陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

31 / 59
読者の皆様お待たせ致しました!大体4日振りの投稿になります!

さて、今回はいよいよ女神の試練の前半戦です‼︎私も待ちに待ったと思いながら書きました!

という事で、早速読んで頂いたら幸いですっ‼︎


26話 復讐者、勝手に催しに登録される……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女神の試練当日、俺は一般席に入れるチケットを買って入場した。視力的には結構見える方だから、前側じゃなくて結構後ろにある席に座る。そこから見ていて思うが、やはり1年を通した中でも大きなイベントなんだなと感じる。俺はこのイベントを知らなかったわけだが、この規模の物を毎年やっているとは……

 

(まぁコロシアムの維持費とかも結構かかりそうだが……)

 

 ここで女神の試練についての概要だ。これは簡単にいえば、命を賭けた力試しみたいなものだ。自分の実力に自信がある魔剣士達が集まってこのイベントに参加する訳だが……皆が皆良い結果を得られるものではない。

 

 何故かといえば、参加者の力量をこのコロシアム……この地で散って行った戦士達、まぁ簡単に言ったら英霊という枠組みに入るが、その英霊達が測るからだ。そして実力に見合った者であるならば、この地で記憶された戦士や英雄が召喚されて戦えるという訳だ。

 

 だがそれもほんの一握りで……

 

(あぁ、また1人何事もなく終わったな……)

 

 挑戦者が1人1人意気込んでコロシアムの中心に立つのだが、いざ戦士の召喚が始まって何も変化が起こらなければ鐘が1回鳴るだけで、それを聞いた瞬間落ち込んでそこから去って行く。そして立ち替わりで他の挑戦者が意気込んでコロシアムの中心に立つと……さっきからこの繰り返しだ。

 

(にしてもあの鐘……前世でもテレビで見た事あるな……)

 

 昔にテレビで『伊◯家の食卓』っていう名前の番組があった。もしかしたら名前が違ったかもしれないが、そこでは家庭で使える豆知識が公開されたり、皆で遊べるパーティーゲームで有名になった『◯no』とかが紹介されていた。まぁその番組で使われてた鐘で、今回の様に紹介された豆知識とかがあまり好評でなかったら鐘が1回鳴るだけ、素晴らしいものであればキンコンカンコン、キンコンカンコン、キン、コン、カーン♪みたいに鳴る。誰に説明しているか自分でも分からないが、なんか少しでも説明していたら不意に懐かしくなってくるな〜……

 

(そういえばさっきから物凄く視線を感じるんだよなぁ〜……主に来賓席の方から)

 

 俺が座った席と来賓席は真正面に対面する位置にあって、ただ来賓席からだとここの位置は人の顔が豆粒かどうかくらいにしか見えないだろう。だかそれでも俺に対して的確に視線を向けてくる人がいるんだよなぁ〜……

 

(ナツメ・カフカ……まぁベータなんだけど)

 

 女神の試練が始まって早々……俺に可愛らしい笑みを向けてくる。流石に来賓の挨拶をしていた時は観客全員に対して視線を向けて挨拶をしていたが、それでも俺に対しての比率が高い。

 

(まぁ笑みを向けられるのに悪い気がしないが……)

 

 だから俺の方からも、コッソリとベータに向けて笑みと手を振り返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アレクシア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ハァ〜……もぅなんか最悪な気分ねぇ〜)

 

 原因は分かってる。主な理由は2つで、1つは今も講釈垂れながら女神の試練を進行しているジャック・ネルソン。大司教が殺されたにも関わらず何食わぬ顔でそこに立って振る舞っている。昨日も私達騎士団の要請を断って調査をさせてくれない点から見ても、アイツが大司教の殺害に一枚噛んでいる事に間違いはない筈……

 

(ただそれで強行的に調査をしたら各国から圧がかかる。でも逆に王都に戻ってお父様からまた再調査の許可をもらってここに来たとしても、教会側に不利な物は全て処分されるに決まってる!)

 

 なんともやるせない気分だわ……そんな奴が目の前で堂々と良い顔しながら講釈を垂らしているのを見ると尚更ね……

 

 ならあと1つは何かって話だけど……

 

(左隣に座るコイツが原因よ)

 

 ナツメ・カフカ……数年前に現れた新進気鋭の女性小説家。その時から売り出した小説は全て売れてて、貴族から一般市民にまで人気があるって話だけど……

 

(正直今日初めて知ったのよねぇ〜……有名どころは一通りおさえていたはずだけど)

 

「ナツメ先生〜〜〜っ! 応援してまぁ〜〜〜すっ‼︎」

 

「ナツメ先生〜〜〜っ‼︎」

 

 そう考えていると隣に座るナツメって奴に対して声援が上がった。

 

「あははは〜♪」

 

 それに対してナツメは笑顔を浮かべながら手を振る。まぁこの女神の試練は来賓も大事な点として扱われる。その来賓がどういった方々が来るかによっても観客の反応が変わってくるわ。

 

(それで今年は……まぁなんとも揃いどころを集めたという事ね)

