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という事で最新話をどうぞ!
12話 復讐者、労う
アレクシアさんの誘拐事件から2週間が過ぎようとしていた。彼女は発見された当初傷だらけであったものの、3日ぐらい経てば傷跡などもなくいつも通りの彼女がいた。
(やはりこの世界での魔力という物は便利だな)
俺が巡ってきた世界では、魔力だけを通しても人の傷を癒す事が難しい所が殆どで、場合によっては魔力がない世界もあった。その代わりに別の技術が普及していたりで、致命傷を負ってもその技術力で何とか一命をとりとめたりだとかした。
それでアレクシアさんから剣を教えて欲しいと言われてOKを出した数十分後……今度は血塗れの兄さんと出会した訳だが……
(あぁ……彼女に付いていた血は兄さんのか〜)
えっ? それだけしか思わなかったのかと? いやいや、だってあの兄さんだぞ? どうせいつもの様にモブ道が〜とか変な事を考えた結果なんだろうな〜……
(若しくはアレクシアさんが偽装恋人を演じていたけど、どこかしらで兄さんの事を想い初めてもう少しこのままの関係で〜……という線もありえない事は無いが)
いや、それは考え過ぎだな、うん。まぁ今となってはそんな物は推測にしかならないだろうし……
まぁここ2週間の間でそんな事があった訳だが……それで今何をしているかっていうと……
「はぇ〜……にしても本当に凄いよな! 確か『ミツゴシ』のチョコレートって奴だっけ?」
「そうですよぉ〜ヒョロくん! ここで売られている『ミツゴシ』の高級チョコレートを女子にあげれば、僕達にだって春が訪れる筈です‼︎」
「あぁ、そうだな! だがジャガくん……若干2名程俺たちの裏切り者がいる訳だが?」
「全くもってそうですね! けしからんですよ⁉︎ シドくんにアルジくん‼︎」
「そんな事言われてもなぁ〜……」
「はぁ〜……俺も兄さんに同意見だ。第一お前達がモテないのはただ単に男を磨く努力を怠っている結果だろうが?」
「かぁ〜! 言うね言うね⁉︎ イケメンの余裕って奴ですよジャガくん‼︎」
「ヒョロくんの言う通りです! でも僕達の春だってすぐ目の前にあります! 僕達がアルジくんより彼女が出来たからと言って後から僻まない事ですね‼︎」
(いや僻むって……第一もう彼女いるんだが……)
あの事件が起こった日……俺はアルファと相思相愛の仲となった訳だが、彼女曰く俺の事を好いている子がまだいる様で……
(本当なら何股するのとか嫌なんだよな……世間体というのもあるし)
だがアルファ曰くそんな事は気にしないとの事で……後は俺も一応貴族という面から、一夫多妻というのは問題にならない様で……そもそもこの世界では気にしなくてもいいって事なんだろうが……後は俺がどう考えるかだよな。
(でも……彼女達が俺の事を本気で想っているのなら、俺も全てを賭けて全力で応えるまでだろ)
あぁそうだ。俺はもう……間違えない。あの日にそう決めたんだ!
