陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

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結構早めの投稿が出来ました!

またここまでの間に新しく評価やお気に入りをしてくださった読者の方々に感謝を!ありがとうございます‼︎

さて本日は4話ぶりにサブタイトルにR-15が付いていますね。まぁ書いてたら途中イチャイチャな描写を書いていました。くどく感じたら申し訳ありません……

という事で35話の開幕です!


35話 復讐者、武神祭に向けて準備する R-15

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シド

 

 

 

 

 

 僕は今街を一望できる建物の上にいた。見下ろすといつもよりも人が多い事が分かる。特に剣とか鎧で武装した人が多くて……

 

(何しろ今日は明日から始まる武神祭の受付日で、腕に自信がある強者達が各地から集まっているからね!)

 

 そして自分が本来何がしたかったのかを思い出す。基本的に僕はどの世界にでもいる様なモブである様に日々徹している。でも何で僕がモブに徹しているのか……その理由は……

 

(普段何も感じられない奴が急に出て来て、誰もが認める強者を完封する! な、何だアイツはっ⁉︎ そんな声を喝采の如き浴びる陰の実力者‼︎ うんうん! とても良いよね‼︎)

 

 いつもならこの世界の主人公であるアルジが最強で、僕も全くと言って良いほど手が出せない。まぁアルジも転生者だから、この世界は僕が生きていた世界でいうところの神様転生が主なベースになっているんだろうね。だからこそアルジは強いし、僕も陰の実力者であり常日頃はモブとして生活できている。

 

(でも偶には僕が陰の実力者として表舞台に出ても良いよね‼︎)

 

 よし! それじゃあ僕も一般枠として参加しよう‼︎ 勿論僕とは分からない変装をしてからだけど、確か結構前の報告でイータが顔の輪郭や声を変える事が出来る装置を作ったって言ってたからイータの所に行ってみよう‼︎

 

 そう意気込んで建物の屋根からシャドウガーデンのミドガル拠点に移動するシドさんですが、まさかアルジさんも一般枠で、しかも変装して参加する考えを持っている事は知りません……しかもそれがシャドウガーデンの任務の一環としてやる事も……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正午になる前に、俺はアレクサンドリアからミドガル王国の王都へと帰り着いていた。勿論走ってだが……

 

 それでハカマについては、今朝正式にシャドウガーデンの一員になる事が決まった。そういう事で俺から魔力で形を変える事が出来るスライムを分け与えたんだけど、使い方を教えたら瞬く間に順応して、試しにラムダと戦闘を行っていたな。

 

(にしても使い始めて数分なのにラムダと互角って……)

 

 まぁあの世界では嫌と言うほど迫り来る敵と戦って来たし、そう考えると当たり前の結果になるか。結果としては時間制限があったから引き分けって形になったけど、初っ端からそんな成果を叩き出したものだからラムダは驚きつつもハカマを認めていた。

 

 そこで少し問題になったんだが……本来シャドウガーデンに入ったのなら、入った順番で番号が言い渡されるんだ。例えば最近入った子であれば665番とかってね。

 

 でもハカマは、入った順番では666番になるけど実力的にはナンバーズと同じくらいの物だ。だからラムダは早々にシャドウガーデンの任務を任せても良いと考えている様だ。

 

(それと新兵達に対しての教え方も上手い)

 

 流石は元AIという事もあって、他の子達に対して教え方が適切に見えた。魔力の扱い方や足の運び方、対人戦の駆け引きetc……(魔力の扱い方は俺が直接教えたし、直接その場でどんな感じかも手取り足取り教えたばかりだけど)だからこそ普通の兵士として扱うのは惜しいとラムダは思ったみたいだ。その事をアルファに報告しようと他の子に書状を持たせたかったらしいんだけど、今日俺はミドガル王国に戻るし、ついでという事でその書状も俺が持って行く事にした。

 

 ラムダとしては、俺にそんな事をさせるのが申し訳ないと思っていた様子だけど、気にしないで良いよと一声かけて書状を受け取った。まぁ最後までラムダは申し訳なさそうにしていたけど……

 

