読者の皆様方には長らくお待たせしたにも関わらず、物語の展開として全く進んでいない事を申し訳なく思います……
しかしながら次の話数以降には必ずと言って良いほど物語の展開に戻っている予定ですので、何卒お待ち頂けたら幸いです。
また、今回他作品からキャラクターを引っ張ってきています。途中あやふやな表現が出てくる事かと思いますが、ご了承頂ければ幸いです。
では33話、ご覧下さい。
会議が終わった後、俺はアレクサンドリアに向かっていた。武神祭については明日からが予選受付だから、明日の受付時間までに帰ってくれば間に合う。まぁ学生代表として既に出場権は獲得しているけどな?
それで何故アレクサンドリアに向かっているかといえば、王都襲撃の際に現れたディアボロス教団の実験体にされてしまった子が意識を取り戻したと連絡を受けた。だからその子のケアをと思い、会議が終了した数分後にはミドガル王国を出立していた。
それから数十分後にはアレクサンドリアに辿り着いたな。
「アスタロト様、お帰りなさいませ」
出迎えてくれたのはラムダで、どうやら新しくシャドウガーデンに入った子達の育成準備をしている所だった。
「ただいまラムダ。さっき報告で、実験体にされた子が目覚めたと聞いたから様子を見にきたところだ」
「っ⁉︎ さっき聞いたばかりですか⁉︎ という事はここまで……」
「あぁ、周りに被害を出さない程度にかけてきた」
「そ……そう、ですか。分かりました。では、他の者に案内させますので少しお待ち下さい」
「分かった。少しの間待たせてもらおう」
俺の受け答えを聞いて少し引いた感じになったラムダ。まぁ俺も逆の立場だったら引くかな。
それから数分後、ラムダに紹介された子が現れて、俺を実験体にされてしまった子の元へと案内してくれた。それで案内されたのは病室として機能している一室で……
「こちらです。数日前に意識が覚醒したので意思疎通も問題ないかと思います」
そう言いながら案内してくれた子が病室の扉を開いた。開いた先の空間は、俺がこの身体になる前の世界でよく見られた様な白一色で、清楚な空間だと感じる。それにこの一室だけでもある程度の生活は出来るようにトイレ、浴室、洗面台も完備されていた。
部屋の中を見回すのはこの辺りにして、いよいよ俺はベッドの上にいる子に目線を移した。その子はベットから上半身を起こした状態で、備え付けの窓から外を見ている。その為に顔は見えないけど、綺麗な白銀色をした長髪を後ろで結っている……
(ん? この子の事を……俺は知っている?)
だがこの世界でこの髪色の子を俺は知らない。確かにベータと似ている髪色をしていると言われればそれまでだが、だがベータの髪色はどちらかと言えば銀髪で、そこに純白の白色は混ざっていない。なら俺はどこで見た事が……
俺がそう考えていると、窓の方を向いていた子の顔がこちらを向いた。
(な、なんでこの子がここにいるんだっ⁉︎)
この子は見覚えがあるなんてもんじゃあない‼︎ この子は紛れもなく俺の知っている子、いや! そんなものでは表せない程に長い年月を共に過ごした子の1人だ‼︎
(だがなんでここに……)
これも俺の事を邪魔に思う神側の手による物なのだろうか? それとも俺がこの世界に来た事で、俺に関係ある者達との縁を結んでしまったのだろうか?