(それに俺はもう1人じゃあないんだ。そばに居てくれる人がいる。それだけで俺は……)
「アルジくん? どうかしたんですか?」
「ん? あぁ……果たしてヒョロ達がそんな相手に巡り会えるのかと思ってな」
「んなっ⁉︎ コイツ俺達の事馬鹿にしてやがんぞ⁉︎」
「そんな余裕持ってて後で吠え面かいても知りませんからね! ね、シドくん‼︎」
「いや、僕に言われてもなぁ〜」
「にしても、思ったよりもこの行列長いよなぁ〜」
「ホントです……でも授業終わりじゃないと来れないし仕方ないかと……」
「あの〜……」
ヒョロ達がそう愚痴りながら待っていると、俺達に向けて伺いを立てる様な声が聞こえた。それに振り向くと、目の前に首の辺りまで伸ばした茶髪で『ミツゴシ』の制服を着た女の人が、白いプラカードを持って立っていた。
「今宜しかったでしょうか?」
「えっ? あぁうん」
その問いかけに代表してシドが答えた。それを聞いて女の人はどこか安心そうな表情をしてこう言ってくる。
「今『ミツゴシ』にてアンケートを集めているのですが、そちらの黒髪の方と白髪の方、アンケートにご協力頂けないでしょうか?」
「アンケート? ま、まぁ時間あるし良いけど……アルジは?」
「俺も大丈夫かな」
「あぁ、良かった! ではお2人ともこちらに」
「えっ? な、なら俺達も!」
「そうですよ! アンケートなら人数は多い方がいいと思いますし!」
「いえ、お2人だけで結構です」
「「でも‼︎」」
「お2人だけで結構です」
「「あっ……はい……」」
それで兄さんと俺はその女の人に連れられて『ミツゴシ』の中に入っていく。その様子を背後からヒョロ達が血涙でも流さんばかりにこちらを睨み付けていたが、まぁいつものパターンかと思いながらそれ以上の思考はせずに女の人の案内に従った。
そして案内されたのは……『ミツゴシ』屋上に建てられた屋敷で、その中でも大きな部屋に通される。ざっと100人以上は入れそうな所で、パーティーとかの類がいつでも開けそうな程綺麗に整っていた。
奥に設置されているまるで王族が座るかの様な椅子……それに続く様に配置されたレッドカーペットと、そのカーペットを両側から挟み込む様に人種関係なく並び立つ女性従業員の子達。
そして玉座にはまだ誰も座った形跡はなく綺麗な状態で保たれ、その傍らには1人の女性が立っていた。黒い長髪を背中以上に伸ばし、それに合わせたかの様に青みがかった黒いドレスコードを身に纏う。顔付きはそんじょそこらのモデルは顔負けするであろう美人に匹敵する彼女こそ、『シャドウガーデン』の頭脳担当であるガンマだ。
「ご来店を心よりお待ちしておりました。シャドウ様、アスタロト様。この場に来て頂ける事をどれ程待ち望んだ事でしょう……『七陰第三席』を受け持たせて頂いておりますこのガンマが、『シャドウガーデン』を代表して貴方様方を是非おもてなしさs」
玉座からここまでの間に少しの階段がある。玉座の傍らからこちらに歩み寄り、俺たちに対して感謝の意みたいな事を言い表してくれる。
だがその事に集中し過ぎてしまったせいか、階段を降っている最中に躓いて前のめりに倒れそうになる。このまま倒れてしまえば、顔面強打は免れない……
(まぁそんな事させる訳ないが……)
縮地を用いてガンマの側まで行き……そして抱き止めた。
「へっ……あ、アルジ様っ⁉︎」
「全く……この前の戦闘ではそんな事無かったって聞いてたのに、おっちょこちょいなのは変わらず……かな?」
「も、申し訳ございません! アルジ様達の前でこの様な粗相を起こしてしまうどころか……貴方様のお手まで煩わせてしまって……」
そう口にするガンマの瞳は潤んでいた。よっぽど今の事が情け無く感じたらしい。でも……
「良いさ。俺は気にしてないし……何よりガンマに怪我が無くて良かったよ」