「か、帰って来たら……その……アスタロト様のお疲れを少しでも癒せる様に膝枕をしても……良いですか?」

 

 と、そう言われた。昨日は俺の休息を邪魔したからという理由でされた。でも今回のは必然的にミドガルには行く事になっていたし、書状もついで感覚だ。だから疲れる要素とか、ラムダがそこまで気にする事でも無いと思うんだけど……

 

(でも断ったら悲しそうな顔をするだろうしな……)

 

 そう考えた為に、またアレクサンドリアに帰った時は頼むよと返した。そうしたらラムダは不安な顔から笑みを浮かべた顔になって、その時の掛け声もいつもより明るい物に聞こえた。

 

 そんなやり取りがあって現在は無事ミドガル王国王都に着いた。

 

「さて、変装するにも一般人がいる所では駄目だし……普通に拠点に行くか」

 

 そもそも拠点に行く用事もあった訳だから丁度良い。そんな呟きを残して俺はミツゴシの屋上に構えられた拠点にひとっ飛びした。勿論誰にも見られない様にしてだが。

 

 数秒後……拠点に辿り着いた俺はまずアルファにラムダから預かった書状を渡しに行った。この時間帯なら自室で作業をしているだろうから、寄り道をせずにアルファの自室へと向かう。途中シャドウガーデンの子達とすれ違ったら普通通り挨拶をして、偶に困っている子を見かけたら少し手伝ったりする。まぁこれもいつもの事で、そんなこんなでアルファの自室前に辿り着いた。

 

 ノックを3回すると、アルファの声で入室の許可を貰ったから一声断りを入れてから入る。

 

「あらアルジ、戻ってくるのが早いわね」

 

 アルファは俺にそう言ってから、丁度手に持っていた書類にサインをして書類の山に置いた。多分今日やった奴があの書類の山になるんだろうけど、本当に仕事が早いな。

 

 それをポツリと言ったら、微笑みながら俺の為だと言ってくる。

 

(にしてもマジで可愛いな……本人は自然と何でも無い様にやってるんだろうが……)

 

 さっきの仕草とかドキッとした。多分俺の顔はほんのりと赤くなっていて、その証拠にアルファが俺の顔を見て可愛いと言ってくる。イヤ、もう勘弁して下さい……

 

「それで、私の様子を見る為だけにここに来た訳ではないでしょう?」

 

「あぁ、実験体にされた子についてまとめた事をラムダから預かって来た。ここに詳細が書かれてあるから目を通して欲しい」

 

「そう、それでその子はどうだったかしら?」

 

「あぁ……結論から言えば、昔俺と旅をした知人だった」

 

「っ! という事は……その子も違う世界……アルジが行ったことのある世界で行動を共にした子、と言う訳ね。後はラムダからの書状を見れば大体の事を把握できるわね」

 

 それに返事をしながらアルファの席へと近付く。それで机越しにその書状をアルファに渡した……んだが……アルファの手は俺が持つ書状ではなくて肩を掴んできた。その状態でアルファが俺の上半身を前のめりにさせて来て、彼女は俺の胸辺りに顔を近付けて来た。

 

スンスンッ……フフッ、昨日はラムダと実験体にされてしまった子とは随分密着したのね?」

 

(えっ……⁉︎ 昨日普通に風呂に入った筈だが……)

 

「まぁ実験体にされた子とは久しぶりに再会したというのもあって、感極まってハグをした……いえ、貴方の場合は膝枕かしら? それをやってもらって、そこからどういう経緯かは分からないけど、ラムダにも膝枕をしてもらったようね。それも長時間に渡って」

 

 あ、あの……なぁ〜んでそこまで分かるんですかアルファさん?