(確かにそう考えてしまうと……今までの事も納得できる)
王都襲撃の際に現れた脇侍や、学園を襲った波旬。それに先のハラエルも、俺が巡ったことのある世界に出てきた奴らだ。だが俺に休暇を与えた神様達がそんな、この世界では危険極まりない奴等の出現を許すだろうか? 多忙な人達とはいえしっかりと管理している事は、長年行動を共にしてきたから嫌でも分かる。まぁ一部サボり魔の神様達はいるが……
「とても懐かしい気配を感じたと思えば……」
俺がまた考え事に意識を集中させていると、ベッドの上の子が俺に向けて言葉を投げかけてきた。その子はベッドから降りると、数日前まで意識が回復しなかったのが嘘みたいに普通に歩いてくる。そして……
「貴方との再会を……心から待ち侘びていました。貴方がいなくなった日からずっとずっと……」
俺の目の前まで来ると、俺の右手を両手で包み込む様にしてきて……真っ直ぐ俺の瞳を見つめる。
俺は向けられた瞳に込められた想いがとても大きなものだと感じたが、何を言えばいいか分からず、それで開口1番に出た言葉が……謝罪だった。
「……何も言わずに急にいなくなって悪い」
「本当です。私が、いえ、私達がどれ程心配したと思っているのですか?」
その言葉にすぐさま返して来る少女の言葉に、次の言葉を出そうと思っても中々考えが纏まらない。それでもなんとか考えに考えて、辿々しくはあるが少女に対しての問いに答える。
「……俺が簡単に想像できない程……多くの心配をかけたと思ってる。本当に……申し訳ない」
「いいえ、ダメです。……と、言いたいところですが、また貴方に会えた事自体が奇跡です。それにこんなにも穏やかな場所で」
俺の答えに対しては即答でダメと言われてしまった。だがすぐ後に今まで無表情に近かった顔に笑みを浮かべながら、俺の両頬に手を伸ばして包み込む様にふれてくる。まるで大切な物を扱っている様に……
「今度はもう2度と貴方から離れません。それと……
お帰りなさい。マスター……いえ、アルジ様」
「っ‼︎ あぁ……ただいま。“ハカマ"」
ハカマ……それが少女の名前で、かつて行った世界で俺と長い間苦楽を共にした存在であり、俺に対して好意を寄せて来た1人だ。
彼女達が元いた所は、『パニシング』と呼ばれる感染型ウィルスによって人類が滅びの一歩手前まで脅かされた世界線だ。詳細は随分昔のことで細かく覚えていないが、そのウィルスが機械に入り込んで汚染し、それが徐々に拡大していった。まぁ機械だけだったらまだ良かったかもしれないが、それは人にも被害を及ぼした。
文明としては俺が元生きていた地球よりも更に発達していて、日常生活でロボットがいた事は当たり前だったらしい。それがパニシングに汚染されて人々を襲い、人類は散り散りになった。汚染が拡大した地球に残る者もいれば、安全を求めて宇宙へと逃げた人達もいる。と、簡単に説明したらこんな感じだな。
それで俺は女神様から頼まれてその世界に行き、事態を収束させた。勿論ハカマ以外にも協力してくれた仲間がいたし、俺としては上手くやっていたと思う。その中でもハカマは特に俺と長く一緒にいてくれた存在だ。
元は人工知能AIで様々な事を記録、保管していく事が主だった事で、少女の身体は持っていなかったと聞く。だがとあるセージ・マキナという人物との出会いで今の様な身体を得た。それでその人に会う為に地球のとある組織で活動していた様だ。
そこに俺が来て、いろんな事があってハカマは俺と一緒に行動する様になった。俺と彼女が会った経緯としてはこんな感じで、それからは様々な所に赴きながら、パニシングの被害を無くしつつその元凶となるものも消し去った。そこから2度とそんな事が怒らないかどうかも様子を見つつ、俺と一緒に行動してくれた仲間達と共に平和な日常を歩んで行った。
元凶を取り除いてパニシングが再発しないかを確認するまでは時間としては結構長くかかったが、再発がないと断言された後俺はそこでの役目を終えた。そして終えたと同時に俺は別世界に行く為に毎回身体が光の粒子になって運ばれるのだが……その時ハカマに告白された。私と一緒にずっといてくれ、と。
それに対して俺は……今までと同じで、俺に対して思いを寄せて来た他の女性達に言ってきた事と同じ言葉で返した。その時は、それこそが彼女達を1番傷付けない方法だと思っていたんだが……今になっては後悔している。
でも彼女は今……俺の目の前にいる。まさかこの世界でも会えるとは思っても見なかったが……ちゃんと目の前に存在していた。
それで再会した後は、あの後あの世界がどうなったのかと俺の今の状況を共有した。俺の事については、現在この世界に蔓延るディアボロス教団の壊滅と、悪魔憑きによって苦しむ子達の救済をしている事を説明した。その際にシャドウガーデンに所属していることも伝える。それを言った時のハカマは、「ここでもマスターは人の為に活動しているのですね」と言ってくる。まぁそれが女神様との約束だし……
(……いや、俺は本来この世界では休暇目的で来た筈だが)
いつの間にかまた働いている様な……まっ、ここでは俺が生きるまで過ごす事が出来るし、他の世界線に比べてまだまだ時間があるから問題はないな。
それでハカマからは、あの後もパニシングが再発する事はなく、平和な時代が続いているらしい。その中で彼女は、俺と一緒に行動していた仲間とまた各地を放浪しながら生活をしていたらしいのだが、いつのまにかこの世界にいて、気が付いたらこの部屋だったらしい。だから彼女がディアボロス教団によって実験体にされてしまった事は覚えていないのだと言う。
(なるほど……アイツら益々罪を重ねたって事だよな?)
