さて、今回で学園主催の武神祭は最後となります。とりあえず今は伏線っぽい伏線? まぁあるかどうかも怪しいですが、とにかく学園襲撃編を終わらせる為に次々と投稿していく予定です。
では早速ですがご覧下さい!
姉さんにディープキスをされた後なんだが……何故か俺は姉さんとの試合でも疲れなかった筈の疲れがドッと出ていた。
(正直なんでそんな事になるのか原理が全くもって分からん……)
それでドッと疲れた後は、俺の様子を見て姉さんから膝枕をしてあげると言われた。俺は姉さんも疲れているし、俺自身さっきので多少なりとも汗をかいて汗臭いからと断ったんだが……
「何言ってるの? それだったら私だってアルジ以上に汗をかいているわよ! そんな私が良いと言っているんだから素直に甘えなさい‼︎ それにさっき私を抱き抱えてここまで連れてきてくれたんだから、ね?」
(うっ……そんな上目遣いでこっちを見ないでくれ姉さん……)
まぁそんな勢いに押されてしまって……結局は姉さんに膝枕してもらった訳だ。それと同時に頭を優しく撫でつけられてしまって、疲れた事も相まって眠気が襲って来た。
「あら眠たいの? なら決勝戦までもう少し時間があるから……それまではゆっくり休んで、ね」
その言葉を最後に俺は意識を手放した。それで次に目を覚ました時は決勝戦が行われる10分前くらいで、その時にも変わらず姉さんは膝枕をしてくれてはいたんだけど、こちらの顔を覗き込む様に見ていたんだ。起きたら姉さんの綺麗な顔が目の前にあるから本当に驚いたよ……
それで膝枕から起きて決勝の準備をする為に立った時、姉さんの顔が悲しい表情になったのが少し……いや、大分心が痛かったりはしたんだけど、それでも姉さんは俺の事を見送ってくれた。その時に姉さんから物凄く強い力で抱き締められたんだが……気恥ずかしくはあったんだけど、それが自分の中でとても安らいだって感じたんだ。
(あぁ……これでローズ先輩とも本気でしあえる。ありがとう、姉さん)
そんな姉さんからのエールを受けて、俺は決勝の舞台に上がった。
side シド
(いやぁ〜……まさか姉さんがアルジにあんなに迫っていくなんて……)
姉さんが実家にいた時はもって数秒だったのに……今回の試合は姉さんにとってとても有意義で成長出来たものだったんだろうな……
(でも終盤に見せてた姉さんの顔が凄く怖かったんだけど……)
まさかアルジにあんな顔見せるなんて……僕だったら絶対に寄り付きたくない類だったよ。まぁこんな事が万が一にも姉さんの耳に入ったら……多分僕は最低でも1回死んでしまうんだろうなぁ〜……
ただあの動きが出来るってことは、姉さんもアルファ達『七陰』と同じくらいの実力になるのは時間の問題だろうし、それはアルジも思ったことだと思う。それも剣術だけで……
(さて……後はアルジとローズ生徒会長の試合なんだけど)
因みに今回学園で行われている武神祭は、決勝に勝ち進んだ2人とも王都の本戦に出場が出来る。だからアルジが王都の武神祭に進む事は決定事項なんだけど……
(あれっ? これって……もしかしたら本戦でもアルジが優勝したりして……)
これは……なんだか頂けないな! 僕は陰の実力者ライフがしたいんだ‼︎ だから今回は負けてしまったけど、一般で王都武神祭の予選をする様だから、その時に別人になりすまして本戦に出場しよーっと!
そんな事を考えながら僕はアルジとローズ生徒会長の試合が始まるのを待った。
(あっ、あんな所にアルファがいる)
side out
side ローズ
今私の目の前にはアルジくんがいました。先程の準決勝をクレアさんと戦って、あれ程苛烈な試合を制して、クレアさんが毎日自慢していた男の子。そんな彼が私の目の前に立っています。
(あぁ……今から彼とし合えるとなると……とても心が昂ってしまいますわ!)
