本日はアレクシア王女誘拐編の後日談をお送りしたいと思います。この間にも沢山の読者の方々からご評価を頂き、また本作品を見て頂いた事に対して本当に感謝しております‼︎
では前書きもこのくらいにしておきまして、早速ご覧下さい‼︎
side アルファ
王都の『ディアボロス教団 フェルリル派』のアジトを襲撃した翌日、私と『七陰』の一部を除いて集まっていた。そこは私達が王都で動き易いように建てた仮住まいで、『ミツゴシ王都店』の屋上に建てられてある。
そして集まったのは私とベータ、ガンマにデルタ、それと襲撃の際後方支援を担当していたイプシロンの5名で、昨日の襲撃の際に敵アジトから押収した情報を整理しているところだった。
「昨日の『ディアボロス教団』のアジトを襲撃した際に出た物の情報整理をしていたのですが、やはり今回の目的はアレクシア王女が『英雄の子孫』であるとして拐い、それを手土産にミドガル魔剣士学園の剣術師範代、ゼノン・グリフィが教団の上の地位を確約される……そんな計画だったようです」
「そしてシャドウ様に罪をなすり付けようとしたところ、アルジ様が身代わりになった……と。ただ教団側からすればどちらに罪をなすり付けても結果としては変わらないと考えたのでしょう……忌々しい限りですが」
「でもそれが教団の過ちだった。彼は自分の血をわざと流して、教団アジトの至る所に散らばらせ、より正確な情報を記録したわ」
「はい、それをする為には尋常ではない程の魔力操作が必要であるかと」
「やっぱりアルジ様は凄いのです! デルタもそんなアルジ様を見習って頑張るのです‼︎」
「ふふっ、そうね。私達も彼にばかり負担をかけてはならない……日々精進しなければね」
「はい。そしてシャドウ様がそのゼノンと戦った時の事ですが……」
「えぇ! シャドウ様の魔力が王都の空を染め上げたあの光景……私の目にもしっかりと焼き付いています‼︎」
「ですがそれだけでは終わりませんでした。まさかあの後であんな存在が現れていたなんて……」
「えぇ。私もアルジとコトハから事前に知らされていなければどう行動していたか分からないわ」
「でも見ている限りあの敵は脆かったのです。デルタでも全然余裕で相手が出来ると思ったのです」
「だけどあの数は流石にねぇ〜……」
「それに複数体が集まって巨大化した場合の事ですが、私達もあまり想定してこなかった程の大きさです。また昨日の様な敵が出てきた時の対応策を考えないといけませんね」
「それについての対策はイータも交えて行いましょう」
「はい。後で私からイータに伝えておきます。それとこの件についてですが……」
ベータが取り出したのは1枚の茶色い用紙で、そこには黒い髑髏みたいな絵と共にこう書かれていた。
『我らはシャドウガーデン。世界に破滅をもたらす者なり……』と。
「ふふっ……今度は私達を悪者にする、という事ね。でもその覚悟はとうに出来ているわ」
「元より私達は『陰に潜み陰を狩る者』……その程度では動じる事なんてありません」
「その通り……こちらも相手の出方を見て動きましょう」
そこでアルファはこの話は一旦終わりだという様に結論付け、次に取り出したのが……
「そして……今回の重要な話し合い、いえ集まって貰ったのはコレよ」
アルファの手には、アルジがゼノンと対峙した際取り出した物に似ていた。同時に室内の窓は設置されたカーテンで閉じられ、照明も消される。そしてアルファがその機器を長テーブルの上に置いて少しいじれば……
【という事で……『中・至近距離砲撃バレット』、『遠距離砲撃バレット』複数同時展開!】
そこにはつい昨日、アルジが王都近郊にある西側の森で行われた戦闘シーンが壁に映し出されていた。
「昨日の作戦が終わった段階でコトハから貰った記録よ。使い魔から送られてきた物だから所々鮮明ではないけれど」
「こ、これがアルジ様の本気を出した時の装備……という事でしょうか?」
「違うのですガンマ! まだアルジ様は本気を出していないのです‼︎」
