今週は投稿スペースは遅めになってしまい申し訳ありませんが、40話を書き上げました。
それとサブタイトルの表記は……書いていたらまたいつのまにかです……申し訳ありません。
途中変なテンションでおかしな文脈があるかと思いますが、私も流石にダメかなと感じてきたら修正はする予定ですが。
では最新話をご覧下さい!
昨日の事……いや連日の事で少し疲れが残っている筈なのに、何かと気分は晴れやかで気持ちが良い事も事実だ。
(それに疲れが少し残っているせいか……もう少しこの微睡の中で過ごしていたい)
そう思って右に寝返りをうつ。
「あんっ……♡」
するとそんな吐息が聞こえたと同時に、俺の顔が柔らかい何かに包み込まれた。しかも凄く温かくて安心感を俺に与えてくれる。
「クスクスッ、アルジ様が寝ぼけて甘えて来る姿……とても愛おしいです。そんなアルジ様には、このガンマが頭を撫で撫でしてあげますね♡」
(あぁ……気持ちが良い)
更に頭を優しく撫でられる感触がして……俺は更に微睡の中へと引き摺り込まれる。
「もぅ〜……ガンマばっかりズルいですよ!」
今度は俺の背後からそんな声が聞こえたかと思うと、一瞬目の前の柔らかくて温かい感触から離されてしまった。あぁ……もっとあの感覚の中にいたかったのに……
「フフッ、今度はこの私、ベータがアルジ様のことを癒して差し上げますね♡」
俺の頭上から優しげな声音が聞こえてきたと同時に、さっきと同じ様な感覚が俺の顔を包み込んだ。たださっきの柔らかくて温かな感触とは違って、強すぎない程度の弾力と柔らかさのバランスが優しく包み込んでくる様な……
(でもこれはこれで凄く気持ちが……)
それと同時に甘い香りが鼻腔をくすぐる。そんな匂いをもっと感じたいと本能で思ってしまったのか……俺はその柔らかい何かに首をゆっくり左右に振って、頬擦りをしてみる。すると更に甘い香りが強くなって、俺の脳内も刺激されると共にさっきよりも気持ち良く感じがした。
「んぁぅっ⁉︎ ふふふ、アルジ様は甘えん坊ですね♡そんな正直者のアルジ様には優しくヨシヨシしてあげますね♡」
先程と同じく頭上から甘い声でそう言われた気がして、同時に先程とは似て非なる感覚を後頭部に受ける。
(あぁ〜……やっべぇ〜……抗えねぇ〜……)
今日は武神祭の決勝があるというのにこんな体たらくを晒してしまうとは……俺もまだまだ未熟者だという事だな。
(ここに来る前はこんな感情は一切無かったのに……でも悪くない。寧ろとても良いものだ)
快楽に溺れて己の身を滅ぼす連中を沢山目にしてきたが……なるほど殆どがこんな感覚に支配されていたのかもしれないな。
(ん……今日が武神祭決勝の日だよな……昨日が予選決勝で、それが終わった後は……っ⁉︎)
そこまで考えた俺の思考は、今の微睡の中から正常な判断に俺の脳を覚醒させる。そこに至るまでの時間はコンマ何秒程で、覚醒した脳が俺の目を開ける様にと指示を出す。
そして今日の俺の瞳がまず最初に捉えたものは……色白ながらも健康的な肌……いや、これは誰かの胸の中……っ⁉︎
(と、という事は……さっきまで甘く聞こえてきてた声は……)
視線を上に向けると……そこには優しい眼差しで俺の事を見つめて来るベータがいた。
「フフッ♡おはようございます、アルジ様。今日もとても良い朝ですね♡チュッ」
言われると同時に軽めのキスをされる。脳は覚醒したものの、急にそうされてしまってまた脳が指令を出すのをやめてしまう。
「もぅ! さっきからベータもズルいじゃない!」