「アルジ様……///」
「さて、そろそろ1人で立てそうかな?」
「っ! は、はい‼︎ ありがとうございます、アスタロト様‼︎」
俺はガンマをゆっくりと立たせる。その後ガンマは兄さんの所に行き、玉座に座る様に促した。兄さんは兄さんで、「おっ、なんか陰の実力者っぽい!」とアホな事を考えてそうな顔になって玉座に座る。
それを確認した後じっと俺達を見つめてくるガンマ……で何か忘れていた事を思い出したのか、俺が座る椅子を持って来る様に他の子に指示を出していた。
ただ俺はそんな事をする必要は無いと一言だけ言ってやめさせる。別に兄さんが座ろうが座るまいがどっちでも良いが、この場に集まった子達も仕事の途中だろうし殆どが立ち仕事だろう。そんな彼女達を他所に俺も座るというのはなんか嫌だなと感じて、兄さんが座る玉座の傍に立つ様にした。
そしてガンマとレッドカーペットの両端にいた従業員達が、俺たちに向けて片膝を付けながら頭を下げて来る。隣の兄さんはその光景を見て、さらに陰の実力者っぽいと顔に出す。
(まっ、どうせ今回もエキストラ雇ってやってるとかアホな事を考えていそうだが……)
確かにガンマであれば、その財力は何でもないという感じでポンッと出せそうだが……普通に考えたらありえない事だしな。だが彼女らは『ミツゴシ』の従業員兼『シャドウガーデン』の一員なのだ。だからこそここまで統率された動きができるというもの。
でも兄さんとしたらそこまで深く考えずにそう思っているし、何の因果か兄さんの中二病と、ガンマによる俺達を誠心誠意出迎えたいという思いが結びついてこの状況だし……
(だからといって兄さん……そのアホな顔をするのはやめてくれないか?)
全く……無駄にキリッとしている表情の兄さんだが、俺からしたらアホ面以外の何者でもない。ただ頭を下げている彼女達からは見えない事がせめてもの救いだろうか……
「褒美だ……受け取れ」
そう言って兄さんは青紫色をした魔力の塊を天井近くまで放つ。放たれた魔力は天井まで到達すると、拡散し、青紫色の雨となってその空間を満たした。その魔力を浴びて恍惚の表情を浮かべるガンマや他の子達。まぁこの魔力には多少なりとも疲労回復や傷の治癒の類が含まれているし、兄さんとしては自分に対してエキストラを雇ってまでやってくれた礼のつもりだろうな。
「(それじゃあ俺も)じゃあ俺からも、君達に対して日頃からのお礼w「アスタロト様!」……えっ? どうしたのガンマ?」
「大変恐れ多い事かと存じますが……アスタロト様は普段から私達に多くの物を与えてくださっています。それなのに更に貴方様から何かを頂くというのは……」
ガンマが申し訳なさそうにそう言ってくる。俺としては、皆が頑張っているからこそ、俺からも何か返したいといった思いだったのだが……
「えっ……アルジって普段ガンマ達に何かしてあげてるの?」
「……さぁな」
「さぁな……って、それ絶対何かやってる答え方だよね」
何故か隣に座る兄さんから追求を受けるが、さっきまでアホ面していた兄さんに馬鹿正直に応えるのは面倒臭いから適当にあしらう。ともかく今はガンマからの反論に応えるとしよう。
「俺はさ……俺の事を大切に思ってくれる人達に、何が何でも自分の感謝を伝える様にって事を心情にしてきた。見る人が見れば、それが裏切り行為に見えるかもしれないが」
その発言は……これまで様々な世界を巡ってきた事を思い出しながら出た言葉だ。こんな得体の知れない奴を信用して付いてくる人もいた。好きになってくれる人もいた。でもそれを俺は、神の誓約のせいにして踏み躙ってきた。それは、完全に俺を大切にしてきた人達に対しての裏切り行為だ。自分のエゴと言っても良い。