 

 私は勿論だけど、左隣にはローズ生徒会長がいて、右隣はナツメ・カフカ……スタイルの良い女性ばかりを集めている事が嫌と言う程分かるし、何よりあのタヌキ親父の趣味なんだなって事が丸わかりよ。

 

 まぁ気持ち悪い事は確かだけど、それより今は左隣のコイツで……

 

「あはは〜♪ありがとうございま〜すっ♪」

 

「っ⁉︎」

 

 ソイツが立ち上がったと同時に……ソイツに立派に実ってる胸が上下に揺れた。それを見たからかどうか分からないけど、観客が更に歓声を上げた。主に男達が……

 

 ソイツの胸を見て私の方も見てはみる。私の方も……結構大きいと思うのに……

 

「アレクシア王女万歳!」

 

「王女様ばんざ〜いっ‼︎」

 

 中には私の事も言ってくれる人達もいた。正直嬉しくはあったんだけど……

 

「みっなさ〜っん! 一緒にアレクシア王女を応援しましょ〜ねえ〜っ‼︎」

 

「「「ワーーーッ‼︎」」」

 

(こ、コイツは一体何のつもりで……っ⁉︎)

 

 そこで私は見たの……奴の裏の顔を……それを見た瞬間、私の中で何かがキレた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ベータ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ……憎たらしい……)

 

 私は今笑顔で観客達に手を振っていた。別に観客達がうるさいとか、そういった理由で憎たらしいと思っているわけじゃない。私を本気で応援してくれる人達に対しては、私も嬉しいなって感じるし。

 

 じゃあ何が憎たらしいかって? そんなの……右隣の王女様の事に決まってるわ‼︎

 

(この女……一時期シャドウ様と一緒に行動して彼女らしい事をして、しかもベタベタとくっついたりして! そんなの、私が書く『シャドウ様戦記完全版』には相応しくない‼︎)

 

 本当であればそこは私がいたい位置だった。勿論小説を書くための物としてもそうだし、シャドウ様の趣味嗜好も理解できると感じたからで、それ以上に他意はない。

 

 そしてそれ以上に許せなかったのが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの女ぁ"ぁ"ぁ"っっっ! 私の! 私のアルジ様にまでくっつきやがってぇぇぇ〜〜〜っっっ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当にいけ好かないっ! だってアルジ様の隣はアルファ様や……私達『七陰』の場所なのにっ‼︎ 何でこの腹黒王女が当然という感じでアルジ様のそばにいるのっ⁉︎ 本当に意味が分からないっ‼︎ 確かにアルジ様は基本的に誰に対しても優しいけど……でも……

 

(どうしてこの女にまで優しくするんですかっ⁉︎ だってアルジ様……貴方は最初この女に散々悪く言われていたじゃないですかっ⁉︎)

 

 私は知っています。アルジ様がこの女からどう言われていたのかを……それは聞くに耐え難い嫉妬でした。確かにアルジ様の剣術は……比べるものがなく最高のものだと思った。それを間近で見ていて、これに近づけれる様にと言われた時は……正直次元が違いすぎるとも思ったのは正直な話。

 

(でもアルジ様は教えてくれた。次にどうしたらもっと上手く立ち回れるかを)

 

 アルジ様はいつも、面倒くさがらずに教えてくれた。何か分からない事があったら優しく教えてくれた。教える立場の人達からしたらそれは当然の光景に見える人もいるかもしれない。でもその時彼はまだ12歳ぐらいで……その時から彼は紳士的だった。

 

(そして歳を重ねて気が付けば……私はアルジ様の事が好きになっていた)

 

 最初は私を助けてくれた恩もあるし、私に『陰の叡智』を色々と教えて下さったシャドウ様の事を意識していた。でもあの王都襲撃の時から……それは恋愛面でない事を知ったの。

 

(そしてアルジ様の事を意識し始めて、あぁ……これが恋なんだって思う様になった)

 

 それからは……『シャドウ様戦記完全版』以外にも書いた物がある。それは……『紅の紳士騎士様物語』。何故紅を付けたかと言えば、アルジ様の魔力が紅色だからで印象に残るものだから。そしてそのヒロインは勿論私で書いてある。

 

(それでアルジ様と私は、日常では学生生活を楽しく送って勉学に励み、プライベートでは偶に街中をデートしたりして……そして最終的には……)

 

 あぁぁぁぁっっっっ‼︎ もうこれが任務とかじゃなかったら直ぐにでも自室に篭って書いていたいのにぃぃぃ〜〜〜っ‼︎

 

 まぁこんな感じでアルジ様の事を考えると創作意欲が止まらないっ! そして今すぐにでもアルジ様の隣に行きたいと思ってる自分がいる。なのに……

 

なんでアルジ様の事をちっとも理解してない様な女がアルジ様の隣にいるんですか?