その声が俺の背後から聞こえたと同時に、優しく振り向かせられる。振り向かせられた後、今度はガンマの微笑みが俺を出迎えてくれた。
「おはようございますアルジ様。今もそうですけど、先程まで寝ぼけていた貴方様もとても可愛らしいものでした♡んっ……」
今度はガンマにも頬を両手で包まれながら優しくキスをされた。そこには大人の余裕が感じられて、その魅力に引き込まれてしまう様な……
(ってイカンイカンッ! このままだと泥沼にハマっちまう‼︎)
昨日の2人の姿が俺の脳内にフラッシュバックされる。昨日の俺はその2人に理性の獣を解放されて……2人に甘えられつつ俺自身も沢山甘えた。
(こ、この調子だとまた俺の理性の獣が……)
さっきまでは微睡の中にいたからそうでもなかったのだが、今は脳が完全に覚醒してしまい、そこに受ける刺激は俺の心の中で縛っている理性の獣にも伝達されてしまう。そうする事で先程まで寝ていた眠っていた獣は起き始めてしまい、縛っていた鎖を徐々に引きちぎろうとする。現に……
「あぁ……///ふふっ♡アルジ様ったら……私、ガンマであればいつでも貴方様のお相手を致しますから♡」
そう言われながら、俺の頭はガンマの胸に導かれていき、そのまま抱き締められた。
「そうですよアルジ様♡ベータもアルジ様の事をめいいっぱい甘やかしてあげますからね♡」
背後からは背中から俺の腹にかけてベータの腕を回されて抱きしめられた。そして首の裏にサラサラした感触とはやわもちな肌が密着してきて、更に背中側にそのやわもち触感の肌とコリっとした突起が当たって来る。
(やばいやばいやばいっ……このままだと本当に俺の中の獣が解放されかねんっ‼︎)
普通に何事もない日であれば良いのだが(いやよく考えてみれば良くないな……)今日は決勝が控えている。それに向けて俺も今日は少し1人になって街を回ってみたいし、人気のない所で目を閉じてゆっくりしたいと思っている。
だからここまで俺の事を想って誘って来る2人には申し訳ないが、少し強引に甘美な包囲網を抜け出して準備を始めた。2人も残念な顔にはなっていたものの、俺の意思を最優先してくれたのか笑みを浮かべて俺のベットから抜け出す。そう……今の俺たちの格好は生まれた姿という事もあり、昨日甘えさせつつ甘えたのでお風呂にも入りたいところなのだ。それでお風呂には3人一緒に入ったのだが……そこでもやはり諦めきれなかったのか2人からかなり誘惑されたよ。まぁそこは鋼の精神に喝を入れて乗り切ったが……
それで決勝が始まるまでにはまだまだ早い時間帯だが、身支度を整えてシャドウガーデンの拠点を後にした。その時にはガンマはミツゴシ商会のルーナとしての服装、ベータは天才小説家であるナツメ・カフカとしての衣装を纏って俺を送ってくれた。
(さて……この調子で決勝も勝ちに行って来るか)
その意気込みを胸にして俺は決勝会場へと向かう道のりを進んで行った。
(といっても少し時間があるからな……久々にどっかでバイオリンでも弾くか)
そんな事を思いながら歩を進めていく。
side アルファ
アルジが出たタイミングを見計らって私はベータとガンマの方へと向かっていく。
「おはよう。ベータ、ガンマ」
「おはようございますアルファ様! 今日もとても良い天気ですね‼︎」
「アルファ様おはようございます! あの……アルジ様はもう行ってしまわれたのですが……アルファ様はアルジ様に一声かけなくても良かったのですか?」
