お正月より大分過ぎましたが、お正月回を投稿します。
ストーリー回については現在も執筆中です。
お待たせしている読者の皆様には申し訳ございませんが、何卒もうしばらくお待ちいただけたら幸いです。
それでは最新話をどうぞご覧下さい!
年が明けるのも早いもので、今日は元旦だ。
この世界でもミツゴシによっておせち料理の風習が根付いてきた。
勿論主導はガンマで、兄さんが前世から持ち出した知識を彼女がこの世界で形にした。
まずは貴族向けにお試し販売をしたのだが、これが貴族の間で好評だったようだ。
それならば一般階級の人達にも売り出せるのではないかと考えたガンマは、貴族向けと一般階級向けそれぞれのおせち料理を考案して販売したところ、どちらとも良い結果を出せたとのことで。
それ以来おせち料理を含めてミツゴシでは元旦フェアを開催している。
(朝チラリと覗いてみたけど、開店前にも関わらず行列で並んでいたな)
それほどまでミツゴシで行っている元旦フェアは好評という証拠だろう。
そんな事もあって他の競合他社も同じ様に元旦フェアなるものを行なっているけど、ミツゴシの様にしっかりした基盤がないためか上手く行ってはいないようだ。
そう言えば今朝ガンマと挨拶を交わした時、表面上いつもと変わらない様子だったけど、どこか元気がない様子だった。
(自由に過ごして下さいって言われてるけど……彼女の元気がないのは嫌だな)
それにガンマは俺の彼女だ。
いつも俺に対して気を遣ってくれるのはありがたいが、俺だってそんな彼女の助けになりたい。
そう思った俺は即行動に移した。
確かこの時間は七陰のみんなで集まって会議をすると昨日の晩にアルファも言っていたから、多分ガンマもアルファ達と同じ場所にいることだろう。
もしかしたら会議の邪魔をしてしまうだろうと一瞬頭を過るが、それでガンマの、ひいてはこれがガンマ含めた彼女達の助けになるかもしれないと思いながら、会議として使われている部屋の戸を開けた。
「あらアルジ、どうしたの?」
戸を開くと七陰全員と、振袖姿のウィクトーリア、ローズ先輩の姿があった。
テーブルの上に置かれていたのはおせち料理で、今回の会議はおせち料理についてということが分かる。
そのことを理解した俺は、今回この場に足を運んだ理由を話す。
するとガンマがとても申し訳なさそうにしながら俺に謝ってきたのだが、別に気にする程のものではないし、何よりガンマの手助けになれるのなら、いつでも俺をコキ使ってくれと、そんなニュアンスで言ったらガンマの顔が赤くなっていた。
ま、まぁさっきの言葉でガンマの気が少しでも良くなるのなら俺としても嬉しいのだが……。
(なんかめっちゃ視線を受けてるんだけど……)
ガンマ以外の子達からそれぞれ別の意味を持っていそうな視線を送られる。
どうやら先ほど発した言葉がいけなかったようで……自分としてはただガンマに少しでも元気になって欲しい一心で行ったんだがな。
アルファから七陰の中で俺に対する好意を持ってくれている子がいると聞いているから、七陰の子達はまだ分かるが……
(なんでウィクトーリアとローズ先輩にも似たような視線を向けられているんだ⁉︎)
いや、確かにこの2人に関してもだが特に目をかけている。
ウィクトーリアは元テンプラーに所属していたシスターでシャドウガーデンと敵対していた。
でもその所属元が、いざウィクトーリアが悪魔付きだと分かると、自分達の良い様に利用しまくって、最終的にはディアボロス教団に引渡すといった所業に出た。
(全くもって虫唾が走ったな、あれには)
その情報をゼータ経由で受け取った俺は、彼女を救うべく行動に移した。
ディアボロス教団に引き渡されそうになった彼女の姿は、腐敗していく肉塊の一歩手前まで来ていた。
そこを俺が魔力で癒して彼女を救出した経緯があるのだが……
(それ以来やたらと俺にグイグイ来るんだよな……)
元々彼女は神を信仰していた。
それもこの世界で1番と言って良いほどにまで、彼女は神のことを信じていたんだ。
でもそれをテンプラーやディアボロス教団の連中が踏み躙って、彼女を絶望させた。
それを彼女から聞いた俺は……本当に神様でも救いようがない愚か者がいるんだって、改めて思った。
それに関与した奴らは……まぁ自己判断にはなるが、更生の余地が無いと判断して漏れなく輪廻の輪からおさらばしてもらった。
(正直あんな奴らがこの世に存命してたら、俺の大切な人達に対して、はたまたこの世界で一生懸命に生きている人達に対してもなんら良い結果は齎さないだろうし、生まれ変わったとしても邪悪な考えが後から芽生える奴らばかりに感じたしな……)
おっと、いつのまにやら暗い話になっていたな。
まぁそういった経緯でウィクトーリアを救出して、彼女本人もシャドウガーデンに入りたいって意思があったから加入してもらった。
(まぁその頃から俺に対して物凄く敬意というか、信仰するようになったんだよな……)
ナンバーズより下位の子達の指導教官を務めているラムダ曰く、訓練をしている子達の中ではナンバーズに匹敵、それどころか七陰でも通用するのではというくらいに頭角を表していると聞いている。
(それでひきりに俺のことをいつでも守れるように力を付けたいと口にしている……ってラムダが言ってたな)
向上心が素晴らしい部類になるけれど、にしたって俺に対しての信仰心が大きすぎるというのが難か……。
(でもそこがウィクトーリアの良いところでもあるんだよな……)
その姿がとても可愛らしく思えてきて、結局俺も彼女を他の子達に比べて優遇してしまうんだよな〜……。
本当はシャドウガーデンの副リーダー的存在……とは思ってないが、上の立場として他の団員に対して平等に扱わなければいけないべきなのは分かっている。
けどそんな役回りは、俺にはどうやら難しいらしい。
現にこうして入れ込んでいるわけだし……。
(それに入れ込んでいるのはウィクトーリアだけじゃあ無いんだよな……)
それが七陰とウィクトーリア以外にこの場にいるもう一人、ローズ先輩だ。
彼女にも自分が果たすべき使命があるとして、当初ディアボロス教団に一人で立ち向かおうとした。
そこにシャドウガーデンが介入して、結果的にローズ先輩もこの組織に加わった。
(それでローズ先輩は……最初は気負っていたな)
自分が果たすべきことのために、最初はオーバーワークなど関係なく訓練に励んでいた。
それを心配に思った俺は、ウィクトーリアと同じくローズ先輩に対しても色々と付き合ったな。
(ただ……油断しているといつの間にか添い寝“されてる状態”になったのは驚いたが)
リンドブルムに行く途中でもあったことだが……ローズ先輩に対して魔力探知が効かなくなってきている。
普段の訓練時には分かるのだが、寝ようとした時にはいつの間にか側にいることが多い。
(それにアルファも容認しているような気がするし……)
この前だってアルファと一緒に添い寝をしていた時(本人はアルファに毒されて彼女達との添い寝が当たり前になり、全く疑問にも思っていない)にもローズ先輩が現れて、俺の中では若干気不味い状況になったんだが……。
「あら、あなたもこの子を可愛がりにきたのかしら? ならあなたもこっちにいらっしゃい」
アルファからそんな言葉が出た時は……えっ……? って普通にフリーズしてしまったよ。
その言葉を受けたローズ先輩も、最初は追い返されると思ったのかその予想外の言葉に一瞬動きを止めてしまっていたが、その言葉の意味が分かってくると、とても明るい、顔の周りにキラキラと輝くエフェクトがあるんじゃ無いかってくらいに喜びの表情を露わにして、アルファの反対側に寝転んだ。
(早い話、俺はアルファとローズ先輩にサンドイッチされたんだよな……)
アルファはいつもの様に柔らかい素材のボディスーツじみた寝巻きで……正直見ているだけで理性がガリガリと削られていく。
それだけでも理性という面で大ダメージを受けるのに、彼女はいつもの様に俺のことを優しく抱き締めながら添い寝をしてくる。
