陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

51 / 59
これまでこの作品を読んで下さっている読者の皆様、本日はおよそ3ヶ月にも渡りお待たせしてしまい申し訳ございません!

事情については……まぁ新しいアプリを試しにやってみたり、雀魂で自分好みのキャラクターが出てしまったので、それで久々に熱くなってしまったり、他の方々の小説を見て回ったりなどしていましたら……いつの間にかお盆期間を過ぎておりました。

またその途中で2度目のコロナにかかってしまうなど……1度目に比べてとても辛かったです……

そんな事もあり、モチベーションも低下していたものの、ようやく踏ん切りがついて書き上げる事が出来ました。

長らくお待たせしてしまい本当に申し訳ございませんでしたが、また当作品をご覧いただければありがたく思います。

また今回の話で訂正があるのですが、前回最後に登場させた敵モビルスーツが5機登場させている描写をしていたのですが、その描写を一切無視して今回6機としています。
※前回の内容については5機から6機に修正済み。

混乱させてしまう内容となり大変申し訳ございませんが、こちらの内容についても何卒ご容赦いただければと存じます。

それでは前置きはここまでといたしまして、本日もご覧いただければ幸いです。


46話 復讐者、ローズの心を救う《後半》

 

 

 

 

 

 歪んだ空間から6機、同じ形をした奴らが出て来る。

といってもさっきの様な有象無象ではなく、個人用に作られたかのような機体だ。

 

(よく見たらハイドラガンダムだなあれは)

 

 ハイドラガンダムっていうのは、さっき穴から無限に湧き出るかのように湧いて出てきたMD……トーラスという機体なんだが、そいつらと同じ世界で作られた機体だ。

性能としては、その世界で作成されたガンダムとほぼ同じ性能と見て良いだろう。

それであれを纏っている奴は……

 

「フハハハハハハッ! まさかこの様な世界があったとはな! 良い……実に良い‼︎ 蹂躙し、力無き者どもを支配する! トレーズと決着を付けれなくなったのは残念ではあるが、この世界の王として君臨する事も悪くはない‼︎」

 

 大声でそんな事を高らかに言っていた。

あの声からして間違いなくヴァルダー……って奴だったか? 奴に対してそんなに詳しいって訳じゃあ無いが、確か野心が途轍もなく高かった筈だ。

それとトレーズって奴とライバル的な存在だったか。

まぁ奴が勝手に思い込んでいるだけかも知れないが……

 

「(それでそんな奴がこの世界の王になる……か)笑わせてくれる」

 

「ぬっ? 何奴だ」

 

 一瞬にしてハイドラガンダム6機が立ち並ぶ目の前へと移動した。

 

「っ⁉︎ 貴様いつのまに私の前にいる⁉︎」

 

「おいおい、まさかこの速度も見切れずにこの世界の王になるとかって豪語してたのかよ? 楽観的にも程があるってもんだよなぁ〜?」

 

「ま、まさか……貴様か⁉︎ 私をここに送る前にあの者が言っていた存在は⁉︎」

 

「あの者が誰かなんて容易に想像は付くが……それで? 俺のさっきの速さも見切れないその実力で、この世界の王になる? 冗談も休み休み言えよ? 正直さっきから笑うのを必死に我慢しているんだから」

 

「き、貴様っ! 私を侮辱するかっ⁉︎」

 

「侮辱するもなにも……この世界に来て早々に悪い……とは思わないが、テメェは何も出来ずにこの世界から退場させる。まぁ……相手が悪かったな」

 

「私が何も出来ずにこの世界を去る……だと? フフッ、フハハッ、ハハハハハハハハハッ! 私の駆るハイドラガンダムは、私自身が考えた通りに動く! それも私を含めて6機が、オペレーション・メテオに参加したガンダムの性能を凌駕している! それを貴様はそう評価するのか‼︎ それは単に貴様の目が節穴である証拠だ‼︎」

 

 ヴァルダーがそう言いながらも6機の内1機を俺の方に向かわせてくる。

その時に両肩に備えられてあるユニットの爪が飛んできて、ビームを撃ってくる。

それを俺はツインビームトライデントで難なく弾く。

そんな光景を見てか、俺に向かってくる1機はビームサーベルを引き抜いて迫る。

そして迫ってくる爪もビームの発射口からビームサーベルを展開して、俺に突き刺すように速度を増してきた。

 

(それでも兄さんが普段やっている動きよりも全然遅いんだが……)

 

 そんな訳で俺も迫って来るハイドラガンダムに向けて駆けて行き、その途中で俺に向かって来た爪をトライデントで一閃して破壊、そしてハイドラガンダムにはサーベルを振るわせることなく、連続の突きで串刺しにし破壊した。

 

「っ⁉︎ な、なかなかやるではないか……」

 

「まさかあの1機で俺を倒せると思っていたのかよ……そんな事は、俺よりも実力がある時に言えよ。じゃないとテメェ……ただの道化だぜ?」

 

「っ⁉︎ 言わせておけば……この小僧!」

 

 

「小僧……ねぇ? 俺と同じぐらいの歳(俺の実年齢はそれ以上だが)の奴に負けたくせに何を言っているのやら……」

 

「っ! 殺す‼︎」

 

 俺がそう煽ったところで、奴も本気? を出した様だ。

本人が纏っている物を含めた5機全てが俺に殺到してくる。

それもさっきの様に両肩からビームを放ちながら……

 

 まぁそんな行動は予想の範囲内だが、それを俺は上へと避ける。

今の高度は、ミドガル王国の建物にも被害を与えない場所でやり合っている。

だからさっきアイリス王女達を守ったみたく、態々ビームを弾かなくても良い。

 

「(それにコイツには、前世で負けた以上の屈辱を味合わせてやるよ)トールギスⅢ」

 

 そう呟くと、ガンダムナタクの武装は無くなり、代わりにトールギスⅢの武装が顕現した。

右肩には黒い長身の銃が、左腕には青と白の色合いをしたシールドが現れる。

 

「と、トールギスだとっ⁉︎」

 

 そしてヴァルダーはトールギスの名前を聞いて動揺した。

 

(まぁそれもそうだよな……何せ決着を着けたかった相手の愛機の名前が出てるんだから)

 

「貴様……貴様が何故その名を知っている⁉︎」

 

「そんなの……今から消え去るテメェには関係ない事だろう?」

 

「ぐぅっ……私とトレーズの神聖な闘いに土足で入り込むような存在など消えろっ‼︎」

 

 そう言って残ったハイドラガンダムを全て向かわせてくる。

何はともあれ……

 

「俺にとっては好都合だよ!」

 

