取り敢えず書けはしたものの……年内に間に合わせる事ができずショックです……
前編を書いてしまったので、後編も書かなければ纏まりが付かないという思いから書き上げました。中途半端に感じたら申し訳ないです……
それでは特別会後編、ご覧下さい。
ゼータに甘えた後、七影とシャドウガーデンの皆とで準備していたパーティーに参加した。そこには兄さんも参加してはいたが、いつも通りの中二病モードで回りを勘違いさせていた。まぁこれはいつもの事だから、俺としてはどうでもいいんだが。
俺はというと、周りに気を配りつつパーティを楽しんでいた。普段あまり関わりがない子たちともフレンドリーに接していく。いきなり俺に声をかけられて驚いたり戸惑ったりしている子達もいたが、最終的には皆楽しそうに会話をしてくれた。
(あぁ、これがこの子達本来の顔なんだよな)
魔力を多く持ってしまったが故に悪魔付きとなってしまい、そこをディアボロス教団に狙われてしまった挙句、危うく命を落としそうになっていた。それも奴らの実験とかに利用されて……
(あぁ……本当に嘆かわしい。彼女たちは何もしていないというのに)
「アスタロト様、どうかなさいましたか?」
そこにナンバーズの1人であるニューが近づいてきて俺にそう尋ねてきた。どうやら少し顔に出ていたみたいだな。ともかくとして、俺はニューからの質問に対しては素直にさっきまで考えていたことを口にする。
「そうですね。ここに集まった人達は……過去の背景は皆それぞれ違ってはいますけど、最終的に悪魔付きとして狙われたことは確かです。それにひどい仕打ちを受けてきた人たちもいます。アスタロト様の言う通り、悪魔付きという症状さえなければ皆今の生活とは無縁で、それぞれ幸せな生活を送っていた人もいるかもしれませんね」
「あぁ。確かに悪魔付きという症状がこの世界になかったなら、皆と出会うことも、ましてやアルファ達と出会うこともなかったかもしれない。でも悪魔付きがあるからこそ皆苦しんで、最悪死ぬ一歩手前まで行きそうになった子達もいる。本来それは教会とか国の政が何とかしないといけないはずなんだ。
それをただ対処が出来ない、気持ち悪いから見捨てる……その受け皿がディアボロス教団で、そいつらもそいつらでまるで弄ぶかの様に命を食いつぶす。俺からしたら憎くてたまらない。本当ならすぐにでも俺1人で奴らを殲滅しに行きたいが、中には自分自身の手で復讐したいって思っている子達もいるだろうから、だから俺は皆がやりやすいように動くんだ」
まぁ結果的に俺自身でも好き勝手に動いているし、それが皆の迷惑になってたら申し訳が無いんだけどと付け加えておくことを忘れない。
「ふふっ、アスタロト様らしいお言葉ですね。そのお言葉を聞いたら皆喜びますよ」
「ただ普通の事を言っているだけなんだがな」
「でもそこにはアスタロト様の思いが、意思が詰まっています。それを本気で伝えているお姿を見たからこそ、皆が嬉しく思ったりするんだと思います。現に私も、アスタロト様の思いを直に聞けて嬉しく思っているんですよ?」
「そんなものかねぇ……」
「えぇ、そんなものだと思いますよ」
笑みを浮かべながらそう言ってくるニューに対して、まっ、そんなものかと思うようにした。
「そろそろ私は別の所に行きますね。アスタロト様と少しでも話せてよかったです」
「あぁ、俺も少しの間だけと、話せて良かったって思ってる。また話し相手として付き合ってくれたら嬉しいよ」
「っ‼ はい! その時はまたお付き合いさせていただきますね‼」
そう言ってニューは、俺の元から違うグループの方へと去っていった。
(丁度飲み物も切れたし、向こうで頼んでこようかな)
そう思って飲み物を提供しているテーブルまで行って注文した。
「忙しいところ悪いんだが、メロンソーダを1つもらえるか?」
「あ、アスタロト様⁉ んんっ、畏まりました。少々お待ちください」
そう言って対応してくれたのはナンバーズのカイで、金髪で肌が白いエルフだ。他の特徴としては前髪で右目を隠していることと、彼女自身夜はお店でバーテンダーを務めていることから、格好もバーテンダーの衣装をまとっている。