肌に伝わってくる彼女の体温と、彼女の肌と同じくらいのスベスベな寝巻きの感触、そして彼女の柔らかい身体が俺のことを包み込んで離さないその状況は、もはや俺の抵抗など無意味という様に誘惑してくる。
(結局俺は毎回その誘惑に負けるんだけどな……)
そんな状況でローズ先輩も俺の背中側に密着する様に、俺のことを抱きしめてくる。
耳元で「温かいです……アルジくん♡」と甘い声で囁いてくるものだから、アルファによって理性が崩壊している状態の俺にとってはクリーンヒットだったよ……。
でも俺は、俺に好意を持って告白をしてきた子に対してでなければ手を出してはいけないと思っているので、そこはなんとか残っている理性を総動員して……格好としてはとても悪く見えるが、アルファにギュッとしがみつく様にして耐えた。
「んあっ///……ふふっ♡全くこの子ったら必死に耐えちゃって……可愛い子♡」
ローズ先輩の囁き攻撃に追撃するかの様に、アルファも俺の耳元でそう囁きながら抱きしめを強くしてくる。
それによって更にアルファの身体の柔らかさを、俺は身体全体で感じてしまって……。
「あっ///もぅこの子は……本当に、おませさんね♡でも今日は我慢しましょうね♡」
言われなくても我慢するよコンチクショー‼︎ というよりその状況に持っていってるのアルファだよね⁉︎ 心の中でそう叫びたい一心だったが、もう寝る時間帯のこの状況では叫ぶなんてことはできず……ただ身体をビクビクと無様に震わせながらも耐えるしかなかった。
「あぁ……アルジくん、とても可愛いです♡」
(それとローズ先輩はその囁き攻撃をやめてくれー‼︎ もう色々と限界なんだよーっ‼︎)
と、ローズ先輩は普段は凛々しく真剣に訓練に励んでいるのだが、俺が寝る時間帯になるとこっそり……いや、もうこっそりじゃなくて大胆にの表現が正しいのだが、高確率で俺に添い寝してこようとしてくる。
それはアルファの時だけではなく、ベータやガンマの時でも添い寝しようとしてくる。
(なんか当初の先輩のイメージとは物凄くかけ離れている気がするんですが……気のせいですか?)
と、アルジさんは思っているものの、彼自身まさか自分がローズさんの性癖を変えてしまったとは、これっぽっちも思っていませんでした……。
とまぁ、この場にいる七陰以外の二人も、入団以降結構関わりが多い。
(ただこの二人は……なんというか互いにソリが合わない関係だったはずだが)
ローズ先輩はそう思ってはいないのだが、ウィクトーリアの方がローズ先輩を嫌っている。
理由としてはいくらか聞いているが、最大の理由としては弱いからだと聞いている。
ウィクトーリアもローズ先輩も俺の魔力を直接分け与えた者同士なのだが、にも関わらずウィクトーリアからすればローズ先輩の実力はそこまででもないといった評価のようで、その体たらくが許せないようだ。
俺としてはそう感じないのだが、それ以外にもウィクトーリアからすれば許せないことがあるということなんだろう。
まぁそれはともかくとして、本日の議題はおせち料理についてで、市販するものについては問題ないのだが、兄さんと俺に対して用意するおせち料理に対して納得のいく出来にならなかったらしい。
そんなところに二人が新年の挨拶に現れ、同時におせち料理の具材を調達するように指示を出している場面で俺が来たと。
「そうか。二人だけでは大変だろうからここは俺m「いえなりませんアスタロト様!」えっ?」
「これは私とこの666番に課せられた任務なのです。その任務にただでさえ忙しいアスタロト様のお手を煩わせるなど、あってはならないことです‼︎」
「しかし兄さんも明日にはこちらに来るし、早急に対処するということなら人手があった方が良いと思ったが……」
「確かにある……いえ、アスタロト様のいうとおりかもしれません。ただここは私達に任せてはもらえないでしょうか?」
と、二人はとてもやる気な様子で、どうやら俺の出る幕でも無いらしい。
そんな二人を送り出した俺は、一気に手持ち無沙汰になった。
(邪魔になりそうなディアボロス教団の連中は殲滅したし、俺のことを執拗に邪魔してくる神様サイドが送り出した奴らも二度と俺に関わりたくないと思えるほどに叩きのめしたし……どうするかな)
「あらアルジ、退屈そうね」
アルファが俺の隣に座って、俺の右手をニギニギしながら声をかけてくる。
俺の身体にピタリと自分の身体を寄せているせいで、俺は彼女の顔を至近距離に収めている状態なんだが……
(本当に何しても良い絵になる……というよりなんで俺の手をニギニギしてるの?)
「ふふっ♡貴方の困った様な顔が見たいからよ?」
(また俺の心の声に反応してるし……)
「アルファ様だけズルい……ねぇアルジ、正月なんだしゆっくり寝て過ごすのも良いと思うんだ。それで普段は私がアルジのことを膝枕してるんだけど……偶には私のことも膝枕して欲しいかな?」
そう言って炬燵から上半身だけを出して俺の右足に頭を乗せながらこちらを上目遣いで見つめてくるのはゼータだ。
今は炬燵に入らない位置で胡座をかいているから、今正にゼータのことを膝枕している状態だ。
(なんか俺の足に対して頬擦りしてくるんだけど、微妙にくすぐったい)
ゼータも俺の反応を見たいがためか、上目遣いをしながらも妖艶さを含んだ笑みを浮かべてくる。
「あぁっ⁉︎ ゼータだけズルいっ‼︎ ねぇアルジ様! デルタと一緒に遊ぼっ‼︎ 丁度雪も積もってるから雪だるま作ったり雪合戦するのです‼︎」
ゼータへの対抗意識からかデルタも俺の左手を握って懇願してくる。
その姿はまるで子供が大人に対してお願いごとをしている構図に似ていて、デルタの純粋さが伝わってくる。
「アルジ様、ゆっくりとした時間をご希望でしたら、またベータと一緒に読書でもどうでしょう? もしそうしていただけたなら……この私、ベータがアルジ様のお身体を温めて差し上げます。こんな風に……♡」
俺の右肩に手を乗せてベータが囁いてくる。
同時に背中の右側にベータの身体が押しつけられるような感触がして……。
(あの……胸を強く押しつけてくるように体重乗せてくるのやめてくれませんか? 後耳元で艶やかな感じを出しながら囁くのも……)
ベータの体温が直に感じるのと同時に、ベータの柔らかな肌の感触もダイレクトに伝わってくる。
それに比べて俺の女性に対する免疫はナメクジ級に弱すぎるため、こんな美少女に囲まれながら接触を受けている状態でもガリガリと理性を徐々に削られている。
そこにダイレクトに柔肌が襲ってきたとなったら、今まで以上に理性の耐久が減っていくことは目に見えるほどに容易いことだろう。
「わ、私もベータに負けていられない‼︎ あ、アルジ様? 私も新作のお菓子を作ったのですが、良かったらどうですか? その時にその……食べさせ合いっこも、していただけたら嬉しいです」
今度はイプシロンが俺の左肩に手を置いて、肩を揉みながらそう言ってくる。
そしてベータに対抗してか、俺の背中の左側に自分の身体を重ねるように密着してきて、これまたベータと同じ様に甘い声で囁いてくる。
(イプシロンが今もスライム操作で身体を作っていることは分かっているが……本当にこの子の努力は素晴らしい)
現にスライムで出来た身体を押し付けられている状況にあるにも関わらず、感触は今ベータが押し付けている柔肌と遜色ない感触と温かさを感じる。
一体ここまでに至るまでどれほどの努力を重ねてきたのか、俺には想像もつかないことだろう。
(だからといってベータに対抗してその柔肌を押し付けないで欲しい……それと囁き攻撃もやめてくれ……)
また俺の中で理性の耐久がガリガリと大きな音をたてながら削られていく感じがした。
「マスター……抱き枕〜……」
今度はイータがゼータと同じく炬燵から上半身を出して、俺の左足に頭を頭を乗せてくる。
その仕草は、いつも俺に対して抱き枕しての宣言をするたびに胴体に抱き着いてくるものだから、誰から見ても自然に行っている仕草に見えるが……
(膝枕をするだけなのになんで太もも辺りをまさぐっていいるんですかね~?)
