「おいおい作者さん? これでこの章何度目だよ? 少し多過ぎじゃあないか?」
いやぁ〜……私もそう思っているんですけどね……書いてたらいつの間にか……もしかしたら次回もそうなるかも……
「はぁ〜……まぁ読者の皆様は、作品が早く進む事を待っている人が多いだろうからな。多少は俺も目を瞑るが、早く書き進めてくれよ?」
はい、出来る限りそうさせて頂きます。と言う事でどうぞご覧下さい!
本戦に行く為の切符を巡る予選が明日行われる。枠は4つで、今年は参加者が多かった事もあってかそこに登り詰めるために5回ほど試合をした。
(つっても1回も剣を抜いてないんだよなぁ〜)
俺は普通に剣を抜いてやっても良かったのだが、俺と当たった相手の実力がそこまでなかったのかは分からないが……結果としては剣を一度も抜いていない。
中には兄さんに当たってた筋骨隆々な男と同じくらいの見た目もいたんだが……所謂見せ筋みたいな感じで全然だったし。
(それにしても少しお腹が減っていたからマグロナルドに寄って買い食いでもしようと思ってたんだが……)
ただ2つ、3つ買おうと思っていたのにそこにプラスでもう3つ付いてきてしまった。俺は誰かと注文を取り違えていないかと聞いたんだが……
「いいえ! 現在
と眩しい程の笑顔で言われてしまった。だが俺の前と後の人に対してはそんなサービスがない様に見えたから、また改めて聞いたら「それは気のせいですよ!」とこれまた同じ笑顔で言われた。まぁ気にするなと言うならこれ以上気にしても仕方ないからそのままにしておこう。
「でも明らかに多過ぎだよな……」
広場の噴水に腰をかけて6つバーガーを抱える様に持つ。持つ分には重くはないが、バランスを崩してしまうと地面に落とすなこれは……
(1つ食べたら、後は取り敢えず袋に入れて帰るか)
バーガーの1つを取り、包みを取って食べ始める。うん、美味しい。俺が転生する前に生きていた時代程ではないけど、中世ヨーロッパぐらいの食生活の中でいえば、そこらの貴族が食べている様な高級肉よりも美味しい。
そんな事を考えながら、いつもの日常と変わらず過ごしている人達の往来を眺めていると……
(あれは……ローズ先輩か?)
リンドブルム以降会っていなかったローズ先輩がこちらに向かってくる。あちらは俺の存在に気付いた様子はなく、何か思い詰めた様子だった。そんな表情を見てしまった俺は、声の届く範囲まで近付いてきた時に声をかける。それで漸く俺に気付いて、さっきまでの表情が嘘みたいに笑顔になって挨拶を返してくれた。そして俺の左側に座ってくる。
「こうして一緒にいるのは、リンドブルムの街を2人で回った時以来ですね」
「そうですね。あれから先輩はどうしていたんですか?」
「あの後は、女神の試練の来賓として呼ばれていたのでそちらに参加していました。そこで席が近かったアレクシアさんと、なんとあのナツメ・カフカ先生とお近付きになったんですよ! それで空いている日に3人で会って楽しく過ごしてます‼︎ まぁ会う度にアレクシアさんとナツメ先生が口喧嘩をしているんですけどね……」
「あぁ、そうなんですね……(アレクシアさんとナツメ、もといベータが喧嘩? どういった経緯でそんな事になったんだ?)」
アルジさんは何故その2人が会う度に口喧嘩をするのかが気になりました。2人の相性は、性格が似通っているものの同族嫌悪しており、その時点で悪いに傾いています。それに加えて、アレクシアさんがアルジさんを過去あれだけ嫌悪していた相手だというのに、今では掌返しの如く擦り寄りあまつさえ好意を抱いている様な行動を取っています。それを見たベータさんはアレクシアさんに怒りを抱いている事も重なり、2人の中は険悪の状態との事で、つまりその要因にアルジさんが関係しているという事を彼は知りません……
「まぁ何はともあれ楽しそうにしていて良かったです……なのになんでローズ先輩はそんなに思い詰めた顔をしているんですか?」
「っ⁉︎ わ、私そんな顔をしていましたか⁉︎」
「遠くから見ても普通に分かるぐらいには」
