陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

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皆様お待たせしております!最新話がかけましたので投稿致します!

それにしても昨今お気に入りが急上昇しておりとても嬉しく思っております!これも一重に今作を応援して下さる読者の皆様のおかげです!本当にありがとうございます‼︎

さて今回は、サブタイトルにもあります様にいよいよあの方が登場致します。ファンの方々はお待たせ致しました!そして書いていて思ったのですが一言……あざとい……とにかくあざといです!

まぁ読者から見れば全然と感じるかもしれませんが、私は書いていてそう思いました。

さて、前書きはここまでと致しまして最新話をどうぞご覧下さい!


39話 復讐者、に出会う為に旅をしてきた剣聖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アンネローゼ

 

 

 

 

「なぁ……さっきの見えたか?」

 

 隣で私と一緒に観戦していたクリントンが、頭から汗を流しながら聞いてくる。

 

(そう思っている私も多分頭から汗が伝ってくるのが分かる……)

 

 ゴルドーを倒した相手……ユーリ・ローウェルといったわね。あの時から只者ではないと思っていたけれど……

 

(まさか“剣を抜いた瞬間”も見えないなんて……)

 

 私は瞬きせずに彼らの動きを見ていたわ。ゴルドーが吹き飛ばされた時も当然の事にね。でも……彼がいつ剣を抜いたのか全く分からなかった。何とか持ち手を左手で持ったのは辛うじて見えたけど……でもそれだけしか見えない。

 

(あれは一体……どれだけの鍛錬を積めば習得できるのだろうか……)

 

 歳は私と同じくらいに見えるけど、だとしたら私と同じくらいに噂になっていてもおかしくない筈……

 

「俺……次に当たる相手が奴なんだが……」

 

「……頑張れとしか言いようが無いわね」

 

「いやあれどうやって頑張れば良いんだよっ⁉︎ そもそもアイツ今まで剣を抜かずに戦ってきたんだぞ⁉︎ しかも今の剣を抜いたかどうかも分からないそんな相手にどうやって戦えば良いんだっ⁉︎」

 

 珍しくクイントンが狼狽えている。確かにあんな実力をこの場で出されてしまったら誰だってそうなると思うわ。

 

(それにあれ……全然力を出してないわよね……?)

 

 魔剣士として長年やってきた勘が告げている……あの人はこれっぽっちも力を出してはいないと……

 

 これまでの彼の戦いを見てきたけれど、全てが対戦相手の自滅だった。さっきのゴルドー戦までは全て……突っ込んできた相手の足を引っ掛けて、それによって相手が壁に正面衝突したり、振るっていた剣の軌道を少し逸らしたと同時に、その勢いをもってガード部分が相手の頭に勢い良く当たって気絶していたり……

 

(そんな試合内容だからこそユーリ・ローウェルは剣を抜く事がなかった……?)

 

 なら何故ゴルドーの時には最初から剣を抜かなかったの? 確かにゴルドーという男は、自分が負けると思った相手とは戦わない。でもそれ程までに彼の観察眼は本物であると言う事実……

 

(そんな彼が相手の力量を見誤った……っ⁉︎)

 

 もしそうなら……あの男はとんでもなく、遙かな高みにいる。それも自らの力を誇示しないタイプの……

 

(そんな彼がどうしてこの場にいるの? 力を誇示しなくても良いと仮定するのなら、何故彼がこの大会に出ているの?)

 

 でもこの感じは……以前に感じた事がある。あれは私がベガルタ七武剣に任命され初めの時、前任者のヘルツォーク卿が失踪した事件を調査していた頃だった。どこからともなく謎の集団に襲われてしまい、最初のうちは賊かと思っていたものの、日を追うごとに段々と統制の取れた攻め方をしてきた。

 

 その最中、失踪していたであろうヘルツォーク卿の残留思念とも言うべきだろうか、ともかく彼女を形どった霊が私を助けてくれたのだが……

 

(そう……この感じはあの時感じたものと似ている気がする)

 

 この大会……裏では何かが起こっている予感がする。でも今は武神祭に集中しないと……

 

