陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

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皆様!またお越し頂きありがとうございます‼︎

さて今回のサブタイトルにもあります通り……アルジさん分身体がキレます。一体何故そんな状況になってしまったのか……

それも読み進めていただきましたら分かりますが、沸点が低いなと感じたらすいません……

ではどうぞご覧ください!


27話 復讐者、の分身体は司祭の用心棒を欠片も残さない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機械甲冑どもが乱入してきて凡そ3分……その場は完全に制圧された。勿論俺とアウロラさんの手によって……

 

(にしたって今日はこれで終わりか……)

 

 王都の時は滅茶苦茶出してきたというのに、今回は100体ぐらいしか出てなかった。まぁコロシアムにも場外から乱入者が現れない様にの措置で結界を張ってたから、それに引っかかっての数だったんだろう。

 

(でも3分ってさ……カプ麺作るぐらいの呆気なさだったな……)

 

 えっ? なに? カプ麺じゃなくてカップ麺だって? いや、別に呼び方はどっちでも良いだろう? ※因みにカプ麺とは、『◯繰れ!コッ◯リさん』に出てくるヒロインがカップ麺をそう呼びます……

 

 まぁそんな事はどうでも良いとして……その乱入者どもを一掃した後は、コロシアム中から声援と拍手が送られたんだ。因みに1番大きかった声援はベータだった……だって彼女は、なんか感動した物を見ながら「釈迦様ぁぁぁ〜〜〜っっっ‼︎」って叫んでいるのが聞こたから。だから隣のアレクシアさんがまたそれ見てドン引きしてたよ……

 

(ただ応援されるのは良い気分だよな)

 

 そしてその声援は俺だけじゃなくて、記憶として呼び出された英霊のアウロラにも向けられていた。それは当然の話で、今の時代……魔力をあんな形で攻撃に用いる人なんて見た事なかったろうからな〜……

 

(それにここまで全くもってつまらなかった催しだったんだ。皆幾らか鬱憤も溜まってたろうし、これでマシになれば良いんだが……)

 

 そんな風に考えていると、こちらを射抜く視線を感じたんだ。それはさっきまで俺と共闘して甲冑どもを屠ってたアウロラさんで、次の獲物は俺だという様に見つめてくる。

 

 だから俺も笑いながら応じたんだ。長らく待たせて申し訳なかったなと……そして自然と俺とアウロラさんは向かい合う様に立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その戦いは……アンネローゼが召喚された英霊と闘った時よりも苛烈だった。一方、アウロラは魔力で作った赤い針みたいな物を飛ばして攻撃し、もう一方のアルジはそれを事前にどこに飛んで来るか予測していたかの様に避ける。それが数回続いて……

 

「もう肩調べは十分でしょ? そろそろ本気……出しなよ」

 

 アルジからそう言われたアウロラは……まるで誕生日に買ってもらったプレゼントを開けた時の様に、瞳を爛々に輝かせた。そして今度は魔力で作った針ではなく、巨大な枝の様な物を作ってアルジに襲いかかる。アルジはそれを先程と同じく避けていくが、さっきの針とは違って枝がどんどん枝分かれして行くかの様に襲っていく。

 

 だがアルジはそれも関係がないと言わんばかりに避けていく。最初の避け方は少し大きな動作だったが、それもどんどん簡略化されていく。観客達はアルジが避けるだけの防戦一方だと考えていたが、この場にいる実力者達はそんな事を全く考えてはおらず……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ベータ

 

(あぁ……あぁ……っ! アルジ様‼︎ カッコいい……物凄くカッコいいですよっ‼︎)

 

 私は目の前で繰り広げられる戦闘を見ながら持っていたメモ帳に筆を走らせていました。目の前の戦闘が苛烈になっていくにつれて、私の筆も止まる事なく、ただ必死に記録に留めようと努めていました。でもそれ以上に……

 

(あぁ……違う方のお姿を借りているとはいえ、アルジ様が心の底から楽しんでいるのが見えます‼︎)

 

 アルジ様は確かにいつも笑っていた。でもそれは他者を思いやる物ばかりで……ひょっとしたら私はあの方が浮かべる本当の笑みを初めて見たかもしれません。

 