 

 えぇ、もう本当に許し難いです……それも人よりも何倍も努力してきたアルジ様に勝手に嫉妬して悪く言って……なのに助けられた途端それですかっ⁉︎ 意外とチョロ過ぎませんかっ⁉︎ 手のひらを返した様に今では擦り寄って……

 

あぁ……本当に憎たらしい……

 

 でも私が公に嫌味とかを言うのはダメです。何故なら彼女とは今回初めて会いましたし、相手は第二とはいえ一国の王女様です。ここで何も考え無しに何かをやってしまえば、私は今の公の場で名乗っているナツメの名前を捨てなければなりません。

 

(それは『シャドウガーデン』の為に、そしてアルジ様の為にやってはならない事です! でもこの女に何かしたくてたまらない自分がいます! でないと自分の中の鬱憤が溜まり続けて……ん?)

 

 そんな時に私の耳に、右隣に座るこの女を応援する声が聞こえました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ〜、思いつきました〜。確かにこれも相手にとっては嫌味になるかもしれませんねぇ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして私はその声と同時に立ち上がって……

 

「みっなさ〜っん! 一緒にアレクシア王女を応援しましょ〜ねえ〜っ‼︎」

 

 私自身は1ミリも思ってないですけど、それを表面的には応援してねという感じを醸し出しながら良い笑顔でアピールした。そしてアピールを一通りし終わった後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この女に向かって見下しながら鼻で笑ってやりました! ふふっ、これで少しは溜飲も下がるというものです‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベータがアレクシアに向かって見下しながら鼻で笑った後、アレクシアの中で何かがキレた。その瞬間、彼女はベータの右足を踏みつけたのだ。それもヒールの踵部分で……

 

「〜〜〜っつ⁉︎ あ、アレクシア王女? な、何を……」

 

 ベータも突然の痛みで顔を引き攣らせる。その発生源を見れば、そこには自分の右足を踏むアレクシア王女が。さっきやった事で溜飲が下がったと思ったら、思わぬ反撃を喰らってしまってイライラが増す。

 

「あら〜? ごめんなさいねナツメ先生ぇ〜?」

 

 それに対してアレクシア王女は良い笑顔を浮かべてベータに謝る……まぁその顔と心内は全く謝っていないが。

 

「あ、あの〜……この足を退けてくれませんかねぇ〜?」

 

「えぇ〜? 何ですかぁ〜?」グリグリ

 

こ、この(あま)ァァァァッッッッ‼︎

 

 公の場である為に激怒した顔が出来ないベータ。それを見計らってやっているかの様に今だにベータの足をヒールの踵部分でグリグリするアレクシア。どちらともが笑みを浮かべて見合っているが、心の中は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((この腹黒女がぁ"ぁ"ぁ"〜〜〜っっっ‼︎))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論……似た者同士という事だろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベータにコッソリ笑みを返して手を振ったら、それに気付いてかベータはこっちに驚きの視線? いや、あれは喜んでいる様に見えるが……そんな瞳をして口に手を当てていた。うん、なんか恋愛小説でヒロインが好きな男の子に告白されて、それが嬉しくてでも感無量で言葉が出ない……みたいな状況に見える。だが……

 

(前々から違和感あったけど、ベータって俺に対してここまで好感度はあっただろうか?)

 

 本当にそう思う。特別な事は何もしていない筈なんだが……←自覚無し

 

(まぁベータが嬉しそうにしているのならそれで良いか)

 

 そこまで深掘りして考える事はなくそこで思考は終了した。それにしても今回ベータは来賓として呼ばれているが……なるほど、彼女に似合ってるドレスだなと思った。

 

(ただ胸をこれでもかと強調しているが……あれは少々目のやり場に困るな)

 

 そう思っている今もベータは俺に感無量みたいな視線を送ってきているが、その隣ではこれまた来賓として呼ばれたアレクシアさんがベータの事をドン引きした表情で見ていた。まぁ確かに隣の人が何の前触れもなく急にそんな仕草したらドン引きするだろうな〜……

 

 と、下らない事を考えながら女神の試練を見ていくわけだが……殆どの奴が何事もなく終わっていく。

 

 ただ途中、淡い紫色で綺麗に切り揃えた髪型、まぁおかっぱ頭と言うべきかセミロングと言うべきか、ともかくそんな特徴的な髪色をしていた女性の剣士がコロシアムに立った瞬間、何かが呼び出される気配がしたんだ。

 

 それは次第に大きくなり、コロシアムを少し揺るしてからその場が少し光る。その光が無くなるとそこにはもう1人剣士が立っていたんだ。立っていた剣士は男で、まぁ初見では今まで参加しに来た奴より強いなという感想しか持ち合わせなかったが……

 

(それよりも紫髪の女剣士さんの方が強いんだろうねぇ〜)

 

 そう思っていると勝負が始まっていて、5分も経たずに終了していた。結果は女剣士さんの方で、確か名前は……アンネローゼ・フシアナスさん、というらしい……

 

(にしたってフシアナスって……アンネローゼは確かに普通にありそうな名前だけど、フシアナスってまるでその人自身が節穴みたいな感じに聞こえるよ⁉︎ もう少しマシな苗字を考えてあげろよ昔のご先祖様‼︎)