「な、なぁ? さっきから難しい顔をしてどうしたんだよ? 次アイツとなんだけど……俺はどうしたら良いんだよっ⁉︎」

 

 アンネローゼさんが考えている横でクイントンさんはユーリさんに変装しているアルジさんと戦う事が決まってしまい、顔が面白いほどに青くなって焦っていたと言います……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴルドー・キンメッキを倒した俺は、さっさと控室に戻った。戻った後は誰にも気づかれる事なくそこから出て、変装も解く。変装を解いた理由は別に無いが、変装したままぶらつく理由もない訳で……

 

 そうして試合会場の廊下を歩いていると、向こう側から1人の女性らしき人が歩いて来る。女性らしきというのは、格好が黒い外套に身を包んでいるからで、そこから伸び出ている髪の毛と、後は外套に覆い隠されていない足元、それと歩き方で何となく分かるっていうぐらいだ。

 

(まぁ観客の1人だろうな……)

 

 感じ取れた魔力量は……正直言って精錬されていた。俺と兄さん、それと姉さんは省くが、この試合に出るであろうどの選手よりも多く、そして普段の扱いも上手い為に綺麗な流れを感じた。

 

(でも予選ではそんな人を見なかったしな……)

 

 まぁ関係ないから良いか、と思いながらその人の横を通り過ぎようとした時……

 

「なぁそこの君……私の顔に良く似た子を知らないだろうか?」

 

 少し後ろからそんな台詞で俺の事を呼び止める声が聞こえた。振り向くと、通り過ぎようとしていた女性が俺の方を向いていた。でも外套で今も頭をすっぽりと覆っていて……

 

「あの……顔と言われましても外套に覆われてよく見えないんですが……」

 

「っ! すまない。私としたことがついうっかりしていた」

 

 そう言いながら頭部を覆っていた外套を脱ぐ。その時に俺の瞳に映ったのは……

 

(っ⁉︎ あ、アルファに似ている……)

 

 瓜二つというわけではないが、普通にアルファのそっくりさんと言われても通じるくらいには似通っていた。長髪で金髪の色素が抜けた様な髪色。凛とした目鼻立ち、目元はアイシャドウの一種なのだろうか……そこら辺知識がないから分からないが、薄紫色をした一筋の小さい線を入れる。肌の色は色白で、スタイルも世の女性が羨むほどだ。完全に一致しているというわけではないが……それでもアルファに似通っている。それに気配もどことなく彼女に似ているな。

 

(という事は……彼女はアルファの親族なのか? )

 

 俺は彼女の過去をある程度知っている。だが彼女の話に、目の前にいる様な女性の事は全く出てこなかった。ならばアルファと目の前にいる彼女は直接の面識がない……まぁ推測の域を出ないが……

 

「どうした? 私の顔に何か付いているだろうか?」

 

「(おっと……流石にマジマジと見過ぎたか)いえ、あなたに似ている知人がいたかどうかを考えていたんですが……綺麗な顔立ちをしていたものですから見惚れてしまって」

 

「そ、そうか……そう言われたのは初めてだ……」

 

「えっ? 初めて言われたんですか?」

 

「あぁ。世の中の流行に疎くてな。化粧……というのか? それも自分に合うのは分からないし、結局普段通りにする程だ。それに私は長らく武に心血を注いで生きてきた」

 

「なるほど……それだったらあなたが纏っているから魔力の流れが綺麗な事も頷けますね(アルファ達ほどではないけど……)」

 

「っ⁉︎ 分かるのか」

 

「えぇ、まぁある程度ですけど……」

 

 ある程度とアルジさんは言いますが、彼は相手の魔力を見ただけで力量を把握、更に覚える事でその魔力の持ち主がどこにいるかも3次元的に分かってしまいます……

 

「そうか……ならここは1つ確かめたい事がある」

 

「確かめたいこっ⁉︎」

 

 俺がその言葉を言い切る前に、目の前の女性が外套の前部分を開けた。そこで見えたのは、彼女の右手が腰に刺していた武器の持ち手にかかっている場面で、それを知覚した時には既に刀が鞘から抜かれていた。

 

 抜き放たれた刃は俺の首目掛けて振られており、後もう少ししたら俺の首の皮膚に到達するだろう。

 