ハカマは確かにこの世界で生まれた訳ではないが、俺にとっては大切な存在の1人だ。それがアイツらに好き勝手されたという事実に俺は腸が煮え繰り返るが……
「マスターからイラつき、そして激怒の感情が見受けられます。アルジ様……私が側にいます。ですから1人で何もかも抱え込まないで下さい」
「っ⁉︎ あ、あぁ……悪いなハカマ。この世界の害悪どもがまた好き勝手して、結果君を傷つけた事が許せなくてな……つい怒りを露わにした。怖がらせたならすまん」
「いえ、マスターは私達と共にしていた時も常に私達の事を考えて動いてくれました。その時からもですが、今も私の為に怒ってくれる事がとても嬉しく思います」
ハカマはそう言いながら俺の頭を優しく撫でてくる。
(あぁ〜……この感覚も久々に感じるな)
「フフッ、やはりマスターは笑った顔が1番です」
「そ、そうか?」
「はい。その顔を見る事に、私は安心感を覚えます。激怒や悲しみよりも……その度にマスターは1人で抱え込んでしまいますから。もしかしてこちらでも1人で全て抱え込んでいるのですか?」
「……最初はそうだったよ。でもこの世界で大切な人に出会えてから、自分の正直な気持ちを伝えてからは少しずつマシにはなったかな」
「大切な人……ですか」
「あぁ。皆にも……それにハカマにも凄く心配かけたし、正直な想いを伝えれなかったり、君達の想いにも応えられなかったりでずっと後悔して来た。その事も……本当に申し訳ないと思ってる」
今まで裏切って尚且つ違う世界で大切な人と出会ったと……そんな奴の謝罪なんて虫唾が走ると自分でも感じる。
(だが俺はもう2度と、大切な人達を裏切らないって決めたんだ!)
これが贖罪になるなんて思わないし、寧ろ俺は今まで最低な事をしてきた分だけ罰を受けるべきだと思っている。それがどんな内容であれ、地獄に堕ちろと言われれば自分1人の力では出来ないだろうが、女神様をどうにか説得してでも受ける覚悟はある。それ程までに俺は最低な存在なのだから……
「マスターからの謝罪は先程も受け取りました。ですからそれ以上の謝罪は不要かと……それでもマスターの気がすまないというのであれば、そこのベットに横になってくれませんか?」
「えっ? あ、あぁ……」
ハカマに言われた通り、ベットに仰向けになる。だがこれが果たしてハカマに対して少しでも贖罪になるのか? そう思った時、ハカマもベットの近くに来て、俺の頭の近くに腰掛けた。それで俺の後頭部がハカマに少し持ち上げられてて、いつの間にかベットの材質とはまた別の、柔らかい感触に包まれていたんだ。包まれたと同時に、俺の頬を撫でる温かい手の感触と、慈愛のこもる様な笑みでこちらを見つめてくるハカマがいて……
「こうするのもなんだか懐かしいですね」
「……確かにあの世界でよくやってもらってたな」
「はい。こうでもしないとマスターは休んでくれませんでしたから」
「あの世界は何かと大変……というかあまりにも可笑し過ぎるくらいに危険が多かったからな。それを排除する為には、あれぐらい動かないと平和や安寧は勝ち取れないと思ったんだよ」
「ですがマスターは働き過ぎです。心配するこちらの身にもなってほしい物です」
「……面目ない」
「でも、そんな貴方のお陰で私達の世界はパニシングの影響も無くなって、少しずつ人の営みを取り戻していきました。ただ貴方の行った事が世界に認知されていない事に不満を覚えるのも事実ではありますが……」
「別に俺はそんな事は望んでやった訳じゃあ無いからな。俺が俺である為にやっただけで、簡単に言ったら自己満足にも等しい事だが、逆に世界中に認知されて目立つ様な事にはなりたくないしな」
「……確かにマスターらしいお答えですね。ですが働き過ぎな事は事実ですし、こちらでもマスターは他の方々よりも働いていると感じてしまうのですが、そこはどうなのですか?」
「えっ? あぁ、俺としてはぼちぼt「マスターの脈拍が少しばかり上昇した事を感知。私に嘘をつく事が出来ない事は分かっていますね?」……周りからはもう少し頼ってほしいと言われるくらいには働いてる気がする」