「えっ? でもここに映し出されている武器の種類……私は見た事ないわよ? た、確かにこの映像からでもアスタロト様の魔力操作の緻密さが伺えるわ……周りに浮かんでいる銀色の波紋みたいな物もどうやって操作しているのか分からないし……」
「そうね……でも私達は他の人種に比べてより長く生きていけるわ。だから、今私達に出来なくても今後必死に訓練を積めば出来る様になるかもしれない。この事についても彼に相談してみましょう」
「「はいなのです‼︎/わかりました」」
「あら? デルタがとても積極的に返事をするなんて意外ね。こういった話が出た時は自論を言うか静観するかだと思ったのだけど」
「だってデルタも今以上にもっと強くなりたいと思っているのです! そうしたら……アルジ様の隣にもいつか並び立てると思うから」
「(っ‼︎ そう……少し考え方は違うけど、デルタもそう考えているのね。なら私も……)そうね。いつまでも彼に頼りっきりではいられないわ。だから私達も、もっと強くなりましょう。その為にもまずは……昨日私達が見れなかったアルジの戦い方を見て、盗めるところは盗んで身に付けて……自分達の技術にしていきましょう」
それからもアルジの戦闘シーンという鑑賞会は恙無く行われていき、そして王都上空で繰り広げられた戦闘を見ていた時、皆反応は様々だが興奮していた。その中でも特に興奮していたのはデルタだった……
side out
「はぁ〜……」
と、開口一番ため息を吐いているのは今作での我らが主人公のアルジで、昨夜の一件で学園は臨時休校扱いとなり、途端にやる事がなくなってしまったアルジは午前中『シャドウガーデン』が本拠地としている霧の都『アレクサンドリア』を訪ねては最近新しく加入した者達の訓練を見たり、新入り達を見ているラムダの話を聞いたりしていた。
それで午前中は消化され、午後は夕方までその新入り達の特別講師をやらされる羽目になった。アルジ自身午後からも見学のつもりでいたのだが、ラムダから「もし宜しければアルジ様も新兵達を直接指導して頂けませんか⁉︎」と頼まれてしまい……最初は邪魔したら悪いからと断っていたものの、ラムダによる怒涛の懇願とその勢いに負けて今に至る。
最初こそはどう進めようか迷っていたのだが……生憎自分はそこまで細かく教える事に長けていない。という事で実践形式で教えた。そして1人ずつ癖を見抜いていき、今後治していく事を課題として提示しつつ、良かったところは褒めちぎるくらい褒めていった。
そんな事もあり、アルジの事を初めて見た新兵達からも異様に懐かれてしまい、それに少し気を良くしてしまったのか別の訓練も行った。
以前デルタにも施した訓練で……森や狭い所、薄暗い所に多数の罠を設置してそれを掻い潜って目的地に到達する。所謂魔力感知や空間認識能力を鍛えるものだった。それを受けた新兵達は……所々傷を負ってボロボロになる程であったが……皆一様に今日の訓練をやり切ったと満足げであった。
そしてアルジはボロボロになった新兵達に……自分が課した訓練にも関わらず怪我を負わせて申し訳ないと思いながらその子達の傷を癒していき、王都に戻って行った。
王都に戻ってきたアルジは、昨日の襲撃の際どの地区の被害が大きかったのかを実際に目で確かめるべく隅から隅まで練り歩く。
そしてゼノンと対峙した辺りの地区を最後に回った時……
「はぁっ⁉︎」
もう何も言葉が出ない。昨日まではこんな大穴は無かった筈……だが今はこうして空いている状態であり、現在王都の騎士団達が現場調査を行なっている所だった。
そしてこんな事が出来るのは、アルジが知る限りでもたった1人……
(兄さんぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜……なんでこんな余計な事しやがったんだよぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜……)
「マジざけんなよちくしょ〜……」
そんな意気消沈としたまま向かった先は……『シャドウガーデン』が王都の拠点にと建てた『ミツゴシ王都店』の屋上にある屋敷だった。
「ただいまぁ〜……」
いつも寮の部屋に帰る時の癖で言う。