(ん? なんでそこまで呑気に説明する暇があるかって? まぁそんなの簡単で……)

 

 普通に見えてるからな。念の為目に魔力を通して動体視力を上げたが……それが無くても難なくかわす事は可能だな。でもそれだと面白くないなと感じたから、彼女の振るった刃が俺の右肩辺りを通り過ぎようとしたところで、右手で刃先を片手白羽どりした。それも峰側から……それで丁度刃が俺の首の皮膚にギリギリ当たらない所で止まる。

 

「っ⁉︎ 驚いたな。まさかあそこから止められるとは……」

 

「でも見る限り寸止めするつもりだったでしょ?」

 

「そこまで分かるか……やはり一目見た時から君は強い存在だとおもっていたが、私の思っていたものよりもかなり強いな」

 

「まぁあなたのお眼鏡に適ったのなら……ってところですかね?」

 

「いやそれ以上だ。長年生きてきたが、君の様な存在は初めて見た。うん、決めた」

 

「決めた……とは?」

 

「あぁ……それは……」

 

 彼女が剣を鞘に戻しながら俺の方へと更に近付いてくる。そして俺の未だ剣を取る為に挙げていた右手を両手で包み込んできて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と一緒に旅をしないか!」

 

「えっ? 嫌ですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アルファ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルジがユーリという名の青年に変装して、予選決勝を戦っている姿を七陰の皆で見ていた。勿論ミツゴシが用意している専用テラス席でだけど。

 

 その試合も終わって、アルジも控室に戻ったでしょう頃にさっき見た試合の事を話していたわ。

 

「対戦相手に振るったあの一撃……流石はアルジ様です!」

 

「えぇ。彼の持つ武器は太刀……ガンマが持つ大太刀よりも射程範囲は狭くなるけれど、大太刀よりも振るわれる速度は速い」

 

「さらにアルジ様が扱われるとなると最早神業の域です。私の使う大太刀でさえもあの速度以上に振るえる事かと」

 

「そうね。それに彼は全くと言って良いほど本気を出していないわ」

 

「加えてあの太刀が抜き放たれたと同時に刃先に纏われたアスタロト様の魔力……本来は刃先に沿って鋭く魔力が纏われるはずなのに、それとは逆の纏い方をしていました。まるで刃先を峰打ち側の様に……いえ、それ以上に平べったく纏わせて」

 

「イメージするなら平べったい棒ね」

 

「そうです! それを見えない速度で振るえば、相手は鈍器に殴り飛ばされたかの様になります‼︎ 時間をかければ私も出来るかもしれませんが、あの刹那の瞬間だけでというのは難しいです……」

 

「それに敵対した者以外はあまり傷付けずに対処するアルジ様……素敵です‼︎」

 

「うぅ〜……久しぶりにアルジ様と勝負したいのですっ‼︎」

 

「バカ犬……それ一昨日やったばかり。まぁ私もアルジ様と手合わせをいつでもしたいけど……」

 

 皆思い思いに先程のアルジの戦いを口にしていた。ユーリという名の青年に変装した際の戦闘スタイルは未だに見せてはいないけど、これから徐々に見せていくんでしょうね。

 

(釈迦に変わった時も本来の彼とは動きが違ったし、今回はどんな風に魅せてくれるのかしら? ふふっ、楽しみね)

 

「それにしても今のアルジ様……口が結構悪くなっている気がする……」

 

「あぁ……確かにイータの言う通り、相手に対してどこか皮肉が強い物言いになっていると思いますね……」

 

「でもそれはアルジ様が変装している人物に成り切っているからって説明だったじゃない? ……でもあんな見た目もそうだけど、あの強さを兼ね備えた人物の話なんて聞いた事がない気が……」

 

「も、もしかしたらここの大陸とは別の所で住んでいた人物かもしれませんよっ⁉︎ コトハだって元々は別の大陸で生まれてこちらに来たと言ってましたし!」

 

「た、確かにそうね……でもアンタ何でそんなに必死そうなの?」

 

 イプシロンがアルジに対して核心に近づく事言ったのを聞いて、ベータが慌てて言い訳を述べたわ。確かに内容としてはあり得るけれど、イプシロンにもその必死さが伝わって逆に怪しまれる状態になっている。私もフォローした方が良いかしら?