そんな疑問を含んだ視線をイータに送るが、まるで何のことかさっぱりだと言わんばかりの表情をしてくる。
ただ細かく見れば、俺に対して魅惑的な笑みにも見える視線でこちらに向けてくる。
それも他のものでは見落としてしまうのではというくらいに自然な様子で振舞うから……まぁアルファ辺りは気付いてそうだけど。
「むぅ~……皆してアルジ様と密着してズルいじゃない!! アルジ様、貴方様に振舞うおせち料理の準備が整いましたら、このガンマが食べさせて差し上げます……勿論、口移しなどで……♡」
あの……ガンマさん? おせち料理をそんな風にしちゃいけませんよ? いや、それなら他の料理だったら問題ないのかって話になるとは思うけど、おせち料理ってなんか縁起の良い物でしょ? それを口移しとかっていう……その、エッチな方に持っていくのは僕はダメだと思います!!
(あと他の皆が密着しててズルいって言ってる分、ガンマさんも俺に密着したいって宣言している様なもんだよね?)
ガンマもミツゴシの代表を担っている分、彼女は外見も気にしていて、その努力は推し量ることが容易に出来ない。
抜群のプロポーションに加え、色白だが健康的な肌と艶やかな長髪、これだけでも世の男性だったら放っておけない容姿をしているにも関わらず、話し上手で相手の事を立てられるほどに理知的だ。
そんな子がもし自分の日常生活の一部になっていると自覚してしまえば、どんな男であれ手放す事などまずあり得ない。
そんな子が今目の前で、ぷくりと頬を膨らませて嫉妬の表情になっているのを見れば、普段とは違うギャップが見れてなんだかドキッと不覚にも感じてしまった。
「フフッ、アルジったら女たらしね。私はそんな子に育てた覚えはないけれど……後でお仕置きが必要かしら♡」
アルファが最後の最後で妖艶な微笑みを浮かべながら俺に言ってくる。
それも後数センチ近付けばキスできるんじゃないかってくらいに顔を近付けてそんなことを言ってくるもんだから……俺としては本能を理性で押さえつけるのに必死さ……。
(あぁ……俺の弱点って、普通にアルファ達だよな~……)
彼女達を傷つけられたら、俺は我を失ってその元凶を滅ぼすために動くだろう。
それも相手の掌の上だと理解していても、俺は元凶に対して復讐しに行くことは、容易に想像できる。
それとは別ベクトルでアルファ達に、好意を寄せられている相手に、今のようにすり寄って翻弄されるかのように誘惑されてしまうと……絶対にNOなんて言えない自分がいる。
度が過ぎてNOだった場合でも、結局妥協案というか、彼女達を悲しませないためにいくらかの要望には応えてしまう。
(それで今の状況も……多分後で個別に要望に応えてしまう自分が容易に想像できるな……)
まぁ? 今は正月だから幾分か羽目を外しても問題ないと思うが……
(ウィクトーリアとローズ先輩は上手くやっているだろうか……)
今回の任務内容が内容だけにそこまでギクシャクしていない……と良いんだが、個人的には気になる。
他の人から見ても今の俺の心情は過保護だと言われてしまうだろうが、出来ることなら、俺とかかわりを持っている人同士が、同じ組織にいる人同士がある程度仲睦まじい関係を気付いてほしいと、個人的には思っているんだ。
(結局は俺の我儘なんだよなぁ……)
そう思っている中でも、七陰達の過度なボディタッチと甘い誘惑じみたアプローチは止まらない。
さて、今俺の取れる手段……もといこの状況から脱する方法はあるだろうか?
①力尽くで彼女達の拘束から逃れる。(ただし後から今以上のことを要求される)
②何かの勝負事で勝った人が自分のお願いごとを一つ叶えると約束して拘束を解いてもらう。(ただし①と同じ様な結果で、後日勝負に負けた子から似た様なことを要求される)
③用事を思い出したと言って拘束を解いてもらう。(ただし①以下省略)
④世は無情であり、このまま流されるしかなく、現実を受け入れるしかない。(理性が崩壊し、その後本能のまま彼女達の要求を呑み、自分は堕落してしまう)
は〜い、全部アウトですねぇ〜……。
(それになんだよこの①〜③は⁉︎ 結局のところ同じじゃあねぇか⁉︎ それに④とか最早考える気なく諦めろって言っている様なもんだろ⁉︎)
アルジさんは心の中で、自分の頭の中で出てきた選択肢に対して文句を言いましたが、どの道今の自分の現状は変えられないと、本能が悟った結果でもありました。
そんな時、1話の白い鳥が部屋の中に入ってきて、俺の頭にちょこんと止まった。
『アルジ様、明けましておめでとうございます。新年早々の挨拶がこの様な形となってしまい申し訳ございませんが、今年も何卒よろしくお願いいたします』
それはコトハさんが使役する鳥で、その鳥を介しての念話だった。
俺も今の状況にドギマギしながらもなんとか挨拶を返して、今コトハさんのところはどうなっているのかを聞いた。
どうやら向こうも元旦とあって各々楽しんでいるらしい。
そしてコトハさんは、現在自分の国へと帰省していて親戚とゆっくり過ごしているのだとか。
コトハさんの実家は、この大陸から見て東の末端にある島国……前世でのイメージではジパングという名称が合っていると思っているが、そこも中々に豊かな土地だ。
そんな感想が出るのも、俺が学園に入る前に何度か足を運んでおり、コトハさんの両親とも面識があるからだ。
(でも会う度に違和感が隠せなかったんだが……)
別に最悪とか悪い方向ではないのだが、何故かコトハさんの両親から向けられる目線が、なんと表現すればいいのか難しいのだが、温かい目で見られている感じがして、なにかとしきりに優しく振る舞ってくるしで……。
(それでコトハさんもなんか距離感が近かったんだよな……)
食事の時も俺の隣に座ってきたり、お風呂に入っている時も背中を流しましょうかと言われたりで、何かと甲斐甲斐しく世話を焼いてきた。
流石に背中を流すとかは断ったんだが……なんかアルファ達と似た様な感じがしてならない。
まぁそんなことはないと思っているけど。
閑話休題
それでコトハさんから話を聞くと、今年はお餅に使われる米が豊作だった様で、ご近所に配って回っている様だが、それでも余らせてしまうとのことだった。
それでこちらに戻ってくる際に余った餅米を持って帰るとの報告で……
(コレだーっ‼︎)
まさに天啓が降りてきた瞬間だった。
それからの行動は早くて、アルファ達には申し訳ないが、コトハさん達への挨拶回りが十分ではなかったことの説明と、コトハさんの実家でお餅の材料に使用される餅米が大分余っていて、それを今から行って持ち帰ってくる事も伝えて、拘束を解いてもらい向かった。
それもその場から1秒でも早く離れると言った具合に……。
(あの空間が嫌いって訳じゃあないんだ! ただあのままいれば俺は堕落してしまう。堕落が全て駄目と言うわけではないが、それでも今は堕落した状態に陥る訳にはいかないんだ! アルファ、皆……許してくれ‼︎)
と、アルジさんは誰に対してなのか分からない言い訳を頭の中で浮かべながら、シャドウガーデンの拠点を後にしました……。
side アルファ
「あぁっ⁉︎ アルジ様がもうあんな所にまで⁉︎」
「うぅ〜……アルジ様はきっと帰りに狩りに行くのです! デルタも一緒に行きたかったのに〜っ‼︎」
「だ、抱き枕が……ない……安眠が遠ざかる……」
「肩を揉みつつも離さない様にアルジ様にガッチリ張り付いていたはずなのに……まるで蛇の様にするりと抜け出てしまうなんて……」
「私の体感では既にアルジ様は享楽を享受していたと思ったのに……やはり小説と同じシチュエーションでは足りない……と」
「折角アルジに膝枕してもらえると思ったのに……いや、帰ってきたらまた後で頼み込めば良いだけだよね。それにしてもアルジは、あんなにもドギマギしちゃって……相変わらず可愛いな♡」
「まったく……アルジにも困ったものね。でもそこが彼のかわいい所なのだけど♡」
アルファはアルジに対してそう言っているものの、浮かべている表情としては綺麗な笑みを浮かべていた。
(フフッ♡帰ってきたらしっかりと埋め合わせをしてもらおうかしら)