 俺は右肩に着いた長身の銃を向かってくるハイドラガンダムの一団に向け、側面についているグリップの引き金を引いた。

そこから黄色い閃光、先程のトーラスが撃ってきたビームよりも遥かに威力が高い物を放つ。

 

 その攻撃に漸く気付いたのか、ヴァルダーは回避行動に移り、それに着いて行くように数機回避行動をとったが、回避行動が間に合わなかった1機がビームの巻き添えになり、魔力の塵と化した。

 

「ぐっ⁉︎ なんたる威力をしているのだ⁉︎」

 

「さっきまで余裕をぶちかましていたのが、もう2機も減ったのか。これでトレーズって人と神聖な闘い云々って……ナメすぎだろ?」

 

「おのれぇ……言わせておけ「その時間だよ」なっ⁉︎」

 

「怒る時間があるなら止まらずに行動出来るだろうに……そんなんだから年端も行かない少年に負けるんだよ」

 

 そう言いながらシールドに備え付けられていたビームサーベルを引き抜いて、ビームの刃を形成しながら比較的俺から近い位置にいた奴の胸を貫いた。

それで機能停止した事を確認はするが、念の為胸から顔にかけて振り抜いた。

ビームサーベルの軌道が下から上へと振られたこともあり、機能を停止した奴の頭がもげて宙に舞う。

ここまでで計3機が既に退場した。

 

 3機目を破壊し終えた後、未だに密集しているハイドラガンダムの方向へと向かう。

そこで漸く反応した1機がビームサーベルを抜いて、俺の攻撃を防いだ。

 

「ぐぅっ⁉︎ 何たる力だ⁉︎」

 

 防がれたものの、力の強さはこちらが上の様だ。

 

(まぁ女神様の所やこれまで巡って来た世界で死に物狂いで力の使い方を学んできたからな。こんな所で無様に負ける事自体あり得ない事だが……)

 

 そう思いながら力任せに押していくと、相手もそれに合わせて押し返そうとしてくる。

だが先にも感じた様に、俺の方が力の強さとしては上の為にジリジリと相手は後退していく。

 

 そんな時に横からビームが飛んでくるのが見えた。

先程のトーラス達が撃ってきた物よりも遥かに威力が高い。

 

(このままシールドで防いでも良いが……)

 

 放たれたビームとは別の方から何かが飛んで来る。

それは序盤にハイドラガンダムが飛ばして来た爪だった。

そこからビームサーベルを発生させて、俺の背中に狙いを定めて飛ばしてくる。

 

 その為に俺は一度目の前の奴から宙返りをする様に離れる。

離れた瞬間、俺に狙いを定めて来たビームは何にも当たらず通り過ぎる。

俺の背中目掛けて飛んできた爪は、本体からワイヤーでエネルギー供給をしている。

だから伸びているワイヤーをビームサーベルで切断して、ついでに爪の方も完全に破壊しておく。

 

 そしてビームが通り過ぎるのが終わったタイミングで、再びヴァルダーが搭乗しているであろう機体に向けて突き進む。

そこで見えたのは、ヴァルダーの乗る機体が俺に向けてライフルを構えている場面だった。

後は引き金を引けば発射されるのだろう、奴の勝ち誇った顔が機体の外からでも手に取るように分かるみたいだ。

 

(まぁそんな簡単には行かないが)

 

 俺はシールドに備えてあるヒートロッドを、ライフルの銃口に向けて伸ばした。

ヒートロッドは赤く発光しながらハイドラガンダムの持つライフルに当たり、ライフルの銃口は俺に向けていた射線から斜め上へと大きく外れた。

その瞬間に銃口から特大のビームが放たれるが、それも全く俺を捉える事なく王都の上空へと消え去る。

 

「チッ……先程ので完全に仕留め切れたと思ったが……」

 

「確かに数が少なくなってから急に動きが良くなったな? まぁ俺もさっさとこんな面倒な事は終わらせたいし……」

 

 俺が言葉を発している時にも、ヴァルダー以外の機体が俺に接近戦を仕掛けてくる。

確かに最初よりも動きは良くなったから、最初のは相手の油断を誘う為のブラフとしては良いものだと感じるし、まぁ最初の動きでも相手側を十分に圧倒できるのであればそれでも構わない……という事なんだろうか。

 

(でもこんな思考しても時間の無駄だな)

 

 俺は俺でやるべき事がある。

俺の所に連絡が来ていないという事は、まだ標的は王都を出ていない。

確かに俺がいなくてもあの人達なら抜かりなくやってくれるだろうが……保険はかけておく事に越したことはないな。

 

 俺はそう思いながら2機のハイドラガンダムが仕掛けてくる攻撃を軽々といなす。

迫り来る爪から飛んでくるビームは最小限の動きで躱し、ビームサーベルを構えながら接近してくる奴のも、躱しながらサーベルを持つ腕を斬り落とす。

腕を切り落とされた奴は、自分の腕が切り落とされた事に気付いていないかのように俺がいる位置を通り過ぎる。

そんな所を見逃さず、俺は通り過ぎた奴の背中を縦横に一閃ずつ振り抜いた。

 

 そうして通り過ぎた奴は、背中から腹にサーベルが貫通されていたのか綺麗な形とは言えないものの4等分に斬り離されて活動を停止した。

 

 4機目を倒したら、それだけ分相手の動きが良くなった。

さっき爪を飛ばして来た奴が、ライフルを連射しながら空いている手でサーベルを引き抜き俺に向かってくる。

そしてヴァルダーも俺に向かってくるが……

 

(顔が回転した?)

 

 ツインアイの顔が右回転し、今度はモノアイの顔になる。

そこから更に回転していき、さっきのモノアイと同じだがモノアイが稼働できる隙間が若干違うものが2種類続いて、最後に元の顔へと戻った。

 

(成程……何処かしらの神様をモチーフにしている訳か)

 

 元は状況に応じてのモードチェンジみたいなものなんだろう。

現にヴァルダーが乗る機体は、左腕にビームサーベルを持ち、爪からもビームサーベルを生やしながら、右手のライフルでさっきの奴と同じく連射してくる。

奴の考えとしては、2方向から俺を攻撃していくというもので、手数を用いて俺を圧倒する戦法のつまりだろうが……

 

(それなら最初からそうしてくるべきだし、何よりそれだけで倒せるって思われるのは癪だな)

 

 そして俺はヴァルダーとは違う方へと向かった。

俺に狙いを定められた方は、俺の動きが予想外だったのかライフルの連射を止めた。

相手の動きが一瞬止まったところを見逃すはずも無く、まずライフルを持つ腕をサーベルで斬り飛ばす。

そこで漸く我に返ったのか、背中に付けているユニットから爪を俺目掛けて飛ばしてくる。

飛ばすと同時にサーベルを発生させて、俺を仕留めにかかろうとしてくる。

 