「あら、おかえりなさいアルジ」
それを出迎えたのは、群青色のドレスコードを身に纏ったアルファだ。そして他者から見れば、そのやり取りが長年連れ添った夫婦の反応に見れない事はない。
「あぁ……アルファか」
「どうしたの? 元気がない様に見えるのだけど……」
「それがさ……」
アルジとアルファは応接室まで移動して、2人でも余裕でかけれるソファに座ってから話をした。今日学園が突然休校になったのでそこから『アレクサンドリア』に向かい、新しく加入した人員の訓練を見た事と実際に特別講師として教えた事。それから王都に戻ってきて昨日の被害状況を直接確認していたら、最後の地区で大穴が空いており……それを見て意気消沈した事。
「そう……最初から最後の一歩手前までは普通に良かったと思えたのだけど……」
「あぁ……確かに昨日兄さんの魔力が大きく爆発した事は分かっていたんだ。王都上空にまでその魔力が登っていった事も……でもその時俺も敵と戦っていたからその時は気にしていなかったんだが……だからってあれはないだろうっ⁉︎」
ホント……最後の最後で気分が沈む事があって、これなら最初に王都の被害がどんなものか見た方が良かった。
(いや、最初にそうしたらアレクサンドリアまで行く気が無かったかもしれないから……多分今日は午前中に向こうの方に行けて良かったんだよきっと……うん、そう思うしかないよな……)
自分の中で無理矢理そう思い込む事で気分の落ち込みをこれ以上させない様にする。といっても少ししか効果なんて無いんだろうが……
そう思っていたら隣のアルファからスライムを操る音が聞こえた。にしても便利だよなこの世界のスライムって……魔力を流し込んだら基本どんな形にもなるし……
「アルジ……こっちに頭を預けてくれないかしら?」
そうボンヤリ考え事をしていたら、アルファからそう声をかけられる。とりあえず振り向いたら……
「えっ……なんでスライムスーツに?」
「ふふっ、そんな事はいいから。ほら、頭を預けてちょうだい」
「あ……あぁ」
俺がゆっくりとアルファの方に頭を身体ごと倒していると……アルファが俺の事を抱き締めてきた。それに視界も暗くて、何より顔の真正面から伝わるこの感触からして……
「よく……頑張ったわね」
「……えっ?」
俺は一瞬なんと言われたのか分からなかった。ただ俺がその時にも感じたのは、背中を強すぎない程に抱き寄せるアルファの腕、後頭部を優しく撫でられる感覚と……アルファの胸から伝わる鼓動だった。
「よく頑張ったけど……忘れないで? 貴方は1人ではない事を。私達がちゃんと傍にいる事を。貴方は何でも1人でやろうとしすぎるから……私はとても心配になってしまうわ。それに昨日言ったでしょ? 1人で悩まないでって」
「っ‼︎ ……うん。ごめん、アルファ」
「ふふっ♡ そこはありがとう、でしょ? もぅ、本当にアルジはズレているんだから」
「あっ……そのっ……ごめ、じゃなくて……ありがとう」
「えぇ、どういたしまして。それで私は貴方の事を癒してあげたいのだけど……何かリクエストはあるかしら?」
「……膝枕……かな」
「分かったわ。じゃあ……このまま横になってちょうだい」
抱き締められた体勢から寝転がる体勢になった。顔は身体ごとアルファの方を向いていて、目の前には黒いスライムスーツに覆われたアルファのお腹が見える。そして左側頭部はアルファの柔らかい太ももに面していて、とても柔らかい。それに……
(それに温かいし、頭を撫でられる感触が気持ち良くて……)
「眠たいのかしら? ふふっ、とても可愛いわ♡」
「す、少しだけ……」
「えぇ、昨日も今日も頑張っていたのだし、少し休んだ方が良いわね。何かあれば起こすから、安心して目を瞑ってちょうだい」
「あぁ……なら少しの間だけ……おやすみ」
「えぇ、おやすみなさい♡」
そしてアルジはアルファに頭を撫でられながら夢の中へと旅立っていた。何の夢を見ているのか分からないが、アルファから見たアルジの顔は笑みを浮かべており……それが心地良かったのかアルジの腕もアルファの腰を抱き締める様に回されていた。