ガンマは晴れ晴れとした顔をしながら私に挨拶を返してきて、ベータは私がアルジに一声かけなくても良かったのかと不安そうな顔をして聞いてくる。
(えぇ……ここでアルジにあってしまうと多分……私は自分を抑えられる自信が無いわ……)
遠目から見る分には大丈夫だけれど、近くに彼がいると考えただけで……
(んっ……彼の事が愛おしくなって……)
「あ、アルファ様⁉︎ 大丈夫ですか⁉︎」
私の異変を察知してかガンマが私に近付いて背中に手をかけてくる。それは私の気分を晴らしてくれる様に優しい手つきで……そのおかげもあって徐々に落ち着きを取り戻していったわ。
「……ごめんなさい。心配をかけてしまったわね」
「そんな事ありません! アルファ様はいつも私達の為を思って行動して下さる事は分かっていますし」
「それに今回も私達の為にアルジ様との時間を削られて……申し訳ありません」
2人はそう言ってくる。確かに私は、2人がどれほどアルジの事を想っているかを知って欲しくて彼の夜伽を頼んだわ。
でもそれ以外に、私がアルジをこれ以上近くで接してしまうと我慢できそうになるから……そんな個人的な理由もある。
(私の我儘でこの子達をいい様に使っているなんて……そんな事を思う時点でダメね)
でも私はアルジと約束したわ。武神祭が終わるまで彼に甘える事を我慢すると……。
(多分あの子もあの時私からそう言われて我慢していたはずよ)
私が彼に悪態をついた時、一瞬彼の身体が震えて同時に顔も赤くなっていたわ。私が普段彼に対して悪態を付かなかった事も起因すると思うけど……
(多分あれは……アルジも我慢していたのよね)
だから私も我慢するわ。そしてその努力は今日、遂に報われる。努力といっても3日間アルジに甘えたり甘えさせたりする事を我慢しただけだけど……彼と密着していると更に彼の事を愛おしくて感じてしまう。
(私……任務で彼と長時間離れた時にやっていけるのかしら……)
そんな不安を持ってしまうけど、それでもシャドウガーデンを預かる身として、そしてアルジ達の為に頑張っていかないとね。その思いを胸に、私は今日届いている資料に目を通して、それが全て終わった後は、七陰の皆で武神祭の決勝を見に行った。アルジが最後に勝つと分かっていても、その勇姿を間近で見る為に……
side out
side ローズ
「ハァ……ハァ……くっ……」
私はミドガル王国の地下に巡らされた通路を逃げていた。理由は、私の婚約者であるドエム・ケツハットをこの手で亡き者にしようとしたからで、それで私は追われていた。
別に追われるだけだったらまだ良い。今のところ追手は撃退しているし、その追っても行動不能にしただけで手にかけてもいない。
でも今の私は……とても苦しくて身体中が痛かった。原因は数日前から私の胸の辺りにできた出来物で……日に日に大きくなっていると同時に痛みや苦しさも増していった。
(このままではこの痛みや苦しみに負けて私は……)
痛みや苦しさが激しくなったらその都度休んでいるけれど……それもいつまで保つか……
(このままだと私はこの痛みと苦しみに呑まれて……果たすべき事もやり遂げられず死んでしまうかもしれない)
そんな不安に押し潰されそうになりながらも……自分のやるべき事を果たす為に前に進んだ。そうして進んでいると、綺麗なバイオリンの音色が聴こえてくる。その方向に足を進めていくと音色はそれに比例して大きくなり、やがて大きな広間の様なところに着きました。
(あれは……誰でしょうか?)