 

「貴方の事を何でも理解していたいからよ♡」

 

「っ⁉︎///」

 

 心の声にいつもの如く反応して来る+耳元で甘い声で囁いて来るという2コンボを受けてしまった俺は……正直観念するしか道がないのである。というかこのシチュエーションも恥ずか死ぬ思いが込み上げて来た普通に赤面しちまう……だからさっきよりも顔がもっと赤くなっている事だろうな……

 

 まぁ言うなれば奥さんの尻に敷かれた旦那ポジションって訳ですねぇ〜‼︎

 

「あら? またどこかの学ばない者がアルジの事を馬鹿にしたわね……後で制裁が必要ね

 

「あ、アルファ? 急に物騒な事を言ってどうしたんだ?」

 

「いえ、何でもないわ。それよりも……こっちに来てくれるかしら?」

 

 さっきまで両肩を掴まれていたが、それも離された後にアルファが俺の右手を掴みながら歩き始める。歩いて行く方向にはソファがあり、その前まで辿り着くとまずアルファが座る。その後彼女が自分の隣に座ってと言わんばかりにソファを左手で優しく叩いた。

 

(まぁ断る理由もないが……)

 

 アルファに指示された通り、アルファの横に腰掛けた。腰掛けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にかアルファに押し倒されていた。簡単に言えば俺が仰向けになって、そこにアルファが馬乗りになっている状態だな。しかもさっきまで私服だった所をスライムスーツに衣装替えしてるし……

 

「ふふっ♡急に押し倒されて戸惑っている貴方の顔……とても可愛いわ♡」

 

 アルファ自身も少しだけ顔を赤くしながらも、魅惑的な笑みを浮かべて言ってくる。前の時点でも羞恥がはち切れんばかりだったけど、今完全にそのベクトルも振り切れてしまった。

 

「なんでこんな体勢になってしまったかは……多分貴方も分かっているでしょうけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はとても独占欲が強いの。貴方の事を好きと告白してきた誰よりも、ね。だから……少しの時間だけ貴方に甘えても良いかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また少しアルファが顔を赤らめて言ってくる。瞳も切なげで、声も俺の庇護欲を掻き立ててくる様な……

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな風に言われて誰が断れんだよぉっ⁉︎ 正直恥ずか死ぬ気持ちで一杯だけど気合いと根性でどうにかしてやんよっ‼︎

 

 後半いつもあまり使わない様な口調になったが、アルファの気持ちに応える様に右手を彼女の後頭部に持って来て、優しく撫でた。

 

「あっ……♡」

 

 それにアルファは目をトロンとさせながらも、彼女の方も両手で俺の頬を包む様に触れてくる。スライムスーツ越しとはいえ、その感触は彼女の肌に直接触れられている様な感覚で……

 

「んっ……」

 

 彼女の方から軽くキスをしてくる。その感触がまた柔らかく瑞々しくて……たったそれだけのことなのに甘い香りが漂ってくる。

 

「ふふっ♡貴方とのキスはいつやっても甘美ね。ねぇ、もっとして良いかしら?」

 

「……俺が断ると思うか?」

 

「愚問だったわね。じゃあ遠慮なく……んっ……はむっ……チュッ……」

 

 そこからアルファは慈愛の籠ったかの様なキスの雨を降らせてくる。それがディープキスに変わって、彼女の舌が俺の口内を優しくなぞっていく。俺もそれに負けじと彼女の口の中に舌を入れて、傷つかない様に優しく触れていった。

 

 その事でアルファの中で火が付いたのか、キスをしながらその豊満な胸を俺に押し付けて来て、更に足まで絡ませて来る。そうされると俺も一般男性並みの感性だから身体が自然と反応してしまい、それがアルファにも秒でバレてしまった……まぁ足を絡ませて来る時点で物凄く密着している状態だからな……そりぁバレるわ。

 

 それで完全に火が付いたアルファは俺を魅惑して最後まで誘ってくるのだが……そうしてしまうと本来の俺の用事を済ます事が出来ないから……彼女には申し訳ないけど我慢してもらう事にした。おいそこ、ヘタレとか言うな。

 

 それでアルファにはなんとか我慢してもらった訳だが……

 

「その……武神祭が終わった後なら貴方の事を……頂いても良いかしら?」

 

「……そこまで我慢できるか?」

 

「た、多分出来るわ! そう……私なら……きっと……で、できるわ……」

 

「いや、それ我慢出来ない人の答え方だからな?」

 