 

 全くもってそう思う。だって兄さんの友人2人だってまともな名前でもなければ苗字でもない。なんだヒョロ・ガリとジャガ・イモって⁉︎ マジでふざけ過ぎだろ昔の貴族と名付け親‼︎

 

 とまぁ、改めて思ったわけだけど、今回のイベントで今1番盛り上がったな。

 

(だがカラクリもなんとなぁ〜く分かったな)

 

 あぁ、この女神の試練とやらはほぼカラクリ仕掛けと言っても良いだろう。何せアンネローゼさんがコロシアムの中央に立った瞬間、今回の催し事を務める責任者……ジャック・ネルソンだったか。アイツの姿勢が若干動いた気がした。

 

 それはほんの少し、ちょっとだけ不自然に見えたくらいで、他から見れば何も無いと捉えられる事だと思う。俺が座る位置から見てもアイツの立ち位置は真正面、それも体を半分隠すほどの台の後ろに立っている。だから真横から見ない限り違和感に気付かない人が多いだろうが、微かに重心が右側にズレた気がしたんだ。今までそんなそぶりは見せなかった筈なのに……

 

 それで以降も参加者達を見ていったのだが……結果はどれも同じで、英霊は召喚されず鐘が一回鳴るだけ。

 

(さて、そろそろ日も暮れて良い時間だ。参加者も後2、3人くらいで、その人達にも申し訳ないが結果は今までと変わりそうにないから、俺はここいらでお暇するか)

 

 そう思って先から立ち上がって出口に向かって行く。それでそのまま借りてる宿に帰る……筈だったんだがなぁ〜……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の者! ミドガル魔剣士学園、アルジ・カゲノー‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ?」

 

 俺は一瞬何がどうなったか分からず、少しの間(とぼ)けた顔になった事は……想像に容易いと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アレクシア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はいけ好かない左隣の奴の足をグリグリ踏みつけた後、このイベントを見ていた。途中で左隣の女が気色悪い顔をしていたから、コイツ情緒不安定な奴なんだと思ったけど、まぁ小説家ってストレスが溜まると聞いた事があるし、何か閃いて変な表情になるとも聞いた事があるから、まぁ仕方なく許容してあげたわ。

 

 それで今更だけど、アルジくんが観客としてここに来ていると知ったわ。まぁ偶然ではあるけど、来賓席の真正面……こことは反対側の観客席の後ろの席に座っていたの。まぁそれも本当に偶々見つけたってだけで……ただ彼もここに来ている事が嬉しいと感じたわ。

 

 でもこの催し事自体とてもつまらなく感じた。何故なら参加した魔剣士の力量に応じて英霊が召喚されるって話なんだけど、その現象がちっとも起こらなかったから。でも途中アンネローゼっていう、ベガルタでも『七武剣』の1人に数えられた人が入った瞬間、そこに過去の英霊が召喚されたの。まぁ行われた試合は5分とも満たなかったけど、今までで1番盛り上がったわね。

 

 ただそれ以降は最初と同じで、気付けば日もとっぷり暮れていた。そこでアルジくんに視線を向けると、彼も私と同じ考えだったのかここから去ろうとしていたわ。

 

(そうよねぇ〜……アルジくんもつまらないと思うわよねぇ〜)

 

 私も来賓として呼ばれたなければ、つまらなくなった時点で帰るところよ。

 

(まぁアルジくんと一緒に来ていたなら、その後美味しいディナーのお店に行って楽しいひと時を過ごせるんでしょうけど……)

 

 そう思っていたら次の挑戦者の名前が呼ばれる。まあどうせその人も何もなく終わるんでしょうけどね。

 

 そう思っていたんだけど……

 

 

 

 

 

「次の者! ミドガル魔剣士学園、アルジ・カゲノー‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

(えっ……えぇっ⁉︎ な、なんでここでアルジくんの名前が出てくるのっ⁉︎)

 

 予想外の事で私は度肝を抜かれた思いだった。何でここで彼の名前が出てくるのかと……

 

 それで彼の方に視線を向けたら……彼も何でか分からない顔を浮かべていたの。

 

(にしてもアルジくん……そんな顔も出来るのね)

 

 普段は優しく笑ってたり真剣な顔つきをしているのに……今では惚けた顔をしていて……

 

(そんな顔を知れたんだったら、今回の催し事は参加しても良かったって思えるわ)

 

 でもアルジくんがあんな顔をするという事は、これはアルジくん自身が参加したくて応募したわけでは無いという事ね。だってこの女神の試練は、事前に参加応募しないと出れないものだから。それは昨日露天風呂で偶然会ったポチにも話したわ。まぁポチが出たところで何も起こらないと思うけど……

 

「あぁ〜……やっと、やっとアルジくんの番になりましたっ‼︎」

 

「はっ?」

 

 その一言を聞いた時に、私の口から気の抜けた声が出たの。そしてその一言を言った人の方を見たら、それはローズ生徒会長で……って

 

「あ、あの、会長? まさかアルジくんで応募したのって……」

 

