また、最新話までに新しくご評価とお気に入りを入れてくださった方々に対してもまた感謝致します!本当にありがとうございました!
まだ新しい住所とかも決まっておりませんのでまた不定期になるかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします!
side シド
(……マジで凄い)
何が凄いかって? それは勿論目の前で繰り広げられたアルジの演奏だよ。正直アルジも楽器を嗜んでいるなんて全く知らなかったし……
(そういえばこの前王都の空に浮かんでいた赤鎧も同じ曲を弾いていた様な……)
因みにシドは王都の空でアルジが鎧を身に纏って戦っていた事は知らず、ただ単にこの世界にも強い奴が他にもいたんだ〜! 僕もあの赤鎧と戦いたいなぁ〜! というぐらいの感想しか持ち合わせていません。
えっ? 魔力でシドもある程度は人を判別出来るだろって? 確かにそうですが……アルジは何かを身に纏った状態だと、本人の魔力の質も若干変わってしまう為にシドは分からなかった様です。
なら何故アルファは勿論ではあるが、魔力感知などが1番苦手なデルタでもアルジと分かったかですか? それは単に科学的根拠では理解できないもので……種類は沢山あります。
また過去にデルタはアルジの少し程度の本気の圧を受けている為に分かったという事もありますが、今回当てはまるとすれば……愛の力という物が加わったのではないでしょうか。
(にしてもその曲を即完コピ出来るとか……聞いてる限りあの時奏でられていた曲調とほぼ差異はないし……)
それはどちらとも本人が弾いているので当然といえば当然ですが……
(ていうか目の前で聞いてるガンマ達も凄い感極まってるし……僕も久々に演奏してみようかな……あっ、でも楽器が無い)
今まで陰の実力者コレクションを集めていて全く気付かなかった! 前世では親からの教育でピアノも習っていた。最初は無駄になるだけだと思って力を入れていなかったんだけど、いつからかピアノも弾ける僕もカッコいいと感じだし、それも陰の実力者っぽいよなと感じたから途中から物凄く努力した。
(楽器……欲しいな〜……それ用で資金を貯めないと)
真面目な顔を装いながらも頭の中では全く場違いな事を考えるシド。それもガンマが真面目な報告をしている最中でもだが、ガンマや他の『シャドウガーデン』の子達は、シドがまさか頭の中でそんな事を考えているとは知らない。
(あぁ〜……この世界でもそんなシチュエーション絶対あると思うんだよな〜……)
とシドさんはそう感じていますが、結構早い段階でその場面が来る事を……本人はまだ知りません……
side out
(あぁ〜……さっきは本当にヤバかった)
何がヤバかったかって……そんなのガンマの笑みに決まっているだろう? 確かにガンマは俺が元生きていた世界では女優顔負けのスタイルと顔つきだ。それに頭も物凄くキレるから、バラエティ番組では引っ張りだこだと思うし……
(何よりさっきの顔……姉さんやアルファは別にして凄くドキドキした……)
正直あのまま近くにいたらどうなってたか分からない……いやそれは理性を総動員して最終的にはあの場を離れるが……
(も、問題があるとするならガンマの方で……)
今も報告を俺達にしてくれているんだが……
(兄さんが気付けるかの微妙なラインで俺の方に視線を送ってニッコリと笑いかけてくるし……)
『他の子達も貴方の事が好きよ』
(……これ絶対にガンマも入っているよな)
自自惚れている考えを持っている事は理解している。正直自惚れて欲しいと思っているんだが……とにかくこの場は後回しにして、ガンマの話を聞こう。
それで報告によれば……『ディアボロス教団』も『シャドウガーデン』を認知している様だ。前から自分達を対象に狙われ続けたら、流石に相手もどこの組織が攻撃を仕掛けてくるのかは調べるだろう。後は人員がどれくらいいるかも……
で、『ディアボロス教団』が次に何をしてきたかだが……自分達が犯してきた犯罪行為を全て『シャドウガーデン』になすりつけるという事で……
(ふざけた真似しやがって……計画した奴はどんな手段を使おうが地獄送りにしてやる)
と、そう感情的になってしまった為に俺の身体から魔力が溢れてしまった。これも俺の悪い癖だが……どうにも治すのが難しくて。それで魔力を浴びてしまった子達は身体をこわばらせてしまうものの、それも一瞬だけで、数秒経てば元の表情に戻っていた。
(ホント……怖がらせる様な事してごめんなさい……)
ふと兄さんはどうしただろうと思って顔を向けたら……こっちを驚く様な顔して見ていたよ。まぁ今まで全く関係ない事を考えてて、急に隣から高い魔力が一瞬でもぶつかってきたらそうなるわな。
(特にこれといって兄さんに今謝る事は無いわけだが)
逆に目の前の子達が俺を恐ろしく感じてしまったら、そっちの方が逆に申し訳なく感じる。そういえばここにはチョコを買いに来る事が目的だったから、後で買ってから今回の迷惑料として贈ろうと思う。ただ買って贈るだけじゃあ芸がないと思うから、幾らか他の物も買って作ろう。そして出来上がった物を贈ろうか。
にしても……
(何でガンマは微笑みながら鼻血を出しているんだ……?)