 

「そ、そうでしたか⁉︎ 私としてはいつも通りというか……そ、そう! 確かアルジ様が陰の叡智で語ってくれた物語に出てきた登場人物だったと思います‼︎」

 

「陰の叡智に出てきた物語で? それってどんな話よ?」

 

 陰の叡智……確かにシャドウもそうだけど、物語だとアルジも多く語っていたから、それならそれ以上怪しまれる事はないでしょうね。

 

(それにアルジがベータに話した物語も気になるし……)

 

「確か……下町で用心棒をしていた青年がとある魔道具を盗んだ泥棒を追っていたんですけど、いつの間にか貴族街にまで来てしまってて、それが夜中という事もあって巡回していた兵士に不審者として捕まってしまい、牢屋に入れられてしまうんです」

 

「えぇ〜……その人何もしてないのにそんな仕打ちをされたの?」

 

「そうですね。その人が住んでいた所も王国だったんですけど、貴族が1番上の序列で最下層が下町で暮らしている人々なんです。そんな彼が夜遅くに貴族街を歩いている姿を、見回りをしていた人からは特に怪しい人に見えてしまったんでしょう。そのまま怪しいと烙印を押されてしまって牢屋に入れられてしまって……」

 

「何というか……どこの世界でも似たような事が起こるものね」

 

「そうですね。そして彼は牢屋から抜け出すんですけど、そこで一国の王女様と出会うんです。そこから彼の旅は始まっていくと、話の流れとしてはこういったものです」

 

「それでアスタロト様が変装している人物がその彼という事?」

 

「そうですね」

 

「……正直今まで黙っていたんだけど良いかしら?」

 

「な、何ですか改まって……」

 

 物語のあらましを聞いたところでイプシロンが何かを言おうとしていた。まぁ多分あの事だと思うわ。それは……

 

「あの容姿……見ていて自分が女として負けた気がするのは気のせいかしら……」

 

「そういえば報告にもありましたね。あの姿で歩いていたアルジ様を男性女性関係なく注目を集めていたという情報を。それと同性にもアプローチされていたとか……」

 

「中には同性でも構わないからって迫っている奴もいたんだってね?」

 

「なんというか想像以上の事を聞いた気がする……」

 

「しかもあれで化粧の類は何もしていないんですって。私も初めて見た時はイプシロンと同じく女性として負けた気分だったわ」

 

「あ、アルファ様もですか⁉︎」

 

「えぇ。というより皆思うところがあるかもしれないわね?」

 

 まぁそれは今更な事でもあるし、今はアルジが予選決勝を最後まで勝ち抜くところを見ていましょうか。

 

(それにしてもこの瞬間……アルジが良からぬ事に巻き込まれている気がするわね。それも女性絡みで……)

 

 まぁこの事については……武神祭や諸々の事が終わったらゆっくり話しましょうか。

 

 この瞬間……アルジさんはアルファさんからお仕置きを受ける事が決定したといいます……特にアルジさんが悪い事をした訳ではないのですが……

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それにしてもさっきは妙な事を言われた。ただアルファに似た女性の剣を掴んだだけで一緒に旅をしようと言われたんだ。速攻で断ったが……

 

(でもなかなか諦めてくれなかったんだよなぁ〜……)

 

 速攻で断ったら、何故? と言いながら首を傾げてくるし、そもそも俺とその人は会ったばかりだ。人見知りですらない初対面。確かに一部物語の登場人物で、一目見たら一緒に旅をしようとかって誘う人もいたけれど、まさか俺がその当事者になってしまおうとは……

 

(この世界に来てから色々と体験しているな……)

 

 これまでの世界では特にそんな事は無かったんだが、この世界に来てからというものそんな類にエンカウントする事が多くなっているな。俺自身この世界にいる本来の理由は、これまで働き過ぎた休暇を過ごす為に転生してゆっくり過ごす事だ。まぁこの前提条件も最近忙し過ぎて何かと忘れがちだが……

 

 その後は無難に自己紹介をした。彼女の名前はベアトリクスさんといって、彼女こそ武神祭の初代優勝者だった。にしても改めてエルフという種族は凄いなぁと感じる。なにせ彼女が優勝した武神祭も100年前だというし、その頃は10代から20代手前の女性だったと聞いている。

 

(なのにそこから100年経っても容姿が変わっていない……というか更に美しくなっているのか?)