(アルファ様が偶にアルジ様に対して惚気てしまうのも分かります。あんな顔を見てしまったら、私ももっと貴方様の側にいたいと思ってしまいますから)

 

 そして私がメモをとり始めて数分後……アルジ様とアウロラと呼ばれた英霊との戦闘は決着しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんなに心躍る戦いはいつぶりだったろうか……俺の顔は今……とても晴れ渡っていると思う。そして攻撃を仕掛けてくる彼女の顔も……長年の退屈から一時的に解放されたのか笑っていた。

 

(あぁ……本来の戦いはこういったものじゃないとな)

 

 ん? 戦闘狂の様な発言をしていると? いや勘違いしないでほしい。俺はただ久々に戦闘が楽しいものだなと感じただけなんだ。最近だと誰かを守ったり、誰かの力を限界まで引き延ばしたり、異界からやって来た奴をコテンパンにしたりとか、そういった事ばかりだった。まぁ誰かを守る戦いというのが俺の性に合ってると感じるが……

 

(力をセーブしてるといっても、こうやって真っ向から俺の2割ぐらいの出力で戦える人はあまりいないからな)

 

 そう、今は2割ほど力を出している。それ程までに相手が強く、戦い方が上手い。相手を寄せ付けない弾幕を張る様な高等テクニックと、それを絶対のものとしている魔力操作……

 

(こういった相手と手合わせ出来るなんて、そうそうないからな)

 

 こういった技量を持つ相手と言えば……異世界でいう所の魔王とかだな。四天王と名乗る奴らもそれなりだったが、魔王になると段違いで実力が変わってくる。まぁ同じ様な設定の世界に繰り返し転生してしまえば、実践と経験値を積み重ねた俺の敵ではなくなってしまった。

 

(でもこの人の実力は、これまで巡って来た世界の魔王以上の実力だ!)

 

 ただ残念な事に……彼女はこの地の記憶だ。だから彼女本来がこの場で戦っている訳じゃあない。そう考えてくると虚しくなって……彼女の事が可哀想に感じる。もし彼女が生きていて、この場に何らかの形で囚われているのなら俺はそれを助けたいと思う。

 

(まぁそれは願望に過ぎないから出来たらの話だけど……)

 

 そう思った俺は、名残惜しいなと思いつつも次に来る攻撃を最小の動きで躱し、一気にアウロラさんに接敵する。

 

 それに対してアウロラさんも読んでいたのか、俺目掛けて赤い魔力で槍を数本作り、俺の方へと飛ばしてくる。

 

 予想外にその槍が俺に向かう速度は速かったが、まぁ避けれない速度ではないので普通にアウロラさんへと接敵しながらこれも最小限で避ける。

 

「君の現状での本気を見せてくれたお礼だ。俺も君に見せよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

廻れ! 六道‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の持つ六道棍のマニ車の様な所が回り出して、巻物状の物が飛び出る。そして俺が持つ錫杖は形を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参之道・人間道不空羂索観音 金剛独鈷剣(アクサッヤー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 錫杖は短剣の様な形に姿を変える。確かに錫杖の時の方がリーチは長いが、だが今も俺に枝を伸ばしたり赤い槍を飛ばしてくる彼女の攻撃に対応するのであればこちらの方が良い。

 

 接敵している今も背後からは枝が伸びる様に鋭い針が、そして正面からは赤い槍が飛んでくる。それを俺は、さっきまで躱していたのを短剣で全て捌いた。

 

「っ⁉︎///」

 

 それを見たアウロラさんの顔は、驚きの表情を浮かべていたものの、まるで凄いと褒める様に笑ってくれた。

 

(あぁ……これが本当のあなたとだったらどれだけ楽しかっただろう……でもそれももう終わりだね)

 

 俺は今も笑ってるアウロラさんを通り過ぎながらお腹を横に一閃した。

 

 その後少しの静寂がその場を支配して、俺はアウロラさんの方を向く。それと同時にアウロラさんも振り向いていたのか、俺と目が合った。

 