「うっ……ば、ばか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グッハ⁉︎ や、ヤバイ……アルファが俺を殺しにかかってくる……っ⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 いやもぅ比喩でも何でもないのよ……だって想像してみろよ? 俺の目の前で顔を赤らめてから瞳は切なげで、しかも普段は言わない悪態をそんな顔しながら言ってくるんだぞ⁉︎ こんなの俺を殺しにかかってくる様なものじゃあないか‼︎ まぁ精神的な意味でと言う話だが……

 

(俺の方から我慢できるかと聞いてるくせに、まさかの俺が理性の鎖を削られて逆にアルファの事を……とか……マジでどうして俺の理性は一般人男性……いや思春期の男子高校生並みになっちまったんだよ)

 

 そう考えている今もアルファから切なげな視線を送られているし、それを見て更に俺の理性を縛っている鎖がガリガリと削られていく。これを自然とやってくるもんだから本当にこちらとしては困ったもんだ。主に理性を縛りつける意味で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうにかアルファからの天然攻撃(変なネーミングで申し訳ないが)を無事に乗り越えて、本題に入る。

 

「変装をするとして、またあの姿になるのかしら? 確か釈迦……という名前だったわね」

 

「あぁ、釈迦であってる。でも今回釈迦に変装して参加するわけじゃない」

 

 アルファに見てて欲しいと言って、俺は姿を変えた。自分の身体全体に魔力を纏わせて、段々形を変えていく。正直変装をするからにはその人の背格好とかも忠実に再現する必要があるから、変装する人物よりも身長の高低差があるのは宜しくない。

 

 でもこの場に俺が変装しようとしている人物を知っている人なんてまずいないからな。だからそこも度外視して外側の形から中身の筋肉量や声帯、果てには纏う魔力の質も若干変えていく。あぁ若干とは言ったけど、あくまで俺とずっと一緒に接して来た人が分かる程度にだ。だから3、4日過ごした程度の人では、こちらから正体を明かさない限り全く分からない程には変わっているだろう。それで今回変装しようと思っている人のイメージカラーは黒色だから、魔力の色も紅から黒に変化していった。

 

 そうしていく内に変装が完全に終えたから、身体の周りに纏わせていた魔力を霧散させる。

 

「さてっと、とりあえずこんなものか?」

 

「……目の前で見たから分かるけれど、遠目から見たらアルジだなんて気付かないわ。魔力の流れを見れば何となく分かるけど……」

 

「へぇ〜、アルファにもそう見えんのね。それだったら安心して武神祭にも臨めるな」

 

 どうやらアルファが太鼓判を押すほどの変装が出来ているみたいで、俺としてはまずは一歩目だ。それでどんな容姿にしたかと言えば、肌は肌色より少し白いくらいで、瞳の色も黒色。髪は背中に達する程の長髪で黒色。また身に纏っている衣装も、ところどころ白いラインが入っていたりするが、全体的には黒一色と言ってもいいくらいだ。それで顔つきだが……

 

「……何故かしら。女性として負けた気分にさせられてしまうのだけど」

 

 なんかアルファにそう言われるくらいには美形だ。アルファ曰く、普段の俺は可愛いの方に寄っている顔付きらしく、彼女の中では庇護欲が掻き立てられてしまうのだとか……

 

 だが今違う人物に変装している俺の顔つきは……正直男勝りな女性と言われても普通に信じられてしまうくらいに美形との評価で、化粧をしてなくても造形が整っている事に対して、何故かわからないが負けた気分なのだそうだ。

 

(つったってな……アルファもお化粧しなくても普通に綺麗で可愛いんだが」

 

「えっ///あ、貴方に改めてそう言われると嬉しいわね……」

 

 心の中で思っていた事が、どうやら途中から出ていた様だ。まぁ本音で思っている事だし、彼女も嬉しそうだからいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後はアルファとこれからの事を少し話した。正直現場で予想通りに動くかどうかなんて分からないからな。急な事が起きれば臨機応変に対処していくだけだと思ってる。

 

 その話がまとまって帰ろうとしたところ、イータのところに兄さんがいる事が分かる。何の用事でイータの所へ行っているのか分からないが……

 

(この姿で入って少し驚かせるか)

 