彼と直接剣を交えるのは今回が初めてで、クレアさんとは本気の打ち合いをここ数年間で何回もしていました。お互いの勝率は五分五分で、その都度強くなっていく実感が湧いて、それを感じられた事がとても嬉しく感じました。
そして準決勝でアルジくんとクレアさんの試合を見て……クレアさんが戦いの中でも成長していっている事を間近に見て、もしかしたら私もアルジくんと刃を交える事で成長できるかもしれない。そう思ってしまいました。
(アルジくん……あなたの胸を借りるつもりで参ります‼︎)
私は試合開始の合図が鳴った瞬間、地面を蹴ってアルジくんに迫って行きました。
side out
決勝戦が始まって既に3分が経過した頃だと思う。ローズ先輩は俺が狙いをつけられない様に鋭い突きを何回も繰り出して来た。それもテンポをワザと変えた上でだ。
(ここまでの実力に上り詰める為に……どれだけ努力してきたんだろうな)
多分血反吐を吐く思いでやってきたに違いないと勝手ながら思っているんだが、でもこれは才能だけでは説明が付かないほどに、ローズ先輩の剣技は綺麗に思える。姉さんの剣技が相手を一刀両断して斬り倒す滑らかさだとすれば、ローズ先輩は素早く、手数多く突き刺す事に特化している様に見える。
ローズ先輩の得物は正に突きに特化したレイピアで、こちらの姿勢を崩す為に斬り払いを何度も織り交ぜたりはしているけれども、あくまでも本命は突きにある。
(さっき戦った姉さんは……多分ローズ先輩と模擬戦をする度に、今の俺と同じ様な状況になったんだろうな)
だからこそ姉さんはあそこまで強くなれたんだ。自分が今まで受けた事ない様な戦法に対抗する為に、勝ったり負けたりしながらローズ先輩と切磋琢磨して……
(あぁ……多分姉さんもこんな気持ちになってたんだろうな……)
これまで転生してきた世界では、確かにレイピアを扱う人達と会って勝負したりした事もあった。でも目の前のローズ先輩に至っては、それ以上にレイピアを使いこなせている様に見えて、まだまだ試合は終わる気配はないけれど、自分の心の奥底から徐々に昂っていく事がわかる。これまで戦ってきたレイピア使いの人達だとここまで昂った事はなくて、そして今俺は押し込まれている状況だ。
現に俺は様子見の段階でもあるが、今のギアではローズ先輩に斬り返す余裕がなかなか現れない。それ程にローズ先輩の、相手のテンポをずらす様な突きに隙が無い。
(まぁでも……そろそろかな)
俺も充分に身体が温まってきた頃合いだ。それと同時に俺もギアを上げてローズ先輩の突きに対してこちらも突きで応撃する。それも全て相殺する様に。
「っ⁉︎ くっ⁉︎」
ローズ先輩も姉さんと何回も模擬戦をやってきただろうが、俺が今やってる様な返し方はあまりされなくて焦った顔をして見える。それでも手を止めていないところは流石と言うところだが……
「せぇい!」
「うぅっ⁉︎」
ローズ先輩の甘く突き込まれた突きに対して押し返す様に、先輩の持つレイピアの剣先に自分の剣先を放った。それによってローズ先輩は吹き飛ばされる様に交代した。なんとか倒れる事はなかった様だが、遠くから見ても分かる様に肩で息をしていた。
「ハァ……ハァ……です」
そんな様子を見ていた時に、ローズ先輩が言葉を発した。俺はそれに対して何も答えずに様子見していると……
「何故……何故追撃して来ないのです⁉︎ 私を憐んでいるのですか⁉︎」
俯いていた顔をガバッとこちらに向けて俺に言い放ってくる。その顔は、悔しさに滲んでいた。ローズ先輩はきっと、さっき吹き飛ばした時に距離を詰めてそのまま倒す事が出来た筈だと思って言っているんだろう。
(あぁ、その通りだとも。それでこの試合を終わらせる事は出来たさ)
でもなローズ先輩……俺には俺なりの矜持がある。
確かにこれは、実践形式で正々堂々の勝負だ。先輩が思う様にあの瞬間で試合を決する事は普通に出来た……
だがな‼︎
「あなたみたいな努力を惜しまなかった人を憐れむ訳ないだろうが‼︎」
「っ⁉︎」
「俺はこれまで努力してきた人たちに対して……最後の最後まで全力を出して来た人たちに対して……俺は自分なりの本気をぶつけ返して来たつもりだ‼︎ でもローズ先輩は……今のそれが本気じゃない筈だ! まだまだ心の底から湧き上がってくる筈だ‼︎ さっき俺が試合してた姉さんがそうだった!