 そして……ニッコリと笑ってくれて、ガラスが砕ける様にその場から去ってしまった。その破片が風に乗って俺の方に来る。俺はそれを掌で優しく掴んで、見つめた。

 

「アウロラさん……」

 

 俺がそう呟いたら、その破片はまた風に飛ばされて俺の手から離れて行った。破片は空に舞って行って、それを俺は自然と視線で追いかけて行ってたんだ。

 

 夜空に溶ける様に無くなった破片を見て俺は……自然と涙を流していた。

 

(あぁ……異様に悲しいなこれは……)

 

 ただずっと泣いているのも他の人達が意気消沈してしまうだろうと思った俺は、流れ出る涙を拭って出口へと歩いていく。

 

「しょ、勝者! しゃ、釈迦ぁぁぁっ‼︎」

 

 そこで漸く勝利宣言の合図がなされて、俺は釈迦になってる時の決めポーズ……右手の人差し指と親指を直角に伸ばし、手の甲を正面に向け天高く掲げなから出口に歩いて行った。その間見ていた人達からは盛大な拍手で迎えられたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出入口を潜った瞬間に、魔力で作った扉は煙を出しながら消して、それに気を取られている人達の目を盗んですぐ様変身を解いた。そしてその場から遠い所に離れていく。

 

(ここまで来れば大丈夫か)

 

 にしてもアルファ達の調べたい事って……多分さっきの英霊云々の事だよな。アウロラさんが出現した時に現れた扉……多分あれが関係ある事だと思っているが……

 

 俺がそう考え込んでいると、俺の目の前にアウロラさんが現れる前に出て来た赤い紋様の扉が出てきた。

 

(……俺を誘っているのか?)

 

 正直この扉……俺がここを離れても付いてくる仕組みだと直感で理解した。

 

 ここで俺が取れる選択肢は2つある。

 

 まず1つ目は全速力でリンドブルムから離脱して、あの赤い扉が諦めてくれるかを試すのと、それでもう1つはこの誘いになる事だ。試しに攻撃してみても良いが、それは意味が無いと感じるし……

 

「(それにコロシアムの方にも同じ様な扉の気配を感じる……という事はあっちではアルファ達が動いているという事か)なら俺も手伝うか」

 

 このまま戻っても暇だった為に、俺はその赤い扉に飛び込んだ。

 

(ただあっちでも不測の事態が起きるかもしれない……分身体を置いておくか)

 

 扉に完全に飛び込む前に俺は分身体をその場に1体出し、コロシアムの方に行ってアルファ達に何か危機的な事が少しでも迫ったら排除する様に指示を出して、扉を潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アルファ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ……彼の歌、とても綺麗だったわ♡)

 

 アルジか楽器を扱えるというのは、イプシロンを筆頭に他の子達からも聞いていた。多分あれも今まで巡ってきた世界で身に付けたんでしょうけど、彼がどれだけ努力してきたのかが分かるわ。

 

(でもまさか女性の声も出せるなんて……そんなの聞いた事がなかった。あの子ったら本当にハイスペックね)

 

「うぅ〜……アルジ様の歌……とても良かったのです〜♪」

 

 私の隣ではフードを被ったデルタが尻尾を振りながらそう言っていたわ。

 

「デルタもそう思うかしら?」

 

「はいなのです! アルジ様はやはり何事においても最高なのですっ‼︎」

 

「ふふっ、貴方らしい素直な意見ね。さぁ、そろそろ頃合いかしら」

 

 目の前ではアルジとアウロラと呼ばれた英霊が戦っていたけど、それもアルジがアウロラを一閃した事で勝負がついた。会場はそれで歓声に包まれていたけど、ジャック・ネルソンと呼ばれたこの催しの主催者であり司祭は信じられないといった顔をしていたわね。

 

(まぁアルジが過去の英霊如きに負けることなんてないけど……)

 

 でも私は見てしまったの……彼が泣いている姿を。多分あれは……私達以外で本気を出す程度に戦い合える人で、その人との勝負が楽しかったから……それが終わって少し寂しかったから流した涙にも感じたわ。

 

(少しやるせない……かしら。アルジにあんな顔をさせてしまう私達は)