もしかしたら俺の魔力がガンマの身体に負担をかけて……いや、周りの子達は一瞬身体とか強張ってたっぽいけど特に問題はなさそうだ。しかもガンマは魔力量が『七陰』の中でもトップクラスに多い。だから他の子達が何事も無ければガンマにも影響はない筈……なんだがな。
因みにガンマさんに当時の事を伺ったのですが……
「あぁ……アルジ様から溢れ出るあの魔力……精錬されている様でどこか暴力的な圧が混じった物を浴びてしまって……はしたないと思いますけど、とても興奮してしまったのです♡」
と、この様に述べていたといいます……
(まぁ後でガンマにも体調を崩してないかどうか聞くとして、『シャドウガーデン』に罪をなすり付けるやり方として今王都では辻斬りの被害が発生している様だ)
被害に遭っているのは騎士団に所属している人で、被害に遭った人達の近くにその張り紙がされていたのだとか……
「辻斬り……あぁ……」
「っ! シャドウ様は何かご存知なのですか⁉︎」
「少し心当たりがある程度だが、そこは僕が探ってみよう」
(ってなんか会話が成立しているけど……どうせ兄さんの事だ。場違いな事を考えているに違いない)
辻斬りというワードに反応していたから、兄さんの身の回りで最近起こったとしたら……
(あぁ……間違いない。多分辻斬りの事をアレクシアさんと誤解してるわ)
全く……どこまでお花畑なんだ兄さんの脳内は……これも今に始まった事では無いにしろ、もう少し彼女達になすり付けられた冤罪について考えて欲しいのだが。
「分かりました。でしたらそちらはシャドウ様にお任せ致します。それと今すぐ運用出来る資金面がこちらに。10億ゼニー程用意しております」
「じゅ、じゅうおっ……」
「シャドウ様? どうかなさいましたか?」
「い、いや……流石はガンマだと思っていたところだ」
「俺も兄さんと同じ思いだ。この2年間で『シャドウガーデン』を裏から支えれる程の財力を賄えるのでも凄いのに、今すぐ運用可能な資金を提供できるとか……俺だったらそこまで出来ないな。この結果もガンマや皆の頑張りのお陰だな」
「なんと……シャドウ様、それにアスタロト様からその様なお褒めの言葉を頂けるなんて。このガンマ……光栄に思います」
ガンマは目を伏せて首を垂れる。2人からかけられた労いの言葉を嬉しく思いながら、頭の中では自分達の名を語る不届者をどう罰するかを考えていた。
そしてシドは玉座から立ち上がり歩き出す。そろそろ門限の兼ね合いもある為と、友人2人をこれ以上待たせるのも忍びない為……というのもあるが、ただここでの要件が終わったから立ち去るのみと考えてだろう。
一方のアルジは、情報提供を受けたのだから何かお返しをしなければと考える。だから何かプレゼントを贈ろうと考えながらシドの後ろを着いて行く。
「シャドウ様、アスタロト様……少々お待ち頂けませんか?」
そこにガンマが待ったをかけて誰かを呼び出す。出てきたのはさっきアルジ達を案内した女性で……
「この子の名前は『ニュー』と言います。最近『ナンバーズ』に加入したばかりですが、その腕はアルファ様もお認めになる程です。どうか一緒にお連れ下さい」
「にゅ、ニューです……シャドウ様とアスタロト様のお力になれる様、精一杯頑張ります‼︎」
「うむ、用がある時はまた呼ぶ」
「ニュー、ね。知っているかもしれないが改めて自己紹介させてもらうよ。俺の名前はアスタロト。本名はアルジ・カゲノーだ。人目が多い所では本名で呼んでくれると嬉しい」
「っ⁉︎ わ、私の様な者にも真名を預けて下さるのですか⁉︎」