彼女とはベガルタの地で出会ったのが最初だな。ベガルタ七武剣の1人であり、彼女自身ディアボロス教団の元メンバーでもあった。
だが不幸なことに悪魔付きを発症してしまい、教団からは粛清対象として追われていた。そこを石油調査に訪れていたガンマとイータが見つけて救出した。
ただカイを追って来た敵が思いのほか強敵であり、善戦したとはいえガンマとイータとでは倒しきれなかったところで偶々そっちの方に用で出ていた俺が居合わせたって感じだな。まぁその後については……追ってきた相手をぼろ雑巾のようにボコボコにしておいた。
(本来ならその場でそいつ自身の存在を消し去っても良かったんだよな……なにせ戦闘の際に傷ついてはいないといってもガンマに攻撃を当てたと聞いてたし……)
本当に何で俺はその場にもっと早くにたどり着けなかったのかと、当分の間は後悔したな。それもアルファ達に慰めてもらって以降は深く考えないようにしていたが……
それで何で相手を滅ぼさなかったのかについてだが、奴とカイ自身に因縁があると感じたからだ。彼女が右目を前髪で隠しているのも、元はと言えばそいつに手傷を追われたからで、シャドウガーデンで一時預かりになった時もそいつに対して復讐心を持っていたからな。これは彼女自身で晴らさなければならないことだと思ったからこそ、俺はその場ではボコボコの状態にとどめておいた。
ただボコボコにした後の奴の様子をコトハ経由で聞いていたんだが、滅茶苦茶怯えた様子だったらしい。特に俺の名前を聞いた瞬間が……まっ、ざまぁ見ろって感じだったな。
「あっ、アスタロト様。お疲れ様です」
俺が昔の事を思い出しながら座っていると、俺の隣にオメガが座ってきた。彼女は黒い短めの髪形に、ダークエルフ特有の褐色肌だ。だがそれ以外に特徴をあげるなら、片方青い瞳でもう片方が黄色い瞳というオッドアイということと、顔半分に白い線で何かの模様みたく刺青が彫られているということだな。
カイもベガルタ出身の軍人で、組織では教導官をしていたと話に聞いた。だが彼女も悪魔付きを発症してしまい、教団側に引き渡されそうになっていて所、イプシロンとラムダ、そして同行していたカイによって救出された。
初めて会ったときは、こういう人でも教導官って出来るものなのかって思ったし、オメガの方もまさか俺がシャドウガーデンの創設者の1人とは知らず、「なんで子供がこんなところに?」と言われたことを覚えている。
その場でその発言を聞いたイプシロンとラムダが凄く怒っていた事も勿論覚えていて、俺としては当然の感性だなと思って別に何とも思わなかったが。その場にはカイも勿論いたのだが、オメガの発言を聞いて確かにと首を傾げていたな。
カイとはその時が初対面では無かったが、カイを救出しようとしていた時彼女は朦朧としていたし、俺も黒いスーツを身に着けていたからな。オメガが俺にそう言ってきたときは私服に近かったこともあって、カイからもシャドウガーデンに保護されている子供の1人であるとみなされた様だった。まぁそれも当然な反応な訳で……
(そのあとオメガから俺の実力が気になるから試しに摸擬戦をしたいと言われて俺もそれに応えたよなぁ)
結果としてはオメガが俺に土下座してきたな。どうやらベガルタでは上下関係とかがしっかりとしているようで、カイも俺の実力を実際に目にした為かさっきの発言をお詫びしてきたな。俺としては全然気にしていなかったんだか……
「アスタロト様は何を考えていらっしゃるんですか?」
「あぁ、カイとオメガに出会った頃の事を思い出していてね」
「ブッ⁉ ゲッホゲッホ……」
「おいおい大丈夫か?」
「ご、ご心配には及びません……それにしてもアスタロト様もこんな楽しい時に思い出していることが私達と初対面の頃なんて……正直時間を巻き戻せるなら、アスタロト様に生意気な事を言ってしまった私をぶん殴ってやりたいです……」
「別にあの時のオメガの反応は可笑しなことでもないと思うけどな……」
「アスタロト様、こちら先程頼まれていたメロンソーダになります。ん? オメガもいたのか」
「ついさっきね。それにしても聞いてくれよカイ。アスタロト様、クリスマス・イブの楽しい時に私達と出会った頃のことを思い出していたんだよ?」
「なっ⁉ そ、その節は大変失礼な振る舞いをしてしまって……」