 

 私達も偶にアルジから直接模擬戦を受ける事はあるわ。その度に彼は私達の実力を今以上に引き上げてくれるから、毎回良い鍛錬になっていると感じるの。

 

(でもあんなに楽しそうな顔……思い返せばしていなかった様に感じるわ)

 

 彼はいつも笑みを浮かべているけど、状況によってその笑みの内容も違ってくるわ。いつもの様に他者に寄り添う笑み、困った笑み、相手が成長していると感じ取って楽しそうな笑み……あげたらキリが無くなるけど……

 

(でも今日の笑みは……アルジ個人が楽しんでいた笑みだった。自分の全力を少しでも試せる様な、そんな……)

 

「アルジ様……泣いてる……アルファ様、裏ボスの事……慰めた方が良いと思うのです」

 

「デルタ……えぇ、本当なら私もあんな顔したアルジの事を今すぐにでも抱きしめてあげたいわ。でも今は……任務に集中よ。彼の事は……後からでも慰める事は出来るのだから」

 

「うぅ……分かったのです……」

 

「聞き分けが良くて助かるわ。なら、そろそろ行きましょう」

 

「はいなのです」

 

 そして私とデルタは、ベータがいる来賓席へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ネルソン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(し、信じられん……まさかアウロラが破れるとは……)

 

 儂は知っている……あの存在がどれほど強大な力を持つ者なのかを。例え記憶上とはいえ、並の魔剣士が勝てる相手では……

 

(いや、そもそもあの者は魔剣士だったか? 最後に確かに剣の類は見せたとはいえ、あれはもともと杖の様な形だった筈……それが変化した? だがどうやって……んんっ⁉︎)

 

 そこで私はコロシアムの中央で異変を感じたのだ。それは、アウロラが出現した時に出てきた赤い扉で、それは徐々に大きく形作られていく。だがこんな時に出て来るなど……

 

「(いや、そんな事を今考えている暇はないっ! この扉の存在は秘匿しなければっ‼︎)今を持って女神の試練を中止する! 神官達はここにいる者達を速やかにこの場から退避させる様に! 観客達に被害が出る前にだ‼︎」

 

「「「はっ‼︎」」」

 

 儂の近くにいた神官達が観客達を避難させる。さて、儂も来賓に来た方々の避難誘導をしなくては。

 

「こ、これは一体……」

 

「説明は後です! 今はこの場から一刻も早く退避w「動くな」っ⁉︎」

 

 その声に儂は我に返った。気が付けば黒装束に頭まで黒いフードを纏った者達が来賓の3人含めて取り囲んでいたのだ。

 

(こ、こやつら一体どこからっ⁉︎)

 

「そこのハゲ……動くな。動いたら容赦はしない」

 

「は、ハゲっ⁉︎」

 

 フードから覗く水色の様な髪を垂らした者がそう言う。た、確かに私の頭の天辺は禿げてはいるが……だが儂だって好き好んで禿げた訳ではない! 断じて違うぞ‼︎

 

「さ、さっきから一体何が起こったというんですか?」

 

「あ、貴方達何者っ⁉︎」

 

「うぅ〜……怖いですぅ〜」

 

「そこの3人も静かにしろ。特にそこのデカ乳メガネ女っ! これ見よがしにその駄肉を揺らすな見せつけるなっ‼︎」

 

(えぇ……なんかこの者……ナツメ殿に対して物凄く厳しく無いだろうか?)

 

 確かに儂も綺麗どころを来賓として呼ばせてもらった。女流作家のナツメ・カフカ先生も噂に違わず綺麗だった為に呼んだが、まさかここまで綺麗な人物とは儂も思っておらなんだ。

 

 だがこの襲撃者……自分も立派な身体付きをしているというのに、何故ナツメ先生にくってかかる言い方をするのだろうか?