だからこそ……今度は間違えない。アルファに告白されたあの日……自分自身に誓った。他者から思いやられたのなら、そして自分が相手の事を思いやっているのなら、それがエゴと看做されても応える。特に相手が俺の事を快く想ってくれるのなら、それに対しての応え方は絶対に間違えないと。
「それでも贈りたい。自分の今抱いている気持ちを。俺と兄さんがここまで進んで来れた事は、俺達だけの力じゃあなくて……ガンマやここにいる皆が支えて来てくれたからこそだと。だから、君達がどれだけ拒んだとしても……俺が勝手に贈るんだ」
そう言いながら俺は兄さんと同じ様に天井に向けて紅い魔力を放った。その魔力もある程度まで登って拡散し、魔力の雨となってガンマ達に降り注ぐ。
それだけでなく俺はバイオリンをいつも荷物をしまってある空間から取り出して、音色を奏でた。奏でたのは……この前王都の上空でやった『G線上の
side ガンマ
私はどれ程この時が来るのを待ち侘びたでしょうか……『シャドウガーデン』を創設されたシャドウ様とアルジ様。この方々がいなければこの場に私はいなかった。あの時にアルジ様達が来なければ、私は『悪魔憑き』として身体が朽ち果てそのまま死んでいたでしょう。
あの場で救われて数年、私は『シャドウガーデン』の頭脳担当として、組織を動かす上で大事な資金のやり繰りと作戦立案をしてきました。そして資金繰りの上で私はシャドウ様から教わった『陰の叡智』として出てきた物、大型ショッピングモールなる『ミツゴシ』を運営するとともに王都へと進出。そこから様々な分野を手掛けて莫大な利益を出しつつ、『シャドウガーデン』の基盤をしっかりしたものへとしてきました。
それと同時にこの『ミツゴシ』は私にとっての大事な根城であり、欠かす事の出来ない場です。ここがなければ今頃『シャドウガーデン』はどうなっていた事でしょう……
(イータの研究費用で火の車状態だったかもしれませんね……)
イータの研究費は増す一方ではありますが、今ではそれを覆せる程には資金面は潤っています。それ程にまでここは重要な拠点で根城なのです!
(その様な場にシャドウ様とアルジ様をお迎えできる日を……私はどれ程待ち侘びた事でしょう! こうしてお迎えできた事が本当に嬉しいです‼︎)
その際感極まってアルジ様達へこの嬉しさをお伝えしていたところ、階段で躓いてしまいました。本当ならそのまま顔面強打してずり落ちていたのですが……そうなる前にアルジ様が私を抱きとめて下さったのです!
あの様な痴態……アルジ様達の目の前でまた起こしてしまうのがとても恥ずかしく思いますが……
(アルジ様が私を抱きとめてくれた時のお顔が……とても凛々しくて……)
私はその時別の意味で鼻血が出そうになったのですが……これ以上の痴態を晒すわけにはいかないと思って我慢しました。
そしてシャドウ様を玉座に迎えた時……ふと物足りなさを感じました。その時にアルジ様の顔を見て……
(……はっ⁉︎ あ、アルジ様が座る玉座が……無いではありませんか‼︎)
そう思った時にはすぐ椅子を手配しようと他の子に合図を送ったのですが……アルジ様はこのまま立ったままでいいと言われ……
(あぁ……アルジ様に要らぬ気遣いをさせてしまいました……)
ですが私が影のある顔をしてしまえば、また余計にアルジ様が気遣われると思いすぐ切り替えました。そしてシャドウ様とアルジ様に対してこの場にいる者達は片膝を着いて頭を下げます。
それを快く思ったのでしょう……シャドウ様が魔力の雨を贈ってくれたのです。降り注ぐ魔力の色は青紫色で……当時『悪魔憑き』だった私を助けてくれた光でした。それに懐かしさを覚えていたのですが、その光景も数秒経てば終わってしまいました。
(もう少し昔を懐かしみたかったのですが……)
その思いが顔に出ていたのでしょうか……今度はアルジ様が私達に対してお礼にと、魔力の雨を降らせる準備をしていたのです。