 

 という事はアルファやベータ、ガンマにイプシロンにイータ、その他のエルフの子達もここから100年経っても容姿はそのまま若しくは更に美しい姿になる……

 

(うん、とても素晴らしい事だな‼︎ あぁ……でも俺は歳取ったら流石にヨボヨボの爺さんになっちまうなぁ〜……)

 

 とアルジさんは思っていますが、そこは女神様達の計らいで歳を取ったとしても容姿が変わらない特典を得ています。えっ? 最初の頃の転生時は歳をとって死んでいなかったかと……そこは私も詳しくは知りません。女神様に聞いて下さい……

 

「それにしても君からは……私の姪の気配が強く漂って来ている。さっき会った子からも微かに感じたが……君からはそれ以上に。本当に私とそっくりな容姿をしたエルフとは心当たりがないだろうか?」

 

「(あぁ……確か出会い頭にその話になってたよな……いつの間にか私と一緒に旅をしようって話になってたけど)いえ、エルフの友人は確かにいたりはしますが……あなたの容姿とは大分違う様に見えますね」

 

「そうか……あの子は私の妹の忘れ形見でな、数年前に行方不明になってしまった。それ以来各地を放浪しているのだが、手掛かりになるのは彼女がまだ小さかった時に感じた気配と匂い、そして私と容姿が似ている事だけだ」

 

「た、確かにそれだけだと探すのに大分時間がかかりそうですね。あなたと同じ容姿だったら結構すぐに見つかるかなって感じはするんですけど……(あぁ……この人が探しているの絶対にアルファの事だな……)」

 

 まぁ俺もアルファの事を過去を含めて全て知っている訳じゃあないし、彼女が話したがろうとしないのなら俺はただそっとしておくだけだ。まぁ彼女の方から話すというのなら聞くけれど、それを聞いたからといって彼女を見る目が変わるなんて事はありえないし、多分もっと愛おしく感じるんじゃなかろうか。

 

「そういえば私の話をする事に夢中で君の事を全く聞いていなかったな。すまないが、君の事を教えてくれないだろうか?」

 

「俺の事ですか? はぁ……まぁ構いませんけど、聞いても面白くも何ともないですよ?」

 

「構わない。そもそもそれを判断するのはその話を聞いた人だし、私も似た様な者だ。だから遠慮する事なく話して欲しい」

 

 そんな事を曇らない顔で……しかも少し微笑んだ状態で言ってくる。そんな仕草が……不意にアルファと似ているなと感じてしまった。

 

「(なるほど……ベアトリクスさんがアルファと親戚かもしれないっていうのは、あながち間違いじゃあなさそうだな。まぁだからといって易々とアルファの事を伝える事はないが?)じゃ、じゃあまずは俺の名前からですね。俺の名前はアルジ・カゲノーって言います。田舎貴族の次男ってところですね」

 

 そこからはこれまで歩んできた人生を掻い摘んで話していく。勿論シャドウガーデンやディアボロス教団の事は伏せるが。それで俺が話終わると……

 

「そうか……君は未だ子供であるのに、今の人生を精一杯生きているんだな。他の者にも中々真似出来ない程に……えらいな」

 

 そう言いながらベアトリクスさんは俺の頭を撫でてくる……

 

(っ⁉︎ な、撫で方もアルファと似通っているだとっ⁉︎)

 

 アルファとは、会う度に頭を撫でられる。何故会う度にそんな事をするかと聞くと、俺の事を間近でもっと感じていたいからと、撫でられている俺が可愛いからだとか。可愛い云々は俺にも正直分からないが……彼女から撫でられていて悪い気はしないし寧ろ嬉しい。

 

(だがベアトリクスさんが俺を今何故撫でてくるのかが本当に分からない……)

 