 

(だがそれも今の内よ)

 

 儂は用心棒のヴェノムに合図を出した。あの者は儂が有する用心棒の中でも特に腕の立つ者。今儂らを取り囲んでいるのは今我らに敵対する者共、『シャドウガーデン』の者達だろう事は特徴的に分かる。そして油断しきっている今であるならヴェノムでも容易く処理できる筈……

 

 そして合図を出した瞬間……あの水色の髪を垂らしている者は死に体となっているだろうと……そう思ったのだ。だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは突然の事だった。ネルソンの合図で潜んでいた天井裏からイプシロンに襲いかかるヴェノム。それはイプシロンも不意を突かれはしたが、それでも反応できる速度だ。彼女は後ろに上体を曲げて首を一閃しようとするヴェノムの刃を躱そうとした。だが……

 

(あっ……このままだと私の……)

 

 イプシロンは……スライムで盛っている。それはプロポーションを良くする為にでもあるし、とある人物に対抗する為に盛っているのだが……その部分が丁度ヴェノムが振るう刃の一閃の被害にあってしまうのだ。それを一目見てもう少し深くのけぞらせようとするのだが、盛っている部分はスライムであり、弾力も自然に身に付けている者と同じくらいなのだ。例えのけぞりを深くしたところで……残念ながら結果は変わらない。

 

 そしてヴェノムの一閃がイプシロンの胸部……スライムで盛られた所を斬り取ろうとする正にその瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イプシロンの耳に微かにそんな音が聞こえた。それが聞こえたからヴェノムの攻撃が来ていない事に気付いて、のけぞった体勢から一回その場でバク転をした。そこで見たものは……

 

(えっ……? あ、アスタロト様……?)

 

 それはこの場から去った筈のアルジ、それも『シャドウガーデン』として活動する時に身に纏うスーツや中折れハットを着たアルジがヴェノムの一閃を片手で白羽どりをしている姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 分身体アルジ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(本体が俺をここに行くように指示して良かった)

 

 俺はイプシロンを襲おうとした下手人の刃を片手で白羽どりしていた。その刃は、重さはないものの他者を傷付けるに足る程のものではあった。イプシロンも避けようとしたが、あのままでは……イプシロンが大事にしてきた物が傷付いてしまう所だった。

 

 まぁそれも魔力操作でどうにでもなる事は分かってるんだけど……でもイプシロンが傷つく所なんて見たくなかったしなぁ〜……それに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の大切な人達を傷付けようとしたんだ……タダでは返さない(復讐してやる)……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、イプシロンを傷付けた代償は……まぁ結果的にこの世からおさらばさせるというのは確定事項だが、さてどう相手を苦しませようか……

 

「〜〜〜っっっ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 あぁ、どうやら相手は俺が考えている内に勝手に漏れ出た魔力の圧に完全にビビった様子だった。

 

(まぁ相手がどんな反応しようがやる事に変わらないけど……)

 

 俺は相手に死刑宣告を言い渡す様に……その一言を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side イプシロン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が攻撃を受けそうになった時、目の前にアスタロト様が現れて敵の攻撃を防いでいたの。それもいつ来たのか分からないタイミングで私と相手の間に入って……相手の振るおうとした攻撃を片手で受け止めていた。

 

(あんな芸当……どうすれば身につくのっ⁉︎)

 

 私の……胸と相手が振るった刃はそこまで離れていなかった。それも数十cmくらいしか離れたなかったと思う。それに相手の振るってきたスピードを加味しても、私の胸……を一閃しようとするのに1秒とかからなかった筈なの。

 

(そんな状況で、どうやったら今の状態が作り出す事が出来るのかしら……)

 

 私は上体を逸らしていたから見えていなかった。だからこの場に向かっているアルファ様か……若しくはデカ乳女にでも後から聞けば良いわね。

 

 そう考えていると、アスタロト様から漏れ出る魔力が物凄い事になっていたの。その漏れ出た魔力が何か形作るくらいに……そしてアスタロト様の背後には、魔力で形作られた人型の何かが立っていたの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オイテメェ……俺の大切な人を傷つけようとしてタダで済むと思ってる訳ねぇよなぁ? あぁっ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(っ⁉︎/// えっ? えっ⁉︎ な、何この感覚……⁉︎ こんな感覚……経験した事ないわ……)

 

 そう言ってしまうと、少し語弊が感じられるかもしれない。今感じているこの感覚……感情かしら? これは……そう、シャドウ様の事を想った時と似ていた。このプロポーションを手に入れたキッカケもシャドウ様の『陰の叡智』から授かった物……だから私はスライムの形質変化に力を置いた。全ては天然物に勝つ為に……そうしたら魔力操作も比例して上手くなっていったわ。

 

(だからシャドウ様が私の身体……胸とかお尻とかに視線を向けてくれた時は嬉しかった!)