side アルファ
「ふふっ……この無防備な顔……とても可愛いわ♡ 本当に食べてしまいたいぐらいに」
アルジが夢の中に旅立って数分経った後も、アルファは彼の頭を撫で続ける。丁寧に、そしてゆっくりと……
「いるのは分かっているわ」
アルファがアルジの頭を撫でながら唐突に呟くと、物陰から女の子が出てくる。白髪よりの金髪で猫耳と尻尾を持ち、身に付けているスライムスーツは前側を大胆に開けるスタイルで、いつも諜報活動をしている為に空けているゼータだ。
「いつから気付いて?」
「最初からよ」
「そう……私の隠密術もまだまだだな」
「そんな事ないわ。私も微かな空気の流れで気づけた様なものだし、それがなければゼータが出るまで気付かなかったでしょう」
「アルファ様が気付いていたという事は……当然アルジも?」
「さぁ……でも彼なら気付いても言わなそうね」
「確かに……それにしてもよく寝ているね」
「えぇ。この子は昨日も大変だったけど……今日も大変だったみたいだから」
「確か『ディアボロス教団』以外の連中が王都に攻めてきたとか……粗方特徴は聞いたけど、全く聞いた事がない奴らだ」
「私達もコトハから届いた記録で確認したわ。人がするであろう格好なのに、ゴーレムと似通っている部分がある……昨日アルジが倒していた敵のサンプルをイータが調べてくれているわ。それで分かった事がそのゴーレムと似通っていること。でもゴーレムとは違って遠隔操作型だということね」
「遠隔操作型……コトハが扱っている様な使い魔みたいな?」
「そうね。でも規模が尋常じゃない。数万の規模を1度に動かせる……正直ありえない事だわ」
「そんな規模がこの王都に……それをアルジは殆ど1人で片付けちゃったんだね。それでこんなに疲れた様に眠っt「そういう訳でもないみたいよ」……えっ?」
「昨日の戦闘では……私達も見た事がない戦い方をこの子がしていたわ。初めて見る装備に、攻撃から繰り出される莫大な魔力量……魔力量に至っては、一体何千、何万人規模の人達を集めたらそれくらいになるのか。そんな途方もない魔力を1人で扱えるという点でもそうだけど、昨日の戦闘で一気に使っていた。それだけでも相当身体に負担がかかる筈なの」
「まだアルジの戦闘記録を見ていないから私もどうとは言えないけど……アルファ様がそう感じたならそうかもしれない。じゃあさっきの意味は……」
「彼、今日の午前から夕方まではアレクサンドリアに行って新しく入った子達を見ていたみたいなの」
「えっ……? それって今日の午前から夕方……だよね」
「そうよ」
「……ここからアレクサンドリアまで結構な距離あるけど、どうやってこの時間までに戻って来れるの? まさかそれで疲れたとか……」
「話を聞く限りでは、とても楽しかったそうよ。でも問題は王都に戻ってきた後の方ね。昨日の作戦で周囲の被害がどれ程出たのか直接確かめたかったそうで……それで回ってたみたいなの。その被害を見て彼、少し精神的に疲れちゃったみたい」
「……まさかあのバカ犬が調子に乗って建物とかを壊しまくったから? それだったら絶対に許せないな」
「いいえ、デルタではないわ。しかも作戦当日は周りの被害を出来るだけ出さない様に立ち回っていたみたいだし、それは私達も確認済みよ」
「それだったら一体……」
「……シャドウが敵の首謀者を倒した時に出た被害ね」
「……私シャドウ様の所に行ってきても良い? アルジの事を困らせないであげてって」
「それはやめておいた方が良いわね。シャドウも何か考えがあってやった事なのだろうし、それにあれは考え様によっては私達の力を誇示出来るものの一つよ。それにこの事もアルジが直接言うだろうから、私達は直接的には手をつけない方が良いわ」
「そう……でもなんだかやるせないな」
「私もそう思うわ。私達は……あまりにアルジから貰い過ぎている。それに応えたいのに……彼はいつも私達の前に立って、私達の道を指し示してくれる。でも彼にも弱い部分があるという事は……段々と分かってきたわ」
「だからアルファ様はアルジに膝枕をしている……と?」