その広間の中心で全身黒い衣装と、頭にもあまり見慣れない形をした帽子でしょうか? それを被った人がバイオリンを奏でていました。そして私がこの場にいる事に気付いたのか、それとも私が来たタイミングが奏でている曲の盛り上がる瞬間だったのかは分かりませんが、より繊細でありながら存在感を表す音色となりました。
(それにこの曲を聴いていると……痛みや苦しみが嘘の様に引いて……)
そして弾き終わったと同時にその人は私に……
「君は……力を欲しますか?」
男の声でそう問われていました。何故急にそんな問いが投げかけられたのか分かりませんが……でも私は、私の今思うがままの答えを口にしていました。
「私のなすべき事をなす為に……欲しいです」
見るからに初対面で怪しい格好をしているのに、何故かその声音からは安心感を覚えて……自分の今思った事を言っていた。
side out
俺は決勝が始まるまでゆっくりしようと思っていた。それと同時に久々にバイオリンを弾きたいなと思って……
(確かに拠点でも弾いてはいたが、それとは別で外の開放的な空間でやるというのも乙なものだよな)
そう思って良いところを探していたんだが……途中よく通る道にあるお店のグランドピアノが盗まれている現場に遭遇してしまった。って……
(こんな事しでかす奴兄さんしかいねぇ……)
うわぁ〜……なんか急にゲンナリしてきた。あれだけよそ様に迷惑かけるなと言ってきたのに……今回は作戦行動とかそんなの全く無い状態で他所様に迷惑をかけている光景を目にしてしまった。
という事で……
「おい、何人様に迷惑かけてんだよ……さっさとそのピアノを返しに行って来い」
「えぇ〜……今からがのってくるところなのに……」
「誰もそんな事は聞いちゃいないんだよ……つべこべ言わずに戻して来い!」
「……なんか最近僕に対して辛辣になってない?」
「なら日頃の行動を改めろ。 こちとら兄さんのせいで尻拭いする事が多いんだよ! 自分で片を付けてくれるんだったら俺からも何も言う事はねぇさ。でも兄さんの場合は、いつも自分がもたらした被害はそのままにして他人に任せているだろうが! いっつも言っているよな⁉︎ 少しは他人の事を考えろと! そこに住む善良な人たちの事も考えろと‼︎ 兄さんだけが住んでいる世界じゃあないんだぞ‼︎」
「あっ……うん、わ、分かったから……返しに行くから……」
そこまで言って漸く兄さんはピアノを返しに行った。勿論自分で出した被害は自分で片を付けろとも。もしそうしないのであれば、兄さんが溜め込んでいるお金を全てガンマ達に渡すとまで脅しておく事も忘れない。
(何せ口で言ってもダメで拳骨とかを落としても変わらない……なら兄さんが1番嫌がる事を口に出して精神的に分からせた方が良い)
兄さんは陰の実力者というマジで厨二病全開の事に全てを賭けていると言っても過言ではない。故に自らのステータスに見合った調度品とかも収集してくる。その為には沢山のお金が必要という事で……
(兄さんがお金を溜め込んでいる場所は、この前のゼノン・グリフィの件で分かったからな)
まぁあれから兄さんが貯金している場所を変えたかもかもしれないが……そうなってもわかる様に微量な魔力を何枚かの金貨に付けておいた。それも金貨の内側にだ。そういうわけで兄さんがもし、今回ピアノを
(よくよく考えると……俺も他人の物を勝手に持ち去って行く行為は盗人と同じではあるな。そう自覚してしまうと嫌な気分になってしまうが……)
だがそれもこれも兄さんが後先考えずに事を起こすのが悪い! だからこれは兄さんに自覚を持ってもらう為に、別に厨二病的な夢を抱えるのは良いが、それでも他所様に迷惑をかけない程度には考えを改めて貰いたい。
「さて……また兄さんが戻ってくるだろうし、その時は俺が持っているピアノを貸すとするかね……」
という事で兄さんが戻ってくるまでの間、俺はその地下の大きな広間みたいな場所で1人バイオリンを弾く。今弾いている曲は呪術◯戦2期の懐玉・玉折辺で流れたオープニングだ。オープニングの絵もさることながら、それに合わせた曲調とか歌詞とかが非常にマッチしていた。とても素晴らしいの一言を贈りたい!
