陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

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皆様1ヶ月ぶりでございます。またこんなにも遅れてしまい申し訳ありません。書いていく中でアルファとネルソンの会話をどう消化していこうか迷った挙句、他の方々の作品に目移りしてしまってこんなに伸びてしまいました……申し訳ありません。

さて、今回の話でそろそろリンドブルム編も終わりに近付いてきました。いつものペースであればアニメ1期の終わりに近付いていたのですが……

待ちかねた読者の方々にはいつ1期終わらせるんだと思っている方々が多いかと思いますが、なんとかペースを取り戻して書いていこうと思いますので何卒よろしくお願いいたします!

それでは本編をどうぞ!


28話 復讐者、ハゲにキレる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ベータ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は今、聖地リンドブルムで『ディアボロス教団』が隠していた聖域に侵入を果たしていた。『シャドウガーデン』の構成員に人質として担ぎ込まれた形にはなったけど、それも計画通りに進行していた。なので私は侵入を果たした後、ここを調べる班の子達に指示を出していた。

 

 そんな時……

 

「「わぁぁぁぁっ⁉︎」」

 

 そんな声が聞こえたと思って振り向いたら、アレクシア王女とローズ王女が何故か私の方に落ちてきていた。それで私は2人の下敷きとなって、あろう事かこの腹黒女は私の胸を触ってきた。

 

「(この身体の殆どはアルジ様の為のなのに……なんて所を触るんですかっ‼︎)アレクシア王女? どさくさに紛れて変な所を触らないでくれませんかぁ〜?」

 

「私も好きでこんな大きな脂肪の塊を触ってる訳じゃないのよ〜。ごめんなさいねぇ〜」

 

「ちょ、2人ともこんな所で変な言い争いはやめて下さい!」

 

「そういうローズ先輩もいつまで乗っかているつもりですか? 重いので早く退いて下さい」

 

「お、重っ⁉︎」

 

 はぁ〜……なんでこうなってしまうんでしょう? まぁ重いのは事実なのでもうそろそろ退いてほしい所ですけどね。

 

 そこにアルファ様が近付いてくる。フードから伺える表情は、真顔と言うべきか呆れている顔と言うべきか……多分どちらでもあると思います。

 

「ごめんなさい。私達もあの場から去ろうと思ったんだけど、躓いちゃったの。それで躓いた先があの赤い扉だったから、私達もここにきてしまったのよ」

 

 アレクシア王女が私の上から退いてアルファ様と対面する様に立ちながらそう言った。それにしてもこの腹黒王女……誰でも分かる様な嘘を平気で……こんな王女がアルジ様の隣を歩いているなんて……

 

(とても……とても許し難い事です……)

 

 多分アルジ様はこの王女の性格も知っている。知っているのに友人として振る舞っていて……あんなに親しそうにして……

 

(本当は私がそこにいたいのに……)

 

 『ディアボロス教団』の事を調べる為に女性作家にはなったものの、有名になり過ぎてしまった。その弊害で私は外で気軽に特定の誰かと過ごすことも出来ない……

 

 確かに『シャドウガーデン』の中では自由ですが、外の世界では“ナツメ・カフカ”としての顔がある。だから外でアルジ様とプライベートに過ごす事が難しくなってしまったと、自分では思っている。

 

(アルジ様は絶対的な力を持っているといっても……外では地方領主の次男。王都の有力貴族ならばまた別だったかもしれませんが、プライベートな所でもしナツメとして私と一緒に過ごしている所を知られたら……アルジ様に迷惑がかかってしまう)

 

 そんな事は絶対にあってはなりません。あの方はただでさえ多忙な方で、学業以外でも『シャドウガーデン』の方に赴いて視察する事は勿論の事、コトハさん達の所にも行っています。そこで戦闘のイロハを指南されてる事も聞きますし……

 

(なのに……なのに何故この女はアルジ様が身を削っている事も知らずに気楽に一緒に過ごしているのですかっ⁉︎ そんなの……私……

 

 でも今は任務中で……私情を挟むべきでない事を理解しています。ですからここは我慢に徹するとしましょう。

 

「……はぁ。ここに来てしまったものは仕方ないわ。それに……貴方達にも関係がある事かも知れないから」

 

 アルファ様は呆れながらもその2人にそう言いました。

 

「ここが聖域……ですか」

 

 ローズさんが辺りを見回しながら言う。今を生きる人達からすれば想像できない様な施設でしょう。何せこの部屋全体が鋼鉄の素材で出来ているのですから。

 

「英雄オリヴィエが魔人の残骸……左腕を斬り落としてここに封印したと言い伝えられている地ね」

 

「フンッ! その左腕を探し求める為にここに来たとでも言うのか⁉︎」

 

 アルファ様の言にネルソンが噛み付く様に反応した。まぁこの司祭については、調べたらキリが無いほど真っ黒な情報が出てくる。多分ここにもその証拠があるからこその反応なんでしょうが。

 

「それも面白そうだけど……私達の目的はその事ではないわ。『ディアボロス教団』の事についてよ?」

 

「でぃ、ディアボロス⁉︎ し、知らんっ! 儂はその様な事など何も知らぬぞ⁉︎」

 

「口で言うのは容易い事。だから見てみましょうか……この地で起こった記憶を」

 

 そう言ってアルファ様は、巨大な扉の前に設置された石像の方に歩いていく。

 

「英雄オリヴィエの像。これが本物という事ね」

 

「英雄オリヴィエ⁉︎ ですがオリヴィエは男の筈では……」

 

「確かに物語の中では男として描かれているわ。それも教団側が今の秩序を維持しようとした結果でそうなった事も知っているわ。そして……何故オリヴィエの顔と私の顔がこんなに似ているのかも」

 

「っ⁉︎ え、エルフ⁉︎ な、何故ここに⁉︎ 英雄の血に耐えきれずに『悪魔憑き』として死んだ筈っ⁉︎」

 

「やはり知っているな!」

 

 アルファ様がこちらに振り向きながら今まで被っていたフードをスライムに戻した。それで顕になったアルファ様の顔を見たネルソンが、まるで信じられない顔をしながら反応をして、それに対してネルソンの腕を後ろで固定していたイプシロンが少し怒りを滲ませながらネルソンに迫る。

 

「まぁ私が何故生きているかなんて今はどうでもいい事よ。それよりも今は……」

 

 そう言ってアルファ様はオリヴィエの像に自分の魔力を流し込む。それを遺跡が完治して、オリヴィエの像の後ろにあった扉がゆっくりと開き始める。

 

「な、何故起動するっ⁉︎ や、やめろ‼︎ それ以上は……っ⁉︎ お、オリヴィエっ⁉︎」

 

「あ、あれが英雄オリヴィエ……」

 

 アルファ様の隣に本物のオリヴィエが現れて、ネルソンはそれに肯定の反応を示しました。そして隣にいたアレクシア王女も驚きを隠せない様子で……

 

「さぁ行きましょうか。魔人ディアボロスと『ディアボロス教団』、『悪魔憑き』の真実を知る為に……少しだけの時間旅行へ」

 

 アルファ様のその言葉でこの部屋全体が白い光に包まれて、私達が次にいた所は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はあの赤い扉に入ったと同時に、全く知らない空間の中を歩き続けていた。そして漸くと言ったところで違う部屋に繋がっているであろう扉を見つけた。その扉を開くと、目の前には……

 

 

 

 

 

 

 

「あら……こんな所に人が迷い込むなんて珍しいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 女性が白い服を着た状態で椅子に拘束されていた。その人は、女神の試練の時に戦った……アウロラさんだった。

 

「アウロラさん……で合ってたかな?」

 

「あら? 私の事を知っているの? といっても、あなたが私と戦ってくれたのよね?」

 

