陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

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皆様1ヶ月ぶりです!
今回は戦闘パートも加えたので、いつもよりも若干文字が多めになっています。

それにしてもカゲマスが1.5周年を迎えましたね! 私としてもとても嬉しいです‼︎
しかしながら問題が1つありまして……それはイベントのボス戦で毎回アプリが落ちてしまう事です……。
データキャッシュをしても改善されず……このままではイベントが全く楽しめなくなるので……心機一転して機種を買い替えることにしました!
あぁ……出費が……

まぁ私の話はここまでとしまして、早速ご覧下さいませ!


45話 復讐者、ローズの心を救う《前編》

 

 

 

 

 

 

side シド

 

 

 

 

 今変装しているアルジとミドガル王国最強の魔剣士と謳われているアイリス王女って人が試合をしている真っ最中だった。

アイリス王女の方は、王国最強と言われているだけあって今までに試合で見てきた魔剣士よりも格上の存在だと分かる。

 

(でもやっぱりアルジには及ばないんだよねぇ……)

 

 だって今のアルジは剣を抜かずに素手でアイリス王女の剣を捌いているし……

 

(僕もそれくらいの事は出来るけど……僕もアルジには遠く及ばないんだよなぁ〜)

 

 何か武器になる物を持ってたら捌き切る事なんて余裕だけど、あそこまでリーチが何もない状態で対応するとか最早自殺行為にも等しいんじゃないかって思う。

バールとかあれば別だけど無手は流石になぁ〜……それをアルジは顔色変えずにやってる。

 

 

(いや、なんか呆れているような顔してるね)

 

 それだけ今のアイリス王女との試合が面白くないって思っているのか分からないけど、まぁこんな事は本人にしか分からないよね。

 

 でもそこから試合は動いたんだ。

アルジがアイリス王女の剣を呟いて、そこから少しのやり取りを経てからアルジも剣を抜いて戦い始めた。

その動きは、今までの試合よりも生き生きとしているように見えた。

それにアイリス王女もさっきの動きよりもっと早さと鋭さを増した。

にしても……

 

(アルジの顔が凄く嬉しそうに見えるな)

 

 確かアンネローゼさんだっけ?

あの時もアルジの試合は見てたけど、あの試合と同じくらい嬉しそうにアイリス王女と剣を交えている。

まぁこれまでのアルジの試合は、剣を抜かずに済む相手ばかりだったしね。

フラストレーションとか溜まっていたと思うし……

 

(アルジからすればアイリス王女も剣を抜かずに戦えるんだろうけど……)

 

 あの顔をする時って、大抵誰かに剣を教えている時とかに見せる表情なんだよね。

だからアルジからすれば、相手に剣の稽古をしている状態なのかな。

あっ、2人が一旦離れた。

という事はこれから更にヒートアップしていくって事だね。

 

(おっ? なんかVIP席からイベント事の気配がする!)

 

 僕もさっきまでそこに座って観戦していたけど、少しトイレに行きたくなって席を外していたんだ。

それで今現在はVIP席に帰る途中でアルジの試合を見ていたんだけど……

 

(これは僕が陰の実力者として動ける機会なのでは⁉︎ いやその機会に違いない‼︎)

 

 善は急げというし、シャドウの姿のまま行っても良いけど……でもそれじゃあインパクトに欠けるから……

 

(そうだよ! 正にこんな時の為に変装用の容姿を作ったんじゃないか!)

 

 という事で一旦観客席から離れて、人がいない事も確認してからジミナの姿に変装して、それで誰にも気取られる事なくVIP先に突入した。

それも窓を盛大に割って……

 

(なんで割るか? そっちの方がインパクトが強いしね!)

 

 こうしてシドさんはVIP席に窓を破って突入しました。

またそれと同じタイミングで、アイリスさんと試合中だったアルジさんも窓を破ってしまう事は申し訳ないと思いつつも、悪い予感を覚えてVIP席へと突入していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ローズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はお父様がいる部屋を目指して進んでいました。

その途中にも先程会ったシャドウガーデンの装いとは違う者達が倒れ伏していました。

 

「……この部屋ですね」

 

 有力貴族や貴族に招待された人、そして客品として招かれているオリアナ王国の国王である父が試合を観戦している部屋。

 

(そして……ドエムがここにいる)

 

 私の生まれ育った国を……奴の好きにさせるわけにはいかない!

だから私も決死の覚悟でここに立っている。

迷いは……もう無い。

 

(アルジくんにも、勇気を貰いました。本当はもっと彼と一緒にいたいけれど、彼を今回の事に巻き込む事なんて絶対に出来ない)

 

 私の国で起こってしまった事は……父の血を継ぐ私がケジメを付けます!

 

 その決意を胸にしながら、私はVIP席の扉を開きました。

当然内側の守衛が私の事を、怪しい者だと認識して捕縛しようと近付いてきますが、それも難なく気絶させてお父様達の前へと歩んできました。

 

 そして被っていた外套も脱いで、私の正体をその場に晒す。

 

「お父様……」

 

 私が見据える先には……私が知っていた優しい顔ではなく、考える事を何もかも放棄したような、虚な表情をしていたお父様だった。

 

「ローズ王女、ようやく来られましたか」

 

「……ドエム・ケツハット」

 

「そう睨まないで頂きたい。ローズ王女が私を襲ったのは何か誤解があったからという事は、分かっています。さぁ、私達と一緒にオリアナ王国へと帰りましょう。あなたのお父君も、それを望んでいる」

 

「ローズぅ……」

 

「お父様……くっ!」

 

 お父様のその表情を見て、ドエムに対しての憎しみが膨らんでいく。

この男がお父様をこんな姿に変えてしまった。

私が国から離れている間に……こんな事になってしまった。

 

(だから……私は!)