「そ、そうでしたか……やっぱりアルジくんは凄いですね」
「いやいや、それなりの関係を築いてたら誰でも分かる事だと思いますけど?」
「そ、そうでしょうか?」
「そうですよ。でも雰囲気から察するに……ご家庭の事情ぽいから、俺がそんな簡単に聞ける話という訳でも無いですよね?」
「……アルジくんにはなんでもお見通しなんですね」
「なんでもって訳じゃあ無いですけど……それなりにですかね」
「……私は今とても迷っています。他人には簡単に明かす事が出来ないほど……そんな悩みを抱えています。どうすれば良いかが分からなくて、でも他の人に……アレクシアさんやナツメ先生、クレアさんに……そしてアルジくんの様な親しい間柄の人にも相談したいのに出来ない……これ程までに、もっと自分に力があればと思った事はない程に私は……」
今ローズ先輩が抱えている事を……俺は知っている。それは国がらみの事で、他の奴が好き勝手にどうこう言って解決する問題では無い。それ程までに先輩が抱えている悩みの大元は深い位置にある……
(だからローズ先輩にそんな顔をさせている連中が許せないっ‼︎)
だが今の俺は……ローズ先輩から見たら学園に通う後輩だ。そんな俺に馬鹿正直に悩みを打ち明けたって何も解決はしない。確かに心の内は軽くなって多少視野は広まるだろうけど……それでも限度がある。
(だから今回の武神祭で、来賓として参加しているドエム・ケツハットを拘束。並びに今のオリアナ王国の現状を知る事からだな)
俺が今すぐに解決する事は可能だが、そうなってしまうと教団側に瞬く間に異変を察知され、それが最終的にシャドウガーデンの仕業だと思われるのは避けたい。
(なら今までで教団に楯突いた事がないか、若しくは過去にどこかしらで衝突していたとしても組織名が掴めていない様な所を介して……という筋書きが今の所1番の安牌かもしれないな)
まぁそんなに都合良くいくかは分からないが……なんとか今現状で出来る事をするまでだな。
「アルジくん……少し、肩を貸してもらっても良いですか?」
「えっ? ま、まぁ良いですけど……」
「ありがとうございます。じゃあ……少しだけ……」
そう言って俺の左腕にローズ先輩が両腕を絡ませてきて、頭を左肩に置いてくる。まさかそうしてくるとはあまり予想をしていなかったからびくついてしまったが……彼女の悲しげな顔を見てしまうと、内心で抱いていた焦りも失せて、代わりにローズ先輩の心が少しでも落ち着く様に、彼女の頭を優しく撫でる。
(っ⁉︎ この感じ……悪魔憑きに晒されているのか⁉︎)
ローズ先輩に触れて分かった。しかも随分と症状が侵攻しているみたいで、正直すぐにでも治療する必要があるが、この場は人通りが多いし、このままシャドウガーデンに連れて行くのもリスクがある。
(後は自分が借りてる寮に連れ込んでという方法もあるが……何故かそれだと後々問題が起こってしまうと勘が告げている……)
随分前でこの世界線とは関係がない話にはなるが、同じ状況ではないにしろ今すぐ対処した方が良い問題に出会した事があった。その時にも今俺が感じている勘が働いたものの、それを無理してすぐに問題を対処したんだ。
ただそれが悪かったのか、予想外の事が起こりまくってしまって、当時進めていた計画自体が破綻しかねる状況になりつつあった事がある。
(だからこの勘を無視して進んでしまうと……後々思いもよらない事態に見舞われるだろう。ローズ先輩には悪いが、別の機会に治療させてもらうとしよう)
そう考えながら俺はローズ先輩の頭を撫で続けた。
「アルジくん、ありがとうございました。何も言わずに肩を貸してくれて……それに私の頭を撫でて励ましてくれて」
ローズ先輩が自然と離れるまで、俺は彼女の頭を撫で続けた。それから十数分くらい経っただろうか? 先輩が俺の腕から離れて立ち上がって、俺の方に身体ごと向けながらそう言ってくる。
「別にそれくらいはお安い御用ですよ。俺としては、まぁ例外はいますけど……俺に関わってくれる人が何事もなく笑顔で毎日を過ごしてくれる為なら、俺の身体なんて幾らでも貸しますから!」