「(流石にそれはいけません!)大変恐れ多い事かと存じますが……アスタロト様は普段から私達に多くの物を与えてくださっています。それなのに更に貴方様から何かを頂くというのは……」
私はそうアルジ様に進言したのですが……
「俺はさ……俺の事を大切に思ってくれる人達に、何が何でも自分の感謝を伝える様にって事を心情にしてきた。見る人が見れば、それが裏切り行為に見えるかもしれないが」
その時のアルジ様の顔が……
(……なんでそんな悲しそうな顔をするのですか)
今にも泣き出してしまいそうな、そんなお顔をしていました。笑っている顔に見えるのに……私にはその様に見えてしまって。アルジ様は特に意識はしていないのでしょうが……
(……私はなんと罪深い事をっ)
そこで私は過ちを犯してしまった事に気付く。確かに私は、いつもアルジ様から様々な物を貰っていると思い進言をしました。ですがそれが……アルジ様の事を傷付けてしまった。あの方は……例えどんな状況でも他者を優先してしまう程の心優しい方。それは昔から一緒に過ごして分かっていた。分かっていた筈なのに……
(なんとお声をかけたら……)
そう考えているうちに、アルジ様はシャドウ様と同じく天井に紅い魔力の塊を放って、魔力の雨を降らして下さいました。
それと同時に音色が聞こえた。それはアルジ様がバイオリンを奏でる音で、その音と降り注ぐ魔力が私の身体に浸透していく。
(あぁ……あぁっ……この感覚は……)
そう、この感覚はあの時……『悪魔憑き』となって身体が変貌していき、意識も朦朧としていった時……私の手を取って励ましてくれた時の光でした。
(あの時に感じた温かさと優しさは一時も忘れた事はありません。ですがこうしてまたあの時の温かさと優しさを……こうして感じる事が出来るなんて……)
そう感じながら私は……これまでを振り返る。助け出されてからは『ガンマ』と名前を改め、この世界を裏から牛耳る存在と戦う事を決めてから戦う術も学びました。
ですが私には戦闘におけるセンスがなく、寧ろ日常生活で何も無いところで普通に転んでしまうほど……不幸中の幸いと言うべきか私には普通よりも魔力量が多かったこともあり、シャドウ様からは『一撃に全てを込めて叩き斬る』と言う事を教わりました。
それでも私は戦闘面では落ちこぼれで、後から入って来た子達にも追い抜かれていく毎日……それでつけられたのが『最弱のガンマ』でした。
助けてもらったのに足手纏いになっている自分が嫌で……『シャドウガーデン』を離れようとも考えていました。そんな時にシャドウ様からは『陰の叡智』なる物を語られました。それは……私の知的好奇心を揺さぶるには効果覿面で、戦闘面では役立たずでも知識や頭脳の面では力になれると……シャドウ様は暗にそう言いたかったのかもしれません。
ただそれだけでは終わりませんでした。シャドウ様が『陰の叡智』を語られたすぐ後くらいに、アルジ様が個別に戦闘訓練を私にして下さったのです。最初はこれ以上不甲斐無い姿を見せたく無いために断りました。ですがアルジ様は……
『最初なんて誰でもそうさ。俺だって、対人戦とかのスキルはてんでダメダメだったし……』
そう笑いながら私に語って下さる。剣術を指南して下さったシャドウ様も、アルジ様の事を自分よりも強い相手だとお認めになっていた。そんなアルジ様も最初の頃は戦闘センスが全くなかったと言う。
なら私はそれ以上にダメではないですかと、つい口に出して言っていたのですが……
『自分の事をそう認識出来ているのなら、ガンマは今よりも更に強くなれるよ。今の自分よりも強くなる最初の一歩は……自分が今どの程度出来るのかを把握出来る事だから』
だから今の現状に諦めずに……続けてやってみない? とお言葉を頂いてから私は、知識の方でもそうですが戦闘面でも力を入れていきました。そして日常でも転ばない様にこうした方が良いとアドバイスも頂き、毎日それを実践していきました。