 

 私はお父様に近付いて、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザクッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ⁉︎」

 

「うっ……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はお父様を……お父様の身体を、愛剣のレイピアで刺し貫いた。

お父様の身体から……赤い血が私のレイピアを伝って手を濡らしていく。

 

「ローズ……」

 

「っ……お父様」

 

「お前の信じたように……しなさい」

 

 お父様は……私の身体を優しく抱き締めた。

昔の様にとても暖かかった。

でもその温もりは次第に失われていって……地面に倒れ伏した。

 

「っ⁉︎ ろ、ローズ王女がご乱心だ!」

 

 その光景にドエムも焦りの表情を浮かべて、オリアナの護衛を私に殺到させる。

 

 ドエムの目的は王家の血……お父様ではなく私の……お父様でも良かったのかもしれないけど、お父様は強く拒んだ筈だ。

だから薬漬けにされてしまって、傀儡の様になってしまったんだろう。

それでもお父様は屈しなかった。

 

 だからこそドエムは今度は私に目を向けたんだと思う。

お父様の事が好きな私であれば、私の事も操れると……

 

 そしてそのお父様を……私がこの手にかけた。

ドエムもまさかこんな事になるとは予想外だったと思う。

オリアナの護衛が私を捉えようとしてくる。

けど……

 

(お前達の好きにはさせません!)

 

 私はレイピアの剣先を、自分の首に突き立てるようにして持つ。

 

「お父様……今参ります」

 

「なっ⁉︎ 止めろ! 止めるのだ‼︎」

 

 ドエムが号令をかけるけど、もう遅い……

 

(アルジくん……もし私が生まれ変わったら……今度はもっと一緒に……)

 

 勢い良く自分の首にレイピアを突き立てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命を粗末にするな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 レイピアが、首の皮膚に当たる寸前で止まっていた。

いくら力を込めても、それ以上先に進まない。

そこで私は気付いた。

レイピアの刃を……誰かが掴んでいる事を。

 

 その先を視線で追うと……そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この場で何があったかなんて知らねぇが、それでもこの場でアンタが命を落とすのは違うんじゃあねぇか?」

 

 

 

 

 

 

 

 その人は、女の私ですら綺麗だと思えてしまう様な男の人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(少し遅れていたら危なかったな)

 

 俺はローズ先輩が自分のレイピアで首を貫こうとしているのを止めた。

彼女の顔は……死ぬ覚悟している顔ではあったけど、それを俺は止めた。

彼女を死なせたくないという己の我儘で、その決意を踏み躙ったと言われても仕方がない。

 

 だが俺はこれを正しい選択だと思っている。

ローズ先輩からどう非難されたとしてもそれは全て受け止めるし、彼女が望む事があるのなら、俺のやれる範囲で叶えていこうとも思っている。

 

 にしても……

 

(ちゃっかり兄さんもこの場にいるのな)

 

 多分この部屋に突入したのはほぼ同時だろう。

兄さんの立っている付近にはガラスが散乱していて、入ってきたインパクトの大きさが伺える。

 

 俺も窓を割って入りはしたが、その後ちゃんと魔力で直しておいた。

本当にこの世界の魔力の応用力は多岐にわたるな……と関係ない事を考えてしまうが……

 

「あ、あなたは……一体?」

 

「あぁ、俺とした事が自己紹介がまだだったな。俺はユーリ・ローウェル。今回の武神祭に参加しているただの剣士って所だな」

 

「ゆ、ユーリ・ローウェルだと⁉︎ な、何故お前がここに⁉︎ アイリス王女と試合中だったのではなかったのか⁉︎」

 

「俺がいる事も忘れてもらっては困るな」

 

「っ⁉︎ じ、ジミナ・セーネン⁉︎ よ、よりにもよって武神祭のダークホース2人がこの場にっ⁉︎」

 

「試合中にただならぬ気配を感じ取ってだが?」

 

「……退屈を凌げると思ったまでだ」

 

「そ、そんな理由だけで……」

 

「まぁそのお陰で……テメェが何かしでかしそうだと分かった。いや、最初から分かりきっていたから、後はどう介入しようかと考えていたんだがな」

 

「なっ……い、いや、私はオリアナ王国の宰相だ! 私は日々オリアナ王国の為を思って行動し、そして今回武神祭にオリアナ国王の同伴としてこの場にいるのだ! そんな私が何をしでかすと? それに事を起こしているのは貴様の目の前にいるローズ王女の方だ! 彼女は自らの手で自分の父を手にかけた、謂わば国にとっての逆賊だ! 分かったのならローズ王女を渡しt「黙れよ?」っ⁉︎」

 

「テメェの事は調べが付いているって言っているだろうが? ディアボロス教団・モードレッド派のドエム・ケツハット」

 

「なっ……⁉︎ な、ななな何故それを⁉︎ っ! い、いや……一体何のことやら……」

 

「その反応で丸わかりだからな? 取り敢えず……大人しく縛について尋問された上で復讐されるか、それともこの場で復讐されるか……選べ

 

(((なんかどっちとも最終的には一緒なんじゃ/では/ではないかっ⁉︎)))

 

 その場に居合わせた人物達は、ユーリさんの言葉が最終的に変わらない事を理解しました……

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

「とにかく茶番は済んだか? 済んだのなら早々に終わらせるとしよう……」

 

 少しの沈黙の後、ジミナに変化が訪れる。

ジミナの身体を黒い泥の様な物が纏わりついて全体を覆う。

それが剥がれると、中からジミナに変装していたシドがシャドウの姿となって現れる。

 

「なっ⁉︎ しゃ、シャドウガーデンだと⁉︎」

 

「さぁ、狂乱の宴を始めよう」

 

「くっ⁉︎ やれっ‼︎」

 

 ドエムが言葉を放つと、どこに潜んでいたのか全身が黒い隠密の格好をし、顔を白い布で隠した集団がシャドウに襲いかかる。

そしてオマケと言わんばかりにローズの近くにいるユーリにも襲いかかった。

 

「この程度か?」

 

 シャドウは素早い一振りで襲いかかる者達を瞬殺し、だがその顔は物足りないという表情だった。

一方のユーリは……

 

「はぁ……」

 

 ユーリもユーリで剣を抜いた……が、その一振りは見えず、気付けばユーリに襲いかかった者は地面に倒れ伏していた。

それも血を一滴も出す事なく……

 

(さっきの……動きは……)

 

 その動きを間近で見ていたローズは、過去の出来事を思い出していた。

自分が窮地に陥っていた、盗賊に攫われてしまったあの日の事を……

 