そんな事を思いながら緩やかに弾いていると、そこに1人の観客が現れた。
(といってもローズ先輩だったんだが……)
これまで誰かに追われていたのか返り血を浴びている状態で、どこか怪我をしていないのか曲を弾きながら確認したがその様子も見受けられない。
ただ一点……魔力暴走が起こっている現象を除いてはだが……
(全く無茶をして……)
俺もそう言われる立場ではあるが、今は何よりローズ先輩の事だ。今弾いている曲の速度や音の大きさなどを変えて、更にはその音色に自分の魔力を流し込む事によって聞いた者の抱えている痛みなどを和らげる効果を付与する。
曲調を変えた事によって、さっきまで苦しそうにしていたローズ先輩の表情が若干和らいだ気がした。まぁ和らげているだけで完全に治療した意味では無い。曲を最後まで弾き終えた俺は先輩に近付いてそれっぽい事を口にした。君は力を欲するかと……
そこでローズ先輩から邪な気配の伴う解答が出ようものなら、俺はこの前宣言したみたく強制的にその道を正そうと動くだろう。どうするかは具体的には決めていないが、彼女が納得する道を俺が示すだけだ。
だが彼女からの回答はそんな気配は微塵も感じなかった。ただ素直に、自分が思っているままを聞いた。そこに矛盾なんてこれっぽっちも含まれていなかった。
(あぁ……彼女は彼女のままだ)
その決断がいかに険しい道だろうとも……彼女は歩いていくだろう。例え自分がどれだけ傷付いたとしても……俺は自分の事を大切に接してきた人達が傷付くところなんて見たくはない。だが……俺はその人の志を邪魔するような事もしたくはない。特に強い意志を秘めた瞳を持つ人ほど……
(全く……我ながら矛盾した考えだよな)
まぁ最終的にどちらかを取れた言われたら前者ではあるが……
今は先輩の中で渦巻いている魔力暴走を正常な値に戻す事から始めようか。
「それではそのまま……楽な姿勢で立っていて下さい」
「えっ? えっと……こう……ですか?」
半信半疑になりながらも俺のいう通りに立ってくれるローズ先輩。そんな先輩に近付いた俺は、先輩の身体を優しく抱きしめた。
「なっ⁉︎ 何をするのですかっ⁉︎」
その声は驚きも含まれるが、それ以上に不快の声音が強い。そして俺の抱擁から逃れる為に身体全体で抵抗してくる。そりゃあもう……初対面の上に黒ずくめでさも怪しい奴が急に抱きついてきたら誰だって不快感を全面的に押し出してくるだろう。だが俺はその声にも動じず彼女の身体の中を渦巻く魔力を正常化させる為に、俺も身体全体を使って魔力を流し込む。
「これは……魔力の流れ……」
それでローズ先輩も気付いたのか、先程まで俺の抱擁から無理やり抜け出そうとしていたのをやめた。そして俺の魔力を先輩に流し始めて数秒……彼女の魔力を正常な値に戻していく。それと少しだけ俺の魔力も分け与える事にした。まぁ分け与えたところで俺の魔力はその倍には膨れ上がって戻ってしまうのだが……
「そう。それが本来あるべき魔力の流れ……この流れを常に制御する様に心がけなければ……誰にだってあの症状が起きえます。特に魔力が強い人は……」
「っ⁉︎ な、なら私がさっきまで抱えていた症状は悪魔憑きと呼ばれる呪いでは無いと?」
「残念ながら世間的にはその通説が正しいとなっていますが……ね」
「な、なら私達が怯えていた事は……」
「ただ単に内に秘めていた強大な魔力の流れを制御できなかったからに過ぎません」
「そう……だったのですか」
「えぇ。そして今俺はあなたに正常な魔力の流れを感覚的には教えました。あなたほどの腕前ならば、すぐに剣聖と呼ばれた方とも互角に渡り合えるでしょう」
「わ、私がベアトリクス様と⁉︎」
「まぁすぐには信じれないと思います。でも地道にあなたが持つ剣術の鍛錬と、そして魔力制御を鍛え上げれば必ず……出来ない事は無いです」
「……どうしてでしょうか。今があなたと初対面の筈なのに……あなたから出る言葉を全て信じれると思うのは……。あなたの事がまるで……私が1番大好きで……ずっと一緒にいたいと思っていたあの人と同じ様に感じられるのは……」
(えっ? ローズ先輩って好きな人いたのっ⁉︎ それなのに俺あんな台詞を言ったりして……やべぇ……今思い出したら恥ずかしくなってきた……)
ま、まぁ先輩が誰を好きになろうと応援するだけだな!