「これは昔からの事だし、公に広める事も無いと思うから。まぁ、無理に呼んでくれとは言わないけど……」
「い、いえっ! 是非そう呼ばせて下さい‼︎」
「(なんか凄く嬉しそうな顔しているな……何でか分からないけど、取り敢えず)あぁ、よろしくな」
「あっ、ところでさガンマ」
「はい、なんでしょうかシャドウ様?」
「実はここに来たのってチョコを買いに来たから何だけど、出来れば安いチョコを3つ欲しいなって……」
「まぁ! チョコレートを買いに来て下さるなんて……でしたら『ミツゴシ』の最高級チョコレートを10割引で提供させて頂きます‼︎」
「えっ⁉︎ 10割引ってタダじゃん⁉︎ 良いの?」
「勿論です! シャドウ様ならば喜んで‼︎」
「そっか〜! それならありがたく貰うよ‼︎ はっはっはっはっ……」
「うふふふふ……」
そんな会話が繰り広げられている中、10億の資金の1枚に忍び寄る影が一筋……その影はゆっくりそして丁寧に1枚の金貨を掴み……
「あっ、こんな所に蚊が」バシンッ‼︎
「ヘブゥッ⁉︎」
「あ、アスタロト様⁉︎」
アルジは金貨を盗ろうとしたシドの頭をどこからか出したハリセンで思い切り叩く。それによって金貨に伸びていた影は一瞬でシドの下に戻る。
「あぁ、驚かせてごめん。兄さんの頭に蚊がいたから反射的にな。兄さんも悪いな。強く叩き過ぎたかもしれないが大丈夫か〜」
アルジは少し悪かったという顔をしながらシドに近付き……
「お〜い兄さ〜ん……さっき何やろうとしたぁ〜?」
「えっ……えぇっとぉ〜……」
「おいおい兄さん……まさか無意識のうちに〜……とか、そんな言い訳にもならない様な事を言い出すんじゃあないよなぁ〜? 言っておくが……嘘をついたら、自然治癒でしか治らない傷を負わせて全治1ヶ月は覚悟してもらう事になるが……」
「ひぃっ⁉︎ ……ご、ごめんなさい。ついお金の魔力に引き寄せられてやってしまいました……」
「……はぁ〜。兄さんの言わんとする事も分からなくは無いが、今度見つけたら本当に全治1ヶ月は覚悟しとけよ?」
「う、うん……分かった」
「よし……まぁ叩いた所もタンコブにはなってない様だし、俺はガンマに少し相談したい事があるから兄さんは先に行ってヒョロ達と帰っててよ」
「えっ……あぁ、うん。分かった。じゃ、じゃあガンマ、チョコレートの方よろしくね」
「か、畏まりました。では……」
ガンマは他の従業員を呼んで兄さんを案内させる。そして兄さんが建物から去った後改めて俺はガンマと向き合う。
「そ、それでアスタロト様……相談というのは?」
「あぁ、実は俺もチョコレートが欲しいんだが」
「まぁ! そうでしたか! でしたら何個ご入用ですか? アスタロト様もシャドウ様と同じく10割引でご案内を……」
「いや、それは俺の流儀に反する。例え身内といえども、親しき中にも礼儀あり、だ」
「そ、それも『陰の叡智』から来る言葉ですか?」
「まぁそう思ってもらっても構わない。それでここに書かれてある材料を用意して欲しい」
「は、拝見させて頂きます……っ⁉︎ こ、これだけの量を一体何にっ⁉︎」
「ん? あぁ……それは秘密だ。あ、後同じ材料でこれだけ分は持ち帰りたいんだが、お願い出来るかな?」
「か、畏まりました……アスタロト様も何かお考えの様ですし、詮索は致しません。そして今日持ち帰る予定の物はすぐ準備させて頂きます」
そしてガンマは近くにいた子を呼んで材料を準備する様に指示を出した。
「それじゃあ俺の用も済んだから、また何かあったら知らせるよ」
「分かりました。あの……くれぐれもお一人で無茶はなさらないで下さい」
「……それはアルファからの伝言かな?」