「さて……後は……」

 

 そんなローズの様子を知らずか、そう呟いてユーリが倒れているオリアナ国王に近付こうとした時だ。

 

「皆さん! 無事ですかっ……⁉︎ しゃ、シャドウ! 何故ここに⁉︎」

 

 そこにアイリス王女が窓からVIP席へと入ってくる。

そしてその場を見てまず目に付いたのがシャドウであり、その次にシャドウの周りに倒れ伏している黒ずくめと、離れた所にいるローズ王女と、そこから少し離れた位置に倒れていたオリアナ国王と、その近くにいるユーリ。

 

(い、一体これはどういう状況で……何故オリアナ国王が倒れて……まさかこれをやったのは全てシャドウ、という事ですかっ⁉︎)

 

 ミドガル王国襲撃以降、アイリス王女はシャドウガーデンの一部(アルジのことだが)を除いて悪の組織の一団だと考えている。

そして目の前の光景を見てしまった為か、その疑念は悪い方向へと膨れ上がる。

 

「一応聞きます……これはあなたがやった事ですか?」

 

「そうだと言ったら?」

 

 アイリス王女の問いに、シャドウは思わせぶりな答えを口にした。

その瞬間、アイリスの疑念は確実な物となった。

即ち、シャドウガーデンは完全な悪であると……

それと同時に、自らの怒りによって魔力がアイリスの身体から溢れ出す。

それは先程までユーリと戦っていた比ではない程の魔力を迸らせる。

 

 だがそれも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はこんな時に何思わせぶりな事を言ってんだよ? このどアホウが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉と共にシャドウの頭の上から勢い良くタライが落ち、見事にそれはシャドウの頭に直撃した。

それを受けたシャドウは……とても痛そうにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まったく……あの馬鹿な兄さんは何言ってんだ)

 

 陰の実力者ムーブをするのは勝手だが、時と場所を考えてもらいたい。

ん? 何故タライなのか? まぁ咄嗟に兄さんが言っている陰の実力者ムーブとやらを変な感じに紛らわせるにはこの手が最適だと思ったからだな。

俺がいる前では兄さんのせいで変な方向に向かわせない為に、面倒ではあるがシミュレーションは欠かさない。

 

(それに兄さんのせいでアルファ達にも風評被害が広がるってのが1番嫌なわけだが……)

 

 まぁ世間の目からしてシャドウガーデンも悪の組織であり、世界を混乱に貶める存在だと認知されているから今更かもしれないが、今以上にシャドウガーデンが悪の組織であると認識されるのは嫌なわけで……

 

「えっ……えっ?」

 

 まぁさっき兄さんにタライ落としたら、アイリスさんの怒気が霧散したのが傍目から見ても分かる。

取り敢えずオリアナ国王を蘇生させるか。

 

「彼者を死の淵より呼び戻せ……レイズデット」

 

 この世界にはない蘇生魔法をオリアナ国王にかける。

金色に輝く1枚の羽根が呪文をかけた国王の下へゆっくりと落ちていき、それが落ちきると国王の身体を羽根と同じ光が覆う。

 

 すると国王から流れ出た血が国王の身体に戻っていき、やがて傷口も塞がった。

それから数秒後、オリアナ国王は少し咳き込むも息を吹き返した。

 

「お、お父様……っ!」

 

 その光景を見たローズ先輩は泣いていたが、それは嬉し涙からくる物だろう。

口元を手で覆っているものの、涙が流れている瞳からは嬉しさの感情が伺えた。

 

「し、死んだ人が……生き返ったというの?」

 

 その場で死人が生き返った光景を見たアイリス王女は、とても信じられない物を見たとでもいた様に驚いている。

まぁそれが普通の反応なんだが……

 

(にしてもドエムは……ドサクサに紛れて逃げたか)

 

 引き際を見誤らないという点では、今までの教団連中の中では評価する点ではあるが……

 

「あぁ……凄い。素晴らしい……」

 

 そう考えていると、そんな声が聞こえた。

声が聞こえた方に顔を向けると、そこにはベアトリクスさんが獰猛な笑みを浮かべていて……

 

「君がさっき使った物はなんだ? 死者を蘇生させる術……それに君が今まで見せて来た剣技は……どれも興味をそそられる! 一手手合わせを願い出たいのだが‼︎」

 

 いつもの口調とはまた違った喋り方をするベアトリクスさん……感情が昂るとこんなにも変わる物なのか?

 

「(にしても今はまだやるべき事がある。ここは……)あぁ……俺にはまだやるべき事があるので、そこにいる奴と相手してもらえません?」

 

「……えっ?」

 

 という事で勝負事については兄さんに振ることにした。

急に自分に振られた事で、兄さんも素の反応をしていて、それを見て笑いが出そうになる。

 

「……確かにそこにいる子も強いと感じるな。ならその子を倒したら、次は君が私の相手をしてくれるのか?」

 

「まぁそうなったら相手をしても良いと思いますね」

 

「ちょ、ちょっと待って下さいベアトリクス様!」

 

 そこに少しの間呆気に取られていたアイリス王女が我に返り、話に割り込む。

 

「この者は今この国でも指名手配を受けている存在……シャドウガーデンの首領なのです! 市民の生活を不安にさせている組織のトップを捉える機会を、みすみす逃すわけには行きません‼︎」

 

「ふむ……そうか。まぁ私はそこの者と戦えればそれで良い。別にあなたと共闘で彼と戦っても良いと思っている」

 

「っ⁉︎ わ、分かりました。では共闘させて頂きます」

 

 どうやら話はまとまった様だ。

 

「つぅ〜事で、アンタは邪魔だからとっとと出てってくんな〜」

 

「はっ?」

 

「さっき言ったと思うが、俺にはやるべき事がある。それをする為にアンタにはここから出て行ってもらう必要があるんだよ。だから戦うなら外でやってくれって話。『それに、陰の実力ムーブしたいんだろ?』」

 

 最後だけ兄さんに分かる様に口パクで言った。

まぁ読唇術ぐらいこの距離でも分かるだろうと思ってやったが、それに気付いた兄さんがニヤッと笑う。

 