「そう、ですね。にしてもよく気付きましたね」

 

「まぁ……確かに姿形や魔力の質も若干変わってたけから分かりにくかったけれど、でも本質的なところは変わっていないなと感じたのよ」

 

「本質的なところですか……」

 

「えぇ。なんと言ったら良いか表現がし辛いけど……あなたの瞳とか立ち姿とか……その雰囲気で分かった、みたいなものかしらね?」

 

 アウロラさんは首を傾げながらも答えてくれた。まぁあの戦いの中では俺もアウロラさんも相手の目を見て対話しながら戦っていたから、だから分かったんだろうな。

 

「それにあんなに楽しいと感じた戦いなんて久々……いいえ、初めてだったと思うから。記憶は曖昧だから定かではないけれど、それでもあなたとの戦いは楽しいと感じたわ。あなたが私と同じ時代で生まれてくれていたらって」

 

 笑みを浮かべながらそう言われた。その笑みから見るに、ここに長い間閉じ込められていると感じられるくらい……退屈だったからこそさっきの戦いが嬉しくて、楽しかったんだろうって……そう思ったんだ。だから……

 

(どの様な理由であれ……アウロラさんをここに閉じ込めた奴は許さねぇ……復讐してやるよ……彼女が感じた苦痛を何倍にもした上でな

 

「それにしてもあなたのことをもっと知りたいと思うのだけど……こんな所だと窮屈に感じてしまうわ。だから歩きながらお話しをしてみたいんだけど……」

 

「あぁ……確かにずっと縛られていたんですよね? なら今からその拘束を……(いやちょっと待て俺)」

 

 俺は剣でアウロラさんの拘束を解こうとしたんだが……何か嫌な予感が過ぎってその動きを止めた。

 

「どうしたの? 早く拘束を解いて欲しいのだけど……」

 

「い、いやですね……拘束を解こうとは思っているんですけど……その白い装束の下に何か身に付けては……」

 

「……あぁそういう事ね。何も身に付けていないわ」

 

「あ、あぁ……後ろを向いてますので……」

 

「後ろを向いたら拘束を外せないじゃない」

 

「そこは安心して下さい。行け、ファング」

 

 俺がそう呟いたら、俺の上着の内側から2つほど小さい物、ファングと呼ばれる武装が飛び出した。それは紅い軌道を描きながら、器用にアウロラさんの拘束を斬り裂いてほどいていく。それが済むとファングは俺の上着に戻っていった。

 

「んっ、んんっ〜‼︎ 約千年ぶりの自由だわ〜。さて、と。もうこっちを向いて大丈夫よ」

 

 アウロラさんからそう言われて振り返ると、彼女は戦っていた時に着ていた黒色のドレスを纏っていた。

 

「それにしてもあなた……あんな物も持っていたのね。アーティファクトの一種かしら?」

 

「さっきのですか? まぁアーティファクトに似ているかもしれませんけど、あれはそういった物じゃないですよ。俺が保有する武器の一つで、魔力操作をある程度出来る人なら動かす事は出来ます。まぁ動かすだけですけど」

 

「魔力操作を⁉︎ ……ねぇ、この空間では魔力が阻害されてる感覚はあるの?」

 

「えっ? あぁ……ここに来た時から感じてましたよ。ただそういった環境はこれまでにも多く経験したので、その対処もしっかりしてるんですよ」

 

 俺はアウロラさんの問いに対して、いつもの様にそう返事をしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アウロラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……驚いたわ。まさかここの仕掛けに対して意図も容易く対応してくるなんて)

 

 私はずっと昔からここに閉じ込められていた。魔力が私から尽きる事はないけど……それでも吸われ続ける感覚というのは嫌な物で。

 

「(でもこの子……確か名前は……)そういえばあなたの名前は何だったかしら?」

 

「あぁ、そういえば名前まで言ってなかったですよね。俺の名前はアルジ・カゲノーって言います」

 

「アルジ・カゲノー? 何故かしら……あの場に呼ばれた時に聞こえた名前とは全然違う様に聞こえるのだけど……」

 

「あぁ、あの場では身バレ防止の為に違う姿になってましたからね。だから名前も違ってたんですよ」

 

「成程……そういう事ね。でも確かにあなたの様に若いのに私を倒してしまったとなってくると、周りは大騒ぎするかもしれないわね」

 

「えぇ、だから自分も出来る限り目立たない様にで違う姿であなたと戦ってたんです」

 

「なるほどね……なら今のあなたと戦ったのなら、あの姿とは違う戦い方をするって事ね」

 

「そうなりますね。あの……もしかして戦いたいとかって考えたりは……」

 

「そうね……今のあなたがどんな力を使ってくるのか、という事に正直興味はあるわね。でも今はここから出る事を考えた方が良いでしょう」

 

「そういえば出口って……どこになるんですかね?」

 

「さぁ……私もここから出た事がないから分からないけど、方法なら分かるわ。この空間の中心にある魔力の核を破壊する事……そうすればここから元の場所に戻れるの」

 

「そうなんですね。あっ……」

 

「ん? どうかしたの?」

 

「いや、ここの核を破壊したら……アウロラさんも出られるのかなって」

 

「……いいえ。私は過去の存在……この地の記憶みたいな物だから、私という存在は消えるんでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……消える)

 

 アウロラさんからの一言は……確かに予想していた事だ。だって彼女は千年前の人で、通常ならば不老不死でない限り現代にまで生きていられる筈がない。

 

(でも……それを何も悔いがないみたく言う姿を見たら、見てしまったら俺は……)

 

 あぁ……悔しいな。俺自身は力を持っている筈なのに……何事もなくそんな言葉を吐ける知人に、彼女に対して何も出来ないというのは……

 

(いや! まだ何か方法がある筈だ! 諦めるのはまだ早い‼︎)

 

「何か難しい顔をしているけど、どうしたの?」

 

「えっ? あぁ……その核の場所がどんな所なのかなって思って」

 

「そう言う事ね。まぁここの様な全体が真っ白な空間でない事は確かだけど。それと、敬語は別に良いから普通に話してもらっても良いわよ?」

 

「あ、あぁ……うん。分かった」

 

「よろしい。それじゃあ一緒に魔力の格がある所まで行きましょうか。それまでは私の事をエスコートしてくれる?」

 

「勿論。じゃあ一緒に行こうか」

 

「えぇ」

 

 俺が左腕を差し出すと、アウロラさんも俺の手を握って来た……ん?

 

(え……えっ……えぇっ⁉︎ 何で腕を絡ませてくるの⁉︎)

 

 普通に手を握るとばかり思っていたのが、まさかほぼほぼ初対面の俺に対してそうしてくるとは……それに……

 

(あ、アウロラさんのむ、胸が当たって……)

 

「あら? 顔を赤くしてどうしたの?」

 

「えっ? え、えええぇっとぉ〜……べ、別に何でもないです⁉︎」

 

「何で疑問系? ははぁ〜ん……まさか私がこうして腕を絡ませているから照れているの? ふふっ♪なんだか可愛い弟を持ったみたい」

 

「っ⁉︎ そ、そんな事よりもはやく魔力の核の所に行きますよ‼︎」

 

「はいはい、ふふふっ」

 

 なんかクレア姉さんみたいな対応をされているなと感じながら、俺とアウロラさんはさっき俺が入って来た扉を潜ってその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アレクシア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達は『シャドウガーデン』の金髪エルフの人から教えられたわ。御伽話にある英雄オリヴィエの本当の姿と目的、そしてオリヴィエに力を与えたのは女神様ではなく、ディアボロスを打ち倒そうとしていた過去の教団だった事。この世界で忌み嫌われてしまった『悪魔憑き』の真実と、『ディアボロス教団』の目的……正直一度に多くの事を聞いてしまって整理したいところよ。

 

 そんな私の考えとは裏腹にこの地の記憶はどんどん変わっていった。そして今は英雄オリヴィエが切り落としたディアボロスの左腕が強大で透明な容器の中に封じられている場面に切り替わった。その容器の前には研究者の格好をした3人が何かを操作していて、カード状の物を装置に差し込んだ。

 

「なっ⁉︎ よりにもよってこの場所をっ⁉︎ 見るなぁっ⁉︎」

 

 その場面に移った途端ネルソン司祭が慌てふためいていたわ。もしかしてこの場所がそれ程重要な場所で見られたくない物があると言う事なのかしら?