「っ! ふふっ……アルジくんは相変わらずですね。でも……そんな貴方の姿が、私にとっては大きな癒しです♡」
ローズ先輩が少し元気を取り戻したのか、少し微笑みながら言ってくる。
「そ、そう……ですか? そ、それは何よりで……」
「ねぇアルジくん……」
「ん? なんですか?」
それで今度は真剣な顔になりながら俺の名前を呼んだ。ローズ先輩が纏っていた空気というのだろうか、それが少し変わったのが分かったから、俺も少し佇まいを直して聞く体勢になる。
「私が……私がこれからどんな風に世間から評価されたとしても……貴方は貴方のままで私と接してくれますか?」
それは紛れもなく……これから行おうとしている事を覚悟していると言った様な顔付きだった。それに対して俺から返す回答は……
「全く……真剣な顔をして何を言うかと思ったら……」
「……えっ?」
俺の第一声に、ローズ先輩は真剣な顔付きから呆気に取られた様な顔付きになる。多分是非のどちらかの答えを準備して身構えていたんだろうが、まさかのどちらでもない言葉を聞いたから思考が少しフリーズしたんだろうな。
「まさか先輩は、たかだかの世間からの風評程度で、あなたの事を侮蔑の様な表情で見るとでも思っているんですか? 俺の事をそんな、世間がそんな目で見ているから掌返しの様に簡単に意見を変える様な男だと思っていたんですか⁉︎」
「えっ、あっ、ちがっ……そう言うわけでは……」
俺が珍しく語気を強くしたもんだから、先輩はアタフタしていた。少し意地悪をしてしまっただろうか……
(でも俺は分かっていて欲しいんだ。俺がその程度の人間じゃあないって事を!)
未だにアタフタしているローズ先輩に、噴水の縁から立ち上がって近付く。そして俺の方から彼女を抱きしめた。身長が俺の方が高いから、抱きしめた時に丁度彼女の頭が俺の首元くらいの位置に来る。
「へっ……/// あ、アルジくんっ⁉︎///」
「先輩は今……自分が抱えている問題に押しつぶされそうになりながらも、それでも決断しているんだと思います」
「っ⁉︎ ……はい」
「それで先輩が決めた事が……例えどんな事であったとしても、先輩を見る目を変える事なんてありません。いや、絶対にありえない事です!」
「ど、どうしてそこまで……」
「だって先輩は……こんな俺に対して良くしてくれるじゃあないですか。その時点で俺からすれば……俺が護りたいと思う大切な1人なんですよ」
「私が……アルジくんの?」
「はい、大切な人です。確かにドス黒い様な道に進んだ時は、あまりやりたくないですけど実力行使で元の道に戻しますけど……それでも大切な人に変わらないんですよ。だから……
ローズ先輩は自分に悔いの残らない道を進んで下さい! それに対して俺がどの程度付き添えるかなんてたかが知れてるかもしれませんけど……あなたの覚悟した道を全力で応援しますから‼︎」
「っ‼︎ アルジくん……アルジくん……」
先輩は俺の胸に顔を埋めて……静かに泣いた。俺は彼女が泣き止むまでさっきと同じく彼女の頭を優しく撫でる。多分この調子だとさっきより長くこの状態になるかもしれないが……
(でもローズ先輩がそれで前に進めるのなら……微力ながらになるかもしれないが支えになるだけだ)
そう思いながら俺はローズ先輩の頭を撫で続けた。これから進むであろう彼女の道は物凄く険しい物になるだろうけど……その険しさが少しでも柔らぐようにと。
side ローズ
私はアルジくんに抱き締められながら頭を撫でて貰っていた。本当なら私の方が年上だから、逆に私がアルジくんを抱き締めていたいと思っていたのに……
(貴方の腕の中は……とても安心します……)
アルジくんに自分がこれからやる決意表明を告げた。今からやる事は……世間から見れば誰にも賛同されない事だ。例えそれが苦難からの解放だとしても……
そんな思いがあるからこそ、アルジくんにはどうしても聞いておきたかった。世間の目が私の事を良しとしなくても、これからも変わらずに接してくれますかと。