なお、心の中では、アルジが帰ってきたら埋め合わせをしてもらう気満々である。
そのため、アルジがどのような行動を取ろうとも、結局は先ほどアルジが思い浮かべた選択肢の結果を辿ることとなる……。
「さて、アルジは行ってしまったけれど、私達も早急に決めなければいけない事案が出てきたわね」
「早急に、ですか?」
「アルファ様、一体何のことなのです?」
「何って、そんなこと決まってる」
「そう、ゼータや他の皆も察しているかもしれないけど、アルジはお餅の原料であるもち米を持って帰ってくるわ。だからそのお餅を作るときには……」
「お餅を搗く時の合いの手……ですね」
「「「っ!!」」」
「ベータの言う通りよ。お餅を作る時は、もち米を搗く人と合いの手の人がペアになる必要がある……。ここまで言えばわかるわよね?」
「ま、まさか新年早々にあれをやる……ということですね?」
ガンマのその発言で、この場にいた七陰全員の顔つきが変わる。
ある者は顔つきが真剣になり、ある者は自分の勝利は疑わないと言わんばかりの笑みを浮かべた表情となる。
そして七陰達は炬燵の周りにそれぞれ陣取った。
「それじゃあ皆、準備は良いわね?」
アルファの問いかけに皆頷くか肯定の意を見せる。
「行くわよ……せーの!」
「「「七陰シャンケン、ジャンケンポン!!」」」
七陰の皆さんは、何か重要な決め事をする時は平和的にジャンケンで決めるそうです……。
side out
アルファ達と別れた俺は、コトハさんの故郷がある国へと向かっていた。
その途中ウィクトーリアやローズ先輩達のがどうなっているかを上空から確認していたのだが……。
(2人は別行動中らしいな……確かに理にかなっているが、ソリが合わずに別行動中となると、悲しいな)
十中八九ウィクトーリアから別行動を取り始めたんだろうが……こっちもコトハさんの地元までもち米を持ち帰ると言った手前、ずっと観察をしているわけにもいかない。
ゆっくりとした時間があるなら2人の仲裁に入るとかの措置は取れるんだけど……。
(いたし方ないが、2人のことは後でアルファ達に聞くとして、俺はコトハさんの所に向かおう)
そう決めた俺は、東の方へと向けて上空を進んでいった。
side ローズ
私はシャドウ様とアルジくんのために、おせち料理の材料を探していた。
私の手には山菜に関する図鑑があり、それを基に何が高級食材であるのかも分かるから順調に集めることはできている。
(この場にウィクトーリアさんがいらしたら、遅いとかって文句を言われそうですが……)
でもシャドウ様とアルジくんに半端な食材なんて出せませんし……。
(それにアルジくんには喜んだ顔をしてほしいんです)
私はシャドウガーデンの中では一番下っ端、他の人達に比べたら実力が伴っていないのも分かっています。
(それでも私は……アルジくんの力になりたい!!)
アルジくんは何でも1人でこなせる。
どんな状態だって彼1人で何でも終わらせることが出来る。
そんな強大な力を持っているのは、私はよく分かっています。
それでもアルジくんは、その強大な力を除けばとても優しい男の子で、笑顔がかわいい男の子で……。
(それにアルジくんと一緒に寝た時……とても温かくて、彼に少しちょっかいをかけてしまった時の反応が可愛くて……)
「んっ///……」
こうして彼の反応を思い出しただけでも、胸が温かくなる。
それほどにまで私は……アルジくんのことが……大好きです。
(でも私のそんなところを……ウィクトーリアさんは嫌いなのでしょうね)
彼女も私と同じ悪魔憑きの症状を発症して、そんな危険なところをアルジくんに救ってもらったと話に聞きました。
そして彼女がそのことでアルジくんのことを深く信仰しているということも……。
だからこそ彼女はアルジくんのために強くあろうとしている。
本当の意味でアルジくんの側で役に立ちたいと強く思って、日々を生きている。
そんな彼女から見れば、アルジくんから力を同じように授かっている筈なのに自分と同じほどの力量を持っていない私は……忌むべき存在に見えるのでしょうね。
(でも……それでも私はアルジくんの力になりたい!)
改めてその思いをもっておせち料理の材料を探しつつも、途中ではぐれてしまったウィクトーリアさんを探しました。
以外とウィクトーリアさんはすぐに見つかって、熊など大物を狩るために移動していたところ遭難し、どうにかして下山しようとしているところでした。
そこで私は頂上を目指すことを提案して、最初はウィクトーリアさんに断られましたが、十分な根拠とアルジくんからそう教わったことを伝えれば、「あ、アスタロト様が!? 何故それをもっと言わない!!」と怒られてしまいましたけど、どうにか当初の目的通り2人で行動するという立ち位置に戻りました。
side out
side ウィクトーリア
私は……奴が嫌いだ。
理由はいたってシンプルで……私達は共にアスタロト様から直接魔力を分け合ってもらった者同士だ。
それにも関わらず奴は弱すぎた。
アスタロト様から直接力を授かったというのに……。
それに当初は独断専行もしていて集団の規律を乱すなどの行為も見られて、私としては居ても立ってもいられないほどにイラついた。
(挙句の果てにアスタロト様にベタベタし過ぎだ!!)
私は知っているんだ! 奴がアスタロト様の寝所に何回も入っていく場面を! そしてあろうことか朝までその部屋から出ないことも確認済み……。
(そんなの……許せるはずがないだろう!!)
アスタロト様は、心を許したものに対してはとことん優しい。
過去にシャドウガーデンと敵対していたこんな私にすら優しくしてくれる……それほどにまであのお方は慈悲深い方だ。
(それに付け込んでかあの女ァ~……アスタロト様にベタベタとしてからにィ~……)
私と同じほどの実力であれば……認めたくはないが、アスタロト様の近くにいたって文句は言わない。
そもそも我らの目的は、ディアボロス教団をこの世から塵も残さず殲滅することだ。
それは私の悲願でもあり、アスタロト様やシャドウ様がこの組織を立ち上げた目的でもある。
シャドウガーデンにも私と同じ様に、悪魔憑きとなった事によって世界から捨てられてしまった者達が殆どを占めるだろう。
だからこそ、自分を捨てた世界に……自分を裏切った神に復讐をする。
確かに中には戦闘に向かない者もいるし、それについては適材適所だ。
私とて全ての者に対して戦え、だなんて言うつもりは毛頭ない。
そもそも力のない者が無理に前線に出てしまえば、他の者の足並みを崩してしまう可能性があるし……何よりアスタロト様が、自分の身内が傷付いた事によって悲しむ姿など……私は見たくないから。
(にも関わらずあの666番は学習をしない‼︎)
確かに他の者達に比べれば実力者であるということは認めてやろう……。
(だがだからと言ってこの女がアスタロト様に擦り寄る場面など許せるものかっ‼︎)
そして今はその666番と一緒に任務中で、紆余曲折を経てから一緒に行動をしているのだが……
(本来ならば私1人でも遂行できるものを……)
ラムダ教官から666番との協調性を高めるために一緒に行動しろと言われたのもあって……本当に仕方なくだがこの者と一緒に行動している。
正直この者と協調性など高めるなど土台無理な話だと思うが……
(アスタロト様にも666番と一緒に任務を遂行すると行った手前、その期待を裏切る訳にもいかない……)
何よりアスタロト様は、私達の事を自分より優先して考えて行動して下さる。
優先度の順位付けとしては七陰のアルファ様達が1番であり、そこからアスタロト様の親族とナンバーズ、友人、最後に私達の様なナンバーズには組み込まれない者達だろう。
私の中で勝手にそう思っているだけではあるがな。
(それでもアスタロト様は……優しすぎる)
私がそう思っても仕方がないことかもしれないが、いつ自分の時間を取られているのだろうかと、そう心配してしまうくらいに……アスタロト様は私達にも時間を割いてくださる。
(そんなアスタロト様の役に……私は立ちたい)
だからこそ今回の任務……失敗は許されない!