 そんな事を考えてアルファに一声かけてから部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は武神祭に出場する為に変装する事に決めて、今はイータのところに来ていた。過去にイータには、陰の叡智として変装出来る装置がある事を話した。と言っても簡単な程度で留めておいたけれど、それが彼女の中で進化を遂げて実際に作り上げてしまったと報告されてたのを思い出して赴いたのもあるけど。

 

「やぁイータ、今大丈夫?」

 

 イータの研究室のドアを開けながら聞く。開いた先には彼女が記した研究資料が散乱していて、足の踏み場があるかもどうか怪しい程だった。それで肝心のイータは僕に背を向けて熱心に実験していた。

 

「スピー……グスピー……」

 

 ……いや、寝てた。多分また何徹もして寝落ちしたんだと思うけど……

 

「イータ?」

 

「グー……ん……くあっ……あっ、シャドウ様」

 

「寝ている時にごめんね? 少しイータに用事があって来たんだけど良いかな?」

 

「用事?」

 

 そこで僕がやろうとしている事を話した。それを聞いたイータはすぐに準備をすると言ってくれて、先に広間で待っていて欲しいと言われた。

 

 イータに言われた通り広間に着いて少し待っていると、イータとナンバーズのカイ、オメガがとある装置を持って来た。イータは自分のスライムを使って大きめの装置を運び、カイとオメガは……

 

(あれって自転車だよね? 確かイータにも話した事があるし……)

 

 そんな事を思っているとものの数分で装置が出来上がって、僕はイータに指示されるがままに豪華な椅子に座った。

 

「シャドウ様、これを顔に付けて」

 

「これは……スライム?」

 

「そう。スライムを顔に定着させて、そこに電位を生じさせるこの装置を使って入力した通りのマスクを作る」

 

 なるほど! 確かにスライムであれば形を自由自在に変えられるから、変装道具には持ってこいだね‼︎ それに話を聞くと、どうやら一度定着させると着脱は勿論できるけど、付けたままで過ごす事も可能で、魔力を通してイメージすれば普段の自分と変装用の顔とで使い分ける事も可能だと説明された。

 

(うんうん! 現実世界ではやりたくても出来なかった方法だね‼︎ 昔少しだけ話しただけなのにそこからここまでの物を作り上げるなんて……流石はイータだ‼︎)

 

 顔に透明なスライムをパックする様に付けて、後はどんな顔にするかを決めるだけだね。それでイータからリストを貰ったんだけど、載っている人物はあまりパッとしない貴族ばかりで、この中から特に貧弱そうな見た目な人を選ぶ。

 

「う〜ん……あっ、これとか良さそうかも!」

 

「ん〜……うん、分かった。これで設定する?」

 

「うん、お願い!」

 

 そしてイータは装置に僕が選んだ人物の情報を入力していく。その間にカイとオメガは装置に繋いだ自転車を猛スピードで漕いでいた。成程……電力はそれで生み出すんだね。

 

 そこから数秒後には装置に必要な電力が溜まって、僕は頭部を装置にすっぽりと覆われる。装置が付けられたら目を瞑る様に言われたからその通りにしていると、徐々に機会が動いていって最後には一瞬パッと光を感じたんだ。動作をやり終えたのか、装置から蒸気が流れる音がして自然と外れた。

 

「終わった感じ?」

 

「はい、完了しております」

 

「シャドウ様が言われた通りの顔になっておられます」

 

「見る?」

 

 カイとオメガがそう言って、イータは僕に手鏡を向けてくる。そこに映ったのは、確かに僕が決めた顔の男だった。にしても細部に渡って細かいねこれは。街中を歩いたとしても誰も僕だとは気付かないね‼︎

 

「後は声帯と身体だけだな」

 

 この男の写真をイメージして声帯と身体の骨格を変える。どことなく猫背のイメージに見えたからその通りに骨格を変化させて、声帯はいつもの僕よりも更に低い声に変える。これも陰の実力者になる為に特訓した成果で、これを習得した後はあまり使い道がない事に気付いてガッカリしていたけど、まさかこんな場面で生まれてくるなんて思いもしなかったよ!

