いやはや長かった気がしますが、取り敢えずは書ききれましたね!
さて、早い話ですが次回はいよいよ2期を投稿していきます。
内容は勿論吸血鬼編ですね。
私としてはそのシーンの最後をどういう風に描写していこうかとかは既に用意していますが、問題はそこに至るまでの内容と、それがあまり矛盾しないものにできるかですね。
まぁそれ後日書きながら考えていきます!
それではどうぞご覧下さいませ!
side ドエム
(一体何なのだ! あんな連中が出てくるとは聞いていないぞ‼︎)
オリアナ王国へと戻る馬車の中……ディアボロス教団モードレッド派に所属するドエムは先程の光景に頭の中を支配されていた。
自分が立てた計画は……途中まで上手くいっていた筈だ。
確かに途中でローズ王女が自害しようとするなど思いもしなかったが……それでも止めれる行動ではあった。
だがその最中に現れたシャドウガーデンの首領であるシャドウと、組織のNo.2と噂されていたアスタロトと呼ばれた存在……
(シャドウの存在という存在を初めて見たが、それよりも……)
アスタロトと呼ばれた存在……私も魔剣士であるから、ある程度相手の力量が分かる。
(だがあの存在は……測り知れない!)
あれが本当に私達と同じ種族なのだろうか?
いっそのこと魔人と言われた方がしっくりと来るほどだ。
(あの存在がシャドウガーデンのNo.2だと⁉︎ そんな事は絶対にあり得ない! シャドウの実力も私達が思っていたものより強力であったが、それよりもあの存在の方が……)
いつまでも同じ事を繰り返す様な思考に陥っていた時、馬車が急停止した。
こんな街の半ばで止まるなど何をしているのかと、馬を操る部下に叱責しようとした時……見えてしまった。
自分の馬車を取り囲む様に……紅いフードを被った集団に包囲されている事に……
「き、貴様らは何者だ! 私を誰かと知っての事か‼︎」
曲がりなりにもドエムはオリアナ王国の宰相の立場にいる。
その馬車を止めるなど、本来ならば盗賊意外にありえない事だ。
だが自分の馬車を取り囲む集団は……不思議と盗賊という存在にドエムは見えなかった。
「あなたが誰なのか? フフッ、そんな事は当然存じ上げておりますよ?」
集団の中から女性の声が聞こえる。
それもまだ成人になっていない年若い女の声が、自分が対面する方向から聞こえた。
「まぁ貴様が何者なのか……という問いに対しては、俺が1番理解しているだろうがな」
また同じ方向から男の声が聞こえるが、それは画面越しに喋っている為かくぐもって聞こえた。
「それにしても……昔より随分と計画がお座なりだと思うのは気のせいかしら? まぁ私には関係ないのだけど」
「……どちらにせよだ。オリアナ王国宰相、いや、ディアボロス教団モードレット派のドエム・ケツハット……貴殿はこの場で生き絶えて貰おう」
それから余裕のある女の声と、威厳のある物言いの男の声がドエムに向けられた。
最終的にはこの場で亡き者にすると……
「なっ⁉︎ こ、こんな事をしてタダで済むと思っているのか⁉︎ 貴様らは間違いなく我々の組織と完全に敵対する! 世界から破壊者の烙印を押されて滅ぼされるしか道は残っていない‼︎」
「そんなのは最初から覚悟してんだよ」
「っ⁉︎ どこから声が⁉︎」
ドエムの言葉に答えたのは、さっきまで言葉を浴びせてきた者達でない事は分かった。
だがどこから声が聞こえてきたのかがハッキリしない。
ドエムは辺りを見回したが、その反応に応える者はおらず……
「俺の事を探しているのか?」
(っ⁉︎ い、いつの間に私の目の前にっ⁉︎)
先程まで目の前に誰1人立っていなかった。
だがドエムの目の前に……自分の馬車を取り囲む集団と同じ紅いフードを被った存在が、まるで先程から立っていたかの様な自然体でいた。
「ディアボロス教団でそこそこ名前が認知されている奴が果たしてどれ程の手合いかと思ったら……全然大した事ねぇのな。現に俺から声をかけられるまで気付かなかったとくるし」
「(め、目の前に立つ存在から計り知れない程のプレッシャーを感じる。い、息が苦しくなって……)き、貴様は……何者だっ⁉︎」