「あっ……すまない。何故か君を撫でていたいという気持ちになってつい撫でてしまった。こんな事は私も初めてで戸惑っている自分がいる。その……迷惑だっただろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺を下から上目遣いで覗き込む仕草まで似ているだとっ……⁉︎

 

 

 

 

 

 何だよこのあざとい仕草はっ⁉︎ ま、まさかの遺伝なのかっ⁉︎

 

「ど、どうかしたのか? まさか私が勝手に君の頭を撫でたりしたから気分を害してしまったか?」

 

「い、いえ……そんな訳では……」

 

「そ、そうか? だが少し顔が赤くなっているが……た、体調が悪くなってしまったのか⁉︎ そ、それならすぐに手当できる所へ運ぼう!」

 

「た、体調も別に悪くなってませんから大丈夫です! ただ単に急に撫でられて恥ずかしくなってるだけですから……」

 

「そ、そうか……どこも悪くないのなら安心したよ」

 

 そう言って彼女はほっ一息ついた安心の表情となった。その仕草も何処となく……アルファにそっくりで少々見惚れてしまうのは仕方ないと現時点では思う。

 

 だけど俺にはここまでのやり取りで疑問が残ってしまう。それを解消するべく俺は口を開いた。

 

「あの……何で初対面の俺なんかにそこまで気を使っているんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ベアトリクス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今年の武神祭でゲストとして呼ばれ、また出場者としても呼ばれた。これまでも何回か呼ばれる事はあったものの、旅を優先させたり姪を探すのに夢中で受けてこなかった。

 

 だが今回は……何故かその誘いに乗る事にした。偶には良いかもしれないと思ったのかもしれないが、今まで私が培ってきた勘が囁くのだ。私にとっての良い出会いが訪れると……

 

 そして会場を歩いているとまず1人の少年に会った。世の中の事に詳しくはないが、この国で魔剣士を育成する機関があるとの事だから、多分この子もそこに通っていて、今回は魔剣士同士の試合を見る事で勉学を積みに来たのだろうと思っていた。

 

 だがその少年にに近付くと、懐かしい気配を感じた。それと同時に彼から滲み出る強さを。試しに姪のことを聞いてみて、その後剣を振るった。姪については自分が知っている知り合いにはいないと言われ、私が振るった剣を少年は尻餅をついて避けた。

 

(……気のせいだったか?)

 

 だが彼からは強者になるだろう気配を感じる。今はまだその片鱗も見られないが、これから成長していくだろう。そう感じた私は彼から一声かけて離れる。

 

 それからしばらく歩いていると……今度は紛れもなく強者の気配を漂わせる少年に出会った。だがそれも……武の道を極めようとする者の一握りしか分からないほどの気配で、私も先程の少年に出会わなければ気付かなかっただろう。

 

 そして少年が通り過ぎようとして横を通った時……今度は姪の気配も確かに感じられたんだ。それも先程の少年とは比べる事が出来ないほどに……

 

 そこで私は彼にも聞いたのだが……フードをつけたままの事を忘れていて、少年から今のままだと分からないと言われた。それを言われてあぁ、いつもの如くやってしまったと思いながら頭を覆っているフードを脱ぐ。それで少年も私の顔を見てくれた。

 

 私の顔を見つめながら必死に何かを思い出そうとしているところはあったが、彼も先程の少年と同じく分からないと言った。そしてその後に私が纏う魔力の流れが綺麗とも言ってくれた……

 

(あぁ……そう言われたのは初めてかもしれない)

 

 正直そう言われて嬉しくある。長年自らに鍛錬を費やしてきた。目指すべきは武の頂と、その先にある景色を追い求めて。それ故に魔力の扱いも独学ではあるが鍛えていった。正直自分だけでは良し悪しが付かなかったが、目の前の少年は綺麗だと答えてくれた。

 

(後は……彼から出ている強者の気配を確かめておきたい……)

 

 先程の少年には何も宣言せずに振るったが、今回は予め宣言しておく。そして私がこの場で出せる本気の一振りを彼に対して抜いた。それは真っ直ぐに彼の首に向かって行く。そして彼の右肩辺りを通り過ぎようとしているのにも関わらず、未だに彼は身動き一つ取ろうとしない。