「っ! フフフ、アハハハ……ハハハハハハハハッ‼︎ 良いだろう! そこのエルフの女と赤髪の女……2人がかりでかかってくると良い! 俺に貴様らの実力を見せてみろ‼︎」

 

「これは……中々に強い気と魔力だな。まぁ私は元々そのつもりだが……」

 

「その傲慢な態度が、私が守るべき市民を不安にさせているという事ですか。益々あなたという存在を野放しに出来なくなりました。覚悟して下さい!」

 

「アイリス王女、これを使え」

 

「えっ?」

 

 俺は彼女に一振りの剣を投げ渡す。

それはこのVIP席にあった像に飾られていた物だ。

その像はオリヴィエ(偽)の像で、いつの間にか何かの衝撃で壊れていた様だ。

それでその像が持っていた剣が俺の近くに転がっていた。

 

 まぁ一目見てアーティファクトという事が分かったが、俺としてはスライムソードに比べて性能は下にあると判断した。

これを回収してイータ辺りに見てもらうというのも手だが、もともとミドガル王国所有の物みたいだし、それにアイリス王女が兄さんと戦う際、今腰に下げているミスリル製の剣では到底太刀打ちすら出来ないだろう。

 

 物を変えたからといってそれが変わるかどうかなんて分からないが、渡しておく事に越した事は無いだろうな。

 

「こ、これは……」

 

「元々像が手にしていた物が偶々俺の足元に転がってたからな。それに今からソイツと戦うのは……今王女様が腰に差してる剣じゃあすぐに使い物にならなくなる。だからせめてそれを持って行った方が良いと思ってな」

 

「フッ、俺は相手の得物が何であろうと構わないが」

 

「……分かりました。ご助言感謝します、ユーリ殿」

 

 アイリス王女は肯定をしてから俺に対してお礼を言う。

アーティファクトを使ったとしても兄さんの技量に届かないという事は、戦いを見なくても分かっている。

 

(でもせめて今のアイリス王女に見合う武器くらいはね……)

 

 それで兄さんとアイリス王女、ベアトリクスさんの3人はこの場から去って行く。

といっても戦いの場を外にしただけで……

 

(……あまり被害が大きくなりません様に)

 

 心の中でそんな事を思いながらも、今やるべき事をする為に動く。

 

「さて、取り敢えずオリアナ国王を安全な場所へと運ぶか」

 

「そ、その! 私もご一緒しても……」

 

 俺は国王を俵を運ぶ様に右の方で担ぐ。

その扱いはどうなんだと言われるだろうが、正直男を横抱きにするのは嫌だし、おんぶも腕が塞がる。

だからこそこの担ぎ方をしているし、こっちの方が早く動けるからな。

 

 それでローズ先輩は、実の父親がこんな扱いをされているにも関わらず苦言一つ零さず、あまつさえ着いていきたいという意思を示してくる。

俺としては断る理由もないから了承して、この部屋を後にしようとした。

 

 だがその瞬間、俺に向けて黄色い閃光が放たれた。

それも莫大な力を伴った閃光が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルジ達を狙った黄色い閃光を辿る。

するとそこには黒い人の形をした何かが複数体宙を飛んでいた。

頭はとんがった形をしていて、顔にあたる部分は四角形のレンズが埋め込まれ、それは黄色い色を灯していた。

 

MD(モビルドール)……それはとある世界において、ガンダムという兵器に対抗して作られた無人決戦兵器であり、現在ミドガル王国の上空に複数対いた。

その内の1機のMDが手に持っている武装こそ、アルジ達を狙い撃ちした武装であり……

 

 

 

 

 

 

ギュアーーーーーーッ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてたった今、赤い閃光にアルジ達を狙い撃ちした1機を含め数機が飲み込まれ、塵すらも残さず消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の左腕から魔力を放った後の残滓が微かに残る。

そして先程までユーリという人物に変装していたんだが、魔力を放出した時にその変装も解けてしまい、今はシャドウガーデンのアスタロトの姿となっていた。

 

「あ、あなたはっ⁉︎」

 

 当然近くにいたローズ先輩にも見られてしまった訳で……

 

「……こういう形で再会するなんて考えてはいなかったんだがな」

 

 この後どうやって場を収めようかと考えながら、時間を稼ぐ一言を呟いた。

正直俺は、どちらかと言えば感情優先で動いてしまう。

だから何かを前もって考えながらというやり方は苦手な方だ。

まぁ今まで渡ってきた世界でその辺りも改善されたものの、さてこの後どうやって誤魔化すかな……

 

 そう考えていると……

 

「やっぱり……やっぱりあなたは『盗賊狩りのアキレウスさん』だったのですね‼︎」

 

「……えっ?」

 

 急にそんな事を言われたものだから間抜けな声が出てしまった。

 

(盗賊狩りのアキレウス……そう名乗った記憶は……あっ)

 

 そこで俺は漸く思い出した。

アルファ達と出会って間もなく、シャドウガーデンを盤石なものとするために色々と回って盗賊退治をしていた事があった。

そんな時に、やけに身なりが整った同年代の女の子で、金髪で髪型も今の様な縦ロールが特徴な女の子を助けたことがあった。

 

 それで名前を執拗に聞かれたから、その時頭にパッと浮かんだ名前を言った気がする。

 

(その時って兄さんと同じく身バレしない様に髪型とかも変えてたし……)

 

「アキレウスさん……ようやく、ようやく憧れた方にお会いできました‼︎」

 

「……どうして分かった」

 

 正直どう反応すれば良いか分からないけど、ここは先輩のノリに付き合わさせてもらおう。

 

「先程の黒い装束を纏った者達が襲いかかった時のあなたの体捌きが……以前私を救ってくれた方とそっくりで……それでもしかしてと思って声をかけたのですが」

 

 あぁ……これって簡単なカマをかけられた感じかぁ〜……

 

「私はあの時のあなたを見て魔剣士になる事を志したんです! いつかまたあなたに会える事を夢見て……まさかこんなところで会えるなんて」

 

「でもあなたが目指した魔剣士は……世間一般で言うところの犯罪者集団に属する者だ。そんな存在なのに、まだ俺に対しての憧れを持つのか?」

 