ドエムは胸中でそう感じるものの、自分のプライドがこの場で屈するのを良しとしないと、それが無意識であれドエムは目の前の存在に先の言葉を放っていた。
それに対して……
「へぇ〜普通の奴なら泡を吹いて気を失ってるくらいなんだが……まぁ今はどうでも良いか。それで俺が何者か……だったよな?」
ドエムの言葉に答える様に、目の前に立つ存在は自分の被っているフードをどけた。
「なっ……き、貴様はっ⁉︎」
「よぉ、さっきぶりだなぁ〜。ドエム・ケツハット」
それは武神祭に出場していたダークホースの1人……ユーリ・ローウェルの姿に変装したアルジだった。
side out
目の前で俺の正体を見たドエムの慌てふためきようは、無様で笑いが込み上げてくるほどだった。
まぁその場では笑いを堪えたが。
「き、貴様が何故こんな所にっ⁉︎」
「何故って……おかしなこと聞くんだな。とっくにテメェの頭の中で分かり切っている事だろうに。まぁその問いに答えるとするなら……俺がテメェに対して復讐する為……だな」
「ふ、復讐だとっ⁉︎ 何を馬鹿なことをっ⁉︎ 私が貴様に対して何をしたというのだ⁉︎」
「年の割には物忘れが酷いんだな? まぁテメェがこれまでさんざんやってきた事なんて、いちいち覚えていられねぇか。でも最近の事は流石に覚えてんだろう? まさかそれすらも身に覚えがないとか言わねぇよな?」
「……っ⁉︎ わ、私の表の立場の事かっ⁉︎」
「ご名答! まぁそれくらいは自覚してるって事だよな?」
「ぐっ……だ、だが私をこの場で生かそうと殺そうと、貴様らは終わりだ! 大陸全土の組織に知れ渡ってしまえば、貴様らなぞどこへ逃げようと「逃げる気なんてそもそも無ねぇがな?」なっ……」
「さっきも言ったろう? 覚悟ならできていると……それに、テメェらに滅ぼされるほど柔な鍛え方なんてしてねぇ。それで……逆にテメェは覚悟……できてるよな?」
俺のの身体から放たれているであろう威圧に、それ以上言える言葉が見つからない様子のドエムは、顔から大量の汗を出しながら後ずさる事しかできていなかった。
だがその中で何かを思い出したのか、懐から何かを取り出し起動させる。
それは宝石が埋め込まれた物で、起動させたと同時にドエムの周りを薄緑色の光が包んだ。
「ふ、フハハハッ、残念だったなユーリ・ローウェル! 無駄な話などせず私を捕えるなり殺すなりしていれば、私を逃すことはなかったろうに! どちらにせよ貴様らは我らディアボロス教団により滅ぼされる結末は避けられん! せいぜい残りの命を有意義に使うといい‼︎」
そんな捨て台詞を残し、ドエムは消失した。
先程起動したものはどうやら転送装置の様なもので、過去のアーティファクトに属するものだろうな。
(だがこれも予想していた展開ではあるな)
なんでこんな余裕そうにいるのかというと、ルスランさんからある情報をもらっていたからだ。
それは……モードレッド派の中心であるモードレッド本人が、現在こちら側に亡命しているからというもので、まぁコイツとの縁も結構前からあった。
因みにこの事はアルファ達七陰やシャドウガーデン全体に伝えてある。
それでモードレッドにもディアボロスに現役のラウンズとしてスパイ活動を命じていたんだが……どうやらどこかの段階で立場を乗っ取られたらしい。
奴本人としてはいつも通りの行動をしていたと言っていたし、これも俺をいけ好かないと思っている神達が画策して干渉した事だろう事は、いつもの事ながら察した。
という事で、今ドエムを直接動かしている奴の正体が何者なのかを探る為にわざと今回奴を逃したわけだが……
(どの道この手で復讐はしてやるさ……テメェの方も首を洗って待ってな)
「打ち合わせ通りとはいえ、こうして目の前にいた敵をむざむざと逃してしまうというのは……やるせないものですな」
先程までドエムの進行を妨げていた1人であるオルバさんが、フードを外しながら言ってくる。
正直俺も同じ気持ちではあるが……
「確かにそうだけど、アルジさんにも考えがあってこうしたんだよ。ディアボロス教団も一枚岩ではないし、仮にドエムを今回捕まえてしまったことで今まで以上に苦しい展開も考えられるから、だからアルジさんもわざと逃したんだよ」