「確かにアルファ様も仰っていたのですが……私もそう思っております。貴方様が誰よりも強い事は承知しているのですが……それでも時折そう思ってしまって」
「そう……か。でも、そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとうガンマ」
「っ⁉︎/// は、はい……」
「じゃあ今度こそ行くよ。また来るから」
「はい、私ガンマも、アスタロト様がまたいらして下さる事を心待ちしています。と……その前にアスタロト様」
部屋から出ようとしたらガンマが俺に近付いてくる。そして……
「今夜の夜伽……結局いかがなさいますか? もし承諾頂ける様でしたら、このガンマ……アルジ様の日頃の疲れなどを癒して差し上げたいと思っています♡」
「っ⁉︎/// い、いや……それは……うん、遠慮しとくよ。そ、それに最近姉さんが物凄く寂しがって、俺が部屋にいないと分かるや凄く拗ねてしまう様になって……」
「あ、あぁ……そうでしたか。でしたら、また貴方様のご都合がつく日を心待ちしております♡」
「(いや……そんな事された日には恥ずか死ぬ思いでゆっくり眠れそうにないんだが……)あ、アハハ……ま、まぁ考えておくよ」
そして俺は建物から出る。にしてもあそこまでガンマが積極的に誘ってくるなんて……
(でも……そうしてくれるまでに俺の事を想っているという事で良いんだよな?)
俺はそこまで鈍感では無いと自分で思っている。自分が自惚れていなければ、ガンマの俺に対する反応は好意を持っていると、そう感じることが出来る。
(それに夜伽に誘うという事は……俺に想いを伝える準備も出来ていると……そう考えて良いのかもしれない)
ならば俺も……それに対しての覚悟は決めておいた方が良いだろう。そして俺の過去を話す。それで彼女が俺の事をどう受け止めてくれるか分からないが、そんな俺でも受け入れてくれるのなら……俺はアルファと同じくらい彼女の事も愛そうと思う。
そんな事を考えながら建物から出て数歩歩いていた時、後ろからニューに呼び止められた。
「す、すみません……帰るところを呼び止めてしまって……」
「いや、まだ少し余裕があるし、最悪門限を破ったとしても何食わぬ顔で部屋にいれば大丈夫だろうから。それで何か用があって呼び止めたんだと思うけど」
「は、はい……その……私ども『ナンバーズ』も先日の王都襲撃に際してアスタロト様の戦闘記録を拝見させて頂きまして」
「せ、戦闘記録……? へ、へぇ〜……(えっ? いつのまにそんなもの撮られてたの? 俺全く聞いてないんだけど?)」
「もしかして、ご存知なかったのですか?」
「あぁ……全然知らなかった。まさかあの戦闘を記録されているとは思わなかったから……まぁその記録については『シャドウガーデン』だけで運用される物だと思うから良いけど、(そもそもあれを真似できる人いないと思うし……)それでその記録を見て何か思ったとか?」
「はい。見ていた時にアスタロト様が紅い鎧を身に纏っていらした時の事で……記録の最後にこんな事を仰っていたと思います。ハイニューがんだむ? は伊達じゃない、と」
「あぁ〜……確かに言ったな〜……」
「それで……一緒に見ていた『ナンバーズ』からはその……あ、アスタロト様から私に対して一種の告白ではないか、と盛り上がってしまって……」
「……えっ? どうしてそう……(待てよ? Hi-νガンダム……っ⁉︎ まさかνのところでか⁉︎)」
「その! 戦闘中での最中ではありますが、私の名前を呼ばれた事はとても嬉しく思いました‼︎ でもあの言葉は……アスタロト様が纏っていた鎧の名称だろうなと……それの確認をしたくて呼び止めてしまったと言いますか……」