(中々いい手だな)

 

 サーベルではなくビームを発射してくるのならもっと良かったのだが、近接戦で完全に仕留めようとしたんだろう。

現にサーベルが発生した事によって俺と爪の間にあった空間がサーベル分短くなった。

 

 そして爪が飛んでくる速度は、傍目から見ると早いと感じる。

並のものが相手であれば確実にその爪は届いた事だろう。

 

(まぁ全然避けれるが……)

 

 顔と身体の中心目掛けて飛んで来る爪に対して、身体を正面から横に向けた。

身体の中心目掛けて飛んできた爪に対してはそれだけで避けれた。

そして顔の方は少しだけ顔を逸らすことによって紙一重で避ける。

鎧などの類を身に付けていればビームによる熱も感じないのだが、残念ながら鎧とかは身につけていない為に避けれたとはいえ少し熱い程度の熱を感じた。

 

(やろうと思えば魔力で防げたが、こんな場所で使うことは無いな)

 

 そう思いながら目の前の相手を上から下へと一刀両断する。

そうする事で目の前の敵も魔力の塵へとになり、残すはヴァルダー1人だけの状態だ。

 

「貰ったぞ‼︎」

 

 ヴァルダーに向かおうとしたら、丁度背後から殺気とともに声が聞こえる。

相手から向かって来てくれるというのは都合がいい事で、まぁ普通に利用するよな?

 

 ヴァルダーが攻撃を仕掛けてくる事に対して、俺は相手を見ずに左に旋回する様に回避する。

そこで一瞬だけ見えたのは、ヴァルダーが左手のサーベルで右から左へと振り抜き、背中のユニットはそれぞれ下から上はと斬り上げる動作をしていた場面だ。

そして右手のライフルで斬った後の俺を木っ端微塵にしようとしたらしいが……

 

「そう来ると思ったぞ‼︎」

 

 俺が避けたところでハイドラガンダムの後頭部に付いている顔のモノアイが怪しく光る。

同時に背中のユニットから、先程まで下から上へと振り上げていた爪が勢いそのままに俺に向き、片方がビームサーベルを発生させたまま飛んできて、もう片方はビームを打ち出してくる。

 

 俺は少し予想外で驚いたものの、迫り来る攻撃をヴァルダーから離れる事で回避する。

 

(奴の動きが急に変わった。となると……)

 

「フハハハハッ、初めて貴様から離れたな。そのまま私に攻撃していれば良かったものを」

 

「明らかにさっきまでと違って動きが良くなったからな。まぁ俺の予想通りならその機体にあのシステムを積んでるんだろうが……発動条件もテメェ以外の僚機が撃墜されたら発動するってところか」

 

「ほぅ……そこまで分かるか。そうとも、私のハイドラガンダムには『Z.E.R.O.System』が搭載されている。最初は苦難の連続であったが、慣れてくればなんという事はない! 常に勝利を見せてくれる‼︎ このシステムを前に、貴様など羽虫同然よ‼︎」

 

 そう言いながらもライフルをさっきまでとは違い、俺が避ける方向込みで撃ってくる。

それと同時に為も一直線の動きではなく3次元の動きで迫りながらビーム放つ。

確かに戦い方はさっきよりも段違いだな。

 

(それもさっきまで自分含めた6機を操作していたんだろうし……)

 

 だからといってさっきのはお粗末過ぎたな……。

そう考える余裕がありながらも、迫り来るビームを最小限の動きで避けながら、ビームサーベルで弾けるビームは弾く。

 

「遅いぞ‼︎」

 

 そうしているといつの間にかヴァルダーは俺の左隣まで来ており、左手に持ったビームサーベルで斬りかかってくる。

 

 それに対してシールドを振り上げる動作をして、奴の腕部分が振り下ろす事ができない様にぶつけた。

 

「チェックメイトだ!」

 

 だがヴァルダーもその動きをZ.E.R.O.Systemで予測を立てていたのか、ビームサーベルを振り下ろすと同時に右手に持ったバスターライフルの引き金を引いてチャージしていた。

 

(これが6機全部でやられたら少し厄介だったな)

 

 こんな動きを延々とされたら、流石に面倒だと感じる。

まぁ面倒と感じるだけで全然対処は可能だが……

 

 ライフルの射程から逃げる為にその場から直ぐに離れる……ではなく

 

「なにっ⁉︎」

 

 逆に奴へと後ろ向きに体当たりをした。

そうする事でライフルの射程は俺から上空へと向かう。

 

「小癪なっ‼︎」

 

「さっきの事は流石に予測出来なかったか? まぁ俺としてはそろそろ終わらせたいからなっ‼︎」

 

「なっ⁉︎」

 

 俺は体当たりをしたと同時に身体の上下の位置を入れ替える。

入れ替えると同時にその勢いのままに奴の右側頭部へと蹴りを入れた。

ヴァルダーはそれを防ごうと右腕を持ってくるが、蹴りの威力が強かったためかライフルは腕から離れた。

 

 次にシールドに備えたヒートロッドで奴の左足を巻き取る。

ヒートロッドが奴の足を固く固定した事を感触で確かめると、今俺の頭が向いている方向、地面へと向けて加速した。

 

「ぐぉっ⁉︎ き、貴様何をっ⁉︎」

 

 そんな戸惑いの声が聞こえた様な気がしたが、こんな場面でわざわざ相手の発言に耳を貸すこともないだろう。

相手の戸惑いは無視したまま地面へと更に加速した。

 

 俺達が戦っていた場所は王都から離れた郊外という事もあって、ここには誰もいないという事を確認済みだ。

そして目の前には自然の広場が出来ていて、平常時では色んな事で使えそうだ。

そんな広場の地面に当たるか当たらないかのスレスレの位置で急制動をかけ、地面から僅か20cmくらいのところで止まった。

 

 だが俺に引き摺られる様にされたヴァルダーはそんな芸当は出来ず、頭から盛大に地面へとぶつかった。

だがそんなことをすればここに不必要な被害を出してしまうので、ヴァルダーが突っ込んでしまうであろう位置に魔力でコーティングし、頑丈にした。

そしてヴァルダーが地面、俺の魔力でコーディングした位置に頭から突っ込む。

だが地面は少しも陥没せず、逆にヴァルダーが纏っているハイドラガンダムの頭部がひしゃげる。

 

「うぐっ……お、おのれ……」

 

 地面に当たって相当な衝撃があるはずだが、まだ意識はある様だ。

 

(まっ、そんな事はどうでも良いか……)

 