 

 すると装置が作動して何か筒状の物が開いた。そこには紅い光を放った粒があった。それを手に取った研究者がいて……

 

(あれ……なんか見覚えのある体格と顔だわ)

 

「あ、あの光っているものは何ですか?」

 

「えぇ。あれこそが『ディアボロス教団』の目的よ。丁度当事者もいる様だし聞いてみましょうか。ネルソン司祭……あれは何かしら?」

 

「ぐぅっ……誰が答えると思ってっ⁉︎ ぐあぁぁぁっ⁉︎」

 

 口答えをしたネルソンが悲鳴をあげる。後ろで拘束している水色の髪を持った『シャドウガーデン』の構成員がネルソンの頭を鷲掴みにして無理やり背けていた顔を正面に向けようとしていた。それで反抗虚しくネルソンは正面を向かされていたわね。

 

「うぐぅぅぅ……し、雫だ雫! 『ディアボロスの雫』だ‼︎」

 

 抵抗する事が出来ないと判断したのか口を割った。でもそれだけで終わりという訳ではなくて……

 

「『ディアボロスの雫』……それを含んだ者は不老不死の身体を手に入れると言われているわ。そうよね?」

 

「そ、そうだ……」

 

「でもこの『ディアボロスの雫』にはある欠点が存在するわ」

 

 それを聞いて私はピンと来たわ! ここにいるネルソンと『ディアボロスの雫』って奴を含んだ研究員は同一人物である事は確かだとすれば‼︎

 

「それなら簡単な事よ! あそこにいるのはまだ髪の毛がフサフサに生えているけど、ここにいるのは天辺に髪の毛が無い! つまり「違うわーっ!」えっ?」

 

「これはストレスによる物だ! 大体奴らは基本的に啀み合っているのに責任の所在を押し付ける時は協力して儂に押し付けてくるなど……っ! 死なないからといって全てを儂のせいにするとか本当にいけ好かない奴らめぇっ‼︎」

 

「そ、それは……ごめんなさい」

 

 ネルソンが本音をぶち撒けたのを聞いて私は少し……ほんの少しだけ申し訳ないなと感じた。まぁこれで何らかの悪事を働いている事は確かだからそれ以上の申し訳なさは思わないけど……

 

「まぁそんな事はどうでも良いとして「ど、どうでも良いだtアダダダダっ⁉︎」この『ディアボロスの雫』の欠点の一つ目は、これを一定期間の間に含まなければその効果は失われるという事」

 

「き、貴様っ⁉︎ その情報をどこでっ⁉︎」

 

「そんな事は今どうでも良いわ。それともう一つの欠点……この『ディアボロスの雫』は1年の内に製造出来る量が決まっているの。その数は?」

 

「ぐうぅぅ……じゅ、12滴、12滴だ‼︎」

 

「そう。12滴しか製造出来ない。あら、この12滴の数は『ナイツ・オブ・ラウンズ』の数と同じね? ナイツ・オブ・ラウンズの第11席殿?」

 

「ナイツ・オブ・ラウンズ……っ‼︎」

 

 そこで思い出したのが、元婚約者のゼノン・グリフィの事で、確かアイツも私を手土産にナイツ・オブ・ラウンズに上り詰めると言っていたわね。

 

「ぐぅ……フッフッフッフッフッフッ……」

 

 そして目の前のネルソンはそこまで言われて俯き、意気消沈したかに見えたわ。けれどその後身体を震わせながら笑った。気でも触れたのかしらと思ったけど、どうやらそうではなかった様で、後ろで腕を拘束していた『シャドウガーデン』の人の手を振り払っていた。

 

「フッフッフッフッフッフ……ハッハッハッハッハッハッ……‼︎ もう少し中心まで言ってお前達を誘い込んで殺そうと思ったが、ここでも十分に貴様らを殺す事が出来る! そう、何を隠そう儂こそがナイツ・オブ・ラウンズの第11席! 『強欲のネルソン』なのだから————グフッ……⁉︎」

 

 ネルソンが拘束を解いて力を解放しようとした瞬間、ネルソンの胸が背後から何かに刺し貫かれていたの。それをしたのは、さっきまでフードを被ってた『シャドウガーデン』の構成員で、見るからに犬の獣人に見えたわ。黒い長髪に、頭の上側に犬耳が2つ付いて、それに黒い大きな毛並みの尻尾を持っている子。体格としては私と同じくらいだけど、その子が背後から倍以上の体格をしたネルソンを片腕だけで刺し貫いて、そして私達が立っている手すりの向こう側……研究する為の濾過水若しくは冷却水と言ったところかしら? ともかくその溜まり場の様な所に軽々とネルソンを放っていたわ。

 

(シャドウが率いている『シャドウガーデン』……あの金髪エルフの人も強いと感じるけど、あの獣人の子も桁外れな強さを持っている様に見える……)

 

「はぁ……デルタ、殺すのは全ての情報を聞き出してからって算段だったでしょ?」

 

「はっ⁉︎ うぅ……そ、そうだったのです……危険だと思って本能的にやってしまったのです……あ、アスタロト様からも言われていたのに……叱られるのです……」

 

(えっ? なんか突然ネルソンを殺したから野蛮な手段を持つ人だと思ったら、滅茶苦茶反省している様に見えるわね……)

 

 その人が言う様に獣人としての本能、特に狩りを行う種族からしてみれば仕方ない反応だって思う。

 

「はぁ〜……でも反省しているのなら私からは言わないけど、もう一つ忘れている事はないかしら?」

 

「はっ、はいなのですアルファ様‼︎ 得物がしっかりと死んでいるかどうか確認してくるのですっ‼︎」

 

 デルタと呼ばれた人がネルソンが死んだかどうかを確認しようとした時、ネルソンが落ちた溜まり場から泡が噴き出していた。その泡が物凄い勢いで増えたかと思うと、そこから死んだはずのネルソンが不気味な笑い声を上げながら出て来たわ。それもさっきよりも大きくなって、下半身は最早人型ではない。

 

 ネルソンが私達に向かって腕を振りかぶって来たかと思うとまた違う空間に飛ばされたの。そこは辺り一面が真っ白な空間で……

 

「フハッハッハッハッ……漸くここまで誘い込めたと言うものよ! あれを見た以上ここから生かして返す訳にはいかぬ‼︎」

 

「えっ⁉︎ ぶ、分裂したっ⁉︎」

 

 隣にいたローズ先輩が驚きの表情でその光景を見ていた。まぁ確かに目の前の人が急に増えたりするのは驚いちゃうけど……

 

(でもこれじゃあ驚けないのよねぇ……)

 

 王都襲撃の時に上空で行われていた戦闘……あれと比べてしまうと、ネルソンの行なっている事がそこまで大した事ではないんじゃないのと思ってしまったわ。まぁ自分はそんな事出来ないから表立って言わないけど……

 

 そしてネルソンの分身を目の当たりにしても動じない……というよりも戦闘体制に入っている……えーと、確かアルファとデルタって呼ばれていたかしら? ともかくその2人は、その光景に慣れているというかなんというか……

 

(まさかシャドウはそんな芸当まで行えるというの?)