 

 そうやって意識してくれる事が嬉しくて……またそういった視線を向けてもらえる様に私は頑張っていったわ‼︎

 

(でも今アスタロト様に抱いているこの感情は……シャドウ様に抱いていた物よりも更に敏感で、それに身体全体が温かくなっていく様な……)

 

 不思議な感覚で……でも嫌な感じじゃない。寧ろこのまま温かい物に包まれていたいと感じてしまったの。

 

(ただ何でこんな時に……アスタロト様が私の事を大切だと言ってくれたから? ……っ⁉︎)

 

 そこで私は見てしまったの……アスタロト様と敵の向こう側で……アスタロト様に対して狂気に近い様な視線を送る……デカ乳女を……

 

(って、なにあの表情っ⁉︎ あんなに目を見開いて瞳の中も滅茶苦茶キラキラしてるっ⁉︎ 口もなんか興奮した様に開けて……なんかこっちにまで息遣いが聞こえてくるみたいなんですけどっ⁉︎)

 

 そんな自らのライバル(身体のプロポーション的に)の狂気……というよりも異質な表情を見てしまったイプシロンさんは……物凄くドン引きしていたと言います……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ベータ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハァ……ハァ……あぁ……アルジ様凄くカッコいい……もっと見せて下さいその表情をっ‼︎

 

 私の顔は多分……誰にも見せられない表情をしている事は私が1番よく分かっています。でも、アルジ様のこんなカッコいい姿を目の前で見せられてはそれも仕方ないというもので……

 

(あぁ……相手を睨み付ける()()()、体幹がブレてない立ち姿、刃を止める指先の美しさ、そして何と言っても……貴方様から漏れ出る圧倒的な魔力‼︎)

 

 少し離れているのにここまで届く……その証拠に私の肌が貴方様の魔力に触れて敏感に……んっ///

 

(あぁ、ダメよベータ……こんな他の人がいる所で無様な姿を晒す事はあってはならない事! だから今は我慢よ我慢っ‼︎)

 

 でも私の顔はそんな思いとは真逆でアルジ様の姿に興奮していて……向こう側にフードを被ったイプシロンが見えるけど、あの顔……多分私の顔を見てドン引きしているんだと一目見て分かった。

 

(でも貴方もアルジ様の事を想う事があれば絶対にこんな表情をしてしまう筈! だから今はドン引きしてなさい!)

 

 とまぁ、ベータさんの思った事はさておき、イプシロンさんもこの事をキッカケにアルジさんへの恋慕を募らせていくのは時間の問題でした……

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは一瞬の事……正直目の前で見ていたヴェノムもそうだが、ヴェノムを用心棒としていたネルソン、そして来賓として来ていたアレクシアとローズも何が起こったか分からなかった。

 

 何が起こったのか……それはアルジがヴェノムに対して攻撃を仕掛けた事だ。まず白羽どりしていた刃を握力で完全に握り潰した。その後刃を握っていたヴェノムの手首を掴み、握力に物を言わせて骨ごと粉砕する。

 

 粉砕した後は直ぐにヴェノムの腕を引っ張って自分に引き寄せて……もう片方の手でヴェノムの顔をタコ殴りにする。それはさながら高速のデンプシー・ロールに近い。殴って相手が少し仰け反ったら掴んでいる腕を引っ張り、自分に引き寄せられる様にして来た相手の顔をまた殴る……この繰り返しだ。まぁ今回は片腕のみなので、これが両方で行われた日にはもっと凄惨になっているだろう……

 

 その後は、まるでもう用はないと言わんばかりにヴェノムをコロシアムの上空に片手で投げ飛ばし……

 