そう答えた時、俺を見るハカマの顔が呆れた物に変わる。俺としては、自分の出来うる限りのことをしているに過ぎないんだけどな……
「答えを聞く前にそうだろうなとは感じていましたが……やはりマスターにはそれ相応の休息が必要ですね」
「えっ? 俺は別に疲れていないが……」
「いいえ、マスターには早急に休んで頂きます」
そう言われながら頭を優しく撫で付けられる。まるで幼子にしているかの様な優しい手つきで……
(あぁ……確かこの手つきで撫でられたら急に眠気が襲ってくるんだよなぁ〜……)
「うふふっ……さぁ、良い子はおねんねしましょう」
その声が引き金となってか、俺は睡魔に逆らわずそのまま意識を落とした。
side ラムダ
王都襲撃の際に実験体とされていた者が目を覚ましたと報告を受けた。連絡要員にその事をアルファ様に報告する様に言ってから数日後、アスタロト様がアレキサンドリアにご帰還なされた。話を聞けば数十分前に実験体の者が目覚めた事を聞いた様で……
(……今日というよりさっき聞いたばかりですよね?)
王都であるミドガル王国からアレキサンドリアまでの距離は、鉄道を経由したとしても最低でも2日はかかるはずの距離だ。
(それをアスタロト様はまるで普通とでも言う様に移動なさる……確かシャドウ様でも数時間はかかると言っていた記憶があるが……)
正直どの様に移動してきたか気になる所だが、それは後にして実験体の看病及び監視を担当していた者にアスタロト様を案内させる。
それから数分後に、案内した者がその役目を終えて私に報告してくる。アスタロト様曰く2人きりで話したいとの事と、案内した者もアスタロト様と実験体にされた者は古くからの知り合いに見えたと言っていた。それに対して私は引き続き様子を伺う様に指示したのだが……
「ラムダ様! 大変ですっ‼︎」
数分後に同じ者が焦った表情でこちらに報告しに来る。内容としては、実験体がどんな術を用いたのか不明だがアスタロト様を眠らせた、と。
(あ、アスタロト様に限ってその様な事はあり得るはずがない! だが目の前の者が嘘を言っている様に見えん‼︎)
すぐさま私も現場に向かう。そこで目にしたのは、報告と同じ状況でアスタロト様が実験体に膝枕をされた状態で眠っている場面だった。それを見た私は、アスタロト様がなんらかの危害を目の前の者に加えられたと思い臨戦体制に入る。
(だがアスタロト様を何の警戒も無しに眠らせる様な相手だ……ここにいる全戦力を集めたとしても叶うかどうか……)
私がスライムで鞭を作って構えた時だ。私の殺気に気付いたのか実験体がアスタロト様に向けていた顔をこちらに向けてくる。だがその表情には警戒の類は感じられず……
「マスターが眠りから覚めてしまいます。どうかその殺気と武器をしまってくれませんか?」
シーッというジェスチャーをしながら、優しい声音で私に語りかけてくる。その声音には確かに安心感が伴っていて、こちらもつい警戒を解いてしまいそうになる。だが私は手にした鞭に力を込めてその誘惑を跳ね除ける。
「ならば即刻アスタロト様から離れろ! そして両手を後頭部に付けて床に伏せたなら解いてやらなくはない!」
「アスタロト……なるほど。マスターはこちらでもその名を使っているのですね」
(“こちらでも”? どういう事だ? そんな言い方ではまるで……)
「そういえばまだお礼の類をしっかりとお伝えしていませんでしたね。この度は私の窮地を救って下さりありがとうございます」
実験体にされた者の言葉に少し思考をしていた時、急に感謝の言葉を述べながら頭を下げてきたのでその思考も中断させられる。
「申し遅れましたが、私の名前はハカマと申します。かつてアスタロト様に救われて一緒に旅をし、苦楽を共にしました」
「……救われた。確かにアスタロト様であれば、目の前で苦しんでいる存在を放っておく事はできず、何物よりも深い慈悲の心でお救いなさるだろう。だが一緒に旅をしたというのは虚偽だな?」