オルバさんの一言に、娘であるミリアが返した。
ミリアの言う通り、今回はドエムを逃す前提で作戦を展開していた。
改めて……俺自身も本当はこの場で逃したくはなかったが、大元の原因を突き止める為に今回はあえて仕方なくだ。
「ふふっ、今回自分で決めた事……後悔してる?」
「……後悔はしていない」
「そう……でも表情はその言葉とは裏腹に後悔している様に見えるわ。貴方の瞳も」
慈愛の表情と声音をもって投げかけてきたのは、先日オルバさんが指揮を取る組織に加入したアウロラさんで、今ではヴァイオレットと名乗っている。
まぁ俺と2人きりの時は本名で呼んでいるが、そんな彼女は少し心配そうな顔をして俺の頬に手を伸ばす。
伸ばされた手は俺の頬の輪郭をなぞる様にあてがわれて、それがくすぐったく感じる。
でもそんなくすぐったさとは違って、アウロラさんの手の温もりが、今の俺には快く感じた。
「……ありがとう、ヴァイオレットさん。少し気分が晴れたよ」
「そう? なら良かったわ。でもあまり溜め込んじゃダメよ? もしまた気分が落ち込んでしまったら、まぁその時は貴方の彼女さん達が慰めてくれるんだろうけど、私も貴方の気持ちが安らぐ様に甘えさせてあげるから」
「甘えさせるって……」
「フフッ、まぁそれは貴方が良ければの話よ」
アウロラさんがどこか誘っているかの様な顔をしながら言ってくる。
これまで俺が巡ってきた世界で生きてきた年齢を抜きにすれば、彼女は俺よりも年が上で、それでいて余裕を感じさせるお姉さんといったイメージがある。
(俺というのは……この世界に来てから女性に対しての耐性が極端に弱くなったな……)
現に今のアウロラさんの仕草でドキッとしている事は事実だし、アルファ達に出会っていなければコロッと甘えているかもしれない。
「それで……ここから先はどうする? 奴はオリアナ王国にあるディアボロス教団の拠点に戻ったとは思うが……」
「それについてはシャドウガーデンの構成員に監視をしてもらう様に手配しているし、コトハさんにも頼んで細かい動向は探らせるさ。本当は俺が直接行けるのなら、彼女達にも普段はかけさせないんだが……」
「ダメだよアルジくん! 君は働きすぎなんだから‼︎」
「そうですぞアルジ殿。休めるときにはしっかり休んでいただかなければ……それに貴殿はまだミリアと同じく子供なのです。雑事などは我らにお任せ下さい!」
「……分かりました。それじゃあ奴らが動いた時はいつもと同じく報告をお願いします」
「分かっている。それで、君は今からどうする?」
「……とりあえず兄さんが及ぼした被害を把握して、把握し終わった後は全て兄さんの手で修繕させる」
「おぉう……そ、そうか」
ディエールがどこか引いた様な身振りをしているが、これについては暴れた兄さんが悪い。
(そもそも兄さんは厨二病が強過ぎて周りを誤解させまくるからな……。完全に厨二病を直せなんてことは言わないが、それでも限度というものを知ってもらいたい)
「じゃあこの場は一旦解散、という事で良いのかしら?」
「そうなるであろう。確実持ち場に戻ると共に、周囲にはディアボロスの手の者もまだいるかもしれん。警戒は怠らぬ様に」
オルバさんの解散を伝える言葉に、この場に集まった皆はそれぞれの持ち場に戻るために移動を始めた。
かく言う俺も早々にミドガル王国に戻る為に移動を始めたが……
(兄さんがどれほど暴れて被害を出したのか……把握するのは正直嫌だな……)
どうか王国に点在していたディアボロス教団の構成員を襲撃していた時みたく……地面に大きな穴が空いていませんように……
そう願いながらミドガル王国に戻った。
まぁ戻って被害状況を確認してみれば、あの時よりも被害は軽微だった。
とりあえずは安心したと同時に、兄さんには今回壊したところを自力で直すように言い、サボれば兄さんが所有している財産は全て没収することも伝える。
兄さんを監視してくれている構成員の話によると、兄さんは真面目に壊した箇所を直していった様で、数日後にはそれも終わったと報告を受けた。