 未だにヴァルダーの左足に絡みついているヒートロッドを上へと振り上げた。

それと同じ様に、ヴァルダーも振り上げられて宙へと投げ出される。

その時点でヴァルダーの意識は朦朧としており、自分が今どんな状態なのか分からないのだろう……呻き声しか上がっていなかった。

 

 そこに俺は無慈悲な一撃を与えるために、右腕に備え付けられているメガキャノンを奴に向ける。

メガキャノンの砲身を上下にスライドさせ最大出力モードにすると、エネルギーを貯め始める。

 

「ま、まだ私の野望は……止めさせは……」

 

 そしてヴァルダーも右手のバスターライフルを朧げながらも俺に照準をつけ、すぐに放つ。

向こうのはチャージしなくても最大出力にしてあるためか、直ぐに撃ち出す事が可能で、どれほどの出力で撃てるかは自分の意思で簡単に切り替えれる様だ。

 

(それでも俺には一撃も当たられないが……)

 

 通常ならもう少しチャージに時間はかかるが、そこを魔力を収束させる事で一気に最大出力並にまで上げる。

そしてグリップに付いている引き金を引くと、序盤に放ったもの以上のビームが撃ち出された。

 

 撃ち出されたビームはヴァルダーの放つビームと正面からぶつかり合い拮抗する。

だがそれも最初だけの話で、直ぐにヴァルダーのビームを突き破り、そのままヴァルダーを飲み込んだ。

 

 俺はこの時一件落着だと考えていたんだが、ヴァルダーを消し去った時に“カチッ”という音が鳴ったのが聞こえた。

それと同時に王都上空に巨大な空間が現れて、そこから何かが落ちてくるのが見えた。

 

(まさか俺の邪魔をする奴らの狙いはこれかっ⁉︎)

 

 すぐに俺は王都に落ちていく物に向かって飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ローズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程あの人にようやく会えた高揚感を完全に捨て去る事が出来ず、私はティエールさんの案内を受けていました。

そして連れてこられたのは武神祭会場から離れた路地裏で……

 

「来たわね」

 

「しゃ、シャドウガーデン⁉︎」

 

 そこには今巷を騒がせているシャドウガーデンの構成員の方が1人いました。

私と同じ様な金髪で、それを腰辺りまで伸ばしていました。

でもその方の髪質は、私が今まで会ってきたどなたよりも美しさを持ち合わせていました。

 

(いいえそれだけではありません……容姿の美しさや佇まいからもこの方から美を感じますし……それに)

 

 この人からは先程のアキレウスさんに似た様な気配を感じます。

隙のなさや、この方から滲み出る様な強者の気配……ともいうのでしょうか。

 

「それにしても少し遅かったわね。後少し時間がかかったのならこのまま去ろうと思ったのだけど」

 

「おいおい、俺としては時間内にここへ来たと思うんだが?」

 

「アスタロトならもっと早くに到着しているわ。それも2人を抱えた状態でね」

 

「アイツの基準で言われても困るんだが……それで? これからどうする?」

 

「彼女は私が受け持つわ。オリアナ国王についてはあなた達のところで引き受けてちょうだい」

 

「っ⁉︎ お父様をどうするつもりですかっ⁉︎」

 

「安心してちょうだい、といっても信用できないだろうけど、彼にはこれまでと同じくオリアナ王国の政治を担ってもらうわ」

 

「そ、それはどういう……」

 

「まぁ簡単に言えば、これまで通りオリアナ王国で国王としてやってもらうって事だ。だから心配する事はない」

 

 2人がそう言ってくる。

片方はシャドウガーデンの構成員で、もう片方はアキレウスさんが紹介してくれた方……今の状況がどうなっているのか分かりませんが……

 

「信じても……良いのですか?」

 

「会ったばかりの人を信用する事が難しいという事は分かっているけど、こちらとしては信用して欲しいとしか言えないわ」

 

「……分かりました。あなた達を信じます。それで私はどうすれば」

 

「そうね……あなたはアスタロトから直接力を受け取っているでしょ?」

 

「力……私の身体を治してくれたあの時の……ですか?」

 

「そうよ。あなたには選択肢があるわ。奴らと1人で戦うのか、それとも私達と共に歩み、奴らと戦うのか、ね」

 

「……そうする事でオリアナ王国は……私の祖国は救えますか?」

 

「そうね……もしあなたが私達と共に来て、そこで力を示せば考えなくはないわ(まぁあの子の事だから全力でディアボロス教団からオリアナ王国を解放するでしょうけど……)」

 

「……分かりました。私はあなた達と一緒に行きます。だから……」

 

「えぇ、オリアナ国王……いえ、あなたのお父様については、こちらで責任を持つと約束するわ」

 

「……ありがとうございます」

 

「よし、これで王女様のこれからも仮にだが決まった訳だし、そろそろ動こうぜ」

 

「そうね……いえ、もう少しこの場に止まるわよ」

 

「はっ? もうこの場に止まる意味なんて無いだろ?」

 

「後少ししたら、面白いものが見られるわ」

 

「面白いもの?」

 

「えぇ。それを見る為に、少し見やすい位置に行きましょうか」

 

 そう言って構成員の方が歩き出しました。

ディエールさんは溜め息を吐きながらも、構成員の方に着いていきます。

私は私で着いていくしか道がなかったので、抵抗する事なく前を行く2人の後を追います。

 

 そこで私は見たのです。

構成員の方が面白いものが見れると言った意味が。

そして……力を持つ事の意味が……なんとなく分かった様な気がしたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァルダーを倒した後に不安な音が鳴った。

鳴った瞬間に王都上空から何処かに繋がる空間の歪みが発生したが、そこから出て来たものがまた厄介なものだった。

 

 

(確かグランシャリオっていう……コロニーとか地球を破壊するプログラムを組み込まれた奴だよな)

 

 大きさとしては、ガンダムシリーズに出てくる戦艦だ。

モビルスーツも複数収容でき、備え付けられている火器類も強力だった覚えがある。

現にミドガル王国に向けて主砲を撃ち出そうとしているし……

 

(大切な人達が住む地を傷つけさせてたまるものかよ‼︎)

 

 グランシャリオのコントロールを司っているであろうブリッジに向けて、最大出力のメガキャノンを放つ。

メガキャノンから放たれたビームはグランシャリオのブリッジ部分に直撃コースで、このままでも当たると思っていた。

だが……

 

(弾かれたっ⁉︎)

 

 メガキャノンの最大出力は、戦艦を何隻も収容できる衛星でさえも破壊できる威力を持っている。

それが、少し目標とは離れているとはいえ完全に弾かれるとは予想外だった。

 

(まさかさっきのハイドラガンダムと戦わせたのはこの布石の為か⁉︎)