「確かに世間一般ではその認識です。でも私は……あなたは訳もなく他人を傷つける人ではないと感じています。でなければ……あなたは私の父を治療しようなんてしなかったでしょうから」

 

「それが表面上を偽るとは考えないのか?」

 

「確かにそれも考えられます。でもあなたであれば、先程どこかから放たれた攻撃も避けられた筈です。それも私をその場において……なのにあなたは、自分の正体を曝け出してでもこの場にとどまって攻撃を防いでいました。それが例え表面上を偽る物であっても、あなたは他者を思いやる優しさを持っている……と」

 

「(全く……この短時間でそこまで把握するか……流石は一国の王女様だな)はぁ〜……降参だ。概ね王女様の言う通りだよ。俺は無関係な人は出来るだけ巻き込みたくない。それでまだ生きていて欲しい人には、その人が生涯をまっとうできるまで生きていて欲しいと思う。だからこそ……あの夜も君を助けた。それが王女であれ一般人であれ、ましてやエルフや獣人と関係なく……な」

 

「っ‼︎ あぁ……やはりあなたは、私が憧れたお人そのものです! こんな状況でなければ、私はもっとあなたと一緒にお話をしたいのですが……」

 

「そうですね。この騒動を聞きつけて、ミドガル王国側の兵士達も時期に来るでしょう。なので俺があなたとあなたのお父君を安全だと思える場所まで手配させて頂きます」

 

「えっ……それってどういう……」

 

 ローズ先輩が疑問に思っている事を他所に、俺は指を鳴らした。

すると俺の側に人が1人通れる4次元空間が発生し、そこからフルフェイスの仮面を被り、全体的に青紫色の服装をした人が現れた。

まぁ他の人よりも暇そうなディエールを呼んだんだが……

 

(足を滑らせて転んだ様な格好だな)

 

 出て来た人物の今の状態に無様だなぁ〜、と思いながら見ていると……

 

「イッ……急に足元に広がった空間に吸い込まれたと思ったら……どこだここは?」

 

「武神祭のVIP席だディエール」

 

「っ⁉︎ やはり君の仕業かアスタロト! 急に呼び出して何の用だ! というかもっと他に良い呼び出し方は無かったのか⁉︎」

 

「まぁそんな事はともかく「そんなことっ⁉︎」あぁそんな事だ。それでディエールを呼び出したのは、ここにいるローズ王女とそのお父君の護衛だ。連れて行く場所は……そうだな。この地点まで連れて行くように」

 

 俺が魔力を用いて武神祭会場周辺の地図を作り出し、とある地点をマークする。

 

「……まぁ護衛する事に関しては良いが、ここは試合会場から比較的近いだろう? そこに一体何があるんだ?」

 

「行けば分かる。もうじきこの場にも異変を察知したミドガルの兵士達が来るだろう。こんな所で王女様とそのお父君が囚われる事は避けたい、いや……全力をもって阻止したい。だからディエール、この地点まで護衛を頼む」

 

「……良いだろう。その任務引き受けよう。それで……君はこれからどうする?」

 

「外にいる邪魔者どもを排除してくる」

 

「なるほど……確かにここから薄らだが見える。護衛地点まで無事送り届けた場合は?」

 

「シャドウがアイリス王女とベアトリクスのペアとドンぱちしてる。シャドウの事だし、また周りに被害を及ぼすと思うから一般市民にその被害が広がらないようにする事。後は市民を襲う敵がいたのならその排除だな」

 

「了解した。その任、全力で果たす事を誓おう」

 

 そう言ってディエールが仰向けに倒れているオリアナ国王を片腕で俵担ぎする。

そして王女も一緒に行く様に促すが……

 

「ま、待って下さいアキレウス様! いえ、アスタロト様……と呼んだ方が宜しいのでしょうか? あなたから授かった力で、私はここまで来れました。それに対しての感謝と……またあなたに……会えますか?」

 

 ローズ先輩が少し不安そうな目をしながら俺にそう問いかけてくる。

会えるかどうかなんてどこにも保証はないけど、生きていればいずれまた会えるだろうな。

 

「……あなたが望むのであれば、近い内に再会するでしょう。では、俺はやる事があるので」

 

 その言葉を残してVIP席からミドガル王国上空へと飛び立つ。

 

「アスタロト様……どうかお気を付けて」

 

「さぁローズ王女、長居は無用だ。早く行くぞ」

 

「はい、お願いします」

 

 ローズさんはディエールさんに促され、その場を後にしました。

先程まで煌びやかだったVIP席は、ローズさんによるオリアナ国王殺害未遂と、その騒動に介入したシドさんとアルジさん、そして謎の第三勢力になる攻撃により無惨な物に変わってしまいました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程アルジ達を攻撃した謎の勢力は、アルジからの反撃にあい体勢を立て直していた。

というよりアルジが時たま出す謎の空間に似たような歪みが周辺に発生し、そこから同じ形をしたMDが多数出現した。

その光景は、みる人が見れば永遠に湧き出るのではないかという程に……

 

「本当に……俺を付け狙う奴は暇人らしい」

 

 今も増えていく軍団を見てそう呟いたアルジ。

彼は無数に湧き出る軍団が陣取っている場に来ていた。

MD達はアルジが自分達の近くへ来ている事に漸く気付いたのか、頭部に備え付けられた黄色いレンズが明滅すると、一斉に手に持つ武器で攻撃をした。

 

 MDが持つ武器は全て中〜遠距離を攻撃する仕様な物で、何本もの黄色い光線、ビームがアルジを狙い撃つ。

 

 それに対してアルジは一振りの白い杖を取り出した。それは彼の身長と同じ長さをした物で、傍目から見れば大きな杖にしか見えない物だ。

 

 だがアルジが杖の持ち手にあるスイッチを押すと、杖の先端片側から緑色の鎌が生み出される。

それをアルジは、黄色いビームが自分に到達するタイミングで左から右へと振り抜いた。

 

 するとMDから放たれたビームの群れは一瞬で霧散した。

ビームの群れを霧散させた後、アルジは鎌を右から左へと振るった。

緑色の刃からは、振るった空間をなぞるようにして三日月の形をした斬撃がMDへと飛んでいく。

 