「……確かにあの時纏っていた鎧は、ニューが思っていた様に鎧の名称だ。でも……その時言った俺の言葉が君達を誤解させてしまったとは思ってなくて」
「い、いえ! こちら側が勝手に盛り上がってしまった事なので……アスタロト様に対してご迷惑をおかけしてしまった様な……」
「迷惑なんかじゃあないさ。だからこれ以上は謝る必要なんてないし、気に病むこともない」
「そ、そう……ですか。分かりました。それと外まではアスタロト様を最後までエスコートさせて頂きます」
「エスコート……ね。本来は男が女性に対して使う様な気もするが……」
「いえ、ここは『ミツゴシ』ですから、私達『シャドウガーデン』の創始者の1人であるアスタロト様にしてもここではお客様という立場です。ですからその使い方も間違いないと思います」
「あぁ〜……なるほどな。それも確かにそうだよな。なら最後までエスコートしてくれるとありがたい」
「畏まりました。ではアスタロト様、こちらへどうぞ」
そして俺はニューの案内で店の外までエスコートされる。勿論店を出る前にガンマに頼んでおいた物の代金も支払い、今日持ち帰る分の物を受け取って帰路に着いた。まぁここまでは普通の日常だったんだが……
(まさかこの帰り道で遭遇する事になろうなんてな……)
その遭遇した相手は、今巷で騒がれている辻斬りどもだ。そいつらは今日も路地裏で活動していたらしく、1人を複数人で囲っていた。そして囲われていた人物はアレクシアさんで、この前姉であるアイリスさんが創設した『紅の騎士団』に加入したと鍛錬の時に聞いたな。
普段からの鍛錬はミリアさんに任せていて、そこに偶に俺が参加するという形式にしている。本来なら鍛錬の日は毎回出たいところだが……いかんせん学生生活以外でもやる事があるし、彼女からも今のままで良いと言われているから、その言葉に甘えてしまっている。
それで今の状況だが、アレクシアさんは『紅の騎士団』の仕事で路地裏を重点的に見回っていた時に辻斬り連中と出会した……って所だろうな。彼女の動きを見ていると、これまでの鍛錬の成果が出ているのだろうか上手く立ち回りが出来ていた。
そう見ていたのだが……アレクシアさんの左腕から血が流れていた。考察するに……本来は1対1の状況だったのだろう。現に複数人いる奴の1人かボロボロの状態だし。そこに後から来た奴らが加勢して、1対複数となり、疲弊した所を斬られてしまったと……
確かにこの場合、どちらが正義か悪かも関係ないし、戦場においては今の様な場面を卑怯だなんて言われる事もない。通常ではそれで終わりなのだが……
(だからって俺の友人が傷付いていい理由になる訳ないよなぁ〜? ともかくとして……目の前の奴らは復讐対象だ)
俺がそう結論付けたと同時に、魔力の圧が一瞬だけ身体から溢れ出て奴らの方にまで伝播する。するとアレクシアさんを攻撃していた者達がそれを察知してこっちに振り向いた。その為アレクシアさんに対する攻撃も止む。
「あ、アルジくん⁉︎ どうしてここに⁉︎」
「こんばんはアレクシアさん。少し買い物で『ミツゴシ』に用があってね。その帰り道に剣のぶつかる音が聞こえていたから、それで様子を見に来たって所かな。で……
テメェらは一体何やってんのかな〜?」
side アレクシア
私はこの前姉様が立ち上げた『紅の騎士団』に所属して、今世間を騒がせている辻斬りについて調べていた。その辻斬り達は犯行現場に自分達の物と見られる犯行文を残していく。
(組織の名前は『シャドウガーデン』。でも妙に引っ掛かるわ)