「いやいや別に俺は気にしてないって。それよりもそんなに引きずられてた事を知ってしまって逆に傷つくというか、俺の方が気にするっていうか……」
「で、でしたら私達ももうあまり引きずらないようにします‼ そうだよな、オメガ‼」
「あ、あぁ! うん! 私もあまり引きずらないように……というよりもう引きずりませんので‼」
「そ、そうか。まぁそれなら良かったか?」
「最後の疑問形は何ですか⁉ まさかまだ私達が知らぬ間にアスタロト様に失礼な事を……」
とまぁ少しの間騒がしくなってしまったが、今夜はイブでパーティーだし、たまにはこう騒がしくしても問題はないよな。
そんなこんなでパーティーが中盤に差し掛かったところで俺はシャドウガーデンの屋敷を後にしていた。本当は最後まで一緒に過ごして痛かったが、今日はとある人と約束しているために自分が借りている寮まで帰っていたのだ。それで約束をしていた人物というのが……
「お、おかえりなさいアルジ! ご飯にする? それともお風呂が先かしら? それとも……わ、私を……その……召し上がれ?」
(ちょ⁉ 何言ってんだよ姉さん⁉ マジで自分で何を言っているのか分かって言っているのか⁉)
と、まさか帰ってきた時に第一声で姉さんにそう言われた。確かに姉さんは普段から俺に対して何かとアプローチしてくることが多い。現にリンドブルムの一件で少しの間姉さんと離れた期間があったが、それも数日ぐらいでしかない。だというのに姉さんはリンドブルムが終わった後の武神祭が終了したころから、これまで以上に俺にくっついてくるようになった。
(まぁ寂しい思いをさせてしまっている事は事実だし、俺も甘えられたり甘えたりするのは嬉しかったりするからな……)
取り敢えずとしては先にお風呂に入る事にするが、当然の事ながら姉さんも一緒に入浴してくる。その時は最初の頃と違って初めからタオルを身体に巻いて入ってきた。そんな時に俺の目に映ったのは……
「あっ……っ⁉︎ み、見ちゃダメっ‼︎」
俺から見えない様に姉さんは自分の左手を隠した。左手の甲から腕にかけて、何か赤い紋章が浮かび上がっていて、兄さんは姉さんが厨二病に目覚めてしまったんだよと言っていたが……
(その発言は自分を顧みてから言ってくれないかな?)
まぁ何で姉さんがそんな状況になっているのかは知っている。それは無法都市での吸血鬼と赤い月騒動がきっかけで、姉さんは兄さんが吸血鬼に攫われたと思って紅い塔と呼ばれる場所に乗り込んだんだ。
その際数百年以上前に暴走した吸血鬼、『血の女王』の名で恐れられたエリザベートが復活するタイミングに巻き込まれてしまった。姉さん自身対した怪我はなかったものの、エリザベートが復活する際に自身の血を小さな蝙蝠に吸われ、その血でエリザベートが復活した。
そしてエリザベートが覚醒を果たすと、彼女の得意とする魔力障害の攻撃によって悪魔憑きの症状が再発……そのショックで気を失ってしまったところ、アウロラが姉さんの意識に介入して勝手に契約を結ぶ。その結果姉さんとアウロラは左手にある紅い紋章で繋がりを持ったと、簡単にいったらこんな感じだ。
(まぁでも……本当に大事にならなくて良かった)
あの時は俺の事を嫌う神サイドから邪魔を受けてしまって現場に着くのが遅れてしまった。そしてその場にいた姉さんやベータ、664,665,666番事ローズ先輩に少なからず怪我はあったといえど、そんな場面を見た俺は……自分が情けなく感じた。自分に誰かを守れるだけの力があるにも関わらず……大切な彼女達を守れていなかったと思って……
その後の事は、兄さんに姉さん達の守りを任せて元凶を葬り去る為に動いた。エリザベートさんは、今回どちらかといえば今回の黒幕に利用されてしまっていたからな。だからさっさとエリザベートさんをそいつらの手から解放して、そこから先は自分の私怨だが……そいつを未来永劫、輪廻転生を許さず、また他の神でさえ手出し出来ないほどに魂を滅ぼし尽くした。
まぁそんな事もあり、姉さんはあれ以来自分の左手の事を気にしている。いつもは包帯とかを巻いて隠しているけれど、入浴の時とかはそうもいかずで……
(その程度で俺が気味悪がるとか絶対に無いんだけどな?)