途中で666番と分担しておせち料理の材料を探し求めて、不覚にも遭難しかけてしまったが、偶々666番と合流して、奴の提案でこの山の頂上を目指すことにした。
最初は同意しかねていたが、奴がアスタロト様に教わった知識と言った時には速攻でその案に同意して、現在は一緒に頂上を目指している。
頂上に着いた時は後少しで朝になるといった時間帯で、私としてはすぐにでもそこから下山したかったのだが……また奴が朝になるまでここで休息を取ろうと言い出した。
(全く……コイツと行動するといつも何かが狂う)
だが……確かに明るい方が道を違わずに済む。
そう思ったからこそ、本当は嫌だったが奴の提案にまた乗ってやることにした。
それだけで済むはずだったが、奴はここで休息を取ろうと言いながらも度々私に話しかけてくる。
この道中でもそうだったが、うるさくて敵わない。
(だが奴の口からアスタロト様に関することが出てくる時に限っては聞かんでもない)
奴曰く、暗いうちから山頂に登って、そこから見る朝日がいい景色だという話だ。
私としてはどこから見ても同じではないかと思ったのだが、それもアスタロト様が言っていたことなのだそうで……そうこうしているうちに夜が明けて朝日が登ってくる。
朝日が登ってくる方向は海で、穏やかな水平線から徐々に太陽が顔を出してくる。
(これは……確かに言葉では簡単に表せないほどだな)
話に聞くまでは侮っていたが、どうやら666番の話も煩いだけではないようだ。
「あ、あれって……」
そこで666番が朝日が登ってくる方角に何かを見つけたのか凝視していた。
見れば、朝日の真ん中に黒い点が出来ており、それが徐々に大きくなっていく。
やがてそれは人の形であることが分かって……っ⁉︎
(あ、あれは……いや、あの方は‼︎)
人の形が細部までハッキリ見える距離になると、私は自然と“その方”の下へと足を進めていて……
「アスタロト様⁉︎」
私はアスタロト様が何故このような場所に来たのか、それも東の方角から来たのかが分からなかったが、驚きのあまりアスタロト様の名前を口にしていた。
side out
コトハさんの故郷からシャドウガーデンの本拠地近くへとようやく辿り着いた。
(本来はもち米を受け取ったらすぐに帰るつもりだったが、コトハさんの両親から食事に誘われたり、コトハさんから一緒に寝て欲しいと頼まれたりと……)
あぁ、断れる雰囲気ではなかったよ。
なんか外堀を埋められる感覚ってこういうことをいうのだろうかと、そう感じるくらいに圧があって、そして断れなかった。
断れなかったのは、まぁ俺の精神的弱さが招いたことだ。
それにいつもお世話になっている相手だからな。
無碍には出来ないということも確かで……。
(あぁ……でもこれって後からアルファにお仕置きされる案件だよな……)
そう思っていたら、目の前にある山の山頂に人の影が2つあって、よく見ればウィクトーリアとローズ先輩だった。
まさかこんなに遠くまでおせち料理の材料を取りに来ているとは思わなかったが、2人の様子を見ればどこにも怪我とかはなさそうで、着ている振袖にも乱れはそこまで無かった。
それで向こうも俺に気付いたのか俺の名前を呼んでくる。
俺も2人の任務遂行率とか確認をしたいといった建前で2人の前に降り立った。
「アルジ様! 何故このような場所に!?」
「あぁ、あの後コトハさんから挨拶があってな。それで色々あってコトハさんの故郷に行った帰りなんだが、そんな時にウィクトーリア達を見かけたってところだな」
「その、コトハさん? ですか? その方の故郷というのはどちらに……」
「この大陸よりはるか東にある、多分世界地図でみたのならその最果てにある場所だろうな」
「さ、最果て、ですか?」
「そこまで行くだけでも大変であることが分かるのに……それを平気な顔で、しかも往復で疲れた様子も見られないとは……さすがアスタロト様!!」
ローズ先輩はその遠さに想像ができないような顔になり、ウィクトーリアは俺がその遠い場所へ往復したことを、まるで偉大であるというように褒めたたえてくる。
(俺としては普通に行ってもち米を受け取って少し休息を取った後に戻ってきただけなんだが……)
と、アルジさんは思っていますが、他の人達からしてみれば船などの乗り物を使わなければまず行けず、魔力で空を飛べたとしてもアルジさんのように1日で戻って来れるような距離ではないため、どの道普通のことではありません……。
「それで2人の方は……どうやら順調そうだな」
「はい! 山での素材は取り終えたので、これから下山し、今度は海の幸を取りに行きます‼︎」
「確かにおせち料理に使える材料は集まりましたが、海産物が全くの手付かずでした。ウィクトーリアさんの言う通り、私も海の幸を沢山集めてきますね、アルジくん!」
「……666番、またお前はアスタロト様のことを本名で呼んだな?」
「えっ……あ、し、失礼しました! 今は任務中でしたね……」
「別に俺のことについては、変な呼び方以外だったらどう呼んでもらっても構わないさ。ウィクトーリアだって、いつもそんな堅苦しい呼び方じゃあなくて、アルジって呼んでも良いんだぜ? 寧ろそっちの方で呼んでもらえたら嬉しいんだが……」
「っ‼︎///そ、それは……ぜ、善処します」
「まぁ今までのことをすぐに変えることなんて難しいからな。さて、それじゃあ俺はそろそろ行くよ。2人とも、最後まで気を抜かずに、無事に帰ってくるように、な!」
「「っ! はい‼︎」」
そんなやり取りの後、俺はアルファ達がいる本拠地へと戻って行った。
そこでは餅つきが出来る用意がされていて、俺がもち米を持ち帰ると分かったや否やアルファ達が用意してくれたようだ。
それだったら話が早いということで、皆に沢山お餅を振る舞えるように気合を入れて、作成を進める。
そして最後の工程である餅つきをしようとしたら……
「ふふっ、アルジったら何か忘れていないかしら?」
と、アルファが声をかけてくる。
俺としては特に忘れていることはないと答えた。
そしたらアルファは困ったような顔をして……
「もぅ、お餅を搗く時は合いの手が必要でしょ?」
それで木製の臼の側でアルファが姿勢を低くして、俺の方を見つめる。
「さぁ、私の準備は整っているわ。始めましょう?」
(……合いの手も俺の分身でやるつもりだったんだがな)
アルファ達には、ただでさえお正月の準備をしてもらった。
俺も手伝ったりはしたが、彼女達に比べたら全然だ。
だからお餅作りについては俺が全て行うつもりだったんだが……
「(まぁ、アルファが好きでやりたいって言うなら、断る理由なんてないよな?)分かった。それじゃあ始めようか」
そしてアルファを合いの手に餅つきを行った。
最初はゆっくりとした動きでもち米を搗いて、全体を均等にほぐしていく。
大体均等にほぐせたと感じてからは、餅を搗くスピードを上げていった。
杵は木製であっても重量がある。
だから基本的には安全面を考慮したりなどで大振りになることなんてないんだが……。
(自分の身内……特にアルファが合いの手をやってくれるならこっちも安心して出来る)
アルファの事を信頼していることもあり、大振りかつ搗くスピードも速くしていく。
それに対して彼女もタイミング良く合いの手を入れてくれる。
そのおかげもあって、コトハさんから貰ったもち米は思いのほか速く使い終わり、大量のお餅を作ることが出来た。
(それにしても壮大だな……)
俺としても予想外のことだが、持ち帰ってきたもち米の量が、当初俺が予想していたよりも多すぎた。