この前私を助けてくれたシャドウも確かその組織に属していたはず。でも彼の行動……戦う場面しか見ていないけれども、そんな行動を起こす人物には見えなかった。
(ともかく今は調べてみるしかないわね)
そして巡回をしていた矢先、その組織の者と思われる人員を発見した。ソイツは丁度人を襲っている様で、私はその場に介入した。襲われていた人は無事に逃げてくれたけど、その代わりに私に剣を向けられたわ。
(でも、アルジくんやミリアさんの剣筋に比べればまだまだね)
ミリアさんから剣を教わって、アルジくんが偶にやってきては今私がどの程度実力があるか見てくれる。あの時の実力と比べると、剣術を経験している者に数本の毛が生えた程度だけれども、目の前の敵は今の私でも倒せると考えていたわ。
でも油断してしまった。辻斬りは1人ではなく数人で行動していて、後から4人同じ格好をした奴らが加勢してくる。それで防御だけでいっぱいになってしまって、不意に左腕を斬られてしまった。動かす事に問題はないけれど、予想よりも出血量が多い。
(このままじゃやられるわね……どうにかしてここから逃げないと……)
私は壁に追い込まれる形で、相手はジリジリと詰め寄ってくる。そして1人が私に対して剣を振るったその時、莫大な圧が私と目の前の辻斬り達を襲った。
その圧を発していた人はアルジくんで、彼は買い物帰りの途中剣がぶつかり合う音が聞こえたからここに来たと言う。その証拠に右手に包みを持っていたし……
でもそんな事より私が思った事は……
(一体どんな生活をしたらこんな圧を発する事が出来るの……?)
途方も無い彼との差……ゼノンと対峙していた時にも思ったけど、私と同じ世代の筈なのに、どんな地獄を生き抜けばこれだけの圧を普通にかける事が出来るのか。そう考えてしまうけど……
(私は姉様と……そしてアルジくんの剣に憧れた)
姉様の力強い剣と、アルジくんの流れる様な剣。その両方とも、元を辿れば基本に倣ったものの筈。だから私は愚直に振り続ける事にした。昔姉様に好きと言われた剣を。そして……
(アルジくんに綺麗で逞しいと言われたこの剣を……私は捨てない)
そう思いつつも目の前の奴らの警戒は解かないでいた。その筈なのに、いつの間にか目の前にはアルジくんがいて……
「テメェらが誰かの操り人形だって事は普通に分かる。どんな仕打ちを受けて今の自分になってしまったのかもなんとなくだが想像はできる……が、だからといって俺の友人を傷つけたんだ。今から自分達がどうなるか……覚悟は出来ているよなっ‼︎」
「「「っ⁉︎」」」
アルジくんから発せられる更に強い圧が、辻斬り達を襲う。それが彼の背中越しからでも分かるほどで、でも……
(私から見たら、怖いじゃなくて……とても頼もしく見える)
アレクシアはそう思いながらアルジの背中を見ていた。
side out
「(予想よりも出血が酷そうだな)アレクシアさん、怪我している左腕を俺の左側に出すことは出来るか?」
「えっ? い、一体何を……」
「君の腕を治療する」
「っ⁉︎ い、今の状況分かってる⁉︎ 助けに来てくれた事はありがたいけど、幾らアルジくんでもこの複数人を相手にしながら私の治療をするなんて……」
「なに、これくらい朝飯前だよ。それに……いるんだろう? 出て来たらどうだ?」
アルジがそう呼びかけると、建物の上から何者かが飛び降りてきた。その人物は……
「しゃ、シャドウ……」
「よぉ。また会ったな、黒衣を纏う人」
「……あの時の強者か。別の場所であったのなら競いたい所だが」