「えぇ。アルジは確かに強いわ。この世界の誰よりも……でもそれだからこそ、彼は沢山悩んできて、背負って来た物がある。ゼータも知っているでしょ? アルジが1人で何でもやろうとしている事を」
「うん……『これぐらいの事しか出来ないから』って、口癖の様に言ってるもんね」
「そのこれぐらいの事が……私達から見ればとても大きなものなのに。でもアルジは……何もかも抱えようとしている。そんな彼を見ていて思うの……いつか抱え過ぎて押し潰されしまったらって。だから私は……どんな形であれ彼を支えると、そう決めたわ」
「……じゃあ、アルファ様はもう」
「えぇ。アルジに私の想いを伝えたわ。それと……彼が抱えてきた事も全て知った。想像以上に……彼が歩んできた道は険しくて辛いものだった。でも、そんな辛い事を経験しても彼は……前を向いて進み続けているわ。だから私は支えるの。彼にはいつも……笑っていて欲しいから」
アルファはゼータにそう言い切って顔をアルジの方に向ける。彼の寝顔が瞳に映ると、先程まで真面目に話していた彼女の顔は柔らかいものになって、彼の頭を愛おしそうに撫で続ける。
「……なら次は私がアルジに想いを伝えないとね」
「そう……伝える事は別に構わないわ。彼にも私の他にも好意を持っている子がいる事は既に伝えているから。でも……」
「でも……なに?」
「どうか覚悟しておいて。彼は私達の好意を快く受け止めてくれる。けれども、同時に彼の過去を知る事になるわ。隠しても良い筈なのに……態々話さなくても良い事なのに……自分の事を大切に想ってくれる人に対しては隠し事をしたくない正直な人だから」
「……分かった。それなりの覚悟は私もしておくよ。
それより……
アルファ様はいつまでアルジに膝枕をしているの?」
ゼータがアルファに挑戦的な眼差しを向けながら言う。対するアルファはそれに対して涼しげな顔をしていた。
「アルジが起きるまで……かしら。それともゼータも膝枕したいのかしら?」
「そ、それはっ……も、勿論……したい」
「そう。でももう少しだけ待ってくれるかしら? 私も膝枕をしてまだそこまで時間が経っていないの」
「……分かった。ならアルファ様が代わってくれるまで私もアルジの頭を撫でておくよ」
「ありがとう。私も出来るだけ早く膝枕を代わってあげるから」
途中一触即発の展開かと思ったらそんな事はなく、アルファは約束通り数十分後にはゼータに膝枕を代わってあげていた。
そして膝枕を代わったゼータは……
(あっ///これ……私も癒される。それにアルジが私の太ももの上でこんな可愛い顔をして眠ってる……可愛いな♡)
ゼータもアルジに膝枕をして癒されていた。
side out
side ???
時は少し遡り、王都上空でアルジと浮遊島から出てくる雑兵が戦闘している場面……
(うっ……ここは)
「ほぅ……それだけ傷を負って再起不能な状態でも意識が戻るとはな……余程貴様の身体は頑丈と見るべきか」
「お、お前は……うっ⁉︎」
「無理に身体を動かすな。先程まで貴様はボロボロで生死の境を彷徨っていたのだ」
(はっ……? 生死の境を彷徨っていただと? そんな筈は……俺はあのシャドウという奴の攻撃で木っ端微塵にされた筈で……)
だが可能な限り顔を動かしてみれば、消し炭になったと思っていた身体があり、四肢も欠損していない。指も微かだが動く感覚がした。
「何故……俺はここに」
「さぁな。我らがここで珍妙な相手との戦闘が終わった後、突然貴様がここに現れたのだ。そういえば貴様……ゼノン・グリフィだったか」
「お、俺の名前……っ! た、確か貴様は今年から魔剣士学園の剣術講師として来ていた……」
「クレバー・レーグリン……まぁ偽名ではあるがな。これも貴様が所属していた『ディアボロス教団』の目を欺く為だ」
「っ⁉︎ お、お前もそれを知って⁉︎」
「知っているとも。何より私は過去、娘共々教団側から被害を受けているからな。それを助けてくれたのがアスタロト殿だ」
「アスタロト……?」
「そういえば貴様がここに突然現れた一瞬……アスタロト殿の魔力を感じた。もしやここに来る前に会ったな?」