そのおかげか私は、模擬訓練で『七陰』の中でも1番戦闘センスがあり、毎回負けては馬鹿にしてきたデルタにも勝てる様になったのです! 今ではそれぞれの役割があるために『七陰』同士での模擬戦は偶にしか開かれていません。それでもデルタとの勝率は7:3と負け越してはいるのですが、当初に比べれば全然マシになっていると思います‼︎
そして私はいつの間にか『最弱のガンマ』とは呼ばれなくなりました。それというのもあの時、アルジ様が私の事を根気強く見て下さったお陰です。
だからこそ私は……あの方から貰いすぎている。今まで受けてきた恩の1割も返しきれていないと考えている私には、これ以上アルジ様から何か頂く事が申し訳なく思ったのです。
ですがアルジ様はそんな事を気になさらない方でした。自分が過去に他者に対してどれ程施しをしてきても……それを恩着せがましく何かを要求することは無い。そして今回も……私達が普段自分達の力になってくれているからと労って下さる。
過去を振り返りながらアルジ様が下さるこの感覚を感じて……私はいつの間にか涙を流していました。懐かしみからくるものなのか、それともアルジ様の心を直接感じているからこそのものなのかが分かりませんが……でも
(もぅ……こんなにされたら私は……もっと貴方の事をお慕いしたくなってしまいます)
アルジ様が奏でる音が終わってからも、私の目からは涙が溢れてしまって止まる事を知りません。それに気付いたアルジ様が慌てて私に近寄って来て下さり心配をして下さるのですが……
(そのお心遣いがとても嬉しい……)
アルファ様はアルジ様の事をどこかズレていると言っていたのですが、本当にそう思ってしまいます。それと同時にそのズレているところが……とても愛らしく感じてしまって……
(あぁ……貴方様に早くこの胸の内をお伝えしたい)
私が泣き止んだのはそれから数分後の事で、シャドウ様は玉座に座ってこちらを見ながら何か考え事をしている様子で、何を考えているのかは私の頭脳をもってしても解き明かす事は出来ないと思っていますが、いずれはシャドウ様の知識に並び立つ程になりたいとも考えてもいます。そして……
(アルジ様……私は貴方様の側に、この身が朽ち果てるまでお仕えします)
その想いを改めて自分の中に刻み付け、アルジ様にもう大丈夫ですと伝えるかの様に笑みを送りました。
side out
(いやぁ〜……さっきのはマジで焦った……)
俺がバイオリンを弾き終わると、なんか泣いてる声が聞こえた。演奏中は自分の想いを送る為に目を瞑っていたから……ガンマ達がどんな表情を浮かべていたかが分からない。
で、弾き終わって目を開いたら……なんか目の前で聞いていた従業員が皆涙を流してたんだけど……特にガンマが滅茶苦茶泣いてて。
その光景に訳が分からず反射的に兄さんの方を向いていたんだが……兄さんも兄さんでなんか呆然としていたな。俺の演奏によってか目の前でガンマ達が泣いている光景を見てか、はたまたどっちともの要因なのか分からないが……
(ともかく落ち着かせねぇと……)
悪気があって彼女達を泣かせてしまった訳ではないんだが……こうも泣かれてしまうと俺が悪かったんだろうなと感じてしまう今日この頃で。それで先ずは滅茶苦茶泣いていたガンマに駆け寄って大丈夫かと聞くのだが……
「うっ……うぅっ……貴方様の私達に対するお心がとても嬉しく感じてしまって……哀しいのではなく嬉しくて泣いているのですっ……だ、だから……泣き止むまでしばし……お待ちを……」
そう声を震わせながら俺に言ってくる。にしてもだ……
(場違いというのは理解しているが……ガンマが泣いている顔も綺麗に見える)
本当に俺はこの世界に来てからというもの……モラルとかが下衆な存在くらいにまで堕ちていっている気がする……