「虚偽……私は事実を述べているだけてすが?」
「白々しい事だ。私達はアスタロト様に救われてからというもの、ずっとアスタロト様達と一緒だったのだ。数年間離れた事はあれど、その時にも不測の事態に備えれる様に連絡係と監視の者には着いてもらっていた! その時の報告にも貴様の事は何1つ上がった事も無い‼︎ その事実を知っても尚! 貴様はアスタロト様と一緒に旅をしたと言うのか‼︎」
「……なるほど、そういう事ですか」
私がハカマと名乗った者に事実を述べると、彼女は手を顎にやって少し俯き何かを考える仕草をした。そして何か納得したかの様に呟く。
「フンッ、ようやく観念する気になったか」
私はその仕草に相手も言い訳が無くなったのだと判断してすぐに制圧できる様に動こうとする。だがハカマと名乗った者は、先程と変わらない視線をこちらに向けてくる。
「確かに……急に現れた私がマスターと親しげに接していて、それをずっと共に過ごしていたあなた方が怪しむ事は理解出来ます。そんな状態で今の私が何を言おうとも信じて貰えないという事も……ですからここは誠に申し訳ないと思いますが、マスターに私の身の潔白を証明してもらうしか手はありません」
「何を言うかと思えば……そんな物言いも到底信じられんな! どんな手品を使ってアスタロト様を眠らせたかなど分からないが、一種の催眠術でも仕込んでいるのだろう? アスタロト様がその術に陥る事など万が一でもないとは思うが、そうなっていた場合は幾らでも捏造はできるというもの! つまり貴様の発言には信憑性など皆無だ‼︎ 分かったのなら大人しk「そこまでにしてやってくれないかラムダ」っ⁉︎ あ、アスタロト様⁉︎」
ハカマと名乗る女に膝枕をされていたアスタロト様が、ゆっくりとだがその身を起こす。
「アスタロト様、この者に何か変な事はされませんでしたか⁉︎ 場合によっては催眠術にかかっている場合もあります! すぐ診断を行わせて頂きますのでこちらへ‼︎」
私はアスタロト様がまさか起きているとは思わず驚いたが、一刻も早くアスタロト様の身体並びに精神的な無事を確認したいが為に、イータ様が作られたとある装置の元へと連れて行った。
side out
解説
◼️ハカマ
『パニシング グレイレイブン』というアプリで登場するキャラクター。パニシングと呼ばれるウィルスが世界に広まり、まずは機械やロボットが感染した。そこから感染は莫大なスピードで広がっていき、世界はパニシングにどんどん侵食され、最終的にそのウィルスが人々にまで猛威を振るった事により滅亡の一歩手前に陥る。そんな状況で人類は構造体と呼ばれる、パニシングやパニシングに汚染されたロボットに対抗できる存在を創り出す。
ハカマは多く創られた構造体の内の1機であり、元は情報を収集、管理するAIに過ぎない存在だった。そんな時に『セージ・マキナ』と呼ばれる人物と出会い、そこから様々な過程を経て機械の体を得る。それからは機械協会と呼ばれる組織で活動し、セージ・マキナを探す旅に出た。アルジとはその時に出会う。最初はお互いの目指す場所が少し似通っていた事もあって行動を共にしていたが、だんだんアルジに惹かれていき最終的にはアルジがこの世界から去るまで行動を共にした。
アルジが去ってから数年近く経った頃、自分の意識が急に停止してしまった事を認識したのがその世界での最後の記憶と語る。そして再び目を覚ました時には、『陰の実力者になりたくて!』世界のアレクサンドリアの個室だったという。
因みにこちらに来た際、肉体は機械から普通の人間の物に変わっている。しかし戦い方は向こうの世界と一緒である事と、出力も魔力に置き換わっていた為に最初からほぼ自在に魔力を操れる技能を持つ。
「向こうの世界ではマスター……アルジ様に告白した瞬間に私の目の前から消えてしまいました。あの時の絶望感、喪失感は忘れられる物ではありません。ですがこうして再会出来た事は正に奇跡です。……今度は絶対に貴方の事を離しません。ずっと側に居続けます」