という事で俺は未だ隠し続ける姉さんの左手を無理やり取った。
「っ⁉︎ あ、アルジっ⁉︎」
「この左手の事を姉さんは……多分恥ずかしいって思っているんだろうけど、俺は全然気にしないよ。あの時もそう言ったと思うけどさ」
「アルジ……」
「だから……俺と2人きりになっている時とか隠さなくて良いから。まぁ、姉さんがどうしても見られたくないって言うなら、俺も出来る限り見ない様にするけどさ」
「っ‼︎ ごめんねアルジ。アルジの事を私が守れるくらい強くならないとって思っているのに……いつも助けられてばかりで」
「そう思ってくれる事は……俺も嬉しいよ。ありがとう姉さん」
「っ‼︎ うん‼︎」
そこから姉さんはいつものペースに戻ったのか、俺の事を揶揄ったり頭を優しく撫でたりしてきた。揶揄われるのは相変わらず慣れないが……それも姉さんと俺との関わりの一部になっているからな。無理矢理引き剥がそうとかは最近思わなくなった。
それで入浴が終わった後は、姉さんが作ってくれた料理を食べて、歯を磨いた後ベットに横になる。勿論姉さんも俺と一緒のベットに入ってくる事は……最早恒例と化しているな。
「ねぇアルジ。お姉ちゃん頑張るから。頑張って今よりももっと強くなって……いつか貴方の事を守れるくらいになってみせるわ」
「うん。まぁ俺も守られるだけなのは性に合わないからさ……それくらい姉さんが強くなっても俺は俺のままでいるよ」
「そう……そうよね。アルジはそういう子だもの。私の大事な家族の1人で、そして最も愛しい子……」
そう言いながらいつもの様に俺を抱きしめてくる姉さん。因みに俺の頭の位置はいつもの定位置にあって、頬を柔らかい弾力と温かさが包み込んでくる。
(それに……姉さんから微かに香る匂いも……落ち着くな)
「ふふふっ、眠くなった? 今日も外で沢山動いてきたんだろうし疲れているでしょう? だから今夜はお姉ちゃんに甘えて、ゆっくり休んでね♡」
「うん……それじゃあ……おやすみなさぃ」
「うん、おやすみアルジ」
意識が完全に途切れる前に、後頭部を優しく撫でられながら俺は眠った。
とまぁ昨日までの間にそんな事があって前編の冒頭部分に戻るんだが……いつの間にか姉さんが下着姿になって……っ⁉︎
「ふふっ♡ おはようアルジ。よく眠れた?」
「ね、眠れたっちゃ眠れたけど……姉さんはどうして下着姿に……?」
「これ? そうね……どうしてだと思う?」
「っ⁉︎///へ、部屋の中は外よりも暖かいとはいえ寒いんだから! はやく服を着てくれ‼︎」
「もう……アルジったら恥ずかしがり屋さんなんだから♡」
そんなやりとりをしつつも、今日も今日とでシャドウガーデンの屋敷でクリスマス本番のパーティーがあるから、姉さんにはまた夜遅くなる事を伝えて外出した。
姉さんは寂しそうにするが、それでも俺の用事を優先してくれた。正直姉さんを寂しがらせることに対して申し訳なく思うが……後日埋め合わせする事を約束して部屋から出る。
屋敷に向かう途中、街のあちこちでイベントをしていた。中にはミツゴシで広めたサンタクロースの格好になった人もチラホラいて……
「こんな所で会うなんて奇遇だね、アルジ」
そう呼びかけられたからそっちの方向に向くと、武神祭以降何かとエンカウント率……というか、俺の借りている寮の部屋に訪れる機会が最近多くなりつつあるベアトリクスさんがいた。
(にしても何でそんな格好に?)