「はいっ! 私がアルジくんの名前で応募しましたっ‼︎」

 

「な、なんでですかっ⁉︎」

 

「そう……これは謂わば、恋の試練なのですっ‼︎」

 

(な、何か言い出したんだけど……)

 

「学園が襲われたあの日……私は襲撃者に斬られて命を落とす所でした。でもそんな所を彼が身を挺して守ってくれたんです!」

 

「守ったって……まさかアルジくんが傷を負ったのって、会長を庇う為に出来た傷だったんですかっ⁉︎」

 

「そうです……お恥ずかしい話、あの場は魔力操作が出来ず、襲撃者にも自分が持っていた剣を壊されてしまって、なす術が無く命の危険が迫った時でした……正直自分はダメだとも感じていたんです。でもそこをアルジくんに助けてもらって、そして……救われたんです。でも彼は重傷で、その場では助からないと思いました。だけど! だけど彼は生きたてくれたんです‼︎ それにこの前の武神祭の決勝で戦った時、彼と戦っていて高揚感と同時にトキメキを感じたのですっ! それは彼が助かったと知った時も感じた……トキメキを。それを恋と言わずに何と言いましょう⁉︎」

 

 会長が捲し立てる様に言ってくる。それもこっちが何かを言う暇が無いくらいに……

 

「ぐぬぬぬ〜〜〜……」

 

(それで何でコイツはこんなに悔しそうにしているの? ……あぁ、そう言うことね。有名な女性作家であっても恋に恵まれていないって、そう言うことね〜)

 

「でも私は王族でアルジくんは男爵の次男! 身分がとても離れている謂わば禁断の恋……でもそれを今回の女神の試練で力を示せば周りの見方も変わる筈っ! だからアルジくんっ! 頑張って下さ〜い‼︎」

 

貴方がアルジ様を傷つけた一端貴方がアルジ様を傷つけた一端貴方がアルジ様を傷つけた一端貴方がアルジ様を傷つけた一端貴方がアルジ様を傷つけた一端……

 

(ひぇっ⁉︎ なんか隣でブツブツ言ってるっ⁉︎ なんか気持ち悪い……)

 

 とまぁ、アレクシアさんは両者の真逆のテンションに挟まれてしまい、正直ここから立ち去りたい気持ちだったと言います……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これは……面倒な事になったな……)

 

 どこの誰だか分からないが……この催し事に俺の名前で登録した人がいる。どういった魂胆でこんな事をしたのか分からないが……

 

(なんか俺が呼ばれて来賓席にいるローズ先輩が舞い上がってる様に見える。それで隣のアレクシアさんは何故かゲンナリした顔してて、ベータは……えっ? 何でローズ先輩の事睨んでるの?)

 

 向こうも向こうで訳がわからない状況だな。

 

「アルジ・カゲノー! アルジ・カゲノーはおらんかっ‼︎」

 

 それで司会進行も俺がコロシアムに現れないから捲し立てる様に呼んでるし……

 

(まぁこのまま行っても勝つ自信はあるが……それはそれで面倒だな)

 

 出ないと言う選択肢もあるが、そうしてしまえば姉さんに泥を塗ってしまう可能性がある……ならば

 

(あの手段で行くか……)

 

 そう考えた俺は、誰にもバレない様にコロシアム上空に魔力の玉を打ち上げる。それが紅色に光って辺を照らすと、騒がしくしていた来賓や観客、そして教会関係者も釘付けになっていた。その隙に俺はコロシアムの入り口に気取られる事なく立つとともに、姿を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅い光が辺を照らし出し、ざわめきに包まれていたコロシアムが静寂とかす。その光が収まったかと思えば、今度は挑戦者の入場口がライトアップされる。それも今までに無かった大きな扉がそこに鎮座していて、そこには一言……『神』と大きく書かれていた。それに目を奪われていたコロシアムにいた人達……しかしそれだけでは終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漢は城を捨て

 家族を捨て

 

 煩悩を捨て

 六情を捨て

 

 前人未踏の道を

 犀の角の如く

 ただ独り歩んだ 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなアナウンスがコロシアム中に鳴り響く。どこの誰がそう言っているのか分からない。しかも普通では考えられない声の響き方……また音声が鳴り響くと同時に入場口からコロシアムの中心に向けて蓮の花が扉の両側から真っ直ぐ、規則的に咲いていく。それに見惚れる者もいれば、音声の出所はどこからだと、観客席や来賓席にいた人達も辺を見回し、終いには司会者やこの催しを執り仕切る立場にあるネルソンですら周りを見ていた。そして音声はそんな事とは関係なく続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして漢は

 わずか6年で真理(ひかり)に達した 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な扉が開かれる。その先には誰かが1人立っていた。誰かというのは、その誰かの背後からも強烈な光が照らし出されていたから。その為誰かが立っているシルエットしか見えない。

 

 そのシルエットは扉が完全に開かれたと同時に動き出す。ゆっくりとコロシアムに向かってくる姿はこの空気に緊張してかそれともただ自身が有り余っているが故の傲慢故か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生まれて独り