俺としてはせいぜいが10kg前後だと思っていたのだが、まさかその十倍以上にあたる150kgを超えるとは思わなかった。
そんなこともあって、コトハさんの実家を借りてもち米は事前に炊いていて、炊いた温度で保存しておいた。
それで持ち帰って来た訳だが……アルファもどうやら俺が大量のもち米を持ち帰ってくるとは予想外だったみたいだ。
アルファに合いの手を10回以上してもらったが、そこでアルファから「自分だけ合いの手をするのは公平ではないわね。後は皆で決めなさい」と言った瞬間から、合いの手をする順番を決めるために七陰ジャンケンなるものをやり始めた。
(話には聞いていたが、ここまで覇気迫るものがあるとは……)
七陰の中で立候補者が多く出た場合で、迅速かつ平等に決めるために行う選出方法ということで度々話には聞いていたが……
(まぁ普通にジャンケンしてるだけなんだよな……)
だというのに……何故こんなに迫力があるんだろうか? 俺としては、持ち帰ったもち米はまだ沢山あるから、どの順番になっても合いの手は出来ると思っているんだが……。
(ただこれを言ったら、アルファ達に呆れられるだろうな……)
「フフッ、その通りよアルジ。ここは言わぬが花だわ」
まぁアルファには筒抜けな訳だが……。
そんなこんなで合いの手の順番は決まったらしく、餅つきを再開。
餅を搗いた合計としては、優に100回を超えていて、皆それぞれ10回は合いの手をしてもらっていた。
(一般人が10回合いの手をやったら結構疲れが出ると思うけど、流石七陰の皆だな。まだまだ余裕がありそうだ)
それで全ての餅を搗き終わって、均等の大きさにしたり鏡餅を作ったが……これだけの量があったならシャドウガーデンの皆にもいきわたるだろうな。
目の前に大量のお餅が並んでいる光景を見ている時に、おせち料理の材料を持ち帰って来た。
収穫としてはかなり良かった様子で、すぐさまおせち料理が作成された。
その味見役として、今回おせち料理の材料を獲ってきた2人にしてもらうことになった。
おせちを作ったのはイプシロンで、まぁ彼女が作ったのなら間違いはないだろう。
(それじゃあ俺もデザートを振舞うか)
丁度お餅があるからな。
まだ固まりきっていないお餅を使って、『きな粉餅 特性餡蜜ソースを添えて』を2人分用意して、おせちを食べ終わった時を見計らって出した。
「こ、これは……」
「2人には頑張ってもらったからね。だからこれは俺からのご褒美、みたいなものかな」
「そ、そんな……私達のためにわざわざアスタロト様が作ってくださったのですか!? なんと心優しい……この559番、感服いたします!!」
「あ、あぁ……そこまで大袈裟に言うことはないぞ? 別に俺の作ったもので良いのなら、出来る限りのリクエストには応えるからな」
それを言ったら、ウィクトーリアが更に俺に対して畏敬の念を込めた視線とともに、俺の言ったことが大変素晴らしいスピーチだったと言わんばかりに感謝を言い表してきた。
俺としては本当に大したことは言っていないんだが……。
「その……アスタロト様、これはちょっとした質問、になるのですが……よろしいでしょうか?」
「ん? どうした666番」
ここでは七陰の子もいるということもあり、振られている番号で呼ぶ。
正直番号で呼ぶのは嫌なんだが……仮にも上の立場にいる者が規律を乱すことはダメだよなとも思ったから、ここでは番号で呼ぶことにする。
「これは……今の私達の立場では不躾になると思います。でも気になったから言います。今回のように私達が何かを成し遂げて、それをアスタロト様に認めてもらえたのなら……私達がアスタロト様に対して膝枕をしたい、などといったお願い事も叶えていただけるのでしょうか?」
「っ!? おい666番!! それはあまりにも度が過ぎているぞ!!」
と、ウィクトーリアがローズ先輩に喰ってかかる。
(膝枕、ねぇ~……。ローズ先輩って、俺が寝る時大胆に添い寝しに来てると思うんだが……)
プライベートだけでなく、任務のご褒美として膝枕を要望したい……と。
それも俺に膝枕をしたいって……。
(あの……どんだけ俺の理性を削る気なんでしょうか?)
普段からも隙あらばアルファ達から過激なボディタッチを受け、それプラス甘言で俺を誘惑してくる。
それに最近だとナンバーズも俺の近くにいることが多い。
(ナンバーズだとラムダが筆頭で膝枕をしてくることが多いし、ニューも何故か起床時に俺の隣にいて、俺の寝顔を眺めていることもあったな)
正直女性関係の面について、色々と手遅れになっているような気がする。
何か外堀がいつの間にか全て埋められているような……挙句の果てに知らないうちに大蛇に巻き付かれて頭から丸のみにされる一歩手前……と、そう感じている俺がいる。
まぁそれでも……俺が彼女達に対しての付き合い方を変える事なんてないし、俺を好きでいてくれる子が複数いるというのなら……愛情の込め方にも偏りがあって、それによって節操なしの最低男の蔑称をつけられても仕方ないだろうが……。
(俺を好きでいてくれる子達を最後まで愛そう)
誰がなんと言おうと、それは曲げない。
閑話休題
それで今はローズ先輩からの質問だったな。
これに関しては……
「559番や666番、その他の子達でも、そうして欲しいと願うのなら……過度にならなければ出来る限りの対応をするよ」
「っ! ほ、本当ですか!!」
「そ、そんな!? そんなことをしてしまえばアスタロト様の限りある時間を更に、それも私達のせいで削られることになります!! 何卒再考してはくださいませんか!?」
ローズ先輩は流石に断られると思っていたのか、俺が肯定的な回答をしたことによって驚いていて、逆にウィクトーリアは俺の身を案じてかその考えは改めるようにと提案してくる。
「あら、それは問題ないと思うわ」
「っ!? あ、アルファ様……それはどういう……」
そこに今まで話を聞いていたアルファが話に加わってくる。
いきなりアルファが入ってきたものだからウィクトーリアは驚いている表情をしていたが、続けてアルファが口を開いた。
「アルジはそのことで自分の時間を削られたなんて思わないから、というのが理由ね。そうでしょ?」
流し目をしながら俺に対して確認の視線を向けてくる。
それにしても昨日からアルファは振り袖姿なんだが……本当にどんな仕草でも絵になるな……。
「(おっと、見とれてる場合じゃあないな)あぁ、アルファの言う通りだ。俺はそのことで自分の時間が削られたって全く思わない。俺が唯一自分の時間を奪われたって感じた時と言えば……俺を慕ってくれる人達との時間を邪魔された時の後処理ぐらいかな。だから、自分達のお願い事のせいで俺の時間が削られたなんて、そんなことを思わなくてもいい。安心してくれ」
「アスタロト様……分かりました。この559番、これ以上アスタロト様が今回言ったことについて言及はしません。それと、今回下の立場であるにもかかわらず、アスタロト様の決めたことに関して進言をしてしまったことについては、いかようにも罰を受ける所存です」
どうやらウィクトーリアも納得してくれたようだ。
ただ、俺に進言したことに対してまた真面目モードが発動したようで、そのことに対する罰を求めてくる。
俺としては別にどうとも思っていないことなんだが……。
「なら559番、今からあなたに罰を言い与えるわ」
「えっ? いやアルファ、俺は別に罰を与えるなんて考えていないんだが?」
「アルジならそう答えるわよね。でも彼女が自ら罰を求めているの。彼女本来の真面目さ故に。だからここは私に任せてちょうだい」
「……分かったよ」
「話が反れたわね。それで559番への罰なのだけど……559番、アルジに膝枕をしてあげなさい」