 

 王都で2回も私を助けてくれたシャドウは、多分この2人よりも格上の存在。そんな人と日々模擬戦とかで戦っているというのなら、あの2人の落ち着きも分かる。そしてデルタって人が手足を床に付けて、まるで獲物を狩る様な姿勢を取っていたの。それで雄叫びを上げながら分身したネルソンに向かっていったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アウロラと一緒に歩いてどれくらいの時間が経っただろうか……ここでの時間感覚は曖昧なもので、白い空間からは出たものの、今度は辺り一面真っ暗な空間に出た。その為に……

 

「どうしたらそんな体勢になるのかしら?」

 

「えっ……ふ、普通に歩いていたらこうなって……」

 

「そうなの? でも……

 

 

 

 

 

 

だからと言って上下が逆になる事はないんじゃないかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、今俺は普通に歩いているのだが……アウロラさんが言う様に身体の上下が逆の状態で歩いている。俺もさっきいつの間にかこうなっている事に気付いたんだが……その体勢のために俺が下を向いてしまったら、アウロラさんを下から覗いてしまうといった……何とも訳が分からない構図になっちまっていたんだよな。

 

「その……こっちを見ないでね?」

 

「え"っ⁉︎ そ、そんな破廉恥な事する訳ないだろ⁉︎ (ま、まぁ恋仲になったアルファやガンマに対してはしている自覚はあるが……)」

 

「あら? あからさまに動揺しているみたいだけど……本当にそうしようとしていたのかしら?」

 

「い、いや、別に動揺とかしている訳じゃあ……」

 

「ふふっ、ごめんなさい。少しあなたの事を揶揄ってみたかっただけなのよ。さっきも言ったけど、何だか揶揄い甲斐のある弟を持った様なね」

 

「揶揄い甲斐のある弟……か」

 

「ええ。私はずっと1人だったから……」

 

「……そっか。なら……俺がアウロラと一緒にいる間は……まぁ弟になるかな」

 

「えっ?」

 

「だって千年も前からずっと1人で……ここにいたんだろ? それも縛り付けられた状態で……。だからさ……その千年を埋める事なんて出来ないかもしれないけど……俺と一緒にいる間、アウロラが望むんだったら俺は君の弟として一緒にいる。

 

それとこれも変な話で……ここが例え記憶の中でも、ちょっとした思い出作りも出来るかもしれないから」

 

「っ⁉︎ ……ふふっ♪本当に、君は面白い事を言うんだね」

 

 面白い事……まぁ第三者からみたらギザったらしく聞こえてしまったかもしれないが……

 

 そんな事を言われて歩いている内に、目の前が光り始めた。その光に向かって歩くと、真っ暗な空間は終わっていて、その代わりに家族の庭の様な所に出た。といっても室内の中に人工的な庭を作ったみたいなもので……

 

「なんか鳥籠みたいに囲われてるな……」

 

「そうね……朧げだけどここにいたなって記憶はあるわ」

 

 そんな会話をしながら2人で歩いていると、目の前に小さな建物が見えた。それは貴族の庭にある様な作りで、外でお茶会を開くのに適した様な建造物だ。その柱に背を預ける様な形で、1人の女の子が体育座りをして泣いていた。

 

「(ってあれは……幼少の頃のアウロラか?)ねぇ、あれってアウロラの幼少期の姿かなんかか?」

 

「さぁ? 私の記憶は不完全だから、幼少期がどんな姿をしてたかなんて覚えていないわ」

 

「そっか……にしても何で泣いてるんだろうな?」

 

「さぁ? おねしょでもして怒られたとかじゃない?」

 

「そ、そうなんだ……後はここから違う道をどう探していくかなんだが……」

 

「それは簡単よ。ここは多分あの泣いてる子の記憶……だからそれを終わらせたら良いわ」

 

「そうか。なら取り敢えずあの子を泣き止ませないとな」

 

「そんな事をする必要はないわ」

 

 アウロラがそう言うと、彼女は泣いてる子供の近くまで歩いて行った。その子の前に着くと、泣いている子の目線と同じくらいの目線までしゃがんだ。そして手を思い切り右腕を後ろの方に振りかぶって……

 

(いや、あれはあの子をぶとうとしているのか⁉︎)

 

 そう考えてしまった次の瞬間には俺の身体は反射的に動いていて、アウロラの右手を掴んでいた。掴んでいた時は丁度泣いている子の頬っぺたを引っ叩く直前で、なんとかそうなる前に止める事が出来た。

 

「……どうして止めるの? 早く次の所に行きたいでしょ?」

 

「あぁ、確かに行きたいさ。でも泣いている子を訳もなく引っ叩くってやり方がどうにも嫌に感じてね。だからここは俺に任せて欲しい」

 

「……そう。でもあまりにも時間が経ち過ぎるんだったら私が引っ叩くから」

 

「分かった」

 

 そんなやり取りをして、さっきまでアウロラがしていた様に泣いている子の目線に合わせる様にしゃがんだ。

 

「ねぇ、何で泣いているのかな?」

 

「……」

 

 出来るだけ優しい声音でそう問いかけたが、やはりというか記憶の中だからその子は返事をしてくれない。ならばと思って、俺は次の手段に出た。

 

 それは泣いている子を優しくあやす事……簡単に言えば抱きしめたんだ。記憶の中だから意味が無いかもしれないが、やってみずにアウロラの様に引っ叩く選択肢とかは嫌だから。

 

(でもこれって構図的に俺って怪しい奴だよなぁ……)

 

 泣いている子からすれば全くの赤の他人で、全然知らない仲だ。だからもしこの子の近くに親がいたとしたら俺は不審者で、構図的にこの子を泣かせてしまった風に見えてしまう。現実世界でやったのなら警察署に間違い無く連行されるだろう。

 

 そんな事を考えながらその子の事を抱きしめていたんだが……その子も俺の服を掴んできたんだ。それで今まで溜め込んできた物を吐き出す様に泣きじゃくる。それから数分後にはその子も泣き止んで、安心したかの様に眠ってしまった。すると辺りにヒビが入り始めた。

 

「全く……面倒なやり方をするのね」

 

「あぁ、普通に見て甘い人間だと感じるだろうな」

 

「えぇ、甘過ぎるわ。まさか敵にも情けをかけたりするのかしら?」

 

「俺が許す事が出来ないと感じた奴に対しては手心は加えないが……まぁ過去に加えた奴もいたな」

 

「……その行為があなたの身を滅ぼさなければ良いのだけど」

 

「まぁそうなりそうになった時は何とかするさ」

 

「そう……まぁ私は一応忠告はしたから、後はあなたの自由にしてみれば良いと思うわ」

 

 アウロラがそう言った途端、空間が完全に割れて俺達は違う所に飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ネルソン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(な、何なのだ目の前の光景は……)

 

 儂はこの地を管理する者としてこの施設の細部に至るまで知り尽くしておる。だからこそ『シャドウガーデン』の奴らも中枢近くにまで誘き寄せて叩く算段も付けてあったのだ。中枢に近ければ近いほど侵入者の魔力は吸い取られ、逆に我々はこの地の魔力を使い自らを強化する事が可能だ。

 

(だからこそ分身を増やして、数の利で侵入者を圧倒、そして抹殺する事が私には可能だ!)

 

 その筈であったのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いや何あれ? こんな怪物級がいるなんて聞いてないんだけど?)