姉さんは……自分の身体がとっくに限界を迎えていて剣に纏わせる魔力もギリギリだった! それでも姉さんは綺麗な笑みを浮かべながら俺にぶつかってくれたんだ! それで試合の中で、今の自分の限界すらも超えて強くなっていったんだ‼︎
そんな姉さんと日々切磋琢磨して来たあなたが! あなたの限界がこんなところな訳が無いじゃあないか‼︎ だから俺は、限界を迎えていないあなたをここで退場なんてさせない! 俺は!
限界を超えたあなたと心ゆくまで試合をしたいんだっ‼︎」
side ローズ
彼の独白が私の身体を震わせる。それは声が大きいだけではない。ただ単に大きければ周りの観客達の声援もそれに含まれてしまうのですから。
私の身体を震わせたのは……独白の中に籠っていた彼の思い。それが私の疲れ果てて倒れそうになる身体を立ち上がらせてくれる。どんどん活力が漲ってくる! それに……
(温かい……)
アルジくんが私に投げかけてくれた言葉は……言おうと思えば誰でも真似して言える言葉です。それこそ過去に武神祭で優勝してきた人達も同じ様な言葉を言う時があったでしょう。
(でもそれとは違ってアルジくんの……彼の言葉には何があってもブレない芯の強さを感じます)
それが私の心を温かくさせる要因で、試合前で昂っていた時とは違う……別の昂りが心の奥底から湧き上がってきました。
(あぁ……クレアさんがあんなにも楽しそうにしていたのがようやく分かりました)
クレアさんの試合を見ていた時は、身体が見るからにボロボロに見えるのになんであんなに笑ってアルジくんと戦っていたのか……それが気がかりでした。でもアルジくんが私に向けてだけあの言葉を言ってくれたおかげで、今ハッキリと理解しました。今心の奥底から湧き上がるもの……これがその答えなのだと……
ならっ——‼︎
「なら私も……引き出させて見せます! アルジくんの……貴方の本気を‼︎」
それを聞いたアルジくんは、私が言った事に答える様に笑みを浮かべてくれました。
(アルジくん……今一度貴方の胸を借りるつもりで参ります! そして……貴方の本気に少しでも追い縋って見せます‼︎)
自分の心の昂りがどんどん溢れてくる事を感じながら、ローズはアルジに一直線に飛んだ。
side out
side 三人称視点
アルジとローズの試合は、最早学生の実力の域を超えていた。2人が織りなす高速移動はあちこちに残像を生じさせ、その残像を優に超える剣と剣がぶつかり合う音が辺りを支配する。その為に2人の試合を見ていた観客達はそれに圧倒されて静まり返っていた。
「ハァッ‼︎」
「シッ‼︎」
時折聞こえるのは両者から発せられるであろう気迫の声のみだった。ローズが先程の突きより数倍数十倍の回数と速度でアルジを突き刺そうとするのに対して、アルジはそれに応えるかのように突きで相殺したり斬り払ったりしていた。一方は彼女の限界を超えた本気を引き出し、それに応える為。もう一方は自分の限界を超えた先の景色を見たいのと、目の前にいる彼の期待に応え、そして彼の本気を間近で見たいが為に。
そんな両者の思惑がそんな事だとつゆ知らず、周りの観客はその試合の雰囲気に引き込まれる。それは後に記録として学園側、そして王都の歴史にも残されるのだ。学生、いや星の数ほどいる魔剣士の試合の中でも限りなく最高の試合であったと……。
side out
(あぁ……凄い……この試合の中で更に限界を超えていくなんて)
ローズ先輩の身体は……正直ボロボロだ。準決勝であたった姉さんの時よりボロボロで、下に履いているパンツスタイルの着衣と上の胴着には、俺が放った斬り払いを避けきれずに出来てしまった穴が空いており、当たった所は肌が赤く腫れている。それが何箇所も出来てしまえば正直高速で動くどころか普通に動くのですらキツい筈だ。
(それなのに更に速く動く俺に着いてくる……)
今の俺のギアは……後もう1段階で最高と言ったところだ。まぁリミッターをかけた状態での最高だが、でもまさかここまでくるとは思っていなかった。それ程にまで、目の前のローズ先輩は俺との戦いの中で成長していると感じる。だから……
(もっと見せて欲しい……あなたの限界のその先を!)