(うぅん……多分アルジくんとこうして会えるのも……今日で最後だと思う……)
それでも私はアルジの答えを聞きたかった。それが例え非難の声だったとしても……
(でもそれは……ただ私がアルジくんの事を自然と、どこにでもいる様な普通の人として見ていたからなんでしょうね……)
彼は私に対しての第一声として……肯定でも非難でもない言葉を返して来た。自分の事をそんな風に見ていたのか……と。私はそんなつもりで言ったわけでは無かったけど……それに対して咄嗟に返せる言葉が口から出なくて……
そうして言葉を探している時に、目の前が暗くなって、身体を温かい何かに包まれた。そして私の頭の上からアルジくんの声が聞こえたんです。そこで初めて私の事を肯定すると言ってくれて、更に私の進む道を応援してくれるとも言ってくれた。
(あぁ……もぅ……なんでこんな時にアルジくんは……そんな卑怯な事を言ってくるんですか……どうして私の欲しい言葉以上の物をくれるんですか……そんな事言われたら私……)
貴方ともっと一緒にいたいと思ってしまうじゃないですか……
本当に……アルジくんはズルいです。私の覚悟が根底から揺らいでしまうくらいに……アルジくんの存在が私の心の中を占めているのが理解できる。
(でも私は一国の女王……私が生まれ育った国を見捨てるなんて事……出来ません‼︎)
この事が無ければ……私はこれからももっとアルジくんと一緒にいれたと思う。学生生活は勿論のこと、色んなイベント毎に一緒に行ったりして、それで想い出を作っていって……
(でもアルジくんはクレアさんを筆頭にモテてしまうから……私と2人きりでって事は少ないかもしれませんけど)
アルジくんの姉で私と親友のクレアさん……彼女がアルジくんとは血の繋がりのない兄弟である事は当然知っています。そしてクレアさんはアルジくんの事を話す時はいつも楽しそうで、そんな彼の事を愛おしそうな顔をしながら話してきます。だから彼女もアルジくんの事が……1人の異性として好きなんでしょうね。
(そのクレアさんの気持ちを知っていながら私は……いえ、私もアルジくんの事を1人の異性として愛してしまった)
そして応援してくれると言われた瞬間……私の目から涙が溢れてきてしまって……彼の胸に縋り付く様に泣いていました。
(ごめんなさい、クレアさん。でも……今だけはどうか……彼の胸を借りさせて下さい……)
私が泣いてしまってどれくらい時間が経ったのか分かりませんが……私が落ち着くまで彼は、さっきやってくれた事と同じ様に私の頭を優しく撫で続けてくれました。
side out
「ごめんなさい……私の方が先輩なのにみっともないところを見せてしまって……」
「それだったら誰にだって言える事ですよ。俺だって弱音を吐く時ぐらい普通にありますし」
「そ、そうなんですか? それはそれで見てみたい気がしますけど……」
「えっ?」
「えっ……あっ! いえ、なんでもないです‼︎ ……その、ありがとうございます、アルジくん。私の決めた道を応援してくれると言ってくれて……それをした後の私も肯定してくれるって言ってくれて」
「まぁ俺としてはローズ先輩がどんな道に進むかなんて詳しく聞けてないから……上辺だけになってしまうかもしれないですけど」
「そ、そんな事はありません! アルジくんの言葉が誰かを想って出た言葉だと言う事は分かっていますから‼︎ 本当に……貴方に出会えて良かったです」
「そ、そうですかね……アハハ……まぁ、そう言われるくらい先輩の力になれているなら、俺も嬉しいですよ」
ふと照れ臭さを感じて、少しそっぽを向きながら左頬を人差し指でかく仕草をする。真正面からそんな事を言われてしまうと、誰でもこんな仕草をしてしまう理由がなんとなく分かった気がするな。
「でも後もう少し……その道を進む為の勇気が欲しいです。だからアルジくん……目を瞑って欲しいです」
「えっ? あ、あぁ……こう、ですか?」
「はい。そのまま……じっとしていて下さいね」
ローズ先輩に言われるがまま目を閉じる。勇気が欲しいと言っていたが、目を閉じる事と何か関係があるのだろうか?