 生きるのも独り

 ()るのも独り!! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてシルエットの全貌が明らかになった。それは1人の男だ。だがこれまで挑戦してきた者達よりも異彩を放つ。まずその者の格好からしてこの場にいた殆どが疑問に感じた。何故鎧の類を何1つ身に付けていないのかと? そして学園の生徒と紹介されていたのに、まるで生徒には見えなかった。何故なら、誰もが見ても成人していると分かるほどの風貌だったからだ。

 

 その者は、長髪であろう金髪を黒い棒で後ろに一括りし、薄い茶色のレンズを嵌め込んだ眼鏡をかけ、口には何かを咥えている。服装は……正直誰もが見た事がない格好。上は紺色のタンクトップに白いラインで可愛いウサギの絵が描いてある。そして下は……スカートなのか袴なのか分からない物を着ていた。ただ誰が見ても着崩しているのだろうということはなんとなく分かった。

 

 また携えている武器は……これも誰もが見たことのない様な形状をして、男と同じ背丈ぐらいの杖だ。その杖の先端はマニ車の様な物が付いていて、一体全体どんな武器なのかまるで分からない。

 

 そんな男が、まるで気楽に散歩をしているかの様にコロシアムの中心へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天上天下 唯我独尊

 天上天下 唯我最強!!

 

 ヒトリハ ツヨーイ!! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこからともなく流れる音声は、口上を述べていくにつれてどんどん気分が乗っていくかの様にテンションが上がっていく。それに比べてコロシアムの中心に行く男は、そんな物どこ吹く風と堂々と歩む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャーキャ(ヒト)

 王子として生まれ

 仏として散った

 

 人類史上最強のドラ息子を

 

 人間どもは敬意(あい)を込めこう呼ぶ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで漸く男はコロシアムの中心に立つ。同時に右腕を天高く掲げ、人差し指と親指が丁度90°になる様に立て、手の甲を正面に向けた。それとタイミングを合わせていたかの様に音声はこの男の名を天にまで届く様に言い放つ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

釈ァアアアア 迦ァアアア!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、前回の魔剣士学園襲撃の際に第六天魔王波旬を何回も滅ぼした存在……釈迦に姿を変えたアルジがその場に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いやぁ〜……これやり過ぎたかなぁ〜……)

 

 ここまでが非常につまらなかったから、観客や来賓にも楽しんでもらう様にって趣向だったんだけど、逆にリアクション取りにくかったかな……

 

(まぁやった事は別に悔いはないし、そもそも1年に1回の催しなのに盛り上げない教会側が悪い)

 

 と、俺は心の中で悪態をついた。その瞬間、コロシアムに動きがあったんだ。それは何かが召喚される前触れ……それも反応としては非常に大きな物だ。

 

「な、何だっ⁉︎ 何が起こっているっ⁉︎ 私は何もしていないぞっ⁉︎」

 

 とまぁ主催者のネルソンが慌てている様子で……というか取り乱しすぎだろ大の大人が……

 

(でもそれか本当なら、これは向こう側……この地に記憶された誰かが呼応してこちら側に出ようとしてるって事だな)

 

 次第に反応は目の前に現れていく。目の前には巨大で紅く、複雑な紋章が出来上がっていき、それが完成されると1人の女性が召喚された。その女性は黒い衣を羽織り、濃い紫色をした髪を足元に届くくらいまで伸ばしていた。その女の目が見開かれると、その視線は俺と一直線に合ったんだ。その瞬間……彼女は笑ったんだ。まるで好敵手を見つけたかの様に……

 

「あ、あれは……アウロラっ⁉︎ な、何故ここにっ⁉︎」

 

 どうやらあの主催者は彼女の存在を知っているらしい。年齢的には60代そこらの年齢に見える……

 

(だが彼女を知っていると言う事は、それよりも何倍も生きている……つまり何らかの形で寿命を伸ばしているって事だな)

 

 ともするならば彼女は、あの出立ちで英霊級に祀り立てられる程の存在……と言う事になる。そしてあの主催者が何もせずに目の前の女の人……アウロラって人がここに来たと言う事は、単純に俺の力に惹かれて来てくれたって事だ。

 

(ならば、彼女が記憶の中の存在であれここに何十年何百年と縛られていたって事で……それはさぞ退屈だったろう。なら……)

 

 そう考えついた俺は行動した。その証拠に、今にでも攻撃を仕掛けようとしてくる彼女を手で止める。彼女は俺に止められた事でどうしてという顔をしていたが……

 

「まぁまぁそうせくなよ。アンタも記憶とはいえこの場に物凄い時間縛られたんだから、少しぐらい前座でもさせてくれよ。それで楽しんでくれたならありがたいんだが……」

 

 そう言いつつ俺は歪んだ空間を作り、そこからマイクとエレキギターを取り出した。エレキギターを取り出した瞬間、蓮の花の幾つかが少し大きめのスピーカーになる。

 