「この格好か? 先程アイリス王女と真のサンタを決めるイベントに参加してな。その帰りだ」
「えっ? イベント終わった後もその格好のままで……?」
「あぁ。サンタさんというのはクリスマス中は1日中この格好になる事が風習だと聞いたが……」
「(いや……間違ってはいないと思うけど……どう言えばいいやら……)と、所で今も少し雪が降るくらいには冷え込んでいるのに……寒くないですか?」
「ん? あぁ、確かに多少の寒さは感じるが、これも修行の一環だと思っているな」
「……正直見ているこっちが寒くなりそうなんで、これ着てください」
身に付けていたコートを脱いでベアトリクスさんに着せる。これで多少なりとも寒さは和らぐ筈だが……
「こ、これは……確かにありがたい事だが、それだと君が逆に凍えてしまう」
ベアトリクスさんが心配そうにこちらを見てくるが……
「あぁ、それなら……」
俺は一般人には見えない速度で四次元空間を出現させ、そこから赤いコートを取り出して素早く羽織る。
「……何やら虚空からコートを出した様に見えたが……手品の一種だろうか?」
「まぁそんな物だと思って下さい」
「そうか……私も鍛錬すればさっきの様に出来るだろうか?」
「あぁ……まぁ……出来ない事はないんじゃあないですか?」
「っ! そうか! ならば今日の鍛錬から早速取り入れよう。それにしても君は本当に多彩なんだな。君は」
と、ベアトリクスさんは俺がさっきやった事を本気で出来る様に日々の鍛錬に取り入れたそうだ。
(にしてもあれだけしか見せてないのにどうやって再現する気なんだろう?)
途中でベアトリクスさんと別れて、シャドウガーデンの屋敷に到着した。それで俺を出迎えてくれたのは、いつもミツゴシで頑張ってくれている構成員の子達と……
「おはようございますアルジ様。朝早くにお越し頂き誠にありがとうございます」
ガンマが優雅にお辞儀しながら口上を述べる。述べ終えた後は、俺に笑顔を向けながら近付いてきて、そのまま俺の右手を取り……
「本日のパーティーは夜からですけど、アルジ様の為に朝からささやかながらですがお食事を用意しております。どうぞこちらへ」
ガンマに手を引かれて昨日のパーティー会場とは違う部屋に案内された。そこには2、3人くらいが囲えるくらいの大きさのテーブルが用意されていて、椅子も2つ用意されていた。それも隣り合わせで……
「ささっ、こちらにお掛けになって下さい」
ガンマが椅子を1つ引いてそこに座る様に促す。俺としては別に断る理由がないから指示通り座って、俺が座ったのを確認し終えたガンマは俺の隣の椅子へと座った。そしてガンマが手を叩いて合図をすると、俺たちが入ってきた別のドアからカートに乗せられて食べ物が運ばれてきた。
最初は前菜であろう小鉢が2つ運ばれてきた。俺もあまり前菜のレシピとか名称は詳しくはないが、一方はキノコが使われていて、もう一方は……漂ってくる香りから察するに魚介系のスープだろうか。
「今日も外は寒かったと思いますから、まず体を温めたほうがよろしいかと思いましてご用意しました。またもう1つの小鉢にも今が旬と言われているキノコを使っております」
「なるほど。それじゃあまずはこの魚介の出汁が香るスープから頂くとしようか」
「はい、お召し上がりください!」
いただきますと挨拶をしてから一口スープを含んだ。
(あぁ……これは美味いな。少し冷えてた身体がすぐに温まる)
それにこの魚介の出汁が甘口をベースに作られていて、そこに少ししょっぱい風味が感じられるがそれもまた美味さを引き立たせるものになっている。これは正直毎日でも飲みたいな。