 

 ヴァルダー自身も、自分の力でこの世界を従わせられると思っていたんだろうが、これまでの事で向こう側も考えて来たのだろう。

ただ強い奴を俺の下に送り込むのではなく、そのすぐ後に俺と送り込んだ奴の戦闘データを元にして次を送り込む。

 

 そして今まさに王都を崩壊させようと空から落ちてくるグランシャリオは……俺が今装備しているトールギスⅢの放つ魔力を一切受け付けない。

たが……

 

(ようやくそこに辿り着くとか……所詮ぬるま湯につかりきった奴らか)

 

 それはともかくとして、この分も後で復讐する際に加算しておくとしよう。

どう復讐するかは考えていくとして……

 

「っと、悠長に考え事してる暇はねぇな!」

 

 グランシャリオは王都に落ちながら主砲を放とうとしている。

あの方角は丁度ミドガル王国の王城と武神祭会場がある。

敵が意図してその方角を指定したのかは分からないが、このまま放たれればこの国の政が停止する恐れがあるし、武神会場には避難しきれていない人達が沢山いる。

 

 グランシャリオの主砲が発射される直前、俺は主砲の射線上まで辿り着き、来る前にチャージしていたメガキャノンの最大出力を放つ。

俺がメガキャノンを放ったと同時にグランシャリオも主砲を発射し、ビーム同士が正面からぶつかり合う。

 

 ビーム同士の拮抗が10数秒間続き、メガキャノンとグランシャリオのビームは途絶えた。

向こうは冷却に時間がかかるが、以前落ちる速度は落ちない。

それにまた時間が経てばあの主砲は発射されるだろう。

 

(対してこっちは武装がもたないか……)

 

 俺の魔力出力にも充分耐えれる強度に設計はしたが、メガキャノンの最大出力を連発した事もあって砲身が所々溶けたりしている。

このまま使えば今後使い物にならなくなるし、何よりこっちの魔力は向こうに対策されてるから、これ以上撃ったとしても最終的に向こうが粘り勝ちするだろう。

 

(まぁトールギスⅢのままならな?)

 

 俺は姿を変えている時や他の武装を用いて戦う時、自分の纏う魔力の癖や質を変えている。

誰しもが少なからず魔力を持っているが、質や性質は全然違う。

 

 余談だが俺がとある世界を巡っていた時、攻撃を受け続けるとその攻撃に対しての抵抗を獲得する存在と戦った事がある。

その時はまだ世界を旅したばかりで、そこまで戦闘の経験も得ていなかったこともあり、撃退するのは苦労した経験がある。

 

 そこから俺は、武装を変えて戦う時は纏う魔力の性質をいじったりして、相手が同じ魔力の性質による抵抗を持ったとしても立ち回れる様に訓練をした。

 

(最初の頃は習得するのにも結構かかったが……)

 

 こんな時のために訓練を重ねていて良かったと思ってる。

俺は直ぐにトールギスⅢの武装を解除して、ユーリの姿に変わる。

姿が変わることによって魔力の性質も変化し、変化した事で相手にも攻撃が通る様になる。

 

 俺がユーリの姿になったと同時に、グランシャリオも冷却期間が終わったのか主砲をチャージしてくる。

 

「さ〜て……こんなにも関係ない人達を巻き込もうとしたんだ。ケジメはきっちりと付けてもらうぜ?」

 

 右手に持っている鞘から刀を引き抜き、魔力を纏わせていく。

纏わせる魔力量を増やす事によって、刀身が紅く輝き、次第に輝きも増していく。

そして刀をゆっくりと上に掲げていくと、俺の身体全体からも魔力が放出され、放出された魔力は刀に吸い込まれる様に纏われていく。

 

「目の前の災厄を払う為に……俺に力を‼︎」

 

 その声が発動条件となり、身体から今まで以上に魔力が放出されて刀身に纏われていく。

それは俺の魔力を貪り喰らうかの如くの勢いだが、目の前にから迫るものはこの国どころかこの星全てを壊し尽くす事が可能な才能を持っている。

 

「(そんな奴が相手なら、今俺が持っている魔力を全部持って行ってでも滅ぼしてやるさ‼︎)まだだ! まだまだいけるだろ⁉︎ 遠慮せず持っていけぇ‼︎」

 

 その掛け声とともに更に俺の身体から刀に魔力が注がれる。

すると次第に刀身の形が変化していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アイリス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は時計塔の最上階にいた。

武神であるベアトリクス様と共に、先程までシャドウガーデンという組織を立ち上げたシャドウと戦っていた。

彼がなぜあの場にいたのか分からない。

分からないが、彼が現れる場所では必ず事件が起こる。

 

(ともかくとして、奴を捕えなくては!)

 

 それがミドガル王国第一王女として、紅の騎士団を率いる私の務めだと……

 

(でも……全く歯が立たなかった……)

 

 ベアトリクス様と2人がかりで相手をしたが……彼にはまだまだ余力があった。

 

(それどころか自分の魔力を放出して天候さえも変えてしまった……)

 

 雨が降る程の分厚い雲が王都の空を遮っていたのが、シャドウがそれを晴らした。

それも王都全域を覆っていた雲が一瞬にして吹き飛ばされてしまったのだ。

 

(力が……足りない……)

 

 あの圧倒的な力を目の前に、私は無力な人間の1人だ。

 

(もっと力を……力を身に付けなければ……)

 

 そんな感情がアイリスの身体の中を駆けめぐる。

武神と名高いベアトリクスと共闘したにも関わらず、それでもシャドウに圧倒されてしまった。

そしてこの戦いの中で自分は……何も出来なかった。

この国で1番の魔剣士として自負はあり、周りもそんな自分を期待していた。

それに応えるために、自分は今の地位にも上り詰めた。

勿論この国を思ってこそというのが念頭にあるが……

 

(今の私では……何も出来ない。何も守れない!)