「さて……それじゃあ時間とあまりないけど、一曲歌ってみようか! 皆もこのまま戦うところだけ見るのってつまらないだろっ⁉︎」

 

 俺はマイクを通してそう言葉を発した。まぁ周りの人達はここまでに至るまで急な出来事の連続だったから呆気に取られているんだろう。まぁそんな事関係なく俺は続けていくんだが……

 

「さて、それでどんな曲をやるか何だが……そこの少年っ! 何かお題を言って欲しいんだが」

 

 俺はそこでとある少年に目をつけて言った。その少年とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(えぇ〜……何で僕に振ってくるかな〜……)

 

 僕は実家に里帰りとして誘って来た姉さんから逃げる様にここに来た。そして大きなイベントがあるからって観客として見に来たは良いけど、つまらないにも程があったよ。

 

 だって魔剣士の力量で英霊が召喚されるみたいな事言ってたからワクワクしてたんだけど、そんな事はほぼ無かったし……

 

(確か1人だけ召喚に成功してだ人がいて、結果として過去の英霊に勝ってた人がいたけれど……全くもってつまらなかったしな〜……)

 

 それで日も暮れたからそろそろ帰ろうかなと思ってたら、今度は弟のアルジの名前が呼ばれた。確かにアルジもここに来るだろう事はアルファ達から知らされていたけど、まさかアルジがこのイベント事に参加するなんて……

 

 でも呼ばれたのにアルジは姿を現さない。という事は……アルジは誰かに勝手に登録されたんじゃなかろうかと思った瞬間、僕は閃いたんだ!

 

(あれ……これって……陰の実力者として行動できるんじゃない⁉︎ しかもアルジは勝手に登録されてて出ないという事は……僕が参加しても良いって事だよねっ‼︎)

 

 よし! じゃあ早速‼︎ ……と思ってたんだけど、コロシアムの上空に紅い光が現れたんだ。あれって……どう見たってアルジの魔力だよね? そう思った瞬間にはコロシアム全体が光に包まれて、それが収まったとおもったら出入口に見慣れない門が立ってて……

 

 それで次には挑戦者の入場みたいな謳い文句が流れて、門からコロシアムの中央に向かって綺麗な花が規則正しく並んで咲いていた……って

 

(えぇーっ⁉︎ なにこの演出⁉︎ 物凄く陰の実力者っぽい登場の仕方だよねっ⁉︎ これをアルジがやってるという事は……うぅ、なんか負けた……)

 

 僕は登場の仕方にも余念無く行う派だ。いかに颯爽にカッコよく、陰の実力者の様に振る舞えるか……全身全霊で考えて実行するんだ。

 

(でもこんな大規模にするなんて……もしかしたらアルジも陰の実力者の地位を本当は狙っているんじゃ……)

 

 それで門が開いてアルジが登場した……と思ったら……

 

(うわぁ〜……結構本気なんだ……)

 

 あの姿は学園がどっかのテロリストに襲撃された時にもなってた姿で、僕はあの時初めて見たけど、それでも本気をある程度出した時の姿なんだと思った。

 

(だって遠くから見てたけど、なんか悪魔に変わってた首謀者を何回も殺して生き返らせてだんだよっ⁉︎ アルジがまさかあんなにもおっかない性格を持っているなんて知らなかったし‼︎)

 

 いや、本当にあの時アルジに敵を譲って良かったよ……確かにあの敵だったら僕でも勝てたけれど、それ以上にアルジが怖いと感じたし……

 

 それでアルジは召喚に当然の事ながら成功していた。でも召喚された英霊は、ここから見ていても凄く強いなって思える人で……あの場にアルジがいなかったら僕が戦いたいなって思ったくらいだよ!

 

 でも戦闘はすぐに行われなかった。何故なら姿を変えたアルジが戦う前に何か披露するって事になったから。見るからにマイクやギターを出したから、何か歌でも歌うのかなって思ったんだけど……

 

(まさか僕を指名するなんて思わなかったよ……)

 

 でも僕もそれなりにフラストレーションが溜まってたから、アルジの事を困らせようと思ってこんなお題を投げかけたんだ。

 

「じゃあ……愛とか未来とか、そんな感じのもので‼︎」

 

 適当に言ったけど、我ながら良い返答が出来たと思う。だから自信を持ってドヤ顔で言い放ったんだ‼︎

 

 と、シドさんは得意げに言いましたが、これをアルジさんに簡単に躱される未来を、彼はまだ知りません……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(へえ〜……兄さんっぽくない回答で驚いてるけど、兄さんもそんな事言えるんだな〜……)

 

 我ながら感心していた。いつもモブっぽい事や陰の実力者云々の中二病の様な事しか言わないし考えない兄さんが、結構万人受けする様な事を言ったもんだから……

 

(まぁでも俺を困らせようとして言ったことは分かってるけど……残念だったなぁ〜兄さん?)

 

 俺はどんな回答が来ようが準備していたんだ。まぁあまりにエグい事言われたら無視したけど……ともかく今は前座でもして盛り上げようか!