(それに先輩は一国の王女でもあるし、それなりの立場ならそれなりの格式を伴った貴族の人と結婚した方が絶対に良い未来が待っている筈だ)
過去に格好付けてやってしまった事はどうやったってなかった事には出来ないし、今は先輩が自分の道をとにかくまっすぐ進める様に見守るだけで良い筈だ!
と、アルジさんは思っていますが、ローズさんがアルジさんの事を好きだという事を……アルジさんは全く認知していません……
俺がローズ先輩を抱きしめて数十秒ぐらい経った。完全に俺の魔力が彼女の魔力と馴染んだのを確認した。
「さぁ……これで感覚的には魔力の流れをあなたも掴めた筈です。その証拠にもう苦しくは無いでしょう?」
「っ‼︎ た、確かにさっきまで感じていた痛みと苦しさがなくなって……」
「よく……頑張りましたね……」
「えっ……」
最後にその言葉をローズ先輩に伝えて、先輩から離れる。そして俺はこの場でやる事は終わったとでもいう様に、先輩が立っている方とは反対方向に向いて歩き出す。
「ま、待って下さい!」
背後から静止の声をかけられるが、時間を見ればそろそろ武神祭の決勝が始まる頃合いだ。だから残念ながらそろそろここを出ないといけない。名残惜しくはあるけど、またすぐに会えそうな気がするからな。だから今は静止を振り切って立ち止まらずに歩いて行く。
「せめて……せめてあなたのお名前だけでもお聞かせ下さい‼︎」
「(まぁ名前だけなら良いか)俺の名前はアスタロト……富、金、名声、力、それに付随するありとあらゆる物を用いて弱き立場の者達から搾取しようとする存在に陰から復讐する者。そして弱き者達が安心した暮らしができる様に見守る者……とでも言っておこう」
それを言い残して俺は完全にローズ先輩から去って行った。にしても……
(あの言い回し……完全に兄さんの厨二病が混じってたよな……)
あぁ……やらかした。またやってしまった……うん、普通に恥ずか死ぬ思いだよ……
(あっ、そういえば兄さんが戻って来たらピアノを貸そうとしてたんだが……ま、いっか)
尚、シドさんがピアノを返しに行く+壊した箇所を直し終えてさっきの広間に戻って来ると誰もおらず、そして先程の気分も既に無かった為に決勝の会場へと向かって行ったと言います……
side ベータ
ガンマと一緒にアルジ様の夜伽をした。アルジ様に対して2人で夜伽をしたのは、リンドブルムでアルジ様に告白をして以来の事でした。その時はアルファ様の目の前でアルジ様に告白して……恥ずかしかったけれどアルジ様は私の想いを受け止めて下さいました。
(それと同時にアルジ様が辿ってきた過去を聞いて……)
それは陰の叡智で聞いてきた御伽噺よりも更に濃くて……想像も出来ないほどの話だった。でも全てが新鮮で、気付けば脇目も振らずにメモを必死に取っていました。
(これが……アルジ様の辿ってきた過去♡)
その場に持って来ていたメモ帳だけでは書ききれなかったので……申し訳なかったのですがアルジ様から何冊かメモ帳を頂いて続きをメモしました。
そのメモを書いていてふと思ってしまいました。アルジ様は最初の転生では天寿を全うして、それで家族の皆様にも温かく見送ってもらったと……
(でもその後が……いつも1人ではないですか……)
確かに周りに仲間と呼べる人でしたり、家族と呼んでもおかしくない人達がいたでしょうけど……でもアルジ様は最終的にその世界での出来事を終わらせてしまえば別の場所へと行く運命で……アルジ様のことを好きになった人からの告白も断って来て……私が勝手の勝手な解釈ですけど、アルジ様に真の意味で寄り添える人がいなかったのではと。例え寄り添おうとしても……女神と呼ばれる方々の都合で引き離されてしまう。
(確かにアルジ様が原因でそうなった事も要因だと……いえ、これはアルジ様に問題があったのでは?)