 

 今以上の力を渇望するアイリス……それは側から見れば、とても焦っている表情だ。

確かにシャドウに負けてしまった事もそうだが、それ以外にも要因は重なった。

 

 まずシャドウガーデンによる王都襲撃……これにより一部の兵士が殺害された。

次に魔剣士学園の襲撃、これにもシャドウガーデンが関わってい事が判明している。

負傷者はいたものの、奇跡的に死者は出なかった。

聖教に不正があった為に、妹のアレクシアを調査に向かわせたリンドブルムでの事、シャドウガーデン以外にもディアボロス教団という存在がこの地を脅かそうとしていると報告を受けた。

最後に武神祭……シャドウが現れる。

それもオリアナ国王という、他国の主賓が倒れている現場にいた事……

 

 そして自分は……いつも事が起きる場所に遅れて到着している。

自分が上り詰めて手に入れた筈の地位が、これで皆を守れると思った地位が、何も役に立っていないと痛感してしまった。

 

 だからこそ彼女は……力を欲するという感情にブレーキをかけれずにいた。

そんな彼女を……

 

(……この、魔力は……)

 

 何処からともなく、微かにではあるが魔力の流れを感じた。

その流れに、自然と足が動いた。

力を渇望していた感情は少しあるものの、それでも魔力の流れが何故か気になって仕方がなかった。

 

 そして魔力の流れを辿って行ったアイリスの目には……

 

「……綺麗」

 

 空から落ちてくる大きな物体、それにも目を奪われてしまったがそれ以上に、その大きな物体に対面する様に宙に浮かぶ1人の人……その人物が身体から放出している魔力と、得物として左手に掲げている剣に収束していく魔力……

 

 さっきまで自身の身体に渦巻いていた、ただ力を欲するだけの感情は……その光景を見た事により消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称視点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グランシャリオと正面から対面するアルジ……今はユーリという姿をしているが、左手に掲げた刀に魔力を最大まで纏わせる。

魔力が刀に纏われるたび、刀身は紅く輝く。

魔力が纏われていくたび、刀の形状は変化して行く。

既にその形は刀とは全くかけ離れていた物になり……いや、もはや光の槍に見える程には、形を変えていた。

その大きさも、もはや人の大きさを優に超えており……

 

「少し時間はかかったが……これでテメェを叩き潰せるな

 

 

 その刀は……大きな紅い翼となっていた。

天使の真っ白な翼を紅色に染めた色をして、刃に当たる部分は翼を広げた時の翼膜長腱を模しており、刀の反り部分が羽といったイメージだろうか。

それをアルジは、両手で持ち、構える。

 

 そしてグランシャリオの方にも動きがあった。

アルジのその一言がグランシャリオに届いていたのか分からないが、主砲のエネルギーを最大まで貯めて、放つ。

それは先程よりも莫大なビームとなって、アルジ諸共この地を更地にせんとばかりに放たれた。

 

 目の前から逃れられぬ破壊の光。

それに対して真正面から相対するアルジは、大きな紅い翼と化した刀を振り上げ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大切な人達を脅かす災厄は……この俺が断ち切る‼︎」

 

喰らいやがれ! 天翔、紅翼剣‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルジは刀を振り下ろす。

振り下ろされた紅い魔力の奔流がグランシャリオの放たれた主砲とぶつかり合った。

両者の攻撃は拮抗する。

グランシャリオは主砲を放ちながら更にエネルギーを貯め、今放たれているものに上乗せするかの様にエネルギーを放出させる。

それによりアルジの攻撃が一瞬押されるが……

 

ハァァァァァァァァァッッッッッ‼︎

 

 アルジはグランシャリオが放つエネルギーよりも更に多くの魔力を刀に上乗せして、刀身が纏う魔力を一回りも二回りも巨大なものにさせる。

 

 結果……グランシャリオの砲撃はいとも容易くアルジの攻撃によって霧散し、グランシャリオは紅い魔力の奔流に飲み込まれた。

それも塵一つ残す事なく……この世から完全に消滅した。

その一撃は……シャドウがアイリスとベアトリクスと戦っていた際に王都上空へと放った魔力放出と同等、若しくはそれ以上の威力であり、遠目に見えていた大きな積乱雲を完全に消し飛ばしていた。

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァルダーとグランシャリオというこの世界にとっては災厄しかもたらさない存在を消し去った俺は、一息つく為にとある建物の屋上に足を付けていた。

 

(ユーリに変装した時の魔力消費が少し多いな)

 

 いつもの姿ならそこまで魔力は持っていかないんだが……やはり魔力制御も変装した時の人物に寄ってくる事は前々から理解していた。

俺としてはユーリ本人は魔力の制御とか特に苦とは感じていないとは思うが……

 

(これから変装したら、その人物に身体のスペックが引っ張られる事も考えて魔力消費とかの制御をしていくか)

 

「あなたは……やはり先程の魔力はユーリ殿だったのですね」

 

 ちょっとした事を考え込んでいると、アイリス王女がここに来ていた。

王女がこっちの方に来ることは感知していたが、まさか俺の所に来るとは……何か用でもあるのか?

 

 すると王女は俺の方に急に頭を下げて来た。

 

「お願いします! 私を……あなたの弟子にして下さい‼︎」

 

(……この光景最近多くね?)

 

 一国の王女にまた弟子入りを頼まれた俺の顔は……多分ポカンとしていたと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ローズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あれが……アスタロト様の力の一部……)

 

 ミドガル王国の空に奇怪な物が現れたと思ったら、それに対してアスタロト様が臆する事なく……いえ、あれがいつもの表情なのでしょう。

そしてあの方は……私の目の前で奇怪な物を、何事も無く打ちのめしました。

 

(その時の魔力が……とても綺麗で……)

 

 私もあの方から直接力を与えられたものの、それでも全く比べ物にならない程精錬された物を……視覚と肌で感じました。

その光景を見た上で私は……あの方の様になって力になりたい! そして……

 

(アルジくんが平和に暮らせる世界を……)

 

 ディエールさんと別れてから道中そんな事を考えていた私は、金色の髪を腰以上に伸ばした方の案内に従って無意識に歩を進めていて、気付けば立派な建物の入口に立っていました。

 

「私からの案内はここまでよ。後の案内は……彼女に任せるわ。ラムダ、後はよろしくね」

 

「サーッ! イェッサーッ‼︎」

 

 そして次に会った人は、見るからに軍属の方なのだろうと思いました。

 

「貴様は、我らシャドウガーデンに所属するという事で相違はないな。その際、自らの過去全てを捨て去る覚悟もあると……」

 

「た、確かに私はあなた達の組織に所属したいと思ってここまで着いてきました。しかし自分の過去を捨て去ると言うのは……」

 

「そのままの意味だ。組織に所属するという事は、組織に、あの方々に忠誠を誓うという事だ。その為にも、貴様の過去がどれほど煌びやかなものであれ全てを捨て去り、これからは組織とあの方々の為に行動してもらう。それとここで忠誠を誓わないというのであれば、我々の姿を知った以上それ相応の処分をさせてもらう」

 

(全てを捨て去る……祖国やお父様を捨てるという事に他ならない内容……)

 

 ここにくる道中、ここまで案内してくれた女の人に言われた事はこの事だったのだと改めて気付きました。

ですが……

 