そんな事を思って目を閉じている事数分……頬が温かい何かに優しく包まれて、次の瞬間には唇に柔らかく湿った感触がした……って
(えっ……これって……まさか……)
薄らと目を開けると、目の前には俺と同じく目を閉じたローズ先輩の顔が間近にあった……
「んっ……は、恥ずかしいですわ……」
(いやいや! 俺の方が恥ずか死ぬんですけどっ⁉︎)
……簡単に言うとローズ先輩にキスされていた。それを自覚した時には先輩の顔は離れていて、小さな声で恥ずかしいと呟くのが聞こえた。された方も自覚してしまうと恥ずかしさが込み上げてくるのだが……多分先輩の方がもっと恥ずかしかったんだろう。そもそもこの行為をする事自体勇気がいる事だと思うんだが……
「も、もう目を開けても良いですよ……」
そう言われて完全に目を開ける。そこには顔を赤くした先輩が立っていて、どことなく落ち着きがない様子だった。
「そ、その……私の初めてを捧げました。多分アルジくんは姉のクレアさんに幼少の頃から何回もやられているから慣れているかもしれませんけど……」
(いや! 今でも普通にこっちからするのと受けるのは勇気がある事なんだがっ⁉︎)
「アルジくん……私は貴方の事が…」
「俺の事が……?」
更にローズ先輩がキスをした勢いでか、何かを俺に伝えようとしてくる。だが言いたい言葉が口からなかなか出す事が出来ないのか、そこから台詞が続く事はなく……
「……いえ、何でもありません。ただ、しばらく会えなくなるかもしれませんから……だからまた会う日まで……元気でいて下さいね」
儚げな笑顔を浮かべながらそう言って踵を返し、俺から去って行くローズ先輩……
(勇気を貰いたいと言っておきながら全然そんな調子に見えないんだが……)
このまま去って行く先輩を見送るだけで良いのか? いや、そんな事は俺が納得出来ない!
「(今の俺ではあまり与えられる物なんて無いが……少しでも)ローズ先輩‼︎」
去ろうとする先輩を呼び止める。その声に反応してローズ先輩は一旦止まって俺の方を振り向いた。立ち止まった先輩に俺は近付いていき、持っていた袋から1つ物を取り出して先輩に渡した。
「こ、これは?」
「なんか勇気を貰いますって言っておきながら全然そんな風に見えなかったから……だから、こんな物でどうにかなるなんて思って無いですけど……餞別にどうぞ。腹が減ったら何とやらという諺もあるくらいですから、そんな時に食べて下さい。まぁ時間が経って冷えてますけど……」
「っ‼︎ アルジくん……貴方って人は本当に……私が考えている以上に私の欲しい事をしてくれるんですね……」
渡したのは多く貰いすぎたマグロナルドのバーガーなんだが、ローズ先輩はバーガーを渡されてまた泣いてしまった。今日は先輩を泣かせすぎているよな……
「ぐすっ……ふふっ、アルジくんには今日泣いている姿を見せてばかりですね。でも、私の中の迷いは完全に晴れました! これもアルジくんのお陰です。今日貴方に会えて……本当に良かった‼︎」
「やっといつもの先輩の笑みが帰ってきましたね。それぐらい元気が出たなら、俺も少しは先輩に寄り添えたって事ですかね」