「へぇ〜……そう評価してくれるんだ。まぁそれは置いといて……コイツらってアンタの仲間じゃあないんだろ? なにしろやり口が雑だし」
「全くだ。そして我ら『シャドウガーデン』の名を語ったのだ……容赦はせん」
その言葉を皮切りに、アレクシアを襲っていた5人はシャドウを次なる標的に定める。アレクシアの攻撃を受けていた1人が殺意の籠った目を宿しながらシャドウに斬りかかる。
「遅いな」
しかしその言葉が聞こえたと思うと、斬りかかった1人は無惨にも一刀両断されてしまい、地に倒れ伏した。そんな場面が目の前で繰り広げられた中、アルジは構う事なくアレクシアの腕を応急処置程度で治療した。
「す、凄い……どうやってこんな事を……」
「魔力の使い方を少し工夫すれば誰だって出来るさ。今は応急処置で済ませてるから念の為ちゃんとした所に行った方が良いけど、応急処置ぐらいだったら少し使い方をマスターすればアレクシアさんも出来る様になるから。それよりも今は……」
アルジが残りの4人組に目を向けたと同時に、その4人は建物の屋上へと飛び上がり、2人1組で別方向へと逃げる。
「そこの女……お前はこれ以上こちら側に来ない方がいい」
「えっ⁉︎ それってどういう……」
こととアレクシアが言い切るよりもシャドウは空へと舞い上がって逃げた1組を追って行く。
「さて、それじゃあ俺はもう片方を追うとするか」
「待って!」
「ん? どうしたアレクシアさん?」
「その……気を付けて、ね?」
「っ! あぁ、ありがとう!」
アルジはそう言ってもう片方の襲撃者を追って行く。
(また……助けられたわ。でも私も……何か彼の助けになれる事がある筈)
アルジが去った後1人、アレクシアはそう思っていた。
襲撃者を追うアルジは、とある建物の屋上に止まった。そこで襲撃者が急に待ち伏せをして攻撃を仕掛けたからである。それは並のものでは反応出来ない速度であり、『シャドウガーデン』を騙る者とはいえそれなりの実力があるという事だろうか。だが……
「いや遅すぎるから」
「っ⁉︎」
アルジは普通にダメ出しを言いながら襲いくる刃を片手で白羽どりする。それに対して相手は驚く。
「んでもう1人は……そこか」
空いている方の手で先程コッソリと拾っていた小石を親指で弾く。そこには誰もいないのだが、小石が建物と建物の間を通り過ぎようとした時、建物との間にある路地裏から丁度もう1人が飛び出してきて……小石が眉間にヒットした。その衝撃は凄まじい物で、飛び出してきた襲撃者は自分が何をされたか分からないまま意識を失う。
そして飛び上がったまま意識を失った為、後は身体が下へと急降下し、路地裏にあった木箱や木樽を壊して地面に身体を打ち付ける。見た所数ヶ所骨折はしているが、命に別状はない様だ。
「それで後はお前だけど……勿論覚悟は出来ているよな」バキンッ‼︎
「っ⁉︎」
アルジは白羽どりしていた剣に力を込めて、それを簡単に割り砕く。その光景を見た襲撃者は驚愕のあまり思考する事が出来ず、次に動こうと思った時には剣を振るっていた右手を掴まれていて……
「さぁ……貴様に対する復讐を行うとしよう」ボギッ‼︎
「ギャァァァァァッッッ……⁉︎」
自分でも出した事のない悲鳴を上げる襲撃者……その悲鳴は、自分の骨を途轍もない力で握り潰された事で生じた痛みによる物か、それともアルジから発せられる圧に呑まれての物か或いはどちらともかは……経験した者にしか分からないだろう。
ここの所忙しくてツギハギ状態ではありますが、キリのいい所でしたので今回はここまでに致します。
次回については、『紅の騎士団』に対して少しばかり触れつつ物語を進行していく予定です。
では次回をまたお楽しみに!