「(私は誓ったのです。これからの私がどんな存在になろうと、祖国を魔の手から救うと! そしてアルジくんが平和に過ごせる世界を目指すと‼︎)……はい。私は……自分の過去を全て捨て去り、あなた方の組織に忠誠を誓います」

 

「……良いだろう。ならば今この場でお前は一度、死んだ」

 

「えっ……っ⁉︎」

 

 軍服の方ラムダさんが言い放った事に呆気に取られていると、次の瞬間に私が今まで着ていた服は全て細切れになり、そして髪の毛の長さも短くなっていました。

それと同時に私の視界には……

 

「あっ……あぁっ……アァァァァァッッッ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんか勇気を貰いますって言っておきながら全然そんな風に見えなかったから……だから、こんな物でどうにかなるなんて思って無いですけど……餞別にどうぞ。腹が減ったら何とやらという諺もあるくらいですから、そんな時に食べて下さい。まぁ時間が経って冷えてますけど……』

 

ローズ先輩は自分に悔いの残らない道を進んで下さい! それに対して俺がどの程度付き添えるかなんてたかが知れてるかもしれませんけど……あなたの覚悟した道を全力で応援しますから‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの時アルジくんから勇気を貰った物……貰ったものは誰でも買える様な物で、食べ終わったらただの包み紙になる物。

でもこれを持っていると、不思議とアルジくんとの繋がりを感じられて、この包み紙を見る度に勇気付けられた大切な物。

 

 その大切な……アルジくんとの繋がりが……細切れになって夜の闇に散っていく。

 

「アァッ……アァァァァァァッ……ウゥッ……」

 

 なんとか全部が飛び散る前に少しでも集めようと手を伸ばした。

でも夜風に運ばれる包み紙の残骸が私の手に収まることなく、全部飛んでいってしまった。

 

 その現実を中々受け止める事が出来ず……私はその場にへたり込んでしまった。

 

「貴様は今から666番だ。さぁ立て。これから覚えてもらう事が山ほどあるからな」

 

 そう言ってラムダさんは私を無理矢理立たせようとしてくる。

でも今の私には、さっきの事がショックで自分の足で立ち上がる事が出来なくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まったく……いつもやり過ぎるなと言ったはずだが?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ⁉︎ あ、アスタロト様⁉︎」

 

 どこか威圧感を伴った声がその場に響きました。

そんな声が聞こえた為か、ラムダさんはその場に直立不動となって、声の主を探している様に見えます。

 

「夏場とはいえ、女性を裸の状態にさせる事は感心しないな。それも外で誰の目があるかも分からないのに。そんな事を目の前でされたら、俺だって対応に困るというものだ」

 

「あ、アスタロト様! も、申し訳ございません‼︎ 私の思慮に欠けてしまった行動が貴方様にご不快な念を抱かせたのなら、このラムダ……いかなる処罰も甘んじて受けさせていただく所存‼︎」

 

「そう思うのなら今後この様な事が無いように……君の腕ならば敵の刺客や相手が危険な物を持っていないかなんて直ぐ分かるだろう?」

 

「サーッ! イェッサーッ‼︎ 今後は周りの状況も鑑みて対処します‼︎」

 

「……まぁ今回はこのくらいにして」

 

 そんなやり取りが目の前で行われている中、私はまた呆気に取られて見ているしかありませんでした。

そうしていると、私の身体に、背中から何かが着せられている様な感触を感じました。

 

「その格好だと寒いだろうし、俺の目にもいささか刺激が強いから……汗とかで臭ったりしたら申し訳ないけど、何か着るまでは羽織っててね」

 

 さっきの威圧感のある声とは全く違った、優しい声が私の背後から聞こえました。

そしてその人物が言うように私は上着を羽織っていて、でもそれが凄く安心感を与えてくれた。

それだけではなく……

 

(っ⁉︎ ……この上着から漂ってくる優しい香りは……)

 

 この香りを……一生忘れるはずがありません!

例え私の過去を全て捨て去ったとしても、この記憶に刻まれた彼の声や体温、香りを私は……

 

「さて……さっきは俺の身内の1人が、あなたに対して失礼な対応をして申し訳ない」

 

 背後に立っていた方が羽織らせてくれた上着の暖かさと香りに気を取られている間に、その方はいつの間にか私の目の前に立っていて、頭に被っていたであろう帽子を持って胸の位置に置いてそのまま私に60度ほど頭を下げていた。

身に纏っている服も、紳士の方が着るようなしっかりとした服装に見えて、今私が羽織っている上着と合わされば、まさにそこに佇んでいるだけで一種の芸術になり得るのではと感じました。

 

 そんな方が私に礼儀正しく頭を下げている状況に、私はいきなりの事でどう返事をして良いか分からず、アタフタしてしまいました。

 

(この方が先程もお会いしたアスタロト様……なんと綺麗なお辞儀でしょう……)

 

 この方が貴族の出身だと言っても全く違和感がない程に、そのお辞儀は精錬されていました。

そこから数秒経った頃に、私はようやく彼に対して頭を上げていただく様に声をかける事が出来ました。

 

 そしてアスタロト様は、ゆっくりと頭を上げてくれました……って

 

(えっ? その髪型は……)

 

 先程まで月明かりが雲に隠れてアスタロト様の顔が見えなかったのですが、顔を上げ始めた所から月明かりが私達を照らしてくれて、目の前の方の姿が露わになりました。

そして次第に彼の顔が上がるにつれて、髪型だけでなく顔立ちまで見えて……

 

「あの場では名乗ったと思うけど、改めて……俺の名前はアスタロト。シャドウガーデンの創始者の1人で……」

 

「(そんな……そんな事が……あり得るのでしょうか……だって目の前に立っている方は……いえ、目の前に立っている“男の子”は、私の愛してやまない……)貴方は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、普段はアルジ。アルジ・カゲノーって名乗ってます。こうやって“ローズ先輩”に正直に名乗れる日が来るっていう事は、本来ダメなことかもしれない。でもそれとは別に、こうして正直に伝えれることが、俺の中では嬉しくも思っているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前にいる方が私の最愛である方だと分かって……私の目からは涙が溢れていました。

それも止めどなく流れ出て、止めようと思ったとしても止まらないほどに……

 

「えっ⁉︎ あのっ……俺何かローズ先輩に酷い事をしてしまったかなっ⁉︎ まさか俺が正体を隠していたから、それがショックだった……のか? と、ともかく俺が悪い事をローズ先輩にしたんだったら謝りますから! だから泣き止んでくれませんかっ⁉︎」

 

 私が泣いているのを見て、アタフタと表情を変えるアルジくんは……いつも私が見ていたアルジくんそのままで……

 

(それが……とても嬉しい!)