「いいえ、貴方にはいつも寄り添ってもらっています。アルジくん……また会える日まで、そのままの貴方のままでいて下さい」
「分かりました。また会える日まで……先輩もお元気で」
「はい! では、私は行きますね」
「先輩、行ってらっしゃい」
「っ! 行ってきます‼︎」
今度こそローズ先輩は去って行った。でもその時の足取りは、さっきよりも勇ましく、真なる覚悟が俺からは見て取れた。
(まぁ……会える日も近いんだろうが……)
俺はそう考えながらシャドウガーデンの拠点に帰って行った。
(にしても後のバーガーはどうしようかな……)
その後拠点に帰り着いたアルジさんは、残った4つのバーガーを七陰のメンバーに会った順番に渡して行きました。尚、バーガーを受け取ったのはアルファさん、ベータさん、イプシロンさん、イータさんでした。
そしてアルジさんが夕食とその後に軽く動いてお風呂に入った後、明日に備えて早めに寝ようとあてがわれた寝室に向かった時……
「アルジ様、今日はこのベータがアルジ様の夜伽のお世話を致しますね♡」
そこには既にベータさんがいて、その時の格好はいつもの黒装束に装飾品が外れた様な姿でした。
「……なるほど、ガンマに続いてベータも俺を癒す……みたいな流れか?」
「その……お嫌でしたか? 確かに明日からは予選決勝が控えていますから……やはり今日h「そんな悲しそうな顔して放って置けるわけないだろう?」えっ……?」
「こんな俺の事を慕ってくれてる子がそんな顔しているのを、俺は黙って見過ごす程できちゃいないからな。それに平気そうな顔して待っている様に見えるけど……凄く勇気を持って待ってくれてたんだろう?」
「……」コク
「なら俺もそんな勇気に応えないと、ベータの彼氏として失格、だろ? そもそも俺としても自分を慕ってくれる子が、俺の事を癒す為に頑張ろうとしているのが……凄く嬉しいんだよ」
「あ、アルジ様……」
ベータが俺に抱き付く。俺の胸に顔を埋めて、まるで動物が自分の縄張りだと知らしめる様にマーキングするが如くすりすりしてくる。ただその仕草が可愛く感じて、俺は彼女の頭を優しく撫でた。
(にしたって今日は異性の頭を撫でてばかりだな。撫でてばかりと言ってもローズ先輩しか撫でてないけど……)
「アルジ様……今は私と2人きりだと言うのに別の女性の事を考えておられるのですか……?」
そう考えていたら俺の胸に頬擦りしていたベータから、まるで地の底からはって出てくる亡者の呻きにも似た様な声が聞こえた。
「《vid:1》それに……よくよく嗅いでみたらこれはローズさんの匂いですねぇ? 帰ってくる途中で会っていたということですよねぇ……?《/vid》」
(えっ? さっき風呂に入ったばかりなんだけど⁉︎ それにちゃんと洗ったのになんで分かるのっ⁉︎)
「そんな事簡単ですよアルジ様〜♡ 小説風に表現するのであれば乙女の勘と……
貴方を愛する恋心が成せる技、というものですよぉ〜?」
(えっ? 乙女の勘とかってそんなに有用なの……?)