「俺の大切な者に手を出した罰だ……滅べ

 

 左手に魔力を集めて、それを上空のヴェノムに向けて光線の如く放った。その光線は紅く、直径は余裕でヴェノムをすっぽり覆えるほどである。上空にいるヴェノムは、僅か1秒経つかどうかの間にアルジから特に顔面をボロボロの状態にされ、自分が今どんな状況になっているかも分からないまま紅い光線に飲み込まれて……その光線が放ち終わる頃には肉片一片も残っていなかった。

 

「な、なにが……」

 

 それはヴェノムを用心棒としていたネルソンが呟いた言葉で……目の前で見ていた筈なのにいつの間にか姿を消していた。その瞬間には目の前の黒ずくめ……黒い帽子を被っていて素顔が分からないが、そこから紅い光が一瞬見えただけで……

 

(こ、この者……何なのだ……? ま、まさかこの者も『シャドウガーデン』なる組織の1人なのか? も、もしそうであれば……)

 

 これはラウンズ1人で対処出来る問題ではない……そう考えていた。ここにいるネルソンは、『ディアボロス教団』のラウンズに属していた。序列は11席……12人いる内の中では低い方ではあるが、とある分野においてはその中でも目覚ましい才能があった為に今の地位にいるのだ。

 

 だがヴェノムを、どんな手段を使ってこの場から退場させたのか分からないが、それを目の前にいる黒帽子を被った存在は何も特別な事はしていない事の様にやってのけたのだ。そんな相手を……ラウンズの1人2人いた所で状況など変わる事などないと思った。

 

「ふふっ……いつもの事ながら凄いわね」

 

 そこに現れたのはアルファとデルタで、ネルソンからしてみればこれ以上何かが来て欲しくないと思った。

 

「あぁ……まぁ俺の大切な者に手をあげたんだ。あれぐらいやって当然の事さ」

 

「そう、まぁ貴方ならそうするわよね」

 

「流石裏ボスなのですっ!」

 

 アルファは分身体のアルジに対して、アルジならそうするだろうという理解を示し、デルタは素直に褒め称える。それに対してアルジの分身体は……帽子で表情は伺えないが、少し俯いた。そこから頬の下側が少し見えて、そこが少し赤くなっている。それに気付いたアルファはアルジを可愛らしいと感じた。

 

「……さ、さて、ここでの脅威はもう感じられない。後は君達に任せても良いか?」

 

「えぇ、後は私達に任せてちょうだい」

 

「あぁ……無理はしない様にな」

 

 そう言ってアルジの分身体はコロシアムに出現した赤い紋様で出来た扉に飛び込んだ。するとアルジ分身体はその扉に吸い込まれる様にこの場からいなくなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アルファ

 

 

 

 

 

 

 

「全く……その台詞は私の台詞だと言うのに……」

 

 私はアルジが言った言葉にそう返した。といっても目の前にいたのは多分アルジの分身で、本人はきっと既にあの中のどこかにいる。でも彼と彼の分身体はリンクしていると本人からも聞いたし、さっきの言葉は紛れもなく彼の本心から出た言葉……。その言葉自体は嬉しく想うのだけど……やっぱり彼にこそその言葉を贈りたいと思うわ。

 

(だって彼は……ずっと頑張って来たんだもの。だから少しぐらいは私達にもその重みを分けて欲しい……)

 

 そう思ったけど、この場にアルジはいない。だからこの事が終わったらあの子に言いましょう。

 

「さあ……扉も後少しで閉まる事だし、私達も行動しましょうか」

 

「ハッ! おいそこのハゲ、一緒に来てもらうぞ?」

 

「なっ⁉︎ い、いつの間にこの儂を⁉︎」

 

「それとそこのデカ乳女も来いっ‼︎」

 

「えっ⁉︎ きゃっ⁉︎」

 

 イプシロンがネルソンを拘束して、ベータを他の子が担いだ。それを確認した私は、赤い扉に入る。その時……

 

「あ、貴方達の目的は何なの⁉︎ それにこの現象は……」

 