 

「ん……これで問題ないか?」

 

「っ! 側から見たら別人にしか見えません‼︎」

 

「さっきまでの事を見ない事には誰も気付かないでしょう‼︎」

 

「私の天才的な頭脳だからこそなし得ること……ブイブイ」

 

 そんな感じで3人とおかしな所がないか確認していると、唐突に正面の大きなドアが開いた。そこから入って来たのは、黒い長髪をした人物で、肌の色もどちらかと言えば色白。瞳はくっきりとしていて目鼻立ちもバランス良く見える。纏っている衣装としては全身黒色だったから、てっきりシャドウガーデンに属する人……多分またガンマがエキストラとか雇ったんだろうけど、いつもみたくイータとかに報告にでも来たのかなって一瞬思った。

 

(でもあれ……どっちなんだろう?)

 

 今僕の頭の中で考えている事は、今扉から入って来た人が男なのか女なのかについてで、ここからだと全く分からない。顔つきから見て男に見えるけど、男勝りな女性もあんな感じに見えるし……

 

「な、何者っ⁉︎」

 

 そう思っているとカイがスライム剣を握って入って来た人を睨み付けていた。隣にいたオメガも同じ反応をしてて、でもよくよく見れば確かに入って来た人がシャドウガーデンに関係ないんじゃないかなっていうのが分かる。

 

 そんな場面で扉から入って来た人物は、こっちに移動しようとしていた足を止めた。それで僕と目が合って……

 

「なるほど……どんな理由でここに来ていたかと思えばそう言うことか」

 

 そんな一言を僕に対して発していたんだ。

 

(……って、本当に誰⁉︎)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 変装した状態で兄さんがいる部屋に入ってみると、そこには少し大きめな装置とそれに繋がっている自転車が自らを主張するが如く鎮座してあった。その装置の前には、装置を使ったイータと、この装置を動かすのに手伝ったであろうカイとオメガがいて、後1人見た事がない男が立っていた。

 

(つっても魔力で兄さんである事はバレバレなんですけどねぇ〜?)

 

 兄さんが思い描いている事としては、変装して武神祭に参加しつつ自分は最強ムーブをする事だろう。正直ここから見てもパッと見弱そうな人物には変わりないし……

 

 それで兄さん達に近づこうとしたら、カイとオメガに威嚇されてしまった。俺が入って来た時はまるでポカーンとした目になっていたんだが……数秒後に意識を切り替えてスライム剣を俺の方に向けて来た。

 

(まぁ全く見た事ない人物がよりにもよってミツゴシ屋上の、しかもシャドウガーデンが拠点とする場所にいるなんて誰も思わないだろうし)

 

 でも流石に兄さんは俺の事は気付くだろうな。何しろ赤子の頃からずっと一緒だったんだ。現に……

 

「……」ポカーン……

 

(はぁっ⁉︎ 兄さんが俺だと気付いていないだとっ⁉︎)

 

 兄さんレベルの魔力の扱いであれば簡単に気付かれると思ったが……まぁ昔から一緒に過ごして来た人でも今の俺の変装を見破るのは難しいって事が証明されたな。

 

(それでイータは……ん? 俺に近付いて来ているが……?)

 

 何故かイータだけは俺の方へといつもの如く近付いて、俺の目の前まで来た。そこからは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスターの安眠抱き枕〜……グスピー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……いや何でそうなる?)

 

 イータが俺の背中に腕を回してそのまま抱き付き、俺の胸に頭を預けて眠ってしまった。いつもの姿だったら理解できるが(いや、正直今も何故抱き枕状態にされるか理解出来ないでいる)……今の姿は目の前で俺の変身を見ていたアルファでさえも、変身を見ていなければ俺と認識するのが難しいと言ったぐらいなんだぞ? それをこの子は何の躊躇いもなく俺に抱きついて来て……

 

「お〜い……俺を誰かも分からずに抱き付くのは幾らなんでも警戒心なさ過ぎじゃあないか?」

 

 普通にそんな台詞が口から出てたんだが、秒で眠ってしまうイータには届いていないだろうな。それにこの状況を見て他の3人は置いてけぼりをくらっているし、正直俺もそっち側にカウントされていると思いたいんだが……

