまり高くない者達だった。そして尋問を受けるアルジは、下着1枚だけの姿で椅子に鎖で拘束されていた。その身体には既に何回も鞭で打たれた傷が幾重にも付く。
この様子の通り、容疑者に対しての扱いもかなり酷いものになったりする。そもそもこの時代、容疑者となったものは例え自分がやっていなかったとしても自白しなければこの苦痛から逃れる事が出来ない。
そして自白をしたとしても、尋問官達の機嫌によって容赦ない罵倒と暴力は振るわれ続ける。上の位でしっかりした者が尋問したのならばここまでにはならないのだろうが……
(まぁ想像通りの世界だなこれは……)
下卑た笑いをしながら尋問官達は俺を罵倒し、鞭などで暴力を振るってくる。俺が何か反抗的な態度を取ったわけではない。全て聞かれた通りに事実を述べただけだ。
(だがコイツらはそんな答えが欲しいわけじゃない……)
俺がアレクシアさんを攫ったという言葉を俺の口から出させたいのだ。そもそも下の位にいる奴らだ。そんな奴らがアレクシア王女を攫った容疑者から、例え嘘であったとしても自白させる事が出来れば自分の昇進につながる案件な事は間違いない。
(それに自白した後で違うと言ってもこの世界では取り合わないしな)
だから俺は真実を述べて以降はNOと口にするだけだ。
「さっさと本当の事を言ってくれませんかねぇ〜? 特待生様よぉ‼︎」
また俺に鞭が振るわれる。正直今まで転生してきた世界で負ってきた傷より痛くも痒くもない。
(これを受けているのが兄さんだったら……喜んでモブに興じるだろうな〜……目の前の2人もモブっぽいし)
それにしてもここ……とても空気が悪い。床や壁にこびりついた血痕は、確かに掃除されていて目立たないようになっている。だがここに容疑者として連れてこられた者は痛いじゃ済まない仕打ちを受けてきた事だろう。
(目の前の奴らがただ自分の仕事をしている事は理解出来る。現に目の前の奴らも自分の仕事を遂行しようと思ってやっているだけだろうからな)
だが……
(相手を傷つける事に楽しみや快感を覚えているというのなら……話が違ってくるよなぁ〜?)
俺が先程から感じるのは正にこの感覚だ。コイツらは何人もの人を、確かにその中には悪人もいただろうが、何もやっていない善人に対してもそうしてきたって事だよなぁ〜?
もしもこれが姉さんやアルファ達だったと考えると……
(あぁ……普通にこの2人を殺めるだろうなぁ〜)
まぁ今回は俺だったからどうって事はないし、コイツらは運が良いな……
(いや待て……俺がこのまま釈放された後だったら……)
うん、コイツらどの道終わったな。多分陰で姉さん若しくはアルファ達に秘密裏に処理される事だろう。
(まぁいくら姉さんやアルファ達でも、この2人に対して手を出させる訳にはいかない。コイツらの処遇は俺に任せてもらわないとな)
そんな事を考えながらアルジは尋問という名の拷問を、表面上は痛がりながらも次にどう行動するかを考えていた。
なんか書いててまた変な感じになってしまいました。バトルシーンの構想は全然考えついているのですが、そこに至るまでの日常パートは微妙な感じになってしまいますね……
それにアレクシアさんを好きな方々に対しても、今回良くない印象を与えてしまったことに関しても申し訳なく思います。次回の話はそれを少しでも挽回出来るように書かせて頂きますのでよろしくお願いいたします。