 

(このままでは……)

 

 私は正直彼もどうにかして避けてくれるだろうと思って振るっていた。だがこのままでは彼が私の振るった剣がそのまま直撃して……

 

(い、今からでも止めに入らなければ……っ⁉︎)

 

 だが私がそうするよりも早く……剣は止まっていたんだ。止めていたのは勿論目の前の彼で……刃を峰の方から片手だけで掴んでいた。

 

(み、見えなかった……)

 

 確かに私は自分の振るおうとした剣を止めようとしたが、それでも目線だけは動かしていなかった。だというのに見えない速度で私の剣は彼の片手で止められて……

 

(……フフフッ)

 

 あぁ……そうか。私はこの時の為に……彼に会う為にこの100年を旅に費やしてきたのだと悟った。そして彼に会う為にこの武神祭に参加したのだという事も……

 

(旅の終着点が……目の前にいる少年だったのか)

 

 勿論姪を探す為に旅は続けるが、私が思っている旅の終着点はその事ではない。武の頂に至る事と、その先の景色を見る為の旅が終着点に至ったという事で……

 

 そして私の口からは……彼を私の旅に連れて行きたいという願望が出ていた。それも速攻で断られてしまったが……

 

(……悲しい)

 

 悲しいと感じたのはいつぶりだろうか……姪が行方不明だと感じた時は、確かにその時も悲しみはあった。だがそれ以上に……彼に断られてしまった事が悲しいと強く感じてしまう。

 

 だが少年が断ってしまう事も無理はない。何せ私と彼は今会ったばかりなのだから。それに自己紹介すらもしていない。

 

(私としたことが……また判断を誤ってしまったな)

 

 しかし過ぎてしまった事だ。彼には迷惑をかけてしまったが、どうにか水に流して欲しいと思う。そこからは無難に自己紹介を済ませた。勿論彼の事も聞けた。彼の名前はアルジ・カゲノーと言って、聞けば田舎貴族の次男と聞いたのだが……

 

(あぁ……この子はまだ子供なのに頑張っているのだな……)

 

 そう感じた私は……自然と彼の頭に手を置いて撫でていたい。こんな事は生きてきた中で全く経験した事はない。それも異性に対してとなると……

 

 アルジの顔を見て彼の頭から手をどける。本当に今日の私はどうしたというのか……いつもならばこの様な事は全くもって起こらないというのに……

 

 彼の顔がさっきとは違い若干赤くなっていたから、私は彼の頭に手をやった事が、彼を不愉快にさせたかと思って謝る。しかし彼はそれで今の様な顔色なった訳ではない様で、まさか体調が悪くなったのかと心配もしたのだが、そうでもなくただ私に頭を撫でられて恥ずかしかった様だ。

 

(何だろうか……アルジの事をもっと知りたい……)

 

 そう思っていた矢先、彼からこう問われた。何故会ったばかりの自分の事を気遣うのか、と。

 

(何故……か。確かにその問いに対する明確な答えを私は持っていない。持っていないが……)

 

 それでも彼の問いに答えるとするならば……

 

「君からしたら可笑しな物言いになるかもしれない。私にも何故この答えが今浮かんでいるのかハッキリとは分からないが……だが私の直感が囁くんだ。私の旅は……君と出会う為にあったのだと。そして君とこうして出会って、君と話して……君に触れて……君の事を大切だと、私の心がそう感じてしまったから……では、君が納得する答えにはならないだろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベアトリクスさんが何事もなく俺の疑問に答えた。それを聞いた俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クッソあざとい……っ⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな答えを誰が想像出来ると言うんだっ⁉︎ しかも何事もなくって思ったけど、言った本人もほんのりと顔を赤らめているぞ⁉︎ マジでこの人は何なんだよっ⁉︎ いやアルファの親戚か……

 

(お、恐るべしアルファの血筋……)

 

「あ、アルジ? 固まった表情をしてどうした? や、やはり私は君にとって迷惑だろうか……」

 

「えっ? い、いえいえそんな事は全く! これーっぽちもないですよ! はい‼︎ ただそんな答え方をされるなんて思っていなかったものですから……呆気に取られたというかなんというか……」