 それに反応するMD達だが、動くには遅過ぎた。

それもその筈で、感知した時には既に胴体が上下に別れていたからである。

上下が別れたMDは、アルジの放った攻撃に付与された能力により魔力に置き換わり散っていく。

 

 そんな攻撃を認識したMD達は、集団よりも散開してアルジを倒す方向へと作戦を変えた。

その集団が一斉に別方向へと散らばり自分を狙おうとする光景は……正直恐怖以外の何物でもない。

 

 だがアルジ逆にニヤリと口元を歪ませて、散開するMD達の中心に吶喊する。

そして接敵したMDから、手に持つ獲物で攻撃を加えていった。

それも複数対同時に屠る物で、MD達も攻勢に出ようとするも、アルジの移動速度についていけず、自らが放った攻撃が逆に味方に当たってしまうという悪循環を招いていた。

 

 MDには本来搭乗者はおらず、全てが人工知能によって動く。

その為に無駄な動きはなく、統率の取れた行動が出来る。

だからこそ敵がどの様に動くかもプログラミングされており、相手の行動を見て次の行動を予測し、それに先手を打つ事が可能なのだが……それが今回裏目に出てしまった。

 

 敵対しているアルジの行動が、MD達の予測とは全くかけ離れた動きをしていた為である。

言い換えてしまうと……アルジがMD達に取って無駄な動きをしているのである。

アルジが早すぎて行動に移せないという事実もあるのだが、彼を狙える位置にいたMDとしては、攻撃範囲に彼が収まっているにも関わらず次の行動が予測出来ず、簡単に攻撃が出来ないのである。

 

 攻撃が出来たとしても、アルジの予想外の動きによって避けられてしまい、攻撃の射線上にいた味方に当たってしまう。

そしてアルジに攻撃が当たると思った次の直後には、彼の持つ大鎌の緑の刃にビームが当たり、それが鏡の役割をするみたくビームが別の場所へと反射され、その位置にいた味方に当たってしまう。

 

 この様に数で優り、搭載されている人工知能においてもこの世界の一般魔剣士の能力を優に越える性能があるにも関わらず、目の前の(アルジ)に対してはなんの意味も成さなかった。

 

「なんかちまちまやるのが面倒になって来たな……」

 

 そんな敵の行動がアルジにそう思わせる。

緑色の刃の放出をやめて白い杖となった状態の物を魔力に戻す。

そして今度は両手と自らの周りに魔力を集めて武装を作り出した。

武装を作り出した時間は僅か1秒程で、顕現した武装は全てが複数対の敵に対して遠距離で対処できる物だった。

 

 両手にはダブルガトリングと呼ばれる、その名の通り2門のガトリング砲が備え付けられており、彼の肩、足の近くにはボックスのような物が浮かんでいる。

そして彼の頭の両側近くには、手に持っている物よりも小さい物ではあるが2門ずつガトリングが浮かんでいた。

 

「マルチロックオンシステム起動」

 

 アルジがそう呟くと、眼前に薄緑色をしたパネルが3枚現れる。

そこにはMD逹が映り、同時に赤い丸で次々と囲われていった。

パネルに入り切るMD達が全て赤い丸に囲われると、アルジの両肩と両足に展開されたボックスがバカッと音を立てながら開き……そこにはミサイルがぎっしりと詰まっていた。

 

「対象のロックオンを確定……消滅させる!」

 

 アルジの掛け声と同時に、両手に握られたダブルガトリング、両肩両足に浮遊したボックスに詰められたミサイル、そして頭の両側に展開された計4門のガトリングから一斉に弾が発射された。

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は今アイリス王女と武神ベアトリクスって人と戦っていた。

アイリス王女は当然の事ながら知っているけど、ベアトリクスって人は武神祭の時に初めて会った。

最初は何故か声をかけられて、僕から彼女が探しているエルフの気配がするって言われて、その後何故か剣を振り抜かれた。

 

(普通に剣の軌道は見えていたけど……)

 

 ただ陰の実力者の行動として、あの場は怯えたように尻餅をついた方が良いなって思ったからその通りに行動した。

なんでベアトリクスさんがそうしてしまったのかというと、彼女曰く僕から力を感じた様で、剣を振り抜くことで僕がどう動くかを見たかったからだとか。

 

 でも僕は尻餅をつく行動によって、ベアトリクスさんの思惑を完全に裏切ったのだ。

その後ベアトリクスさんは、首を傾げて疑問に思いながらも試すような事をして悪かったと言って謝罪をし、別れた。

 

 それで次に会ったのは武神祭のVIP席で、姉さんに半ば強制的に観戦するように言われて行った場所にベアトリクスさんもいた。

本来そこは貴族や主賓、来賓若しくは武神祭に出る人から招待された人が観戦できる場所で……正直陰の実力者を目指す僕にとっては場違いな場所だと思ったよ。

 

 それで何故かアレクシア王女のお姉さんであるアイリス王女と席が隣になってしまったり、出場者でもあるベアトリクスさんとも席が隣り合ってしまった。

そこで少し雑談をしたくらいだけど、ベアトリクスさんからは将来的にとても強い魔剣士になると評価された。

 

 他にアイリス王女やベアトリクスさんの会話に混じっていた貴族達からは何故? と言われるような視線を向けられた僕だけど……

 

(良いっ! この状況は僕が普段から思い描いているシーンだよっ‼︎)

 

 陰の実力者を目指す僕としては、本当にご褒美といえる状況だった。

そこで登場する謎の実力者である僕が、誰からも強いと評価される存在を圧倒的な実力で倒す! あぁ〜……想像するだけで本当に良い気分になれるし、実際にそうした時の快感はまた格別なんだよね‼︎

 

 

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

 

 

 今はミドガル王国最強の魔剣士であるアイリス王女と、武神という称号を持ったベアトリクスさんを2人同時に相手取っていた。

それで今僕の手に持っているのは、前世から慣れ親しんでいたバールだ。

工事現場付近を通った時に落ちていたからそれを拝借したもので、やっぱりどの世界に行ってもバールって形は同じ物なんだなって思ったよ。

 