次にキノコをふんだんに使われた料理だが、これもキノコの触感と味付けとして使っているんだろうこれは……マスタードだろうか? まぁそれも少量だがキノコの触感と相まって美味しい。
それからも次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打ちながらガンマとのひと時を楽しんだ。
「あぁ、どれもおいしい1品だった。用意してくれてありがとうな、ガンマ」
「アルジ様からそのようなお言葉をいただけるなんて、このガンマ、うれしい限りです。あら? アルジ様、お口が少々汚れております」
「ん? そうか。どっちが汚れている?」
「私がとって差し上げますから、少し動かずにいてください」
言われた通り顔を動かさないでいると、ガンマが自らの指で汚れを取ってくれた。
「……」
それで俺の口元を拭った指を、何を思ったのかガンマはジーッと見ていた。そして……
「あ〜むっ」
「っ⁉︎」
なんと汚れを拭った指をガンマは指ごと口に含んだ。それもなんか艶かしいぞっ⁉︎
「んっ……フフッ♡どうしたんですかアルジ様? 顔が少し赤いですよ?」
(っ⁉︎ これ分かってて言ってるよなっ⁉︎)
何かを誘う様に俺を見つめながら言ってくる。その姿が妖艶で……ついつい見惚れてしまう。
「もしかして……私の仕草を見て興奮、して下さってますか? それなら嬉しいのですが……」
「っ⁉︎/// そ、そんな仕草を見せられて興奮しない奴を逆に見てみたいわ……はいそうです。今のガンマの仕草を見てしまって興奮してしまいました」
「ウフフッ♡とても素直ですね。あぁ……申し訳ありませんアルジ様……私、我慢ができなくなってしまって……」
「……奇遇だな。俺もそう思ってる」
「で、でしたら……」
「あぁ、行こうか」
俺は席から立ち上がる。同時にガンマも立ち上がって、俺の左腕に自らの身体を押し付ける様にして抱きついてきた。それに頭を俺の左肩に預ける様に……
「加減……きくかな」
「フフッ、お手柔らかにお願いしますね♡」
それから俺達はガンマの部屋に行って……昼になる前までは出てこなかった。
ガンマと2人きりになってイチャイチャした後、ふと違和感を感じた。
(そういえばベータをあまり見てないな……)
昨日のパーティーでも最初の方しかいなかった様な気がしたし……
(もしかして体調でも悪いんじゃ……)
そう思ってしまった俺は居ても立っても居られず……彼女の部屋へと向かった。それであっという間に辿り着き、ノックを3回した。
「だ、誰ですか⁉︎」
部屋から聞こえた彼女の声は何か焦っている様に感じていて、何かあったのかと心配になり、俺である事を伝えながら彼女の部屋のドアを開けて中に踏み入ったのだが……
「……えっ?」
部屋に入った俺は唖然としたんだ。何故なら……彼女の部屋が部屋着やら普段着が散乱している状況で……
「み、見ないで下さぁぁぁい‼︎」
その後彼女の悲鳴が聞こえた。そして彼女の姿が下着姿で……
(これって……俺は何を見せつけられているんだ……)
「ベータ……その……ごめん」
俺は今ベータに対して土下座をしていた。それもその筈で、女の子の部屋に許可もなく入ってしまったからだ。俺としては彼女が心配になってその一線を踏み越えてしまった訳だが……結果的に彼女の尊厳を傷つけてしまった訳だ。
「その……私もアルジ様を心配させてしまって申し訳なく思っています……」
「いや、今回は完全に俺が悪いんだ! お詫びと言ってはなんだが……この場限りではあるけど俺に出来る事なら何でもするから……」
「何でも……ですか?」
「あぁ。何でもする」
「で、でしたら……その……」
それでベータが俺にとある事を頼んで来たんだ。それは……