 

 最初の頃から相手はこちらを圧倒する動きだった。しかし時が経てば次第に相手の方も魔力がこの地に吸われていったことが分かったために、このままいけば正気は幾らでもあるだろうと思ったのだ。

 

(だが結果はどうだ⁉︎ 疲れを見せるどころか更に動きが早くなっていくではないかっ⁉︎)

 

 儂の分身達を散々倒している獣人の姿は、先程纏っていた黒衣は既に無く、ただ隠せる所を隠すのみの姿になっていた。にしたって目の前の獣人も女子なのは変わらないのだからもう少し恥じらいというものw「戦いの最中に違う事を考えるなんてデルタを舐めているのですかーっ‼︎」ぐわぁーっ⁉︎ また分身体が数十近くあっさりと……

 

(わ、儂は一体どこで間違えたと言うのだっ⁉︎ 儂の作戦は途中まで完璧だった筈なのに……っ⁉︎)

 

 と自己逃避しているネルソンではあるが、結論としては『シャドウガーデン』に目をつけられたから……という事に他ならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side デルタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁっ‼︎ 獲物がいっぱい獲物がいっぱい‼︎)

 

 目の前の獲物がどんどん増えていくから、デルタとしてはとても楽しいのですっ!

 

(でもここにアルジ様がいれば……デルタはもっともっと頑張れるのに……)

 

 そうは思ってても獲物はどんどん増えていく……

 

アハッ♪

 

 本当にこのハゲは一体何を考えているのです? デルタを倒すんだったら最低でも今の数倍は持ってくるのです!

 

(あっ……でも油断しない様にって裏ボス言ってたのです……)

 

 デルタは裏ボスから言われた事を思い出しながらも、目の前のハゲを狩る事をやめない。ハゲは力量差が分かっていないのかそれとも考える事を放棄しているのか……自分の分身を延々と作り出す事しかしない……って

 

(あれ? デルタはいつの間にこんな事を考えながら獲物を狩っているのです?)

 

 でもこの感じは……嫌な感じではないのです。寧ろこの思考を持ちながら相手を倒す事が楽しい? 確かに目の前の獲物を狩る事は楽しいのですが、何か別の事を考えながらなんてそれこそ相手に自分の隙を見せている様なもので……

 

(あっ、でもアルジ様は相手の一手二手先を読む事こそが何事においても大事な事だと言っていたのです!)

 

 今の状況がそれに当てはまるかはデルタには分からないけど、でもこのまま獲物を狩っていたら何か違う動きをするかもしれないのです! ならデルタは目の前のハゲを分身体が出なくなるまで狩り尽くしてやるのです‼︎

 

「な、何なんだコイツはぁ〜……っ‼︎」

 

 デルタからハゲと言われたネルソンは、まさか目の前の獣じみた少女が自分のスタミナ切れを狙っている事に気付かず、この施設の恩恵から出る魔力を用いてただただ分身を作るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきの鳥籠の様な部屋から次の空間に移動? している俺は、アウロラと並んで歩いていた。並んで歩いていたのだが……いつの間にか左腕に抱きつかれながら歩いていた。というかその体勢を見ていて思うんだけど……動き辛くない?

 

 と、そう考えながら歩いていたらいきなり浮遊する感覚が襲ってきて、そこから重力に引っ張られる様に下に落ちる。下を見ればそこは地面で、なるほど次の空間に入ったのだと思った。

 

 上を見ればアウロラが俺の後から落ちてきていた。俺はさっさと地面に降り立つと、アウロラが落ちてくる所に待機。落ちてきたアウロラを横抱きにして負担がかからない様にした。

 

「ふふっ♪こうして抱えられたのも初めてよ」

 

「まぁこの方が相手にとっても負担は少ないだろうって事だったけど、嫌だったか?」

 

「いいえ、寧ろ良い気分だわ」

 

「そうか。それでここは……戦場跡地みたいなところか」

 

「そうよ。それであそこでまた泣いているのが私なの」

 

 さっきの鳥籠の所にいた少女がまた泣いていた。それをアウロラは自分だと言う。まぁ普通に分かっていた事だが……

 

「違う所に行く為には、またあの子を泣き止ませる必要があるって事だよな?」

 

「えぇそうよ」

 

「そっか。じゃあ早く泣き止ませないとな!」

 

「っ!///そ、そうね」

 

(ん? アウロラの顔が赤くなったが……)

 

「ひょっとして少し疲れたか?」

 

「えっ? いえ、疲れてないけど……どうして?」

 

「いや、少し顔が赤いから体調が悪くなったのかと思ってさ」

 

「あぁ……そういう事ね。体調は悪くなってないし、疲れてもいないから問題ないわ」

 

「分かった。まぁ疲れたりしたんだったら言ってくれよ? 倒れたりしたら元も子もないからさ」

 

「えぇ、分かったわ」

 

 その返事を聞いて俺達は泣いている子アウロラさんに近付いていく。

 

 ただ周りに倒れ伏している人達は死んでいる様に動かないものの、少なからず魔力が通っている事は感じ取れた為、多分この後一斉に襲いかかってくるんだろうなと思いながら目的を果たす為に歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アウロラ

 

 

 

 

 

 

 

 

(あ、危なかったわ……)

 

 目の前でまだ幼かったといえど泣いている自分の姿を見て腹を立ててしまう自分がいる。その姿を見て私は自分の過去を殴ろうとしたわ。でもアルジがそれを止めたの。ここは自分に任せて欲しいって……

 

 それで何をするかと思ったら、泣いていた幼い私を優しくあやしてくれた。それで泣いていた幼い私は……アルジに抱き付いて今まで溜め込んできた物を吐き出す様に泣きじゃくってて、いつの間にか泣き止んで眠っていたわ。

 

(あぁ……幼かった時にアルジの様な人がそばにいてくれたら……どれだけ良かったかしら)

 

 そんな事を思っていると、また暗い空間に出てアルジと一緒に進んでいく。それでお話ししながら歩いていたけれど、それだけだと味気なく感じてしまったから彼の腕を抱きしめる様しながら歩いていたの。そしたらアルジの顔が真っ赤になっていって、初心な子なんだって思って、それが可愛らしく感じたの。

 

 次の空間に出ると、そこは戦場だった。周りには倒れている人達が多くいて、覚えている記憶の中でも苦い記憶なのは確かだった。だから私も早くここから抜け出したい気持ちで辺りを見る。それですぐに幼い私が見つかったの。

 

 幼い私を泣き止ませるのは、その記憶を終わらせれば良い。この場所が嫌な気分にさせるのは確かだから早く次の所へと行きたいのだけど……

 

「そっか。じゃあ早く泣き止ませないとな!」

 

 その時のアルジの笑った顔を見て、今度は私が顔を赤くしたんだと思う。一瞬の事で自分でもどうして顔を赤くしたのか……考える時間はなかったけど、直感的に言うのならばギャップ……というのかしらね?

 

(でもアルジと一緒にいるのは……心が安らぐわ)

 

 一千年退屈だと、消え去りたいと思っていた思考は……アルジと一緒にいる事でいつの間にか無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アルファ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに来てどれくらいの時間が経ったかしら。まぁ私としてはあまり気にしていないところではあるけど、目の前の光景には飽きてしまったと感じるわ。

 

やぁぁぁぁぁっっっっ‼︎

 

「「「ぎゃぁぁぁぁっっっっ⁉︎」」」

 

 デルタによる縦横無尽ともいえる様な攻撃は、ネルソンの分身体を簡単に千切っては投げを繰り返す。偶にこちらに攻撃を仕掛けてくる事もあるのだけど、それも全然大した事がない。

 

(まぁ彼は魔剣士というよりも研究者の側面が強いからこの実力しかない……とも言えるわね)

 

「それにしてもあの子の戦い方……雑だわ」

 

「えっ? そう……なのですか?」

 

「えぇ。私が攫われてしまった時に偶々シャドウの戦闘技術を間近で見る事があったんだけど、あの剣はより鮮麗されていた剣だったの。でもあのデルタって子の戦い方は力により過ぎている気がするのよ。アルファって人は底が知れないけど、もしかして『シャドウガーデン』の他の人達もあんな感じに力任せの人が多いのかしら?」