俺は今この瞬間が楽しくて仕方がない。だから意識してなくても俺の顔は笑っているんだろう。それもあまり見せない様な獰猛な笑みを……
アルジはそんな余計な事を思いつつも、ローズが更に限界を超えれる様に立ち回った。
side ローズ
(あぁ……あぁあぁあぁあぁっ‼︎ こんなにも楽しいっ‼︎)
戦いの中でこんなに昂り、そして楽しいと感じるなんて……アルジくん、貴方が初めてです! 貴方とこのまま……ずっと打ち合っていたい……貴方の剣をもっともっと見ていたい‼︎ それに……
(この昂りとは違う熱さを伴った気持ちはなんでしょう⁉︎ でもこの熱さ……とても心地が良いですわ‼︎)
この昂りとは違う熱い気持ちも……このまま貴方と打ち合っていたら分かるかしら⁉︎ えぇ、多分わかる筈ですわ! だって今の私はこんなにも晴れ晴れとしているんですもの‼︎ とっくのとうに身体なんて動かすのが辛いのに、魔力も切れかけて使い物にならないというのに……
「(それなのに貴方は私を倒してくれない! 止まらせてくれない‼︎ いつ決着を付けても良い筈なのに……なのに貴方は‼︎)貴方は意地悪ですわ‼︎」
口からそんな言葉が自然と出ていました。それを聞いたアルジくんは……
「意地悪だったらすみません! でも俺は、あなたの力をもっと見たいんだ。限界のその先……遥か高みに上り詰めるあなたの剣技を‼︎」
「っ‼︎ も、もぅっ! そんな嬉しい事をまた言って‼︎ そんな事言われたら私……私で止まる事なんて出来ないじゃないですかっ‼︎」
本当に……今が心の底から楽しい。クレアさんと初めて模擬戦をした日も、それから何回も打ち合った時だって楽しかったですけど……
(今回の様に違う時でも貴方と打ち合いたい! でも今は‼︎)
今この時間を精一杯楽しもう! 私がもっともっと強くなる為に……貴方の高みへと出来る限り近づける様に‼︎
だがローズは気付いていない。頭の中では思考が加速していき様々な事を思ってはアルジに自分の想いをぶつけるが如く打ち合っていた。しかしながら身体の方は、正直立っているのもやっとの状態だ。今高速移動している点でもそうだが、レイピアを振るう時点でおかしいのだ。
その為……
(あっ……足がもつれて……)
足がもつれてしまい、姿勢が崩れてしまった。そして突きを放とうとしていたレイピアの矛先もアルジの有効だから外れてしまう。逆にアルジはローズのレイピアを自らも突きを放って相殺しようとしていた為、アルジの剣先はローズの身体のど真ん中に吸い込まれそうになっていった。
(今までだったらこの状況……諦めていたかもしれません……
ですがっ‼︎)
ローズは突きの動作を瞬時にキャンセルした。その突きだけに力を込めていた分、キャンセルするのはどれほどの負担を強いるものだろう。限界を超えてなお動き続けていたローズの身体……そんな状態で勢いづいたものを無理矢理変えてしまえばどうなるかくらい簡単に予想が付くだろう。
結果、ローズのレイピアを持っていた腕がとてつもない程の痛みを伴って現れた。常人であればその場でのたうち回るほどの強烈な痛みだ。
だがローズはそれでもレイピアを手放す事なく、アルジから放たれる剣の軌道に向けて斬りあげる。
(まだ……まだまだっ! 私はもっと貴方とっ‼︎)
その想いは……無事に届いた。ローズの斬り上げたレイピアはアルジの剣とぶつかり、それによってアルジの姿勢も若干崩す事に成功した。
(やっと……やっと隙らしい隙を見せて下さいましたわね!)