 ミドガル第二王女のアレクシアさんが私を睨みつけながら聞いてくる。その時の瞳が、あの夜に会った赤い髪を持つ第一王女と同じに見えて、確かに姉妹なのねと感じた。まぁそれだけだけど……

 

「あなた達には関係ない事よ。危険な目に遭いたくないのなら、ここから早々に立ち去ることね」

 

 その言葉を残して、まず私とデルタがその扉を潜る。その後見えたのは、ネルソンを拘束したイプシロンと、ナツメに変装したベータを担いだ他の子達が順番に扉を潜る所だった。

 

(見せて貰うわよ……ここに隠れている真実を)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アレクシア

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直目の前の事に私は思考が停止しかけていた。そしてあのタヌキ親父とナツメを拘束して連れて行った黒装束の人達……あれが噂に聞く『シャドウガーデン』という組織なのかしら?

 

(姉様からも話には聞いていたけれど……見た感じ私と歳は対して変わらない様に見えた……)

 

 でもあの歳であの身のこなし……アルジくんとまではいかないけど、それに似通っているものを感じたわ。

 

「こ、これからどうすれば……」

 

 隣では私と同じくいきなりの事が連続で起きたせいで思考が定まっていないローズ先輩がいる。

 

(いや……考えてもダメね。あの金髪の女の人は危険な目に遭いたくないなら去れと言ってたけど……そんなの私が納得出来ないっ‼︎)

 

 そう思った私はその赤い扉に飛び込もうとした。でもそれに気付いたローズ先輩が止めに入る。

 

「ま、待って下さい! あの赤い扉がどこに繋がっているかも分からないのに‼︎」

 

「確かにどこに繋がっているか分かりません。でも私はこのまま何も知らないで生きたくないんです! ミドガル王国の第二王女としても、『紅の騎士団』の一員としても……。これは私達の平穏を脅かす様な事かもしれない。だからこそ私も知りたいんです! この場で、私達の近くで何が起こっているかを‼︎」

 

「アレクシアさん……」

 

「ごめんなさい先輩……私行きますから!」

 

 そう言って私はその赤い扉に飛び込んだ。『シャドウガーデン』らしき人達が飛び込んでから扉は縮小しているけど、今からでも間に合うと思って飛び込んだ。

 

「あぁもうっ! 待って下さい! 私も行きますっ‼︎」

 

 そんな声が後ろから聞こえた時には、私は赤い扉に触れてどこか違う所に飛ばされる感覚がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、今回はアルジさんの出番はほぼ無い状態で書きました。まぁ分身体は活躍してましたけど……

とまぁそれはそうとしていきなり解説です!


解説


◼️カプ麺
『繰繰れ!コックリさん』に登場するヒロイン、市松こひながカップ麺の事をそう言っている。偶に『カプムー』や『カプヌー』など言ったりしている様だ。

◼️ 参之道・人間道不空羂索観音 金剛独鈷剣(アクサッヤー)
『終末のワルキューレ』にて釈迦が神器として扱う六道棍が変化した状態の1つ。両刃の短剣やナイフといった形で、その大きさ故に取り扱いがしやすく、相手の四方八方から放ってくる攻撃に対して柔軟に対処出来る。今回は前と後ろ同時に攻撃が飛んで来た際、まず前から飛んで来たアウロラの攻撃を斬り刻み、その振るった反動で後ろから伸びて来る枝状の攻撃を斬り刻んだ。

◼️デンプシー・ロール
ボクシングで扱われる技名の一つ。相手のインファイトに潜り込み、上半身を左右に8の字で揺れ、その反動を用いて右、左とパンチを相手に繰り出していく。今回アルジは片腕はヴェノムの腕を掴んでいた為に、空いている方の手でのパンチになった。しかし殴った瞬間にその反動を利用して相手を掴んでいた方の腕で引き寄せる動作をしていたので、擬似的にデンプシー・ロールに見えなくも無い。



さて、次回はいよいよ赤い扉の先へと向かったアルジがとある人物と出会う事からスタートしていきます!まぁ4章の折り返し地点になりますが、私も最後の終わり方は構想しているので、それに続く様に書いていきます‼︎

それではまた次回もお楽しみ下さい!
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