 

「いえ……ただあの人だけが脳筋ってだけなのでは……」

 

 そんか失礼な発言が聞こえたけれど、まぁどうでも良い事。ベータはその発言に対して嫌そうな顔しながらアレクシアさんに返していたわね。

 

(……っ⁉︎ 何か異様な気配が近付くのを感じるわ)

 

 私が異変に気付いたと同時に、目の前でネルソンの分身体を一方的に潰していたデルタも何かを感じて動きを止めていた。

 

「なっ……何故止まった⁉︎」

 

「……気付かないのですか? この異様な気配に」

 

 デルタがそう言った瞬間、空間の一部にヒビが入ったの。そこからは……私達が王都を襲撃した際に出てきた敵と同じ様な部類の存在が現れたの。

 

「少し……厄介な事になりそうね」

 

 相手の異質さに私は自然とその言葉が出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アウロラと戦場跡地の様な場所に飛ばされてからすぐに俺の予想は当たった。そんなに遠くない場所に座って泣いている子アウロラの所まで行って泣き止ませようとしたのだが、案の定そこら辺に倒れていた人達がゾンビの如く立ち上がって俺達に襲いかかってきたんだ。

 

(つっても動きは単調だしな……)

 

 そんな事を感じながら襲いかかる奴らを吹き飛ばしていく。どうやってと聞かれたらグーぱん1発で……

 

「魔力を扱えるって言ってたのに、あなたから魔力を感じないわ……もしかして自分の膂力だけでやってるの?」

 

「ん? あぁ……まぁそんなところ」

 

「驚いたわ……まるでゴリラ……いえそれ以上だわ」

 

「ゴリラ……か。まぁ実際問題ゴリラ以上に襲いかかる奴らを千切っては投げしてるからそう言われても仕方ないか……」

 

「ふふふっ♪ごめんなさい、少し意地が悪かったわ。ゴリラよりも人類最強って言った方があなたには合うわね」

 

「まぁ……ゴリラ呼ばわりされるよりかは良いかもな」

 

「あら? まさか自分の事を普通の人間だって思っているの?」

 

「そう思いたいんだけどなぁ〜……」

 

 そんな無駄話をしながらも、襲いかかってくるゾンビもどき達を蹴散らしていった。

 

「う〜ん……全滅させる事は訳ないけど時間かかりすぎるな」

 

 そう感じた俺は、近くにいたゾンビもどきを吹き飛ばした後にすぐ泣いている子アウロラの所に行く。

 

「やぁ、また何か辛い事があったんだよな?」

 

 そう問いかけながら子アウロラの頭を撫でる。すると子アウロラはさっきの空間と同じ様に俺を認識すると、泣きじゃくりながら俺の服を掴んでくる。その反応に少しの嬉しさを覚えながら抱きしめてあやした。

 

 そうしていたら、その空間がまたひび割れてまた違った空間に移動していたんだ。真正面に鎖で厳重に閉じられた鉄製の大きな扉と、それを切り裂く様の剣が鎮座してある。

 

(なるほど、ここがこの空間の中心か……ん? この気配は……)

 

「ここが中心ね……って、どうかしたの?」

 

「いや……邪気が迫ってきたなと思ってさ」

 

「邪気? でも私は何も感じないけど……」

 

「まぁ第六感みたいなもので勘程度だけど……少し様子を見にいってきて良いか?」

 

「えっ⁉︎ でもここから違う所に行くなんて、それこそここの権限を持ってないと……」

 

「まぁまぁ、終わらせたらすぐに戻ってくるからさ」

 

「えっ⁉︎ ちょっ⁉︎ まって……」

 

 俺はアウロラの静止も聞かずにその場から移動したんだ。アルファ達がいる所に不穏な気配があったから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side デルタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(コイツ何なのですかっ⁉︎ 攻撃があまり効いてないのですっ⁉︎)

 

 この前王都を襲った時、ゴーレムの見た目をした敵がいたのです。形としては人型で腕が6本ある物で、腕の先には強靭な爪が付いていたのです。でも目の前の敵はそのゴーレムに似ていると思ったから、この前のゴーレムと比較して見て強いとは思っても勝てると感じたのです!

 

 でも結果は全然で、殴っても少し凹む程度でダメージの様なものは与えれてない……他の所を攻撃しても同じ結果で、敵の関節に見える部分を攻撃しようとしたのですが、そこはガードが硬くて中々踏み込めない……

 

「デルタ、私も加勢するわ」

 

 そこにアルファ様が加勢してくれたのです! アルファ様が敵を翻弄して撹乱し、その隙にデルタが敵の首にあたるところまで踏み込んで攻撃をした。デルタの攻撃は上手くいって、ゴーレムの首をもぎ取ってやったのです‼︎

 

「流石はデルタね」

 

「えっへへ〜! ありがとうなのです‼︎ でもアルファ様が援護してくれたから上手くできたのです‼︎ デルタの方こそありがとうなのです‼︎」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

 これで邪魔者はいなくなったから、今度こそそこで震えているハゲを倒そうと息巻いていたのです。いたのですが……

 

「っ⁉︎ デルタ、まださっきの敵が来るみたいね」

 

「っ⁉︎ あ、あれって……」

 

 アルファ様がそう言った通り、また空間にヒビが入って……そこからまた同じ見た目の敵が出て来たのです。

 

(でもさっきよりも強いのです……)

 

「さっきのは私達の強さを測るための物……という事ね」

 

 アルファ様がそう言ったと同時に、敵がデルタ達に向けて攻撃してくる。さっきまでは近づいて攻撃してきたのですが、今度は6本ある腕を飛ばして……

 

「う、腕が飛んできたのですっ⁉︎」

 

 腕が飛んでくる事に驚きながらも野生の勘で交わす。アルファ様の方も相手の攻撃手段に驚きながらも躱していたのです。でも飛ばしてきた腕は6本で、デルタとアルファ様で躱したのは1本ずつ……残り4本がデルタ達に飛んできた。こっちに向かってくるのは2本で、1本は躱せたけどもう1本がデルタを先回りする様にしてきたから殴って軌道を逸らしたのです。逸らすことは出来たのですけど……

 

「か、かったいのですぅ〜っ⁉︎」

 

 魔力が十分に込める事が出来ない環境でほぼ素手で飛んできた腕を殴り付けたのですが……先程の敵よりも堅かったのです……

 

「これは……厄介ね」

 

 アルファ様の方もデルタと同意見らしく、この敵に対してどう対処するか考えている様でした。

 

 でも相手は待ってくれなくて、今度は飛んできた腕がピンク色に光ったのです。それで丸い塊の様に溜まっていって……

 

(あ、あれに当たったら一溜まりもないのですっ‼︎)

 

 相手が仕掛けてくるであろう攻撃は……この前王都で空を浮かんでいた島が放ってきた物とは明らかに違う圧を感じる……

 

 そうデルタが思ったと同時に相手がその溜め込んだ物を吐き出す様に放ってきたのです。狙いが甘かったこらデルタ達には当たらなかったですが、それでも強い攻撃だと思ったのです……

 

「っ⁉︎ 思ったよりも溜めるのが早いわね……」

 

 アルファ様の声が聞こえたと思ったら、相手がまた同じ物を溜めていたのです! それにさっき放ったばかりなのに……

 

 そして相手の腕はベータ達がいる方向を向いたのです。どうやらあの3人を先に倒した方が早いと思っての事だと思うのですが……

 

「そんな事はさせないわ」

 

 アルファ様が相手の溜めていた部分を剣で攻撃して狙いを外していたのです。

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アルファ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に硬いわね……」

 

 私は相手に攻撃をしながらもそんな感想を持った。魔力はこの土地に吸い上げられているから、創り出した剣の強度もそこまで上げる事は出来なかったけど、それでも傷は与えられている筈……