それに伴ってすかさず行動を起こす。レイピアの動作を斬り上げからその勢いに乗って上から下に対象を突き刺す動きに変えた。イメージとしてはレイピアを逆手に持ち直して振り下ろす感じだ。その軌道は、アルジの胸あたりを突き立てる様なもの。ローズもアルジが生半可な攻撃には当たらないと思ったのと、これが自分の出せる最後の全力だと感じていた為、その一点を本気で穿つ思いでローズは全てを出し切った。
(っ⁉︎ アルジくんの顔が驚愕している‼︎)
ローズはアルジの表情を見た。そこには驚きの表情が見えており、ローズはそれをアルジが対処しきれないと判断して、この振り下ろしが決まるものだと考えていた。
だがそれと同時に……
(この感覚……どこかで……っ⁉︎)
そこでローズは見た。驚愕したアルジの顔がいつの間にかイタズラが成功したかの様な笑みに変わっていた事を。
(こ、これは……さっきクレアさんとアルジくんが戦っていた時の最後の場面っ⁉︎)
そこまで最速で思考して振り下ろしをキャンセルし、その場からバックステップで一歩分離れようとした時……
「悪いけど……これでチェックメイトだよ、ローズ先輩」
「っ⁉︎」
ローズはそこで漸く気付いた。自分の得物であるレイピアが弾き飛ばされていた事を。そして……
(ち、近い……ですわ)
目の前にはアルジがいた。それも後少しで完全に密着出来るくらいの距離感で……
side out
(ふぅ〜……さっきのは正直危なかったな……)
まさかあそこから斬り上げて尚且つ逆手に持ち直してから仕掛けてくるなんて……
(それも自分の身体があんな状態の中で……ほんと凄かったよ)
でも流石に無理させ過ぎたと反省している。俺がローズ先輩の振り下ろしに対して笑みを浮かべて反応した時、先輩はバックステップの容量で下がろうとしたんだ。
だけど思い出して欲しい……ローズ先輩は斬り上げた時から体勢を崩していたんだ。それも重心が物凄くズレていた状態でだ。その状態でバックステップをしようとしたらどうなると思う? そんなのは分かりきった話で、大怪我に繋がりかねない。
だから俺は先輩のレイピアを弾き飛ばし、大怪我に繋がる前に先輩が倒れない様に剣を持ってない左手で背中を支えた。そして剣の刃先をローズ先輩の首元にあてて降参を促したんだ。
(まぁ……毎度毎度なんでこんな大事な場面らしき所でこんな体勢になるか分からないんだが……)
でも見る限り後遺症になる様な怪我がなくて良かった。
(あっ……でもローズ先輩が俺の剣を斬り上げた時……若干先輩の腕から音が聞こえた様な……)
聞こえた音は……まぁ筋肉の筋が切れた様な音では無かったから、日常生活に支障はないんだろうが……
(これも俺が無理して追い込んだ結果だしな……)
そう言えば先輩から降参などの返事を聞いていない様な気がする。まぁこのままやろうと思えば別に俺は構わないけど……先輩の方を考えるとなると、このまま降参してくれた方がありがたい。実戦ではこの状態になる以前に死ではあるけど、これはあくまでも試合だ。
(それに俺が対象の存在を殺めるとなると、それは輪廻の輪から外すって意味だからな……)
だかはそこの価値観は他の人達とだいぶ違ってくるって事は理解している。多分ここも含めて姉さんやアルファからズレてると言われるんだろうなぁ〜。
「こ、降参します……」
そんなどうでも良い事を思い浮かべていたら、ローズ先輩から漸く降参の言葉が聞こえた。
(にしてもローズ先輩の顔が赤いな……まぁ俺が無理をさせた事は事実だし、はやく控室とかに運ばないとな)
主審が早く決着の合図を出してくれないだろうかと考えていたその時、同じタイミングで主審が試合終了の合図を出した。それを聞き届けた周りの反応は、俺と姉さんが試合をした時と同じくらいの歓声が聞こえてきた。
まぁ今はそんな事はいいとして、まずローズ先輩を控室に運ぶか。
「ローズ先輩、自力である……けないですよね?」
「えっ? え、えぇ……少し休まないと、キツくて……」
「分かりました。ならこのまま控室に運びますね?」
「えっ? ……きゃっ⁉︎ な、何をしてっ⁉︎」
アルジが何をやったかと言えば……まぁ既に恒例となりつつあるお姫様抱っこだ。ローズの背中を支えていた左腕の方はそのまま背中を支え、右手は彼女の膝裏を支える様に抱える。まぁここは別におんぶとか肩を貸すとかそんな事でいい筈なのだが……我らが主人公は、ただ運び易く動きやすいと言う理由で今こうしているに過ぎない。結論としてクレアの時と同じ様に後から後悔するのは目に見えている事だが……
「こっちの方が俺も急ぎやすいですし、ローズ先輩にもあまり負担はかからないだろうと思って……とにかく直ぐに控室まで行きますね」
と、有無を言わさずアルジはローズを控室まで運んだ。尚この光景を見た観客の中でアルジの事を天然のタラシだと思った人は結構多い。
side アルファ
(全くあの子ったら……)
私は学生に混じって学園で開催された武神祭を見に来ていたわ。と言ってもシャドウとアルジの試合しか興味はないのだけれど……。現に他の学生達は、私達と比べて申し訳ないけど遊戯の類にしか見えなかった。確かに幾らか腕の立つ子達はいたけれど……
(にしてもシャドウはなんであそこで負けたのかしら?)