 

「愛や未来……ねぇ〜。中々良い事言うね少年‼︎ それはこの女性にもピッタリな事だと思うよ‼︎」

 

 俺はアウロラさんに手を差し伸べる様にして言った。だって彼女はここ数百年……下手したら千年何も無いところで1人きりで、しかも奴らに利用されていたと考えたら……虚しくなって仕方なくなっちまうよ。

 

 だから俺は……記憶だけでも彼女に良い思いをして欲しかったんだ!

 

「それに今日は月も綺麗だ! そんなシチュエーションにピッタリな歌を俺は知っている! まぁ説明するよりも早速歌うとしようか‼︎」

 

 俺がそう言った瞬間、スピーカーから音が鳴り響く。まぁこの世界の人達からすれば全く聞いたことのない音だろう。そもそもが俺が手に持っているマイクとかエレキギターとかも何に使うかも分からないだろうな。

 

 だが今はそんな事どうだって良い。皆から理解されなかったとしても、目の前の彼女に何か残せたら良いなと、そう思って……歌い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜こわれやすい願いだけ

 なぜこんなに あるんだろう〜

 

 

 

 その声は……明らかに女性の声だった。しかもしっかりマイクからの息遣いも聞こえているために、明らかにアルジが出しているものだと理解してしまう。たださっきまでの声とはまるで違うので、皆驚きの表情をしていた。それは召喚されたアウロラにも言える事で……ただ今まで聞いたことのない曲調と、それに乗せて合わせる歌声が……その曲を知らない者でも深みへと落としていく。

 

 

 

 

 

〜あなたがいるから 歩きだせる明日へ

 どんなときも恐れないで〜

 

 

 

 

 

 

 聞き入って聞いていたら既にサビへと入る。その頃には半数の者がその歌に意識を持っていかれていた。そんな事に関係なく、アルジは歌う。そして最後のサビの時には既にこの女神の試練を見ていた者、参加していた者、来賓できていた者や主催者でさえも聞き入っていた。

 

 そしてアウロラも……

 

「……」ツゥー

 

 表情は変わっていないものの、長年閉じ込められていた故かその歌を聞いて涙を流していた。その歌に込められた意味を理解しているから流したのか分からないが、それでも彼女もアルジの歌に聞き入っている様に見えた。

 

 歌が終わった時……一瞬だけその場を静寂が支配したものの、その場で拍手が1人分鳴り響いた。それは英霊として召喚されたアウロラからで、記憶の中の存在であっても、彼女の中にある感性がそうさせたのだろう。

 

 それに続く様に観客席からも拍手が鳴り響いた。それに対してアルジは満足そうに笑みを浮かべる。

 

 だがそこに水を刺す様に……コロシアムの中心の至る所で空間が歪んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(漸くお出ましか……)

 

 俺は確かに皆が退屈そうにしてたり、アウロラさんも娯楽が多分ない所の記憶の中で閉じ込められていると感じたから歌を歌ったわけだけど、目的はそれだけじゃあない。

 

(来た時から感じていたんだ……この場の空間が若干揺らいでいる事を……)

 

 最初は気のせいだと思っていたんだ。過去の英霊が頻繁に召喚されるのならこの揺らぎも当然であると……

 

 だが蓋を開けてみればそんな事は一切なくて、召喚が成功したとしてもそれは主催者側の意思でやっていたんだ。だからその時にその揺らぎは自然なものではないって分かった。だからこうして炙り出す事にした。

 

 その方法は……魔力を音に介して伝播させる事だ。魔力が行き渡ればその空間の歪みも露わになるだろうと思ったからだ。その思惑は当たってた様で、隠れていたかどうか分からないが、そこからまぁうじゃうじゃと機械甲冑の奴らが出て来る。

 

「(はぁ〜……また邪魔しに来たのか〜……まぁでもこうして現れたという事は)君達俺とやり合うって事で良いんだよね?」

 

 とまぁ、甲冑どもは意思疎通なんてしないから問答無用で近くにいた奴を殴る。すると1発で頭が吹き飛んで粉々になった。そして倒した奴は魔力に変換されて空間に漂うけど、それも邪魔だから回収して行く。

 

 そしてアウロラさんは……うん、素晴らしいの一言に限る。彼女は最低限の魔力操作で甲冑どもを一掃していた。その技量がもう見事で、現代の魔剣士でもできる奴はあまりいないだろうなぁ〜……

 

(特に魔力を針にして複数飛ばすなんて芸当……イプシロンでも難しいだろうなぁ〜)

 

 まぁそんな事を見つつ思いながら、俺は甲冑どもを殴っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、という事で前哨戦ぽくなりました。後はアウロラさんと戦う前にまた邪魔者が現れるという……という事は次回も……


まぁそれは次回に回しまして、今回の解説です。







解説





◾️RESOLUTION
楽曲コード:045-8566-6


『機動新世紀 ガンダムX』
2つ目のオープニングとして起用されています。





次回はアウロラさんと直接対決の描写を描いていきます!
また次回お会い致しましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。