 

「そ、そうか!」

 

「あっ……そろそろ次の試合が始まるみたいなんで、俺はここら辺でそろそろお暇しますねっ‼︎」

 

「そ、それなら私と一緒に見ないだろうか? 今回ゲストとして呼ばれているからよく見える席を用意してもらっている。良かったらそこで一緒n「すみません……友達と一緒に見る約束をしているんで。お誘いは嬉しいんですけど……」そ、そうか。なら決勝戦では一緒の席で見よう」

 

「あっ……あぁ、はい。わかりました。じゃ、じゃあ俺はこれで」

 

「うん。楽しみにしているよ」

 

 次の試合が控えていたからそこでベアトリクスさんと別れる。それにしても結構グイグイくるタイプだったな……

 

(しかもあざとい……初対面なのに恥ずか死ぬ思いをした……)

 

 そう思いながら少し遠回りして控室に戻り、ユーリに変装する。そして予選決勝の最後の相手は、変装した兄さんに突っかかっていたクイントンという大柄の男で……

 

「お、俺は貴様なんて怖くないぞ! く、来るならどこからでもかかってこいっ⁉︎」

 

(おいおい……最後声が上擦って疑問系みたくなっているじゃあないか……)

 

 そんな姿にため息を吐いて、先手を譲った。それでクイントンも少し戦意が上昇したのか、雄叫びを上げながら俺に迫り攻撃をして来る。ただこれまでの対戦者と違って猪突猛進という訳ではなく、冷静な判断を持ちながら得物を振るっていた。

 

(武器に纏わせている魔力は……ゴルドーと同じくらいか。しかもゴルドー戦を見ている為か俺との戦いに慢心もなく本気で挑む。それも格上と分かっていても逃げ出さない胆力……)

 

「あぁ……お前になら2回程……剣を抜いても良いかな。だから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よく見て学べよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言うと同時に俺は抜刀。居合い斬りの動きで一振り目を放つ。それはクイントンが振りかぶろうとしていた得物の刃に当たり、当たった瞬間一気に振り抜いた。勿論俺の剣とクイントンの得物の刃が刃こぼれしないように魔力をタイミング良く、そして絶妙な加減で纏い、奴の得物を弾いた。

 

 そこから振り抜いた剣を折り返しさせる。その一振りはクイントンの右肩から左脇腹にかけて一直線に振るう様にして……行動を終わらせた。周りで見ている観客達からは、いつの間にかクイントンの手から得物がなくなっていて、そしてまたいつの間にか奴が俺の目の前で倒れているとしか知覚が出来ないだろう。

 

(まぁゴルドーの時より速度は遅くしたから……これけら俺と当たる奴らには学んでほしいところだな)

 

 おっと、いつの間にか上から目線で思ってしまったな。でも俺も少しはこの武神祭を楽しみたいんだ。シャドウガーデンの任務として参加しているのは忘れてないが、それでもこういった催し物は出来れば全力で楽しみたいところだ。

 

 それで決勝に進める4人が決まったところで、いよいよ明日本戦が始まる。本線は午後2時だから予選に比べると幾許か余裕があるが、それでも疲れは残したくないからな。今日は早めに寝るとするか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルジ様、今日の予選決勝お疲れ様でした」

 

「そんなアルジ様を今日は私とガンマで癒しますね♡」

 

 寝室に入るとベータとガンマが昨日と同じ様なシチュエーションで出迎えてくれた。

 

(ゆっくり休むのは……武神祭が終わった後ぐらいかな……)

 

 そんな事を思いながらも俺は彼女達の誘惑を真っ向から受け止めて……今宵も理性の獣を解放していた。

 

 

 

 

 

 

 




はい、ということですベアトリクスさんが今回から登場致しました!オリ主との絡みは大体こんな調子でこれからも展開して行く予定です。

それにしてもアルファの家系の血筋……あざと過ぎる……

次回は決勝前半と、前回アイリスとローズの話を書きたいと言ってましたけど、それも次回に回します! 期待していた読者の方々には申し訳ございませんが、何卒しばらくお待ちいただければと思います。

では、次回またお会いいたしましょう!
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