シャドウの実力は『シャドウガーデン』の中でアルジに次いで2番目……それぐらいの実力があるのに、彼は対戦相手に吹き飛ばされてばかり。それに派手に吐血しながら……
(でも彼には彼なりの考え方があるだろうから、そこは任せましょう)
それから試合は準決勝になっていた。残っていたのは前回大会で優勝したローズという女生徒に、シャドウとアルジのお姉さんであるクレアさん。全く知らない子が1人と……
(まぁあの子なら当然よね)
彼が出ていた試合を見る限り、憶測ではあるけど相手の実力に合わせてやっていたのだと思う。何故分かったかと言われれば、対戦相手によってアルジが戦い方を変えていてから。素人から見れば全く分からないでしょうけど、私は何千何万と彼の動きを見てきたわ。彼の隣に並び立てる様に、ね。だからこそ若干の動きの違いも分かった。
そして準決勝が始まってみれば……私はいつの間にか興奮していたわ。確かに普段のアルジからは考えられない程魔力量がセーブされているし、動きも私達が普通程度で追い縋れるくらいのもので、本来だったら物足りないと感じたかもしれない。
だったら何に興奮したかと言えば……クレアさんがアルジのあの動きに着いていっていたから。それも数分間休みという休みを入れる事なくずっと彼の動きに負けじと……
(クレアさん……凄いわ)
多分あの場でアルジも同じ事を思っているかしら。私もまだクレアさんが実家にいらした頃コッソリ何回か見ていたけれど、あの時はこれほど長く着いて行けてなかった。でも今のアルジと、制限をかけている状態であるとはいえあそこまで動けるのが予想外だったわ。だからこそ素直に賞賛を贈りたいと思っている。
でも心の中でモヤモヤと感じたこともあるわ。それはアルジがクレアさんをお姫様抱っこした時で……
(確かに私もされた事はあるけれど……でもアルジとクレアさんは義理とはいえ兄弟関係にあたるし、あのスキンシップに等しい行為は自然な流れだと思った方が良いわね)
でもその考えは甘かったのかもしれない。何故なら同じ様な事をローズという女生徒にもやっていたから。(ここからは彼女の事はローズさんと呼ぶ事にするわ)確かに決勝もクレアさんに負けじとローズさんはアルジに追い縋っていた。それを見ただけで彼女もクレアさんと同じ域に達したという事が分かる。
(まぁそれもアルジのおかげだとは思うけど……)
ただ……やっぱりローズさんにもお姫様抱っこは頂けないわ。クレアさんは別に良いけど……いえ、心の中がモヤモヤとした気持ちになるのは本当だけど、100歩譲ってクレアさんなら大丈夫だと思ってる。だけどローズさんに対してはダメと思っている自分がいるわね。
(私……自分で思っているよりもアルジに対しての束縛が強いようね……)
アルジにはあの時、あの子の事が好きな子はまだいると伝えた。その時は『七陰』の子達でアルジの事を好きな子がいるという意味合いで伝えたから、今の様な感情は出てこなかったんでしょうね……
でも……
(私はアルジの正妻として……何事においても冷静に対処しないといけないわ。例えあの子の側にあの子の事が好きな人が何人いたとしても)
でもそれは逆に考えると、それ程までにあの子がとても優しくて、自分よりも他の人の事を考えて行動している表れなのよね。私は、あの子自身がもっと自分の為に動いても良いとは思っているけれど……
(まぁそれこそがあの子の魅力ということね)
でもローズさんにお姫様抱っこは……やり過ぎだわ。後でしっかり注意しておかないと……
そして武神祭が終わった後、アルジさんはアルファさんに呼び出されて叱られてしまったと言います……
side out
試合が終わって直ぐにローズ先輩を控室まで連れて行く。疲労度合いや身体の内面的に姉さんより酷使していたから、俺は後遺症とか明日からの日常生活に支障がない様にローズ先輩に魔力を使って治していく。基本的に外傷とかを魔力で治す事は一般的ではあるが、疲労などに関しては中々に難しいところがある。まぁ俺は前世含めてその辺りも抜かりなく鍛えていたから、身体の疲労も魔力で治す事は可能だ。
「あ、ありがとうございます……アルジくん」