 そんなリーチの短い物で戦えるのかって思うかもしれないけど、これは僕が前世で突き詰めた近接戦最強の武器だ。

普通に相手を殴れるし、爪の方で払えば相手に刺し傷を与える事が出来る。

それに爪の部分が直角に曲がっているから、そこを起点にして攻防一体の立ち回りが可能だ。

 

(現にこの世界で強者と思しき魔剣士2人がかりが相手でも普通に対応出来るし……)

 

 アイリス王女が素早く剣を振るってくるけど、僕には振るわれる軌道が全部見えているから、それに合わせてバールを合わせて振るう。

 

(アルファ達よりも劣るけど、確かにこれからも鍛錬を積めば強くなるかな。なるほど〜、アルジが気にかけた訳だよ)

 

 僕はアルジとアイリス王女の試合を最初から見ていた。

だからあの場でアルジが取った行動の意図もなんとなくは理解していたんだよね。

 

(それで王女様よりも実力が遥かに上と言えば……)

 

 アイリス王女と一緒に斬り込んでくる銀髪に少し金色が混じったような髪をしたエルフ……この武神祭で初めて会ったベアトリクスさんって人で、誰かを探しているらしい。

 

(にしてもアルファとそっくりだよなぁ〜)

 

 アルファ達七陰と比べて、剣術は迫る物がある。

魔力の注ぎ具合も、普通の魔剣士達やこの武神祭で出場して決勝グループに残った魔剣士と比べると綺麗だなって感じる。

 

(でもまだまだ足りないね)

 

 僕としては……やはり物足りない。

偶にアルジと剣の打ち合いをしているせいでもあるかもしれないけど……もう少しもう少しと思ってしまう自分がある。

 

「ぐっ⁉︎」

 

「ちっ⁉︎」

 

 即席とはまるで思えない2人の息のあった連携を、僕はバールで弾く。

 

「剣を抜かない相手に届かないなんて……これがシャドウガーデンのシャドウ……」

 

「……アイリス、私の動きにまだまだ合わせられるか?」

 

「っ! 分かりました! 合わせて見せます‼︎」

 

 ほんの少しそんなやり取りだったけど、2人がまた僕に向けて駆けていく。

その動きはさっきとはまるで違った。

 

(へぇ〜……まだまだ面白くなりそうだね)

 

 そして僕は少し押され気味になる事を装いながら、場所を移していく。

建物の屋根や走行中の鉄道の上、そして別の工事現場など試合会場からどんどん離れていって、今は大きな時計塔の上にいた。

 

 そこまでに行くまでにはバールはベアトリクスさんに弾かれたから、今ではスライムソードを使って戦っていた。

その時にアイリス王女は、僕がスライムを使っていた事に驚いていたけど、それでも戦意は依然高いままに向かってくる。

 

 それで今まで2人との戦いで気付いていなかったんだけど……僕らよりも遥かに高い場所……空中でアルジが見知らぬ何かと戦っていた……って

 

(えっ⁉︎ あれってガトリング⁉︎ この剣と魔法のファンタジー世界にガトリングっ⁉︎ しかもミサイルみたいな物も飛んでるし……)

 

 なんか世界観が壊れた気がするなぁ〜……。

でもあの装備のアルジと戦いたいって気持ちも普通にあるし……

 

 僕がこんな悠長に考える時間がある中、僕に向かっていた2人が何をしているかっていうと……

 

「な……何なんですかあれは……」

 

「空を飛ぶ敵……ワイバーンには見えない。人の形に見えるが……」

 

 2人も僕と同じく、アルジが戦っている場所を見ていた。

僕が近くにいることも忘れてそうしているというのは……本来だと相手に付け入る隙を与えているような物なんだけど……2人からして敵である僕もアルジの方を見てしまっているし……

 

(それにしても、なんで花火が上がっているんだろう?)

 

 勿論この世界でも花火はあるけど……でも今日は花火が上がる予定なのは武神祭会場の近くだけだったと思うし……

 

(いや、よく見ればアルジが撃ってる弾が敵に当たって、弾に当たった敵が花火みたいになってる?)

 

 正直どんな原理なのか分からないな。

と、そんな事を思っていたら、そんな爆風に乗っかって落ちてきたであろうアルジが戦っている敵が複数こちらに向かって飛んできた。

 

 建物に当たらない所で宙で制動をかけて、その後僕達がいる事に気付いたのかこちらを振り向いてきた。

 

 頭部に埋め込まれたような黄色いレンズが赤に明滅すると、手に持っていた銃らしき物を僕達に向けてきた。

 

「ほぅ……我に矛先を向けてくるか」

 

 アイリス王女達にも銃を向けられて、それに対して剣を向けていた。

 

 一触即発の気配が濃厚で、あと少ししたら僕から攻撃しようと思っていたんだけど……

 

 

 

 

ザシュザシュザシュッ!

 

 

 

 

 

 敵が背後から何かに斬られていた。

それでアルジが攻撃した相手の様に最後は花火みたく経っていった。

それは本物の火花ではなくて魔力に変換されたものが色を変えて漂った物だという事が分かって、その魔力が完全に晴れると、相手が立っていた少し後ろにの位置にアルジがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が攻撃の途中、その衝撃で複数体が別方向に飛ばされた。

そいつらが飛ばされた方向を見ると、丁度兄さんとアイリス王女がいる方向だった。

この程度の敵であればあの3人でも普通に倒せる。

だが倒した後が問題で、コイツらは倒した後普通に爆発する。

威力で言えば現代兵器の手榴弾と同じくらいだが、それでも近くで爆発してしまえばひとたまりもない。

 

 その為遠距離武装を仕舞って、ドラゴンの形をした物が着いた前腕の装甲と、両側から三叉のビーム刃が掲載されるトライデントを出して、兄さん達の方へと向かう。

まだ吹き飛んでいる途中の相手にドラゴンの形をした物……ドラゴンハングを伸ばす。

 

 ドラゴンハングは吹き飛んでいる相手に当たると、胴体に食い込むように固定した。

その時点でも相手は兄さん達の方へ吹き飛んでいたから、その速度を利用して俺は引っ張られるようにしながら、兄さん達がいる方向へと駆けていく。

 