 

 そして私が今流しているこの涙も……そう、きっと嬉しくて出る涙だと感じています。

 

 アルジくんは……私が流している涙を嬉し涙だとはきっと気付いていないのでしょう。

今もアタフタとしながら、私にハンカチを差し出してくる。

私は彼の行為に甘える事にして、ハンカチを受け取って自分の涙を拭う。

 

 それから数分後、私の目から流れ出る涙がようやく止まって、アルジくんの顔を見つめた。

さっきのアタフタした様な顔はまだ残っているけれど、私が泣き止んだ事に安心したのか笑みを浮かべていました。

 

「ごめんなさいアルジくん。また心配をかけてしまったみたいですね」

 

「いえ……ローズ先輩が泣いている姿を見てしまって、それも俺を見た途端に泣いていたから、俺があなたに対して悪いことをしてしまったと……」

 

「いいえ違います。私は……貴方にこうしてまた会えて嬉しいんです。だから私が流した涙も嬉し涙なんですよ? でも、目の前でアタフタとしている顔をみたら……いつものアルジくんなんだなって、なんだか安心したんです」

 

「そ、そう……ですか?」

 

「えぇ、そうですよ」

 

「んんっ! 私の存在を忘れていないか? 666番。過去を捨て去った以上、気安くアスタロト様の本名を口にするな」

 

「あっ……も、申し訳ございません……」

 

「フンッ……まぁアスタロト様が許可をするというのならば、もう少しだけ今の態度も許してやろう」

 

「おお、ありがとうラムダ! やはりラムダは優しいな」

 

「なっ⁉︎ べ、べべべ別に私は大した事は……と、ともかく! アスタロト様も後少しだけの時間ですからね‼︎」

 

 そう言ってラムダさんは私達から背を向けた状態になる。

とても厳しい方である事は、会った時点で理解していましたが、この方にも優しい一面があると知りました。

 

「あっそうだローズ先輩。これ、落としたでしょう?」

 

「それは……っ⁉︎」

 

 そう言ってアルジくんは左胸のポケットから何かを取り出して私に差し出してくる。

それは……さっき私が自分の過去と一緒に失ってしまった物でした。

アルジくんにあの時もらった……さっき断ち切られたと思っていた絆を……先程と同じ形になって私に差し出してくれて……

 

(本当に……アルジくんは私を泣かせてしまうのが上手いんですから……)

 

 止まったと思った涙が……また私の目から溢れていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 




あぁ、この章の最後の場面(後に後日談はありますが)をようやく描き終わる事が出来ました。
とりあえずアニメ1期部分は終了ですね!

さて、後は解説をご覧いただきましょう!

解説

◾️ハイドラガンダム

『機動新世紀 ガンダムW G-UNIT』の作品に登場するラスボスの機体。
搭乗者はヴァルダー・ファーキルといい、非情な戦い方から『暗黒の破壊将軍』という二つ名が付く。

頭部が正面、両側面、後部にそれぞれの顔を持ちそれぞれの顔が常時センサー機能の役割を持っている為、四方向からの情報をマルチにある事が可能。
また両腕だけでなく両肩のアームを展開させ4本腕の様に展開する事で、まるで阿修羅の様な出立ちで戦闘を行う事が可能である。

武装

・バスターカノン
・ビームサーベル
・ショルダークロー
・EMFシールド

またハイドラガンダムの戦闘シーンについては、『Gジェネレーション クロスレイズ』を参照すると分かりやすい。
※今作ではハイドラガンダムにZ.E.R.O.Systemを搭載している描写をしておりますが、本来の機体スペックでは搭載されておりません。
今作のオリジナル展開となります。

◾️トールギスⅢ

『機動新世紀 ガンダムW Endless Waltz』にて登場する、トールギスの最終形態。
搭乗者はミリアルド・ピースクラフトであり、ガンダムWにおいては主人公達と最終決戦まで敵対関係にあるものの、ガンダムWの主人公であるヒイロ・ユイとの死闘を終え、主人公達とは和解した位置付けとなる。(作者目線)
その為Endless Waltzの映像作品にて主人公達と共闘。
トールギスⅢを駆り、これ以上兵器や兵士が必要ない世界を作り出すために闘った。

元のコンセプトとしては、機動性の高い戦術を得意としているトールギスの3号機として開発されており、初期のトールギスと比べ更に機動性と武装面の強化を図っている。
またリミッターが施されており、解除した際のエネルギー消費は高いものの、ガンダムWの主人公達が駆るガンダムタイプの性能と同等かそれ以上の機能を発揮する。
しかしながら機動性重視のため、一般の人が乗ると数分で身体が耐えられなくなるだろう……

武装

・ビームサーベル
・メガキャノン
・シールド/ヒートロッド

主武装であるメガキャノンは、バレルを伸ばす事で最大出力モードになり、主人公のヒーロ・ユイが駆るウイングガンダム《EW》のツインバスターライフルと同威力の破壊力を持つ。
その一撃は自分よりも巨大な資源衛生を1発で破壊する程の威力である。

◾️グランシャリオ

『機動新世紀 ガンダムW G-UNIT』に出てくる敵方の旗艦。
武装面は豊富でないものの、正面に備え付けられているグランノヴァ砲は、コロニーすら打ち砕くほどの破壊力を持つ。
今作では主人公であるアルジを打ち負かすため、トーラスとハイドラガンダムを6機先に戦わせて魔力などの情報を入手。
入手した情報をグランシャリオにフィードバックし、アルジの攻撃では破壊できない兵器として投入した。
しかしアルジが姿を変える事によって魔力の質が変わる事に気付いていない為、ユーリの姿に変わったアルジの一撃により、導入されたグランシャリオは塵一つ残らず消え去った。

武装
・グランノヴァ砲
・対空砲撃

◾️天翔紅翼剣

『テイルズ オブ ヴェスペリア』の主人公、ユーリ・ローウェルが放つ秘奥義をアルジが自分なりの技に昇華し、改良したものである。
本来だと刀身が一枚の白い大きな羽根であるが、アルジの場合は完全に翼の形となる。
また技名にも記載されてある通り、色は紅色である。
また魔力を多く使う事もあり、一回の振り下ろし攻撃が限度であるが、アルジの場合はそのまま振り回す事が可能。
本来の攻撃手段よりも凶悪な性能となる。(アルジさんの構想が鬼畜と言われても仕方が無いほど)

また今作では描かれなかったが、翼は2翼一対で重なっており、鳥が翼を広げる様に刀身を広げる事が可能である。





解説は以上です。
書けてないものがあれば後程修正を加えようかと思います。
また本来ならば今回ドエム・ケツハットが王都から逃げるシーンについても書きたかったのですが、それについては後日談で描きます。

では次回またお会いいたしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。