「あぁ……何だか夢見心地の気分です〜♡」
「俺からも見ていてベータのやる気が満ち溢れているのは分かるが、早くしないと締切に間に合わないんだろ?」
どうやら彼女は締切に追われていた様で、それで昨日のパーティーでも最初にしか顔を出せなかったんだとか。まだ時間に余裕はあるらしいが、クリスマスのパーティーにも顔を出せないのは可哀想だしな。だから彼女のお願い事を聞いたんだ。
(それが今の状況って事だよな)
簡単に言ってしまうと俺は今ベータの椅子になっている。普段彼女が座っている椅子に俺が腰掛けて、その上からベータが座る。といった構図だ。そして背後から手を回して彼女の事を抱きしめた。
それで彼女が行き詰まっていた箇所が……男女の恋愛シーンの一幕だった。ベータとしては何度書き直してもしっくり来なかったとのことで、そんなタイミングに俺が来た事で、俺がそばにいる事によって良いアイディアが浮かぶんじゃないかと思ったらしい。
(その結果が目の前の結果だが……)
彼女の手は……すこぶる動いていた。それも残像が出るくらいに……
「ふぅ……ふふっ。やっと自分の書きたい物を書けました! やっぱりアルジ様の側にいると……力を貸してもらっている様な気がして、それにとても落ち着けます」
「そうか? まぁそういってくれる事自体とても嬉しいがな。にしても最初の頃は、俺と会う度に……」
「っ⁉︎///も、もうっ! 恥ずかしいですアルジ様っ‼︎」
「ハハッ、ごめんごめん。少しイタズラしたくなっちまってさ。その代わりと言っちゃなんだが……」
「っ⁉︎/// あ、アルジしゃまっ⁉︎」
ベータの事を強く抱き締めて……エルフの特徴である長い耳を口で優しく挟んだ。
「ひゃっ/// しょ、しょんなっ⁉︎ あ、甘噛みにゃんて〜……」
そんなベータの反応が愛おしくて、甘噛みを続けていった。それから数分後……
「はぁ……はぁ……」
ベータがまるでのぼせたかのようにぐったりする。少しやり過ぎたかな?
「あ、アルジ様……」
「ん? どうしたべーっ⁉︎」
俺は不意を突かれてしまった。彼女が俺に顔だけ向けてキスをして来た。それも熱烈に……さっきチラッと見えた原稿の一幕みたいに……
「ぷはっ……ふふっ♡お返し……しちゃいました♡」
「急でビックリしたな……」
「お互い様……です。アルジ様……私……」
ベータの様子を見てみると、あぁと俺は察した。
「分かった。それじゃあ……」
「はい……優しく……お願い致しますね♡」
その一言を言われた俺は、ベータをお姫様抱っこしてベットまで運んで、その後は……
ベータとイチャイチャしていると、いつの間にかクリスマスパーティーが始まる2時間前になっていた。取り敢えず後処理を完璧に行なった後は、俺も正装に着替えて会場へと向かった。その途中で……
「あらアルジ。とても似合っているわね」
アルファが黒いドレスコードに身を包んだ姿で現れる。それで開口一番に俺は向けてそう言って来たのだが……
「それを言うならアルファはいつも以上に綺麗だよ」
「ふふっ、嬉しいわ。それで……エスコートはしてくれるのかしら?」
「そんな分かりきった事……言わなくったって分かっているだろ?」
「そうね。ただ言ってみたかっただけよ」
俺は左手を腰の位置に付けてくの字を作る。そこに彼女が腕を絡ませて来る。
「それじゃあ行こうか」
「えぇ。お願い、するわね」
その後はアルファと共に会場に着いた。着いた時には皆の手が一瞬止まっていたのだが、ベータや他の七陰達が拍手をすると他の子達も拍手をしてくれた。にしたってノリが結婚式のそれに近いと感じてしまうのだが……俺の気のせいだろうか?