好意を持っている女性を悲しませるべきではないという考えは理解できますが……それでもあまりにも極端過ぎます……
(だから私達がアルジ様の事を……その考え方を改めさせます!)
既にアルファ様によってその考えもかなり変わってきているとは思いますが、もしかしたらまだ心のどこかでそう思っていてもおかしくないかもしれません! ですから私達がアルジ様に……いえ、私がこれまで自覚無しで拒んできた愛情以上の物をアルジ様に捧げる‼︎
(そしてアルジ様にはこれまで以上にこの世界で生きて貰います! アルファ様もそう考えているとは思いますけど……
簡単にアルジ様の事は手放したりしませんから♡)
そう心に誓ってリンドブルムではアルファ様と一緒にアルジ様の夜伽をした。その後アルジ様は私と約束した通り2人きりの時間を作ってくれて、そして私に改めて告白を返してくれて……その時はとても嬉しくて泣きました。それをアルジ様は慌てながら……でも優しく受け止めて下さいました。
それで昨日はガンマと一緒に夜伽をして……その時のアルジ様はとでも可愛らしかった。もしかしたら女神と呼ばれる方々の事を優先したからこそ、誰かを愛する事や誰かに甘える事、それに通ずる想いを無理矢理封じ込めてきたのかなとも思う。
(だからこそ、今そのしがらみから解放されているであろうアルジ様がとても愛らしい♡)
でもまだまだです! これからも私はアルジ様に愛情を注ぎ続けます‼︎ そして今日もアルジ様の勇姿をこの目に……といきたいところなのですが……
(なんで今日に限ってアレクシアさんに呼び出されているんでしょうね……)
あれは一昨日の事で、まだ武神祭も予選の段階でした。その日も定例でアレクシアさんとローズさんとの集まりがあったのですが……
(その日にローズさんは来なかったんですよね……)
それを怪しんだアレクシアさんはその日は少し調べてくると行って勝手にその場から去って、次の日にはこの日にまた集合しましょうと言われた。こっちにも予定がある(特にアルジ様の関係で)というのに……
(まぁこれも情報収集の為です……)
ローズさんがそうなっている要因は……十中八九ドエム・ケツハットが絡んでいる事で間違いないでしょう。それ以外にあるというのなら、今回で確かめるまでではありますし……
「来たわね、ナツメ・カフカ」
そう考えながら向かっていると、集合場所には既にアレクシアさんがいた。見る限り動き易い格好をしている所を見るに、これからどこに行くのかも事前に考えているんでしょう。
「それで? どこに行くつもりなんですか?」
今日の幸せな気分を邪魔した
「昨日……ローズ先輩が婚約者のドエム・ケツハットを殺害しようとしたの。表向きは疾走だけど、私達騎士団先輩を追っているわ」
「……それでこの地下通路、いえ遺跡にローズさんが逃げ込んだと?」
「流石は小説家ね。話が早いわ」
「……こんなに広く複雑な場所を2人で探すと? 本当にあなたは考え無しですね」
「なっ⁉︎ そ、そうかもしれないけど……でも私達は同志なのよ! 騎士団よりも早く見つけて真相を明らかにしないと‼︎」
「明らかにしたとして……それを誰が信じるんですか? 確かにあなたも一国の王女ではありますが、あなたの言を信じる人がいるでしょうか?」
「確かに私は姉様に比べてそんなのちっぽけなものよ。でも……やるとやらないとでは大きく違って来ると思う。だから私は進むのよ!」
「……ハァ。まぁあなたにあれこれ言ってもダメでしょうからこれ以上は言いません」
「そうそう! 諦めも時には肝心なんだから! さぁ行くわよ‼︎」
そう言ってアレクシアさんが前を進んで歩いていき、私もその後に着いて行った。
(アルジ様の試合に間に合うでしょうか……)
そう思いながらも、情報収集も兼ねてしっかりしようとも思った。全てはアルジ様とシャドウ様の為に……
side out
side アンネローゼ
(遂にこの瞬間が来たわね)
決勝の第1回戦で、目の前にはゴルドーやクイントンを何事もなく倒して来た
今か今かと私の心の中でもはやる気持ちがある。確かに私の実力では敵わないかもしれない相手で、それに向かって行くのは本来無謀だと誰もが言うだろう。でも……
(私の心はこの人と本気で戦いたいと思っている‼︎)
早く自分の得物を振いたい。目の前の人に自分がどこまで戦えるのかを早く実感したい!