 

 でも私が斬りつけた所には傷と呼べる物はなかったの。

 

(考えられる事としては……相手の強度がひたすらに高いのか、それとも魔力を伴った攻撃が一切効かないのか……)

 

 前者であるなら……少しだけ時間はかかるけど、魔力を練り集めて剣をより強化して相手を倒す事は出来ると思う。でも後者だった場合は……私達に打つ手が無いわね……

 

(それに相手の外装……数年前に見た事があるわ)

 

 それはクレアさんが攫われてしまった時、首謀者と思しき相手が纏った鎧と材質が似ている。あの後相手の鎧をイータが解析したのだけど、分かった事といえば途轍もない強度である事と、魔力による攻撃を遮断するという物だった。

 

 長時間魔力による攻撃にあてたら壊せるとの事だけど、今の私には壊せるだけの魔力を練り上げる余裕がない……

 

(ここは早々に撤退するべきかしら……)

 

 アルファがそう思ったと同時に、敵はまた腕を飛ばしてくる。それも6本全部がアルファに向けられており、アルファはそれを躱しながら自分に当たりそうな物を剣で弾く。そして6本目を弾いたところで、相手がまた先程の攻撃を溜めていた。

 

(狙いは私……という事ね)

 

 そう思ったと同時に、その攻撃は私目掛けて襲って来る。

 

「無傷で防げそうにないわね……」

 

 創り出した剣に今練り上げれるだけの魔力を込めて防御に徹する。この攻撃を凌いだら、デルタ達に指示を出して急いでここから撤退をしましょう。

 

(でも撤退するにしても時間がかかる……ここは私が殿を務めるしかないかしらね)

 

 デルタはさっきまでの戦いで魔力があまり無いし、ベータはナツメとして行動している今、正体を晒すわけにはいかない。

 

(でもここは……何としてでも切り抜けるわ!)

 

 私がそう決意した時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまでよく頑張ってくれた。後は俺に任せろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声が聞こえたと同時に、温かいものが私を包み込んでくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルファ達がいる空間に辿り着いたと思ったら、何やら見慣れた奴がこの場にいた。あれは……

 

(あぁ……間違いねぇ。あれは“天使”だ)

 

 天使と言っても、皆が思い浮かべる神の遣いじゃあねぇ……俺が最初に転生、もといアルジ・ミラージに憑依した世界で“厄災戦”と呼ばれる人類が滅亡する事態になりかねない戦争があった。簡単に言えば人類とAIとの戦争……戦争を自動化しようとした人類の過ちによって引き起こされたもので、それで作られたのが目の前にいる天使と言われるモビルアーマーだ。

 

 それでソイツはあろうことかアルファを集中的に狙ってやがって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ……貴様は復讐対象(死刑確定)だ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルファに放たれたビームよりも先に彼女がいるところに辿り着いて、彼女に傷がつかない様に正面から抱き締めた。そして俺の背中側に魔力障壁を張り、撃ち込まれたビームはその障壁に完全に防ぐ。

 

 ビームが止んでからアルファを確認すると、どうやら傷一つついていない様で安心した。

 

「あ、アルジ……」

 

 アルファはアルファで俺がここにいる事が不思議に思っている顔をしていて、その顔が可愛く見えてしまって、正直戦場のど真ん中ではあるが彼女の事をめいいっぱい抱き締めたい気持ちに駆られる。それに急な事で『七陰』以外にもアレクシアさんとかがいるのに俺の名前を本名で呼んだ。まぁこの距離ならば聞き取れないだろうからいいか。まぁそんなアルファを見てしまったが為に彼女を愛してしまいたい気持ちになってしまうが、今はこの状況からさっさと抜け出す事が先決だ。

 

「アルファ、無事で良かった」

 

「っ⁉︎ アスタロト、後ろっ‼︎」

 

「あぁ、それぐらい分かっているさ」

 

 アルファが警告してくれた様に、俺の後ろからは天使の腕が6本飛んで来て俺に襲い掛かってくる。それに対して俺は自分の身体の右側が相手に向く様にして、右手に一振りの刀を呼び出した。そして攻撃が同時に俺へと殺到して来た瞬間、刀を下から上へと振り上げて全て相殺……いやあれは完全に腕が全て壊れた様に見える。

 

 その結果に天使は訳が分からないという様に動きが一旦止まって、俺はその隙を見逃さずに天使の頭に刀を槍投げの様に投げた。それは天使の顔部のど真ん中に当たり装甲を貫通。そのまま機能を停止していた。

 

「ふぅ、こんなところか」

 

「裏ボスゥゥゥーーーッッッ‼︎」

 

「おっと⁉︎ デルタか。久しぶりだな。元気にしてたか?」

 

「はいなのです! デルタはアスタロト様にまた会える日を心待ちにしてたのです‼︎」

 そう言いながら少し遠くにいたであろうデルタが俺に一直線に飛んで来て抱き付いてくる。それで頭を俺の身体に擦り付けてきた。まぁそれ程俺に再会できた事が嬉しかったんだろうけど……

 

「で、デルタ? その格好は……」

 

「これ? ここだと魔力が吸い取られてスーツの原型を維持出来なかったから……」

 

 俺がデルタの今の格好を指摘するのも無理はない。何故なら彼女はスライムで最低限隠せる所だけしか纏えていない。簡単に言えばビキニアーマーよりも布面積が少ない状態だ。だから俺は羽織っていた上着をデルタに着させる。

 

「その格好が動きやすいかもしれないけど、風邪を引かないとも限らないから」

 

「裏ボス……スンスン、裏ボスのとても良い匂いがするのです♪」

 

「っ⁉︎ ……デルタ

 

「っ⁉︎ ひゃ、ひゃいっ⁉︎」

 

「あなたはベータ達の所に行って護衛をしなさい。さっきの正体不明の敵の攻撃で一旦は止んだけど、またネルソンが攻撃してこないとも限らないから」

 

「は、はいなのですぅ‼︎」

 

 そう返事をしてデルタがベータ達の所に行った。それでアルファの顔を見ると……若干不機嫌になってるな。

 

(でもデルタをあの格好のままさせる訳にはな……)

 

 俺が羽織らせたのもスライムで作ったもので、それも魔力を抜き取られない様に強固に練ったものだ。だからデルタに何もしてない状態のスライムや魔力を分け与えるだけではいずれさっきの状態に逆戻りになるだろうから……だから俺が羽織ってた上着をデルタに与えたんだ。多分それで不機嫌になってしまったんだろう。まぁその所も後で怒られる……か。

 

「さて、今の状況は……作戦通りこの施設に辿り着いてそこのネルソン司祭から色々と聞いた後戦闘となり、それであのロボットが出てきたって事で合ってるか?」

 

「えぇ、アスタロトの言う通りよ」

 

 アルファは不機嫌だった顔を少し元に戻してから俺の問いに答えた。

 

「そうか。少しだけどんなやり取りがあったか……“見せて”もらっても良いか?」

 

「えっ? そんな事が出来るの?」

 

「まぁな。少しだけおでこを借りるぞ」

 

「えっ⁉︎ あっ……///」

 

 俺はアルファのおでこに俺のおでこを熱を測る様に軽く押し当てた。そして彼女がこの施設に入ってからここまでの記憶をそこまで時間をかけずに見ていったんだ。

 

 それを見終えて彼女のおでこから離す。それで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいハゲ……

 

「んなっ⁉︎ わ、儂のこt「テメェ以外に誰がいやがるんだよハゲッ!」ヒィッ⁉︎」

 

 少し殺気を飛ばしただけだというのに横に太ったハゲが怯える。まぁ俺がコイツに殺気を飛ばすのは当然の事で……

 

「テメェ……アルファに対して傷付ける事言いやがったよな? それも推測するに過去を含めて酷い事を1つ2つ以上やってきたんだよなぁ? なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テメェは復讐対象だ……この世に生まれた事を後悔しながら滅びろ

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何故……何故儂だけがこんな目に……っ⁉︎」

 

「まぁそれは後回しだ。それよりも復讐しないといけない“奴ら”がいるからな」

 

 俺がそう言った途端に、周りに複数のひび割れが生じる。そこからさっきと同じロボットがワラワラと出てくる。数として100機くらいになるか?