「まぁそんな事はともかくとして……ローズさんは確かに話してて良い人だなって思いますよ? ナツメ・カフカである私の大ファンでもありますし、私がその文章を書いた意図も理解してくれる程の感性を持っていますから、私としても話していて面白いなって思っています」
「そ、そう……なんだな。うん、それは良かったn「でもそれとこれとは別なんですよ?」べ、別?」
「はい♡いくら良い人だなと思ったとしても……私のお慕いする人に、何の許可もなく甘えるなんて事はあってはならない事です。特にあの腹黒王女は許せません……」
「えっ? 最後なんて……」
「いいえ? 何でもありませんよアルジ様♡それと……スンスン……キス……もしちゃったんですね?」
「(これって隠してもバレるよな……)はい……なんかあれよあれよといつの間にかで……」
「……英雄色を好む。陰の叡智にもある言葉ですよね? 確かにアルジ様は正に英雄となるお方に相応しいです。アルファ様や私達もそんな貴方の事を愛しています。でもだからって……私達以外の人とイチャイチャする様な場面なんて……想像したくないです」
「ベータ……すまん。寂しい思いをいつの間にかさせてしまってた……本当にすまん」
謝りながら彼女の事を深く抱き締める。俺は自分の事を大切に思っている人が、何かに迷ってたり傷付いたりしているところを傍観する事なんで出来ない。だから気を許した人にはとても甘くなりがちなんだ。
でもそれで、勇気を持って俺に告白をしてくれた彼女達を傷付けている事は事実なんだろう。例え彼女達が俺の、この直しようがない性格を容認していたとしても……今のベータの様に寂しい思いをどこかでさせている。
(どうすればって……そんなのは、俺がこの性格を矯正すれば良いだけの話なんだが……)
でもそれをしてしまうと俺が俺では無くなってしまう。今まで積み重ねてきた物が……矜持が失われてしまう。そんな物が無くなった俺は、最早自分から見ても俺に似た偽物で、その矜持を持っている俺を愛してくれたアルファ達から見ても俺ではないと、そう言ってくる筈だ。
(彼女達の本音としては、自分達を見てくれって言いたい筈なのに……それでも俺の事を優先してくれる)
そう考えてしまうと……俺はたまらず彼女達の事を愛おしく思えた。そんなところが可愛く感じて、現に今抱き締めているベータの事も……平時で縛り付けている理性という獣で可愛がりたくなってくる……
「ベータ」
「あ、アルジ様っ⁉︎ んっ……あっ……」
最初何をされたか分からなかった顔をしていたものの、次第に自分がされている事に気付くと顔を赤ながらも応えてくれた。
「んっ……ぷはっ……あ、アルジ様……急過ぎます……」
「急にこんな事をする変態な俺は嫌だったか?」
「い、いやでは……ありません。そんなアルジ様も大好きです。ですから……
もっと私を……メチャクチャにして下さい♡」
ベータのその言葉に、俺の理性の獣は満を辞して顕現する。それと同時に彼女の事をベットに押し倒す。そして俺は……ベータの事をこれでもかと言う程可愛がって彼女を求めた。翌朝になると身体は気怠さを覚えていたが、逆に気分は雲一つない更に様に晴れ晴れとしていた。
ベータと一夜を共にした。俺が目を覚ました時には既にベータが起きていて、最初に俺の瞳が映したのは彼女の優しい微笑みだった。どうやら先に目覚めた後、俺の目が覚めるまで寝顔を堪能していたと言っていた。
(俺の寝顔なんて見て何が良いのやら……)
だがベータ曰く、俺の寝顔が可愛く見えてしまっていつまでも眺める事が出来るのだとか……そして眺めながら頭を撫でていたと。
「もう少しだけ時間もありますし……もっと甘えても良いんですよ?」
昨日の事を思い出しながら言っているのか、彼女の顔はほんのり赤くなっていた。でもそこが可愛いと思ってしまった俺は……未だ理性の獣を縛る鎖が緩んでいたらしく、彼女の胸に顔を埋めさせる。
「あっ……♡ふふふ、アルジ様は甘えん坊なんですね……ヨシヨシ」
彼女から漂う甘い香りに誘われて、もっとその甘い空間にいたいと思った俺は、彼女の身体が傷付かないように頬擦りする。ベータはされるごとにくすぐったいのか吐息が出ていたが、それでも俺の頭を撫でる事をやめなかった。
アルファとは違うベクトルで柔肌な感触と吸い付き……起きたばかりの為に思考も上手く働いていないせいでもあるんだろうが、ベータからまだ離れたくないと本能で感じる。もっとこうしていたいと……
「アルジ様がここまで私に夢中になってくれるなんて……とても嬉しいです。今日の予選決勝……どうか私の想いも一緒に連れて行って下さい」
「あぁ……ありがとうベータ」
「ふふふっ……アルジ様、大好きです♡」
とまぁ……今朝までそんな事があった。今は予選決勝の真っ只中で、今は決勝進出まで残り2試合に勝てば良いだけとなる。そして次の相手は……
「いやぁ〜……次の相手もまさかの地味目な相手だとは……まぁこの試合も俺から滲み出るこの煌びやかなオーラで圧倒するとしよう‼︎」
どこかで見たと思ったら、確か予選会場の時にヒョロに色々と教えていた色男だった。確か……ゴルドー・キンメッキ……だっけ?