兄さんに壊した箇所を直す様に伝えた俺は、その後ローズ先輩がどうなったのかを直接見にいく為にアレクサンドリアにあるシャドウガーデンの本拠地へと向かった。
俺が行った時には既にラムダの通過儀礼が終わっていて、ローズ先輩が纏っていた衣服は細切れに……
(って何を見ているんだ俺はっ⁉︎)
ローズ先輩が裸にされてしまったシーンを見てしまって数秒硬直してしまったが、その間も俺の瞳には彼女の姿が映っており……第三者から見れば俺は紛う事なき変態に見えてしまうだろう。
(いやいや! 確かに俺は限定的な場面であれば変態と成り果ててしまうが! その場面はこういった場面というわけではなくて……って俺は一体誰に弁明をしているんだ⁉︎ とりあえずローズ先輩の破かれてしまった衣服とか持ち物を集めて元に戻さなければ‼︎)
そうして俺はローズ先輩が身に付けていた衣服の切れ端や、刻まれた持ち物などを全て回収して全て元の状態に戻した。
その時、この前ローズ先輩との別れ際に渡したマグロナルドのバーガーの包み紙が出てきた時は……少しだけ驚いた。
まさか食べ終わったら捨てる物を今まで持ち歩いていて、しかも自分が裸になったというのに、切り刻まれたバーガーの包み紙に手を伸ばして集めようとしているところを見てしまったら……
(ローズ先輩……こんなただの包み紙なのに、肌身離さず待ってくれていたんですね……)
あの時もう少しマシなものを送れば良かったかもしれないと思いつつも、俺が渡した物を……そんなにまで大切にしてくれた事に嬉しくなってしまって、それに対しての感謝を伝える意味も込めて彼女の前に歩み寄った。
それでここまで来たのならと思って、俺は自分の本当の姿も告白した。
世間では指名手配されている組織に1人であり、その事を今まで隠してきた俺は多分……ローズ先輩に嫌われてしまうんだろうと思っていた。
でも彼女は……そんな事は糾弾する素振りすら見せず、ただ俺に再会したことが嬉しかった様で、泣いていた。
急に泣いてしまった場面を見てしまって俺は取り乱してしまったが……、その様子も普段の俺に映ってしまった様で逆に安心したと言ってくれた。
(その後マグロナルドの包み紙を渡して、ローズ先輩がまた泣いてしまったから俺としてもまたあたふたしてしまったけど……それでも彼女の何かを救えたのなら、自己満足ではあるが良かったな)
その後はローズ先輩がラムダに先導されて行くところを見送った。
これまでの華やかな世界から遠ざかる事は確実だが、どうにかここに慣れてくれたら嬉しいなと思う。
そんな事を思いながら、俺は俺に宛てがわれている部屋に向かった。
変装しつつも出場した武神祭、武神祭の裏で画策されていたオリアナ王国の乗っ取りと、俺の事を好かない奴らから送られてきた邪魔者どもの相手とその後始末……後オマケにミドガル王国の被害状況の確認と、壊した物を直す様にという兄さんに対しての
(まぁ数日間は少し休むか)
それで部屋の前まで辿り着いて、ドアノブをいつもの様に捻り室内へと入る……んだが……
「ふふっ、お帰りなさいアルジ」
「あ、アルファ⁉︎ どうしてここに⁉︎」
アルファがローズ先輩をここまで連れて来る手筈であった事は知っていから、その役目を終えた後はてっきり自分の部屋に戻っているものかと思っていたんだが……
「確かに自分の部屋に戻ろうとしたのだけど、貴方が来るのが見えたからここで待っていたの」
「……また俺の心内で思った事に対して答えてる」
「ふふふっ、そんな顔が見たいから、貴方の心の中で思っていることにも答えたいのよ」
「そ、そうなのか……」
アルファがいう様に、今の俺の顔はおかしな表情をしている事だろう。
まぁそれでアルファの笑った顔が見れるのなら、俺自身も嬉しいと思うよ。
「それで、ただ出迎えたかったからっていう理由だけでここで待ってた訳じゃあないんだろ?」
「えぇそうね。じゃあ……」
次の瞬間には、アルファは俺を抱きしめていた。
頭を俺の胸に押し付けて、両腕を強く俺の背中に回して抱き締める。
「急にごめんなさい……ようやく2人きりになれたと思ったら……我慢できなくなってしまって」