「会った……? そんな名前の奴に会った事は……っ‼︎」
『今度もし“会えた”なら……俺が出した問いについての明確な答えを聞かせてもらおう』
(まさかアルジ・カゲノーが……そのアスタロトという奴なのか⁉︎)
「どうやらその顔……会ったみたいだな。確かにあの方は……普段とても温厚な人物で、誰が見てもあんな力を持ち合わせているとは思わない。私もあの方を一回見ただけでは判別が付かなかったぐらいだからな。っと、話はそれぐらいにして、あの王都の上空で行われている事が見えるか?」
「ここにまで戦闘の音が聞こえる程には気付いているが……あれは一体?」
「未知なる敵だ」
「……未知?」
「あぁ。この世界の盗賊とも、ましてや『ディアボロス教団』ですらない……全く未知の存在達だ。その存在とアスタロト殿が今戦っている」
「なっ……⁉︎ あ、あそこにいるがアルジ・カゲノーだというのか⁉︎」
それを知ってゼノンは驚愕する。確かに自分を打ち負かした時、その時ですら自分よりも格上だと感じた。感じたが……
(更に……その上があるのか……)
そう考えてしまうと……最早三流、井の中の蛙どころの話ではない。そして自分が驚愕している今でも……王都の上空で未知の存在とアスタロトは戦っていた。それを見ていたゼノンは……
(俺も……あんな風に……)
自分が失いかけていた憧れが……蘇りかけていた。
「貴様もあの強さに憧れるか?」
「……えっ?」
「私も……あの方の強さを追い求めている。多分私が生きている間にあそこまでの強さには到達出来ないだろうが……」
「……俺も」
「うん?」
「俺も……あの強さを……求めれるだろうか?」
「……さぁな。だがその覚悟があるというのなら、来るか?」
「……えっ?」
「貴様にその覚悟があるというのなら……今までの自分を捨て、犯してきた罪も自身の内に一生刻み付けどの様な誹りも受け止め……そして一から自分の道を歩むというのなら、我らと共に来い。その為に……アスタロト殿が貴様をここへとやったのだろうからな」
「……いいのか?」
「だがな……貴様も元を辿れば『ディアボロス教団』幹部の末席として数えられていた。もし我らを……アスタロト殿やその関係ある者達に害をなそうとした時には」
「……っ⁉︎」
ゼノンはクレバーから発せられる殺気にたじろぐ。確かに現状ボロボロな自分には抵抗出来るほどの力は残っていない。だが万全の状態で『ディアボロス教団』から支給されたあの錠剤を使ったとしても……恐らく目の前の彼には勝てないと認識してしまった。
そして……目の前の存在がそのアスタロトという人物をどれ程崇拝し、その憧れを抱きながら強さを追い求めてきたのかが、なんとなく見えた気がした。
それを見てゼノンが出した結論は……
「……その時は俺を殺せば良い。元々俺はあの場で死ぬ気だった。あのアスタロト……アルジ・カゲノーと名乗る少年の強さと対峙した時は嫉妬を覚えた。あの錠剤を飲んでも相手にすらされていなかった。だが最後……俺は彼の目を見て思い出した事がある。俺にも純粋に……金や地位関係なくただ……誰にも負けない程の強さに憧れを抱いていた事を」
「そうか」
「……俺も、その高みに登り詰めたい。ここまで間違えてしまったが……関係ない奴も沢山踏み躙ってきた……そんな俺でも、まだ目指せるというのなら」
「……分かった。ゼノン・グリフィ……取り敢えずは貴様の身柄を預かる。そしてアスタロト殿の判断をもってして貴様の処遇を決めさせてもらおう。その時の処遇がどんなものであれ……受け入れてもらおう」
「一度は死を選んだ……死ねと言われるのなら、心残りは大きいが……今度はソイツの手で死に誘われたい」
そしてゼノンは、一時オルバ率いる組織の預かりとなる。後日改めてアスタロト、アルジ・カゲノーと再会し処遇を決められた。
結果……ゼノン・グリフィは名前を捨て一から生きることとなった。そうして付けられた名は……
side out
(……なんか結構寝てた様な気がする。そろそろ起きるか)
そして俺は目をゆっくりと開ける。すると目の前に黒いスライムスーツと……真っ白い肌……ん?