(ま〜た可笑しなネーミングで……奴さんが言う通り、俺が地味に見えてしまうのは事実だが……アンタもアンタで派手だな……)
そう考えていると試合開始の合図が鳴る。それと同時にゴルドーが台車に乗せてある大きな鞘から剣を引き抜く……って
(それって剣なのか?)
引き抜かれた剣も金色に輝いていたが……俺からしたら実用性を全くもって感じられない。鈍よりもマシと思うくらいで……
「さぁ! 俺の剣舞……とかと味わうが良い!」
そう言いながら剣を振りかぶってくる。
(あぁ……今まで当たってきた奴よりかはマシか)
ただそう思うくらいで、簡単に避けられる軌道だった。それがどれくらい続いた事だろうか……一向に場面が同じものばかりで動かないからなのか、観衆からもブーイングが多く聞こえてくる。
「どうした? 何故剣を抜かないんだ⁉︎」
ゴルドーもイラついて俺にそう言ってくる始末。まぁ俺から言わせればだな……
「何でって……俺をその気にさせないのが悪いんだろう? 今までの相手もそうだが、剣を抜くに値しないんだよ」
俺が今変装している人物の性格に寄ってしまったのか、俺から出る言葉は皮肉で相手を煽るものになる。それを聞いたゴルドーは……
「……そうか……なら嫌でも剣を抜きたくなる様に見せてやろう! 俺の渾身の一撃を‼︎ だがそれで負けても文句を言うなよ‼︎」
ゴルドーから魔力が溢れ出る。それもちゃんとした形になっていて、ここまで上り詰めただけの実力はある。
だが俺からしたら……それも見せかけだ。確かに魔力の多さや扱い方はそこら辺にいる魔剣士よりも長けているだろう。でもそれだけで……
「(はぁ……仕方ないな)なら一回だけ抜いてやる。まぁでもアンタに見えるかどうかは分からねぇがな?」
「ほざけ! 喰らえ俺の一撃! 常勝金龍‼︎」
ゴルドーが纏う金色の魔力が金の龍になり、それが金色の剣に絡みつく。その間ゴルドーはアルジに逼迫し、射程に入ったタイミングで剣を振りかぶった。
(よし! 勝った‼︎)
自分の速さに何も出来ないから反応も出来ず、相手は吹き飛ぶだろうとゴルドーは思った。だが……
(なっ……そろそろ相手に俺の攻撃が当たっても良い筈なのに……)
射程に入った途端……どれだけ時間が過ぎても自分の剣が相手に叩き込まれる瞬間が来ない。味わった事のない体験をしていた時、彼の目は捉えた。アルジが右手から下げている剣の持ち手を握る瞬間を。その次にアルジの顔を見て……
よく見てろよ?
そう口が動いたと思った瞬間に、ゴルドーはアルジとは反対側の壁に吹き飛ばされていた。その後ピクリとも動けず、その試合はアルジの勝利となった。
さて、次回は予選決勝を前半にして、それが終わった後はローズさんやアレクシアさんの回を挟もうと思います。今現在としては、最後はどの様に終わらせるかを考えていて途中は思いついた限りを書き足しながらやっている状態なので、纏まりが感じられないかもしれませんが、何卒ご容赦頂ければと……
ではまた次回お会い致しましょう!