「……はっ!?」
「えっ……っ!? わ、私がアスタロト様に膝枕を、ですか!?」
(あの……アルファさん? なんで俺をその罰に巻き込んでいるんですかね? まぁ、さっき俺自身が膝枕をされても良いって言ったばかりだから、拒否することはないが)
「えぇ、それが今回559番に対しての罰とするわ。それと拒否権はないから、しっかりと受けること。良いわね?」
「うっ……わ、分かりました。アルファ様からの罰を受けます」
「よろしい。それじゃあアルジ。559番に膝枕されなさい」
「あっ……うん」
まぁ結果としてローズ先輩も、その結論を聞いてかホッとした表情になっていたな。
今回鶴の一声をかけてくれたアルファがいなければ、もう少しこの内容は長引いていただろう。
(さて、俺は俺でウィクトーリアに膝枕をしてもらいに行くか)
俺がウィクトーリア近付くと、彼女はビクッと、正座しながら若干身体が飛び上がる反応を見せる。
いつも真面目であり、俺に対しては信仰心をこれでもかと見せてくる彼女のそういった反応を見れるのは、正直嬉しいことではあるし、可愛いとも思ってしまった自分がいた。
「じゃあ、お願いできるか?」
「うっ……スゥー……ハァー……ど、どうぞアスタロト様……わ、私のお膝に……」
ウィクトーリアが緊張した面持ちで自分の膝をポンポンと叩いてくる。
その様子は、まるで高難易度ミッションをこれから受けるみたいな感じに見えるな。
「(まぁ年頃の女性が異性を膝枕するのって、本来とても勇気がいることだもんな。こっちも出来る限り緊張させないようにしないとな)それじゃあ、失礼するよ?」
「は、はい……」
ウィクトーリアの膝に頭を乗せる。
乗せた瞬間から彼女の身体がプルプルと震えているのを感じる。
顔を見れば、顔は正面を向いているのだが、目線は俺から外していて、顔もとても赤くなっていた。
「559番、恥ずかしがるのは仕方ないけど、もう少し堂々と振舞いなさい。それとアルジは、膝枕されながら頭を撫でたりすると、とても喜ぶわ」
(ちょっとアルファさん? 何を教えてるんですか?)
ウィクトーリアを緊張させないよに……といっても俺はただ膝枕されるだけだから緊張させないようにもクソもないけど、正直俺も顔に出さないようにするので精いっぱいだ。
(だってウィクトーリアも凄く良い薫りがするし、膝枕の柔らかさも適度に良いしで……)
確かに安心感というか、俺を包み込んでくれる安定感は比べるまでもなくアルファが一番なんだが……。
(なんだろうな……こう、一生懸命見守ってくれるお姉さん? みたいな感覚か?)
こんな時に語彙力が陳腐なのが恨めしいのだが、それでもウィクトーリアの膝枕も良いものだとこの時点で感じている。
「あ、アスタロト様の頭を私の手で!?」
「あぁ~……もし俺の頭を触るのが嫌とかだったら、別に無理h「そ、そんなことはございません!! その、よろしければアスタロト様の頭を撫でさせていただいてもよろしいでしょうか」あっ、うん……お願いしようかな」
承知いたしました、と気合を入れたウィクトーリアは、恐る恐る俺の頭に自分の手を近付けてきて、ゆっくりと頭を撫でてくる。
(あっ……ぎこちないけど、ウィクトーリアの手も凄く柔らかいな)
女性特有の柔らかい手の感触で、普段の訓練でも剣を振るっているから少し硬い感触がするのかなって勝手に思っていたけれど、全然そんなことはなかったな。
そうアルジさんが思っていると同時にウィクトーリアさんは……
(あぁ……あぁ……アスタロト様の髪の毛……とてもサラサラしてる……いつまでも撫でていたい。それになんだかこうしてアスタロト様を見ていると……とても愛らしく思ってしまう……。こんなにも私を誘惑をしてくるなんて……流石アスタロト様!!)
と、思っていたようです。
「ふふっ、なかなかセンスが良いわね。アルジもとても気持ちよさそうにしてるし、あなたの膝枕も気に入ったみたいね」
「ほ、本当ですか⁉︎」
「えぇ、その調子で膝枕を続けてちょうだい。その後は、ちょうど良い頃合いになったら666番にも膝枕をさせてあげて? 彼女も我慢がそろそろのようだから」
「えっ? あっ……」
アルファに指摘されたウィクトーリアがローズ先輩の顔を見れば、なんか膨れっ面になっていた。
いつもは凛々しくしているのに、頬を若干赤くして膨らませる。
そして嫉妬を浮かべた目線をウィクトーリアに送っている限り、自分が提案したのになんで先に膝枕をしているんだって思っているんだろうな。
「こ、これはその……アルファ様からの罰を受けているからであって、決して下心などは……」
「……嘘ですね。現にあなたの顔……いつもと違ってとてもニヤけていますよ?」
「うっ……す、すまない」
なんかいつもとは逆の光景だな。
いつもならウィクトーリアがローズ先輩に喰ってかかるのに……
(まぁ……そんな時もあるか)
それで頃合いを見てウィクトーリアがローズ先輩に膝枕を変わった。
その瞬間、負のオーラダダ漏れだったローズ先輩の雰囲気は一気に晴れて、いつもの笑顔を向けながら俺を膝枕する。
ローズ先輩は、添い寝の時に偶に膝枕してもらってたこともあってウィクトーリアよりも手慣れている。
だから、初めて膝枕をしたウィクトーリアと手慣れているローズ先輩を比べると、心地良さの点ではローズ先輩に軍配が上がるだろう。
ただ、俺の表情がウィクトーリアにしてもらった時と比べて、若干早く心地いいと顔に出ていたのか、それを見たウィクトーリアからは「ズルい……」と小声で呟いていた。
それでその様子を眺めているアルファは、ただいつもの笑顔を浮かべながら小さく笑っていた。
正直今アルファが何を考えてこの状況を作り出しているのかさっぱり分からないが……まぁ俺よりも頭の回転が早いアルファが考えていることなら確実だろう。
そんなこんなでその日も日常が過ぎて、いつの間にか夜の時間帯になった。
今日もアルファと一緒に寝る約束をしていて、現在添い寝の真っ最中だ。
(あぁ……もぅ本当にアルファ無しでは生きていけないと思う……)
突然何を思っているんだと思うだろうが、それも仕方ないと思ってくれ。
だって、こんな俺に対して好意を寄せていて、それに絶世の美女としかいえない女の子、更に器量が良くていつも俺のことを支えてくれるとか……
(正直アルファに変わる存在なんていねぇよ……)
他の子達も確かにかけがえがない存在だと実感しているし、過去に出会ってきて俺に好意を寄せて来た女の子達だって、今を思えば俺にとってそんな存在だった筈だ。
人から受けた好意を比べるとか、そんなこと考える自体ありえないことだが……。
(でも、この世界で初めて俺に告白してくれて、今世以前に行ってきた俺の、大罪を聞いても俺のことを受け入れてくれた、そんな初めての人だから)
「何か考え事?」
俺を抱きしめているアルファから優しく問いかけられる。
その時も俺の頭の位置はいつもと同じ場所だから、上から問いかけられている構図になっていて、上に視線を向ければ優しく問いかけられた声音と同じ、優しい顔を向けてきていた。
それに対しては何でもないと答えたが、アルファからは嘘ばっかりと言われてしまった。
俺って、そんなに顔に出てるだろうか……。
そんな考えすらもアルファにはお見通しのようで、更に抱き締めを強く、そして優しくしてきた。
アルファから感じる温かさと、彼女から漂ってくる甘くて良い薫りが、俺を安心させてくれる。
「ふふっ♡貴方はすぐに顔に出るんだもの。他の人からすれば見逃してしまうものではあるけど、私は貴方の全てを知りたいから、今何を考えていて何を感じているのか……だから私は、貴方の顔色も見逃さないようにしているの」