(え……えっ? えぇっ⁉︎ 何でアルファのお腹が大胆に見えて……ま、まさか俺の寝相が悪かった……? それでアルファのスライムスーツをこんな状態に……? いやいや! そもそもアルファだったらそんな事になる前に止める筈だ! この膝枕だって俺の疲れを取る為にしてくれているんだし……)
因みにですが……もしアルファさんがアルジさんに、結果的に寝相が悪かったとしてお腹部分のスーツを丸裸にされてしまった場合の事を聞くと……
「アルジに結果的にそうされてしまったら? それは……とても嬉しいことね。だってそんな状況になったという事は……アルジは無意識の内でも私の事を求めてくれているという事だもの。そこまで想ってくれているのなら、私もそれ以上に彼の事を想って可愛がってあげるわ♡」
と、この様にアルファさんは仰っていました……
そして時を戻して、この現状についてアルジさんは……
(あぁ……俺は無意識の内にも下世話な人間になってしまったらしい……昨日アルファの想いを受け止めたからといって、流石にこれは……俺的に許せない。謝ろう)
そう決意してゆっくりと顔をアルファの方に向けるのだが……
(え"っ……む、胸まで大胆に……これ……俺何やってんだ……そんなど畜生になってしまったのか俺は⁉︎ あぁ……もぅ顔さえ合わせられないと思ってきた)
物凄く弱気になってしまい顔を上げるのを途中でやめてしまった。そして上げるのをやめたのは丁度アルファの大胆に開かれた胸部分の位置であり……
「おはようアルジ。それと……私の胸……気になってる?///」
「えっ……はっ? ……っ⁉︎ ぜ、ゼータ⁉︎」
アルファだと思ったら、いつのまにかゼータが膝枕をしてくれていた。そんなゼータは、いつもキリッとしていた顔が少し赤くなっていた。
(って……ま、まさかゼータにも気付かなかったのか? 常時誰が来ても分かるようにしている筈なのに……確かにゼータは元々相手に気取られない潜入スキルと情報収集能力が売りではあるが……そうか、遂に俺も力が衰えてきた、いやゼータの能力が俺を上回ったって事だな。何だか感慨深いというか何というか……)
「アルジ……何か変な事を考えてない?」
「(えっ⁉︎ 俺の心が読まれた……って、姉さんやアルファの時もそうだったよな……)俺って……もしかして顔に出てたりしてる?」
「普段は読み取れないけど、なんて言うんだろう……今のように緊張感がない時に唐突に驚く事があった時とかにはある程度ってところ」
「そ、そうか……それで、さ。どうしてゼータは俺に膝枕を?」
「えっ⁉︎ そ、それは……や、やってみたかったから///」
「そ、そっか〜……」
「そ、それで……私の膝枕……気持ち良い?」
「えっ……あ、あぁ……とても柔らかくて……気持ち良い」
「っ‼︎/// え、えへへ……そ、そうなんだ」
「あっ⁉︎ せ、セクハラ的な意味で言った訳ではなくてだな⁉︎ その……」
「う、うん……分かってるよ。でも……嬉しい♡」
と、そんな風にアルジさんとゼータさんが反応している時でした。
「あら、目の前でそんなやり取りを見ているととても妬ましく感じてしまうわね」
「っ⁉︎ あ、アルファ⁉︎ こ、これは……その……」
「ふふっ……慌てふためくところも可愛いわね♡ 大丈夫よ。ゼータに代わってあげたのは私だし。それでそろそろ夕飯の時間だけど……アルジも食べていくわよね?」
「あ、あぁ……その、可能であれば泊まっていk「勿論大歓迎よ。貴方の部屋も用意しているし、安心してちょうだい」な、なんか凄く準備が良いんだな……でも助かる」
「お礼はいらないわ。当然のことをしたまでよ。さぁ、そろそろ行きましょう」
「あぁ。それとゼータも、膝枕してくれてありがとうな」
「っ‼︎/// う、うん……私もアルジに膝枕して嬉しかった。また……やって良い?」
「えっ? あ、あぁ……大丈夫だと思うぞ?」
「なんでそこ疑問系? まぁ良いけど」
そしてアルジはこの日、アルファ達が拠点としている屋敷で夕飯を食べそのまま泊まった。
因みにこの方はというと……
「アルジがいないアルジがいないアルジがいないアルジがいないアルジがいない……」
いつもの如くアルジさんと一緒に寝る気満々だったクレアさんでしたが、寮の部屋にアルジさんがいなかった事もあり、自分の部屋の隅で体育座りをしながらボソボソと口にしていました……
比較的早めに書けました、アレクシア王女誘拐編の後日談はいかがだったでしょうか?
事件解決後の『七陰』の動き。それと今回首謀者だったゼノン・グリフィがなんと生きていて結果的にオルバ率いる組織に入ってアルジ陣営に入るという……さて、この展開を読めた人は読者の中でもどれほどいらっしゃったでしょうか?
私としては、物語を描いていく上でゼノンを生かす事は決めていました。これからも『ディアボロス教団』に関係ある奴で味方側に引き入れたいと感じるキャラがいましたら引き入れていく予定です。まぁそこはアルジの匙加減ではありますが……
と言う事で、第2章無事完結です‼︎
次回は『シャドウガーデン』を騙る『ディアボロス教団』の一部が学園を襲う話……『魔剣士学園襲撃編』を進めて行きます!
ではまた次回もお楽しみに!