 それをしてコンマ秒くらいでドラゴンハングで掴んでいた奴を追い越した。

それを確認してから掴んでいた敵をドラゴンハングで握り潰すように力を加え、胴体を真っ二つにする。

 

 その時には残りの吹き飛んでいた相手は制動をかけていて、兄さん達を視界に納めていた。

視界に納めたと同時に、相手が持つビームガンを向ける。

 

 そして相手が引き金を引こうとした瞬間、ビームトライデントで敵を一刀両断していた。

俺に倒された敵は、俺が敵に付与した効果で魔力の塵へと代わり、塵は俺が開けた四次元空間へと仕舞う。

 

「そこにいる2人は、怪我はありませんか?」

 

「えっ?」

 

 急に声をかけたからか、2人からは呆気に取られたかの様な反応が帰ってくる。

まぁシャドウガーデンという、世間一般でいうところの世界に混乱を招く犯罪組織として認知されている。

そこに属する奴から心配の声をかけられたなら……当然ながらそんな反応が帰ってくる事は当然の事か。

 

(それより問題は……)

 

 一応ここに来る途中、敵に狙撃されてからここまで来るまでの話だが、兄さん達が戦っていたであろう痕跡を何ヶ所か見つけた。

 

 結論から言おう……後で兄さんには自分で壊したものについては自分で直してもらう。

確かにアイリス王女達が剣を振るって破損した箇所もあると思うが……兄さんがこんな街中じゃなくて、郊外や大きな開けた場所に行くように立ち回ればここまでの被害は無かったはずだし……

 

(っ⁉︎ な、なんだか寒気が……)

 

 アルジさんがそう考えていた時、シドさんは悪寒を感じていた様です……

 

「君は……かなり力を持っているな。どうだろう? 私と戦ってはくれないだろうか?」

 

 一方先程までシドさんと戦っていたベアトリクスさんは、一目でアルジさんの戦闘能力が高い事を感じ取り、戦いに誘っていました。

 

「あぁ……それは遠慮します。第一ここでやってしまうと関係ない人や建物を巻き込んでしまうので……」

 

「ふむ……なら街中ではない広い場所でなら……」

 

「べ、ベアトリクス様⁉︎ 今の状況を分かっていますか⁉︎」

 

 うん、俺もアイリス王女の言う通りだと思う。

だって俺の背後からは、さっきまで戦っていたMD達が向かって来ているし、先頭集団に至ってはビームガンやビームカノンで攻撃してくるし……

 

 それに対して俺はビームトライデントを片手掌で回す事で防ぐ。

結構な数が降り注ぎはしたが、何の苦もなく弾いてみせる。

 

「今度はこっちの番だな」

 

 ビームトライデントに回転運動をかけるようにスナップを効かせて投げる。

投げたと同時に俺もトライデントを追うように宙を駆けていく。

トライデントはブーメランの様に回転しながらMD達へと向かい、何体かは回避運動が出来たが、殆どがトライデントの餌食になった。

そして避けた奴らはドラゴンハングを伸ばし、各個撃破していく。

 

(さて、だいぶ数を減らしたが……問題はMD達を吐き出している空間だな)

 

 原理は多分俺がやっているのと似た様な物だろう。

勿論破壊は可能だが、無闇に破壊するとなるとこの世界に変な影響をもたらす場合がある。

簡単に言えば小さなブラックホールが形成される可能性があるという事で……

 

(ん? 何か来るな)

 

 MDを吐き出す空間の破壊方法を考えていると、先程までとは違う形をした物が出てきた。

それは先程のMD達の様に、頭部が四角いレンズではなく人を模したかの様な黄色いツインアイで、正面から見れば三角形の頭部をしている。

両肩には隠し腕の様なユニットが備えられていて、身体の色合いはほぼ黒色で統一されていた。

 

 そんな姿をした敵が今度は6機、空間からMD達とはまるで違う邪気を放ちながら出現した。

 

 

 

 

 

 

 




解説



◾️ビームサイズ

ガンダムデスサイズヘル(EW)の主武装です。
機体の全長と同じ大きさの白い杖の様な形をしていて、先端から緑色の大鎌の刃が発生します。

◾️ダブルガトリング
◾️ミサイル
◾️マシンキャノン

ガンダムヘビーアームズ(EW)の武装であり、全てが実弾仕様になっている。
ダブルガトリングは片手にガトリングの銃口が2つずつあり、それを両手に装備している。
ミサイルについては本来両肩と両足にコンテナがあるが、今回はアルジの両肩両足付近に浮遊するコンテナとして書いている。
マシンキャノンも本来は胸部に備え付けだが、アルジの両側頭部付近に2門ずつガトリングが浮いている状態で描写している。

◾️ツインビームトライデント
◾️ドラゴンハング

どちらともガンダムナタクという機体に備え付けられている武装。
ビームトライデントが主武装であり、緑色の細い棒の先端から三叉の形をしたビーム刃を形成する。
ドラゴンハングはナタクの両腕前腕部に備え付けられてあり、先端に黄色い鋏のような牙を持つ。
大きさとしても攻撃を防ぐシールドの代わりとなり、攻防一体の武装になる。

◾️トーラス

今回アルジの踏み台として登場しているモビルスーツ。
新機動戦記ガンダムWにて登場している機体であり、人工知能が動かしている。
その為パイロットなしで戦闘が可能であり、その世界の主人公達を苦しめた機体の一つである。

武装
・ビームガン
・ビームカノン

またその世界では人工知能が操縦している事からMD(モビルモール)と呼称される。

◾️レイズデット

テイルズシリーズ撫でてくる回復呪文。
戦闘不能になった味方を一定のHPまで回復させることが出来る。
今作では一定時間内であれば死者蘇生も可能な効果を付与している。

今回出た武装や呪文の解説は以上となります。
しかしながら私の書き方だとイメージがしにくいかと思いますので、詳しくはyoutobeなどで検索した方が分かりやすいかもしれません……

次回はいよいよこの章を終わらせる予定で書きます。
投稿もいつもより遅くなるかもしれませんが、何卒ご了承下さいませ。

それではこの辺で、次回お会い致しましょう。
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