ガンマが泣き止むまで数分もの間傍にいて、彼女にハンカチを差し出しつつ背中をリズム良く優しく叩く。
それをして泣き止んでくれたガンマは、俺に微笑んでくれた……って
(め……
メッチャクチャ綺麗なんですけどぉぉぉっっっ⁉︎)
もぅなんだよあの微笑み⁉︎ 反則だろコンチクショーっ⁉︎ って俺は一体誰に対して激怒しているんだ⁉︎
(確かにガンマは女優級に綺麗で……アルファもどこぞの女優の様に綺麗だけど、違う方向性というか何というか……あぁダメだ! 自分の中で語彙力が壊滅しててどう表現して良いか分からねぇ……)
「あの……アスタロト様? 私の顔をじっと見てどうされたのですか?」
「えっ……えぇっ⁉︎ い、いいいいや、と、特にこれと言って何も……」
(アルジ様が何故か慌てふためいて……それに顔も赤くしている様な……っ! そういう……事ですね♡)
ガンマがその様子に何か気付く。そしてアルジの耳元に自分の顔を近付けて……
「もし宜しければ……アルジ様の今夜の夜伽をこのガンマがお付き合いしたく思うのですが……いかがですか♡」
「え……えぇ……えっ?」
「ふふっ♪ アルジ様もその様なお顔をなさるのですね……アルジ様の可愛いお顔を拝見出来て、ガンマはとても嬉しいです♡」
そこで再びガンマが微笑む。だがその笑みは先程の笑みとは違う物で、表現するならば妖艶な笑みである。それを見たアルジは……
(あ……あぁ……や、ヤバい……何がどうヤバいか分からないが……これ以上ガンマの笑みを見続けたらヤバい‼︎)
そう思い、ガンマの側という名の前線から即座にシドの座る玉座の傍らという名の後方へと退却するアルジ……チキン野郎である。
(なんかどこのどいつか分からねぇけど馬鹿にされた気がする……後でとっちめてやらねぇと)
因みにその発言パートを口にした語り部さんはその後……アルジさんからの報復よりも先に、どこからともなくその事を知ったアルファさんに問答無用でボロボロにされたと言います……
ともかくとして、シドさんとアルジさんはその後もガンマさんからここまで事と、今王都を騒がせている『シャドウガーデン』を語る者達の報告を聞いて過ごしたといいます……
今回はガンマさんが滅茶苦茶アルジにアピールした回ですね!
それとガンマさんの妖艶な微笑みについては、幾分か『かぐや様は告らせたい』のかぐや様が熱を出して白銀が看病した際、かぐや様が白銀をベットの中に引き摺り込んで「お可愛いこと」を言う時みたいな表情を参考にしました。そんな表情を向けられれば、オリ主のアルジだけでなく皆様も悶絶してしまうのではないでしょうか?
という事で……どなたか上記に書き表した様なガンマさんの絵を描いてくださる方はいらっしゃらないでしょうか?若しくはアルファさんがアルジを悶絶させる様な可愛らしい笑みを……
まぁこれについては自分の願望になりますので……どなたか気が向いて描いて頂ければ幸いだな、といったものです。自分も模写程度ならできるのですが……フルカラーは描いたことがありませんし、自分の想像した絵を描く事が出来ず……という様な感じなので……いや、ここはいっそ私も頑張って描いてみるか……?
因みにアルジさんを馬鹿にしてしまった語り部さんについてですが……
はぁ〜……今日も満足のいく仕事だったなぁ〜……
満足そうな顔をして自分の家の前まで着くと……
「あなたね? 私のアルジを馬鹿にしたのは」
えっ? あ、アルファさんっ⁉︎ 何故こんな所に⁉︎
「そんな分かりきった事を改めて聞いてどうするのかしら? とにかく……あなたには一度痛い目を見てもらうわ」
ちょ、ちょっと一体なんのはn……
という事で、アルジさんの一部語り部を担当している方は次回お休みを頂きます……
では、また次回お会いいたしましょう!