 

(さぁ〜て……この状況どうするかねぇ〜)

 

 俺がそう思っていた時だ。俺を抱き枕代わりにして眠っていたイータの顔がモゾモゾ動いて、俺の方を見上げる様に視線を向けて来た。それが上目遣いの様に見えて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスターが近くに来たらすぐ分かる……だってマスターの側が1番落ち着くから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(えっ……なにその、俺の羞恥を掻き立てる様な台詞は……)

 

 イータとも長い付き合いではあるが、いつも無表情で完全に何を考えているかは把握しきれていない。表情を変えるとしたら実験が成功した時の喜びの表情だったり、予算申請とかをガンマとかに申請しないといけない時の様な悲嘆に暮れた表情。予算を下げると言われた時の絶望感が伴った表情と泣きそうな顔……あげれば確かに喜怒哀楽の表情は出しているが、その殆どが実験関連に紐付けられる。

 

(そんな子が真っ直ぐこちらを見つめて、少し微笑みを浮かべながらそんな台詞を言ってくるんだぞ? 一般の男子高校生と同じくらいの思春期状態を持ち合わせてしまっている俺に対しては、マジで危険な精神攻撃だ……)

 

「それにマスター成分を定期的に補給しないと実験に支障が出る……」

 

 あっれぇ〜……なんか結構前に姉さんにも言われた様な成分を言われた気がするんだが……

 

「い、イータ様⁉︎ その男から離れて下さい!」

 

 それで今更になって反応するカイ達……いや、確かにイレギュラーな事ではあるけど流石に反応が遅過ぎるぞ⁉︎

 

(それに兄さんはいつまでそんなポカーン顔してんだよ⁉︎)

 

 あの様子からして本当に兄さんは俺が変身している事に気付いていない。釈迦の時は普通に気付いていた筈だが……

 

(はぁ〜……仕方ない。顔だけ変身を解くか)

 

 そうして漸く兄さん達は俺が変身していたんだと理解した。それでカイとオメガはさっきまでの対応に対して急激に顔を青くして謝って来た。まぁ俺としても驚かせるつもりでやってるから気にしなくて良いと一声かけて取り敢えずは解決させる。

 

 兄さんと言えば、俺が変身していた事にとても驚いていた表情をしていた。にしても驚いた表情と今の兄さんの声帯から出ている声が合わなさ過ぎで正直笑いが込み上げて来そうだったよ……

 

 そんなやり取りの中であってもイータは俺から離れずに寝息を立てながら幸せそうな顔をしていた。

 

(でも時折チラリと目線をよこしてくるあたり君眠っていないよな……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




武神祭編導入部分の終了です!

さて、今回アルジが返信した人物ですが、一体誰なんでしょうねぇ〜……?

ヒント

・テイルズ作品出身
・黒の長髪で背中まで伸びている。
・肌は色白寄りで目鼻立ちもバランス◎
・瞳の色は黒。
・全身黒色の衣装で纏めている。
・傍目から見ると男か女か分からない程に美形←ここ重要‼︎

一応ここまでが本編で記されている物になりますね。

ここまでの情報でアルジさんの変身している人物が誰なのか? 推理して頂きながら次回を楽しみにして頂くと幸いです。まぁ分かる方はすぐ分かってしまうかもしれませんが……





——追記——

読者様から寄せられた意見で、上記のヒントだけでは絞りきれないと頂きましたので、追加のヒントをこちらに書き記させて頂きます。

次回答え合わせをする予定ですので、読者の皆様もアルジさんが一体誰に変装したのか?次回を楽しみにして頂きながら考えて頂くと幸いです‼︎


追加ヒント

・テイルズ作品出身
・使用する武器は片手で扱える剣か斧
・左利き
・性格はぶっきらぼうで大雑把。煩わしいことは嫌いで皮肉屋な場面があり
・その反面「ほっとけない病」で面倒見が良くお人好し
・権力を笠に着る貴族が嫌い

作者が思う大ヒント
・キャラクターの名台詞

選ぶんじゃねぇ。もう選んだんだよ



ではまた次回お会い致しましょう!
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