試合開始の合図がなったと同時に、今まで溜め込んできた物を一気に解放する。小細工無しで彼に一直線に飛び出して、剣を左から右へと一閃した。それも簡単に避けられてしまったけど……
「へぇ〜……最初から本気って事だよな。それも……今まで見てきた対戦相手とは違う目をしている。良い目をしているじゃあねぇか」
「ありがとうございます! 確かに私はベガルタ七武剣の地位を捨てて武者修行に明け暮れる日々。それも身のある修行をして来たと自負していますが……あなたを前にすれば全て些細な事に見えてしまう! そんなあなたに……私の今の実力がどれほど届くのかを試したい‼︎ そして本気であなたに勝ちたいです‼︎」
「……分かった。なら俺もアンタの……いやアンタじゃ失礼だよな。“アンネローゼさん”の心意気を尊重して、最初から得物を抜かせてもらうとするかね」
そう言って彼はこの試合で初めて……観客にも分かるように自分の得物を鞘から抜いた。ゆっくりした動作だけど、それも鮮麗されていて一種の芸術を見ているみたいな感覚だった。
彼の左手に持たれた得物は、見れば片刃の剣で反対側はしなやかに逸れている。この国では一般的に両刃の物が主流……いえほぼそれを魔剣士は好んで使っている。逆に彼が握る得物はどれにも該当しない。いえ……確か剣聖が同じような物を使って戦うと聞いた事があるけど……
(それに私から見ても美形に見える容姿……もしかしたら彼はエルフと人間のハーフ……という事もあり得る)
耳はエルフの様に尖ってはいないが、エルフと人間のハーフというのであれば身体の一部が人間寄りになるのも納得がいく。
「どうした? そっちから来ないのかい?」
「いえ……あなたの握るそれがとても綺麗で芸術品にも見えたので……」
咄嗟にそう言い訳はするも、私が言った事は本当に思った事でもある。
「へぇ〜……まぁコイツは俺と長年連れそって来てくれたからな……愛着が湧いて逆に手放せないし、手入れにも時間がかかっちまうんだよな」
「それ程に……あなたはその剣を大事にしているのですね。私もです。戦いの場で自分の身を守れるのは、自分がこれまで培ってきた経験と剣だけですから」
「確かに……まぁそう言った話はまた後でするとしてさ」
「えぇ……全力で行きます‼︎」
その言葉を合図に、私は彼に接近して剣を振るった。
今回は地下でのやりとりが主流でした。それにしても久々にアルジさんがシドさんに怒ってましたね。因みにあのやり取りは本来考えてなかったんですが、書いていたらまた自然とあの場面みたくなりました。
まぁアルジさんがローズさんの事を助ける場面を書きたかったので、私としては良い口実でしたが……
次回はアレクシアさんとローズさんが地下で戦う場面から書いていこうかなと考えています。まぁ途中で変わるかもしれませんが……
という事で次回またお会い致しましょう!