 

「ひ、ヒィッ⁉︎ さ、さっきの凶暴な奴がこんなにっ⁉︎」

 

 ハゲが脂汗を大量に流しながら恐れ慄く。

 

「アスタロト……これはいくらなんでも危険な状態だわ。私はこの場を撤退する事を勧めるのだけど」

 

「そうか。確かアルファ達の今の状態だと1機相手取るのも苦戦するだろう。だからアルファ達は先にこの場を脱出してくれて構わない」

 

「っ⁉︎ そ、それだと貴方はここに残る様な言い方じゃない⁉︎ 確かに貴方は王都襲撃の時に出現したアンノウンを数え切れないほど……いえほぼ全てを倒していたわ。でもそれは相手が魔力を伴った攻撃が通用したからよ! でもこの場では魔力を上手く練ることが難しいし、それに相手は魔力の通りも悪いのよ⁉︎ そんな相手が100以上いるのに貴方はまた無茶をするのっ⁉︎」

 

 アルファが俺に行くなと懇願する。涙は流れないものの、俺を必死に止めようとする瞳は潤んでいた。俺を止める為に俺の服も力強く掴んできて……

 

(でも俺だってアルファ達を守りたいんだよ)

 

 俺はアルファの頭に手を置いて優しく撫でる。それに対してアルファは少しビクッとしていたが、構う事なく俺は彼女に言う。

 

「どの道アイツらはここから出る術を知ってる。ここを破壊し尽くしたら今度は外に出て関係ない人達を襲うんだ。人を善悪関係なく、ただ滅ぼす為に。だから俺がやるんだよ」

 

「で、でもそれじゃあ貴方だけに負担が!」

 

「それで良いんだよ。と言うよりも適材適所ってところでさ……俺に出来ない事はアルファ達に任せる。それでアルファ達が困っているなら俺が手を差し伸べる。それにこんな事は負担にもならないから。だから俺を……信じて欲しい

 

「っ‼︎ ……そんな事……そんな事言われたらこれ以上貴方を引き留める事なんて出来ないわよ……バカ」

 

「あぁ、俺は大馬鹿者だ。でも……だからこそアルファ達を守れるんだ」

 

「……分かったわ。あの相手をアスタロト、貴方に任せるわ。でも私達もこの場を引かない。貴方が私達を守ってくれるというのなら、私は貴方の戦いを間近で目に焼き付けるから。だから……貴方の力を見せてちょうだい

 

「あぁ、そのつもりだ!」

 

 俺が返事をした瞬間、上から一本の刀が落ちてくる。それも全体が黒鉄色で大きな鞘に収まった状態の刀が。その刀は鋒部分から地面に突き刺さって、突き刺さった衝撃が大きかったのか、それは刀を中心にして地面に大きなヒビ割れを作った。

 

 そして俺はその刀を握る。

 

————来い‼︎

 

 魔力を自分の内側に練り上げながら収束させる。刀を鞘から少し引き抜くと、その刀からも莫大な量の魔力が噴き出るが、それさえも自身で受け止めて自らの魔力と混ぜ合わせた。尚も魔力が噴き出る刀を引き抜きながら、俺は口上みたく言い放った。

 

「30の軍団を束ねる者! そして欺瞞を正す(糾す)者にして悪魔35柱目の公爵! 俺に力を貸せ! マルコシアスッ‼︎

 

 刀を完全に引き抜くと、今度は小刀が4本頭上から降って俺の周りの地面に突き刺さった。そして俺を中心に今まで収束させていった紅い魔力が噴き出ていき、やがて空間全体を紅い光で覆う程にまで強い魔力がこの空間を掌握した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルファ達はアルジから発せられる魔力光のあまりの眩しさに顔を手で覆い隠す。そして光が弱まった頃合いを見て視界を開くと……そこはさっきまでの白い空間ではなく、どこまでも広がる青い空の下に荒野が広がっている光景だった。

 

「こ、これは一体何だ⁉︎ 儂は今どこにいるというのだっ⁉︎」

 

 瞬間移動にも等しい芸当にネルソンの頭は混乱しており、何も考えられない状態で辺りを見回すしかなかった。

 

「これ……あの白い空間から一気に外に出たのっ⁉︎」

 

「で、ですが私達がここに入った時は日もとっくに暮れていたはず……逆にここは真昼間の様に明るいのは……」

 

 アレクシアとローズもネルソン程とはいかないが若干戸惑いを見せていた。まぁそれもその筈で、彼女達は夜の時間帯にこの空間へと入り込んだのだ。そして外とこの空間の時間の流れが変動があるかどうかは定かではないものの、それでも夜になり始めから真昼間になるまでの時間が早過ぎると感じていた。

 

(……アルジの魔力をすぐ近くにに感じる。それも隣に彼がいると錯覚出来るくらいに濃い……彼に包まれているとすら感じる程心地が良いわ)

 

「あ、アスタロト様の本気の魔力なのですっ! あの時の比ではないくらいとても濃い魔力なのですっ‼︎ あぁ〜……アスタロト様ぁ〜‼︎」

 

 アルファは身の回りに漂う空気ですらアルジの魔力であると感知し、その心地良さに身体を預ける様に思考に耽る。デルタはというと、アルジの本気を出した魔力の濃さに興奮を隠さないでいた。その証拠に尻尾が振り切れるくらいにブンブンと音を立てて振られていた。そしてベータは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ〜……アルジ様ぁ〜……アルジ様に包まれてるこの感じ……ベータは我慢がききそうにありませんっ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自身の葛藤を押し殺すのに必死だった。これがもし、無事にアルジと恋人関係で2人きりの場であったのなら速攻でアルジに甘えている。そしてあんな事やこんな事……をしているだろう。まぁ今は妄想ではあるが……

 

 そしてアルジが立っていた位置には、丁度岩場の様なものがあり、そこに人型の何かが佇んでいた。全体的に白と灰色の装いで、左肩には赤いマントが装着されていた。そして大きな特徴といえば、両肩に備わっている鋭利なユニットだ。正直攻撃が当たる範囲を広めていると言われたら仕方ない構造ではあるが……

 

 そんな存在は、この空間に急に湧いて出たアンノウン達に対して青緑色に光る相貌で睨みつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 









解説


◼️ファング
『機動戦士ガンダムOO』シリーズに出てくる遠隔武装。初めて披露されたのは『ガンダムスローネツヴァイ』の遠隔武装として窮地に陥っていた主人公達を助けた時で、OOシリーズでは基本的な遠隔武装である。しかし作者が好きなタイプは『アルケーガンダム』の物であり、スローネツヴァイとは同じ形で色は白色と変化している部分はないが、やはり演じている役者の掛け声などが作者の中で好印象に残っている。因みにアルケーガンダムの搭乗者はアリー・アル・サーシェスというテロリストであり、作品界隈では担当声優が演じたキャラクター繋がりで『焼け野原ひろし』と呼ばれたりする。

また、本作主人公のアルジのファングの色は白ではなく紅である。


さて、次回はそろそろこの章を終わらせようと考えていますが、書きたい内容が増えると話数が増えていくかと思いますので、2期がくるまでにはなんとか1期を終わらせたいですね!

では次回もお楽しみに!


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