「……実は俺もだ」
「えっ……っ⁉︎」
アルファから発せられた健気に思えてしまう言葉と、俺の事を包む柔らかな暖かさで……数日前から偽っていた、アルファに対する我慢が決壊していた。
彼女の柔らかくしなやかな身体を……俺も強く抱き締める。
今彼女が身に纏っているのはスライムスーツで、触り心地も彼女の肌と遜色なく、そして直に彼女の体温をスーツ越しに俺へと伝えてくる。
(こうしているだけでも……彼女の事が愛おしい)
互いに抱きしめ合っている状態から数分、少しだけ抱き締める力を弱めてから、俺とアルファは互いの顔を見つめ合っていた。
彼女の背は俺よりも少し低いから、俺の事を上目遣いで見てくる。
俺の瞳に映っていたのは、いつもの凛とした様な表情ではなく、アルファの……年相応でどこか切なさを感じる様な表情で、それを見てしまった俺は心の中に一種の昂りを感じてしまった。
「アルジ……良いわよね?」
そんな表情をしながらアルファの口から出た言葉が、俺の耳から脳へと達した瞬間、心の中で昂っているものと同じ熱い何かが脳から身体全体へと駆け巡る。
例えるなら効力の強い薬……猫がマタタビで強く酔っている様な感じで、一気に力が抜けてしまうかの様だった。
「アルジのその顔……貴方ももう我慢が効かないのよね? なら……」
その状態で更にアルファから追い打ちをかけられるかの様な甘い囁きが……俺の精神を見事に削り切り、そして力を根こそぎ奪っていった。
それでいつの間にか俺はベットに仰向けになっていて……俺の腹の上にアルファが跨っている構図が出来上がった。
彼女はその状態で俺の顔、両頬に手を添えて徐々に自分の顔を近付けていく。
「アルジ……私は貴方の事を、この世の誰よりも愛しているわ」
俺の唇は……アルファの唇で塞がれた。
いつもの様なディープキスではないが、優しく思いやりのある、温かいアルファからの愛情がそこから伝わった。
そこから俺達は何度も……自分達の存在を確かめるかの様にキスを重ねていった。
その後は互いが歯止めが効かなくなってしまって……てな感じで、後は想像にお任せするとしよう。
side クレア
武神祭が一時中断した後、残りの試合については後日に持ち越された。
一時はどうなるかと思ったけど、何事もなく無事に再開される様で良かったと思うわ。
けど……
(なんでこの場にあの子はいないのかしら……)
今大会のダークホースであったジミナ・セーネン、そしてジミナって選手と同じくダークホースでありながら優勝に近い実力があると言われていたユーリ・ローウェル……この人達がその後試合に姿を表さなかった事もあって棄権扱いされていた。
それについては正直私はどうでも良い事だし、寧ろその2人がいなくなる事で優勝が近付くというのなら願ってもいない事だと思っわ。
まぁ実際に手合わせできなかった事は残念かなって思うけど……
でも問題はその2人が棄権した事じゃなくて、アルジが棄権した事……それを本人の口から直接聞かされてしまったの。
勿論私はなんで棄権するのかを問いただしたわ。
そうしたらあの子はこう言ったの……“自分にとって看過できない事があるから、それが自分の大切な人達を傷付けないように今から動かないといけない”って。
あの子は……いつも自分の事よりも周りの事を優先させる。
小さい頃からずっと見てきたし、あの子の性分も理解しているつもり……ではあるけれど……
(アルジがいないだけで……私が昔から目指していたものが色褪せて見える……)
分かっているわ。
私があの子にとても依存しているって。
あの子なしじゃ……多分私は日々の生活でさえも生きるのが辛く思えてしまう。
それくらいに私は……いつもあの子の側にいたい。
(私も……あの子が背負っている物を一緒に背負ってあげれたのなら。それが出来なくても、あの子が私に何も隠さなくても良いと思えるきっかけが出来たのなら……)
そんな思いを浮かべながらも、クレアさんは武神祭を優勝しました。
そして彼女の心に思ったような事がすぐ目前まで迫っている事には……クレアさん自身気付いていませんでした。
side out