「あぁ……でもだからって、俺の内面までほとんど言い当てるなんて……」
「……幻滅、するかしら?」
「……えっ?」
「私も時折思うの……貴方の内面を知れたと思った反面、貴方の内面を言い当てた時、貴方から……私はどう思われているんだろうって」
アルファが自分の内面を明かした時、さっきまで浮かべていた優しい顔が……悲しい顔に変わった。
「勿論アルジがそれで私や他の人の扱いを変えることはないって、思っているわ。でも心の奥底でどう思っているかまでは……完全に推し量ることなんて出来ない。だから……不安になってしまうの……いつか貴方が……私から離れてしまうんじゃって……そうおm「そんなことは絶対にない」っ⁉︎ アルジ……?」
俺は……余程大馬鹿者みたいだ。
いつも彼女達のことを傷つけた奴は許せないって思ってるくせして、俺自身が彼女達の……アルファの心を傷つけてしまっている。
(そんな俺には腹が立つ……自傷してしまいたいとすら思う……でも今は……)
アルファの事を強く強く抱き締める。
何があっても離さないと、そんな想いで彼女のことを強く抱き締める。
「んぁっ///はぁ……あ、アルジ?」
「確かに俺は、俺の内面を言い当てるアルファに対して、いつも何で分かるんだろうって、毎回疑問に思うことはある。でも、だからって俺は、アルファから離れることなんて絶対にない! 他に俺に対して好意を持っている子達にも言えることだけど、それとは別で俺は……君のことを世界で1番愛している‼︎」
さっきまで定位置にあった俺の顔は、アルファの顔と真正面に向かい合う位置にある。
月光に照らされた彼女の顔は、不安を吐露してから泣きそうな顔をしていた。
そんな顔も美しいと感じてしまうが、同時にそんな顔をさせた俺のことも許せない。
(いつも俺は……アルファ達に出会う前の俺だったら、自分に好意を寄せて来る子達にこんな顔をさせたくないと思って逃げて来た。でも俺はもう……)
彼女の顔を正面から見据える。
彼女の瞳に浮かんでいる悲しみを少しでも拭うように、そして俺も彼女の想いから逃げないように、言葉を紡いだ。
「俺、アルファに告白された時に話したと思う。この世界に生を受ける前に、俺に好意を寄せて来た子達を、傷つけて来たって」
「……えぇ」
「俺は……自分の役割があったとはいえ、そんな行いはしてはいけなかったんだ。しっかり彼女達の気持ちに真摯に向き合うべきだったって、今はハッキリと言えるし、そう思えるようにもなった。
そんな当然なことを気付かせてくれたのは……アルファだったんだ。君よりも精神面では長く生きて来た俺に、人として当然のことを教えてくれた。
みっともないことをして来た俺を、今も変わらず支えてくれる」
「そして何より……こんな俺のことを、俺の過ちを知ったのに……それでも全力で愛してくれるって、そう言ってくれたアルファだからこそ、今の俺がいる。
だから言わせて欲しい……俺は、俺のことを全力で愛してくれる君の元から離れない」
そう言って俺はアルファの顔を胸元に抱き寄せる。
そうした瞬間に、彼女は静かに泣き始めた。
多分表に見せないだけで心の中では不安に思っていたことも沢山あっただろう。
なのに、こんな歳でいつもしっかりしていて、俺のことも愛してくれて……
(こんな子から自分から離れるなんて、そんなことは絶対にありえない)
俺は彼女に依存している。
それが今ではハッキリ分かる。
でもそれは、その想いは自分の中でマイナスな面ではないということをハッキリと理解していることだ。
(例えこの想いがアルファに気持ち悪いって思われたとしても、この想いを変えるつもりはない。俺は……)
彼女達の……アルファの障害となる存在は全て排除する。
それから少し経って、アルファが泣き止むと、俺と再び正面の位置で顔を向かい合わせる。
「ふふっ、また貴方にみっともないところを見せてしまったわね」
「それを言うなら、いつもアルファにみっともない姿を見せている俺はどうなることやら……」
「でもそんなところも、私から見れば可愛く見えるの。だから……もっとそんな貴方を見せて欲しいわ♡」
彼女が俺を揶揄ってくる。
その顔はいつもと同じ優しい顔だが、さっきまで泣いていたために目元が赤くなっている。
そんな目元に、優しく親指を沿わせるように撫でると、彼女はくすぐったそうにした。
「もぅ、イジワルしないで……」
「はは、俺はそんなアルファの顔ももっと見たいんだ。だから偶にはこうしても良いだろ?」
「そう、なら私はそんな貴方にお仕置きをするまでよ。えいっ!」
横向きになっていた体勢が、アルファによって仰向きにされる。
そして腹の上にはアルファが女の子座りで跨って、俺の頬に両手を添えながら顔を近付けてくる。
「ふふっ、貴方の驚いた顔……とても可愛い♡食べちゃいたいくらい……んっ」
優しめのキスをおとされる。
一瞬であっても彼女のキスは俺の唇に甘美な感触を残してくれる。
「んっ/// 貴方ってばおませさんね♡そんなに私に対して期待、してくれているととっても良いわよね?」
そう言って更にアルファが俺を誘惑してくる。
いつもの俺ならば、本能を縛る理性のゲージがガリガリと削られて、それでも耐えようとするが結局は誘惑に負けて……となるが……。
「あぅっ⁉︎ えっ……? アルジ?」
「いつもの俺なら恥ずかしがっている。でも今の俺はそうじゃあない……
今夜は俺が……君のことを寝かせない」
「んぁっ///うっ……(そんな……耳元で囁かれただけで……)」
「今のアルファ……凄く可愛い」
「も、もぅ……またイジワルして……」
「こんな俺は……嫌いか?」
「……いいえ。そんな貴方のことも、私は大好きよ。だから今夜は……私のことを寝かせないくらいに、一杯甘えて♡」
それがトリガーとなって、その後の俺は滅茶苦茶アルファに甘えました。
(まぁ結局最後にはアルファに負けるけど……な)
まぁ今年も始まったばかりだが、ディアボロス教団との戦いは続くし、これ以上に苛烈さを増して行くだろう。
それでも……
(俺は彼女達を、アルファの願いを叶えるために戦う。この命に変えても、必ず‼︎)
その想いを改めて胸にし、俺は今日という新しい日を迎えた。
最初の構想時点では、カゲマス2025年度のお正月イベントに起用された、ウィクトーリアさんとローズさんにフォーカスを向けて書こうとしたら、いつのまにか最後の最後にアルファ様回になってしまってました。
もう私の中ではそれ以上に、アルファ様が特別な存在になっていることの証左でしょう。
しかしながら他の子達も魅力的で素晴らしい子達なので、ディアボロス教団に復讐しながら、彼女達との縁をより強固なものとして書き上げていきます。
それではまた、最新話でお会いいたしましょう。
2025年お正月イベントで新キャラクターとして起用があったウィクトーリアさんとローズさん。2人のうち、お正月を一緒に過ごすなら……
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ローズ
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ウィクトーリア
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どちらとも選べないからどちらとも
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七陰の誰かと過ごしたい……‼︎