「いえ、俺も先輩に無茶をさせ過ぎてしまったので……」
「そ、そんな! そんなことありません‼︎ だって私……アルジくんと打ち合っていて……本当に楽しかったんです! 心の底から、それこそ……貴方とあの後ももっと打ち合いたいって思っていたんです‼︎」
先輩は綺麗な笑みを浮かべながらそう言ってくる。その笑みが嘘から出たものでない事は誰が見ても明らかなほどで、少しドキッとしてしまった。
「ふふっ♪ アルジくん少し顔が赤いですよ? どうかされたんですか?」
「えっ? あっ……いや、別に大したことでは」
「そうですか? でも、クレアさんが言ってた様に……少しアタフタしているところ……可愛いですわね♪」
「は、はっ⁉︎ ろ、ローズ先輩まで姉さんみたく揶揄うのはやめて下さい‼︎」
「ふふふ……ご、ごめんなさい。でも本当にそう感じてしまったものですから」
「そ、そうですか……と、とにかく俺はもう行きますんでこれで失礼しまs「待って下さい!」えっ? えぇっと……何か?」
「その、後は大会の表彰式と閉会式くらいですし、もし宜しければアルジくんもそれまでここにいませんか?」
「えっ⁉︎ で、でもそれだと先輩が休まらないんじゃ……」
「いえ、多分なんですけど……貴方と一緒にいた方が休まる気がするんです。ですから……ね?」
「(ぐっ⁉︎ う、上目遣いだとっ⁉︎)い、いや……そう言われてもですね……」
「私の事、アルジくんはお嫌いですか?」
「い、いや⁉︎ 決してそんな事は……」
「でしたら大丈夫ですわよね? ささっ、どうぞこちらにいらして下さいな♪」
とまぁ……俺はいつの間にかローズ先輩の隣に座らされて表彰式と閉会式まで一緒の控室で過ごす事になった。
————おまけ————
魔剣士学園主催の武神祭が終わってから翌日……アルジはアルファにミツゴシ屋上に建てられた『シャドウガーデン』の屋敷に呼ばれていた。
「アルジ……どうしてあんな事をしたの?」
「えっ? あんな事って?」
「まさか惚けるつもりかしら? 武神祭の決勝と準決勝の後、クレアさんとローズさんにお姫様抱っこしていたでしょう?」
「(え"っ⁉︎ み、見てたのかよっ⁉︎)い、いや……確かにしてはいたが……」
「確かにクレアさんに対しては姉弟関係だから多めには見るけれど、ローズさんに対しては頂けないわ」
「そ、そんなこと言っても……ローズ先輩も立ってるのがやっとだったし、俺が無理させたせいでもある。それにあの時はあの姿勢が1番ローズ先輩に負担がない運び方だったから……」
「……そう。アルジにも考えがあってそうしたという事ね?」
「あ、あぁ! 別に誰に対してもあぁする事なんて「でもダメなものはダメよ?」えっ……?」
「だから……今日寝る時は私の部屋で一緒に寝ましょう♡ それと、これに対しての拒否権はないわ」
「……はい」
とまぁ、アルジさんはその日アルファさんの部屋で一緒に眠りました。翌日、アルファさんの肌ツヤがとても綺麗であり、そしてアルジさんはというと、どこか疲れている様子ではありました……
はい、という事で珍しい事に早めに投稿が出来ました。
今回の話としては……まぁ見ていただいた通り魔剣士学園主催の武神祭決勝を描かせて頂きましたが、えぇえぇローズさんもオリ主が気になっている様子ですね……
まぁこれからの話の展開として、私が思い描いたシナリオの中では必要な事なのでこうさせて頂きました。
さて、次はいよいよ学園が襲われてしまう所を書いていこうと思いますので、皆様楽しみにしていただければ幸いです!
ではこれにて失礼をば……
第17話であったアルジさんとアルファさんの絡みを書いて欲しい方
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R-18で書いて欲しい。
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R-17.9までで書いて欲しい。
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本編をとにかく進めて欲しい。