それで昨日以上にパーティーは盛り上がった。皆それぞれがその場を盛り上げる為に自分の特技を披露したりしてて……
(にしても兄さんも意外と盛り上げ上手だよな……)
兄さんはピアノを演奏してその場を沸かせた。そもそも兄さんはシャドウガーデンの盟主だからってのもあるし、あまり公にも出ない事が多い。そもそも好き勝手しているのが多いからな。
てな訳で俺も負けじと俺に出来る事を披露した。それは歌なのだが……とある世界ではとある血族にしか歌えないもの。それもパート毎に別々の効果を発する物で、それを全て繋げて歌えば物凄い効果が起こるのだとか。例え歌えたとしても旋律の意味を理解しなければただの歌という……
(まぁどんな事が起きるかなんて俺は実際に見てきたし、それに“俺自身も歌って”どんな物かはこれまで体験してきたしな)
この歌は……とある世界で俺の事を大切にしてくれた人がいつも歌ってくれた歌だ。俺がその歌を聴いて褒めた辺りから……その子は毎日俺に歌ってくれた。確かに最初は歌える箇所が少なかったけど、歌える箇所もどんどん増えていった。それでその世界を旅していくうちに彼女の事を知って、それで彼女自身も自らの祖先が残してきた歌の旋律や想いを知って……
(こうして思い出すと懐かしいな……)
そう思いながら俺は……自前で顕現させたパイプオルガンを演奏しながらその歌を歌う。目を閉じながら歌っていたから、周りがどんな顔をしていたかなんて知らないが、俺が歌っている間は皆静かに聴いてくれた。
それで演奏をし終わってみんなの顔を見ると……
(え"っ……なんで皆泣いてるのっ⁉︎)
しかもこの光景に既視感を覚える……それでどう言う状態なのかも分からずアルファの元まで戻ると……
「とても感動したわ……これ以上にどう感想言えば良いのか分からないくらいに」
彼女も涙を流しながら俺の事をそう言ってくれて、俺を抱き締めてくれた。その後はパーティーもつつがなく終わってお開きとなる。俺はアルファを最初から最後までエスコートするつもりだったから、そのまま彼女の部屋まで送って行った。
それで彼女の部屋まで入ると、背後からカチャリと音が聞こえた。聞こえたと同時にアルファの着ていたドレスコードが一瞬に形を変えてスライムスーツになり……
「ねぇ……今日私と会うまでに沢山の女の子といい雰囲気になっていたわよね」
アルファが笑顔になりながら俺にそう問うてくる。まぁ彼女には嘘は通じないから正直にこれまでどう過ごしてきたかを全て嘘偽りなく言った。
「そう……」
俺の話を全部書き終えると、アルファは1人でベットの方へと向かう。そしてベットに座ると、俺に手招きしてきた。俺はそれに対して何も考えずに、手招きされるがまま彼女に近付いて行ったのだが……
(っ⁉︎ 視界が急に暗く……)
「私……我慢していたわ。貴方とこうして2人きりになれるのを……もぅ……良いわよね?」
今のこの体勢は……まぁいつも通りというやつだろう。彼女に抱き締められながら頭を撫でられている。そしてこの後のシチュエーションを予想すると……
(まぁ俺もアルファと2人きりになるのは……正直我慢していたんだろうな)
だから俺からも彼女にめいいっぱい甘えることにした。まずは彼女に対して優しく頬擦りをする。俺の顔を包み込む柔らかい触感と温かさに包まれているこの状況でそんな事をすれば、その柔らかい物も優しく揺れながらも俺を離さなかった。そして甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。
「んぁっ……も、もぅこの子ったら♡ふふふっ、貴方ももしかして……私の事を我慢してくれたのかしら?」
「そんなの……今さっきの俺の動作で分かってるくせに……」
「でも私は貴方の口から聞きたいわ」
「(そんな風に言われてしまったら断れないだろ……)お、俺も……アルファとこうして過ごすのを……我慢してた。だから……君とこうしていれる事がとても嬉しい」
「っ‼︎ えぇ! 私も……とても嬉しいわ」
「アルファ……」
「アルジ……」
そこからは互いの言葉なんていらないとでもいう様に……キスを交わした。それも何度も……相手の存在を確かめ合う様に……
後はまぁ……みんなの想像にお任せしよう。正直ここまでいったら誰だって想像にたやすいと思うしな? そんなこんなで……今年もクリスマスが終わって、後少し寝ると新年……
(こんな平和な日々が続く為に……俺ももっと頑張らないとな)
そんな決意を胸に、俺は彼女達の事を守っていく事を誓った。
あけましておめでとうございます!
と、後書きで書いてみたものの、やはりぱっとしません。2023年のうちに本当に仕上げたかった……
さて、次回は武神祭編に戻りますので、皆様楽しみに待って下さったら幸いでございます!
七陰の中でクリスマスを一緒に過ごすとしたら……
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アルファ
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ベータ
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ガンマ
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デルタ
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イプシロン
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ゼータ
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イータ